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【読書】人に備わる即断力の功罪/「Blink」から

人は、まばたきする一瞬で物事を判断する力がある。人に備わるこの無意識な即断力は、時と場合によって良い結果を生み出すときもあれば、悪い結果に繋がる場合もある。この即断/snap judgementの仕組みを考察したマルコム・グラッドウェルの一冊。

記事要約

  • 人々の直感/intuitive repulsionや適応的無意識/Adaptive Unconsciousとも言われる機能は、良くも悪くも非常に強力。

  • 場合によっては、時間をかけて情報収集し、熟考した上で判断するよりも、その瞬間で即決する事で、より好ましい結果に繋がる。

  • 結論としては、いかにこの直感的な即時判断力と情報収集&熟慮の末の判断を効果的にバランスを取るか。そして豊富な情報に目を惑わされず、いかにunderlying patterns、つまり物事の本質を見極めるか。




1.本の紹介

本のタイトルは「Blink: The Power of Thinking Without Thinking」(2005年刊行)で、邦訳は、「第1感 -「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」。

イギリス生まれカナダ人のジャーナリスト兼米国コラムニストであるマルコム・グラッドウェル/Malcolm Gladwell(1963-)著。

マルコム・グラッドウェル
マルコム・グラッドウェルさん

彼がMicrosoft researchというプログラムで本書を説明している動画は以下。

2.本の概要

物語は、古代ギリシャ起源の古美術品の鑑定の話から始まる。年代検証含めた科学的分析&弁護士による各種書類精査を踏まえ、在カルフォルニアのとある博物館が、クーロス/Kourosと呼ばれる裸の男性の若者を描いた独立した古代ギリシャの彫刻を購入する決断をする。しかし、その彫刻を見せてもらった芸術品専門家達はほんの数秒で違和感に気づく。

クーロス/Kouros
クーロス/Kouros

人々の直感/intuitive repulsion適応的無意識/Adaptive Unconsciousとも言われる機能の背景には、人は無意識に相手の感情や仕草を手始めに、人種や性別等を含め様々な情報を瞬間的に把握し判断材料にしている事が関係している。そしてこの機能は、良くも悪くも非常に強力で、人々の思考、判断、行動原理に大きな影響を及ぼす。

場合によっては、時間をかけて情報収集し、熟考した上で判断するよりも、その瞬間で即決する事で、より好ましい結果に繋がることも多々ある。著者はthin slicingとも呼ぶが、こういった即断力というか瞬間判断能力は、例えば戦争下における各種判断(例: パイロットが戦闘中に行う判断)、緊急治療室での治療方針判断、新曲の良し悪し含め、あらゆるシーンで活躍している能力である事が調査で分かっている。

しかし一方で、この無意識的な即断能力がバイアスとなり裏目に出てしまうシーンも多々ある。オーケストラ楽団員の選考試験が典型例。以前は応募者らは審査員らの目の前で演奏していたが、その結果団員構成が白人男性に偏りより気味で、応募者の演奏力以外の追加情報(例: 服装、髪型、顔、背丈、癖)が審査員の判断に影響することが指摘されていた。これらは、ブラインドオーディション導入後改善。

結局、結論としては、いかにこの直感的な即時判断力と情報収集&熟慮の末の判断を効果的にバランスを取るか。そして豊富な情報に目を惑わされず、いかにunderlying patterns、つまり物事の本質を見極めるか

3.感想

元ジャーナリストのマルコムさん、いつもながら読ませる文章を書くし、話も面白い。ノンネイティブでもサクッと読める優しい英語。

なお、どう著者は社会的成功をおさめる人々の傾向と要因を分析した「Outliers」書いているが、こちらの方もおすすめ。

最後に一言

なお本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。


あわせて他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。


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