小説「龍翔伝」2話
「であるから神戦校で…」
俺たち龍王族は戦士を育てる学校『神戦校』に入学できた。
だが、入学できたのはかなり少ない……五百人はいたのに、今はざっと百五十人くらいだ。
しかし、この学校はどういったシステムだ? 他の入学した奴らは固まって座っているのに俺たちと白いフードをかけている五人しか座ってない。
他の奴らとかなり離れているな。
「さてと、では君たちは教官たちの案内のもと、移動してください」
長い入学式が終わり、教官たちの案内に俺たちは移動を開始した。
「俺らの担当教官はマリア?」
聖地は案内の書いた紙を見てなにか疑問に思ったみたいだ。
「どうした? 聖地、なにか気になるところがあるのか」
俺は疑問に思った聖地の肩を叩いた。
「それがな、龍翔をマリアという名前は『閃雷のマリア』で有名な英雄の名前で……」
始まった、聖地は気になるところがあると長い説明を始めた。
だが、聖地の説明を聞いてみるとマリアという人物はかなりの実力者みたいで、話の流れではどんな逆境でもどんなピンチでも生き残った戦士で、兄さんの右腕みたいな存在でその実力は大きな都市を一人で制圧できる戦士みたいだ。
「……というわけだ」
聖地は長い熱い説明を語り終わった。
「だが、なんでそんな凄い戦士が俺らの教官?」
平ちゃんは首を傾げて話に加わってきた。
「そりゃ~~あんた達が問題児だからでしょ?」
俺達はある声のする場所に視線を向けた! 視線を向けた場所は体育館の教壇に茶髪の女性がいた。
その女性は朝から酒を飲んでいて見るからにつまみをむしゃむしゃと食べながら会話に入ってきた。
「あんたらが高校時代に暴れたおかげで様、わたしが担当になったの、龍王族の諸君」
その鋭い眼光で俺たちを睨んできた!! まさかと思うが彼女は聖地が今、説明した女性なのか?
聖地は息を飲み込んで話をかけた。
「あんたが『閃雷のマリア』だな? その鋭い眼光は」
聖地はその女性に問いかけて、女性はのんびり酒を飲みながら答えた。
「ご名答~~わたしがあの『閃雷のマリア』で~~す、げほ」
酒を片手につまみをむしゃむしゃと食いながら答える様はまるでおっさんだ。
蓮は俺に耳元でしずかに囁く。
「兄貴……ホントにこの人が僕たちの教官なのですか? ただの酔っ払いですよ」
蓮は正直なのはいいけど、それは言い過ぎだが……まあ、わからないことはない。
その時だ、直人が『無残』を左手で持ち構えいきなり斬りかかった!!
「ふん、ただの酔っ払いなら俺の太刀筋は読めないだろ!!」
俺は慌てたが正直、直人が腹を立てるのもわかる……けど、さすがにそれは危なすぎる。
だが、この時だ!! 直人の『無残』を『閃雷のマリア』が片手で止めた。
「若いね~~だけど、詰めが甘い!!」
さっきまで酒を飲みながらつまみを食べていた酔っ払いではなかった、その目は獲物を仕留める目で直人の『無残』を奪い、態勢が崩れた直人の上にのしかかった。
「いや~~なかなかの太刀筋だけど動きが単調すぎるね、もうちょっと変化をつけた方がいいね」
そう、直人は太刀筋自体はいいが動きが直接的過ぎなのが良くない、それでは動きの動作がバレやすい。
せっかくのいい太刀筋がもったいないが直人自身が素直でいいところでいいけどね。
だが、直人の太刀筋を初見で見極めるとはあの教官はやるけど、また酒を飲みだした……しかも、直人の上に乗っかって。
直人は悔しそうで苦しそうに女性に対して失礼な発言をした。
「おい、いつまで乗っかっていやがる、重いわ!!」
教官は少し怒りながら直人の頭をバシバシと叩いて答えた。
「ガキが……レディーに失礼な発言をするな!!」
頭を叩かれる直人だが負けまいと答える。
「うるせぇ! 朝から酒を飲む奴はレディーとは言わない、どっちかというとおっさんだ」
二人はいがみ合う様に喧嘩をしている……いや、早く終わってくれよ。
この時に白いフードを被った五人は間に入り喧嘩を止めた、一人は白いフードを脱いで、その格好は黄色い髪をした女性だった。
女性はなぜか、クスクスと笑っていた。
「ハハハハハ、賑やかな人たちだ!!」
急に俺達に人差し指を向けて大笑いしていた……なんだよ、失礼な女だな!!
だが、この笑い方はどこか懐かしい……この香水はたしか、ドラグーン帝国の香水だな。
ドラグーン帝国とはドラグーン人という龍の末裔が住んでいる帝国だ。
ドラグーン人は日本人と違い、特別な血をした人間であり、文化は最先端技術を持っており、技術力は世界トップである。
ドラグーン人は日本人としか関わらない奇妙な種族である。日本人には『気術』というドラグーン人に匹敵する力があるためだ。
しかし、俺達は気術というのはいまいち理解をしてない…………まあ、これからこの『神戦校』で正式に習うけどね。
この学校は高校を卒業した人間が『気術』という特別な力をコントロールして国公認の戦士になる為に建てられた。
だが、なんでドラグーン人がここにいる?
黄色い髪の女性は疑問に思っている俺に声をかけてきた。
「やあやあ、初めまして!! 僕の名前はランだ」
その女性は礼儀正しく頭を下げて挨拶をしてきて、俺は軽く挨拶をした。
「桜鬼龍翔だ、よろしくな」
ランという女性は手を俺に差し出した。
「よろしくね!! 桜鬼君」
俺は差し出した、手を握るがランの後ろにいる、白いフードを着た四人が騒ぎだした。
「ああ、私達、ラン様の手を異人が握りやがった!!」
異人だと!? 俺達、日本人を軽蔑する呼び方でないか!!
すると、俺の後ろにいる三人と『閃雷のマリア』の尻に引かれている直人が急に怒りだした。
「てめえら、俺達の総長を馬鹿にしたな!!」
おお、さすがのお前達も総長が馬鹿にされたことで怒ってくれるのか。
一触即発の空気の中、白いフードを脱いだ四人は正体を露わにした……なんと、四人はドラグーン人であり女性であった。
『閃雷のマリア』はニヤッと笑みを浮かべて静かに立つ。
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