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みんなで渡った先

「みんなで渡れば怖くない」というギャグでウケていた芸人が誰だったか忘れましたが、みんなが渡っているから、渡れ渡れと言われるから、渡れば安全だからと、8割の人々が川の向こう岸に渡りました。途中流され溺死した人や渡り切ったものの瀕死の状態の人も大勢いましたが、渡るのは危険という警告は無視され、或いはデマとされました。そして川は戻ることができない激流に変わっていました。

やっと渡った先は実は向こう岸ではなく、川の中洲でした。中洲に渡った2割5分の人たちはそこに留まりましたが、7割5分の人たちは流れが緩やかそうということで向こう岸に渡りました。途中流され溺死した人や渡り切ったものの瀕死の状態の人も大勢いましたが、渡るのは危険という警告は無視され、或いはデマとされました。そして川は戻ることができない激流に変わっていました。

やっと渡った先は実は向こう岸ではなく、まだ川の中洲でした。中洲に渡った人の1割以上は流れが緩やかそうということで向こう岸に渡りました。途中流され溺死した人や渡り切ったものの瀕死の状態の人も大勢出ていますが、渡るのは危険という警告は無視され、或いはデマとされ、みんな渡ろうとしています。

でも渡った先は実は向こう岸ではなく、まだ川の中洲であることをこっち岸にいる人たちは知っています。そしてもう彼らに渡る体力はなく、戻ることもできないことを知っています。やがて川全体が増水して中洲に留まっている人たちは皆流される運命にあることを知っています。彼らが嬉々として渡ろうとした向こう岸は実は人が住めない世界であることも知っています。


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