デザイナーが自分の本を出そうとすると死ぬ【11月文フリに向けて】

例の愛殺ワールドブックについてのお話です。

これまでの記事

愛殺ファンブック鋭意作成中(一番目)
CMYKとRGBの話
愛殺ワールドブック、リテイク多すぎ案件


今回は、B5サイズ右綴じ、無線綴じのカラー本作りで大変だったことを書いていこうと思います。おそらく、カラーの大きめサイズのイラスト集などを作る方の参考になると……思います。

愛殺ワールドブック
愛殺世界、すなわちVermythic Worldのイラスト、文章、世界観などを詰めたオールカラーB5本。初めて愛殺世界に触れる方はもちろん、愛殺がもともと好きなファンの方まで楽しめる本。
愛殺について、詳しくは以下サイトを。

完成形はこちら。



見開き絵のノドの部分どうするか問題

今回のワールドブックで一番大変だったのはこれ。
おそらくオフセット印刷をする方は気にしなくていいと思います。本がけっこうノドの奥まで開くし(開きやすい、柔らかい)、オフセットなだけあって本自体のクオリティが高いので……。

でもオンデマンド+30ページ以上くらいのイラスト集などを作る方は同じ問題があるはず…。

見開き絵のノド問題とは
本のノド(内側の綴じ目がくる部分)において、その本の開き具合によっては絵が隠れて「見開きの絵が繋がっていないように見えてしまう」という問題

このノド部分、本当印刷所によってどれくらい開くかってマチマチで、開きやすい本なら、変な作業はいれずに、そのままドドーンと絵を配置した方がいいわけですね。
でも多少ノドが呑み込まれてしまうなら、絵が繋がって見えるように、右側と左側をそれぞれ外側に引っ張って、絵をずらす必要があります。

絵・鏈歌様

これは私がデザインしたページ。
特に下部中央の金色の楕円形の物体が、中心部分に変に二重になってるのわかります……?? 同じ絵を重ねているんですよね。
このあたりが「消えても大丈夫」という感じで、少し絵をずらしているわけです。

今回私が入稿した印刷所ではまぁまぁノドが呑まれそうだったので、3mmずつずらしました。本当は4mmにしようか悩んだんだけど…。これでむしろずらしすぎたら余計に違和感が出そうだったので、とりあえず3mmにしました。

今までもデザインご依頼で見開きの絵は設置したことがありますが、まぁ、なかなかうまくいきませんね……。本当印刷所の本の開き具合によるので正解がないし、なんなら本の冒頭部分なのか中盤なのか終盤なのかでも開き具合って変わるじゃないですか…。
試し刷りができるならかなり理想に近くできますけども😭

ちなみにこれなにが面倒って、
外側に3mmずらし、さらに塗り足し用に全方向に3mmずつ拡大、ということをしなきゃいけないんですよね。だからなんかこう……データが複雑なことに……。
普通なら、半分に切ったページなんだから横に並べれば綺麗に絵が繋がって見えるはずですが、上記の二つの作業を行うため、確認が面倒で面倒で……。

しかもずらすのを4mmにしようか3mmにしようか悩んでいたせいで、今のデータがどっちなのかわからなくなり、その確認をするのに手間取るという……😭

しかもこの3mmずつずらす作業が入るので、実際のイラストよりも6mm横幅が広くなるわけですね。横幅150mmのイラストなら、156mmになると思ってデータを配置しなければならない……。
これを加味せずに文字情報を入れたこともあったので、そのたびに「間違えた……直さなきゃ」となります。

しかもアートボードを二つにわけて作業しているので、繋がったときのイメージがしづらく大変でした。見開きに繋げたアートボードと、分けたアートボードをいったりきたりしなきゃいけなくて……。

絵:wat様
作業画面

これとか……。The garnet~の文字をずらしたら左に行き過ぎて、左端のテキストボックスに近すぎたので、The garnetの文字を小さくしたりとか、船とのサイズ感がおかしくて直したりとか……

PDF画面
あいだがないだけでかなり確認しやすい


もうこのへん、イラレ使い慣れている人じゃないとイメージしづらいですね…すみません。しかもイラストを配置するだけならここまで面倒じゃないと思います白目


inDesignとイラレを行ったり来たり

今あげた船のページもそうなのですが…

テキストボックス部分だけはインデザインで作っています。jpeg画像で保存してから、イラレに画像を持ってきて、乗算で上に重ねています。

なぜそんな面倒なことをするの?
小説の文章を綺麗に配置するのは圧倒的にインデザイン向けで、イラストと文字を自由度高くデザインするのはイラレ向けだから

例えばすべてをインデザインでやろうとすると、画像の処理でインデザインのソフトがとても重くなります。(私のPCがポンコツよりなせいもあるけどw)
逆にイラレでやると小説の組版がイラレではできない…と思います、たぶん。やれるとしても1から設定しなきゃいけなくて面倒だし、原稿用紙が多分出てこない。(↓画像参照)

インデザインの作業画面

インデザインは上記のように、原稿用紙のマス目の上に綺麗に文字がのるので美しいんですね。一方イラレでデータを作るとき、特に横書きで説明文を入れるときはこの「マス目に文章を入れる」という作業はむしろ悪手です。

イラレで作った説明文

まぁそういう理由で、私は両方を行ったり来たりしてデータを作りました。

これの何が面倒かって、イラレ作業中にインデザインで作った本文の誤字脱字を発見したときは、インデザインに戻って修正し、文章画像を保存し直し、今度はイラレの方で作り直した画像を更新しなきゃいけないんですよ白目

普通に考えて、こんなイラストと文章両刀使いなワールドブック、作っている人私しかいないんじゃねーか……。そもそも60ページのカラー本がなかなかないし、そのうち20ページ近く小説なの、あまりにもカラー印刷の無駄遣い過ぎる😇


【黒】が強敵すぎた

黒っていくつか種類があるの知ってます…?

墨ベタ
K100%の黒。Kは黒インクのこと。

リッチブラック
CMYが40%ずつくらいで、Kが100%。

レジストレーション
CMYKすべて100%。これは印刷では使ってはいけません。

RGBの#000000の黒
CMYKに変えると、CMYKそれぞれ80~90%くらいで配置される色。

莉斗の雑説明

どうやら私が調べたところによると、ベタで紙いっぱいに黒を敷くときはリッチブラックがいいらしい。
文章は墨ベタがいいらしい……。だがしかし、オーバープリント用に、CかMかYの1%を入れるといいらしい。

でもこれな…。画面上だととくに墨ベタとか、めっちゃ茶色く見えんねん……。しかも今までのご依頼とかだと普通にRGBの#000000の黒で出力しちゃってて、とはいえ綺麗に印刷できていたので本当に謎。うーん。

今回の自分の本はリッチブラックと墨ベタで入稿しましたが、これが茶色くなってないかよく確認してみようと思います。

ちなみにこの黒、間違えて違う色の黒で作ると最悪なことになるかもしれません。

スマホでかなり画面を明るくすれば違いがわかる

上記画像は、上部と右端の黒色が、その他の黒と違う色になってます。PCなどのぱっと見では違いがわかりませんが、実際に印刷されたときに万が一変わったら嫌なので、すべて同じ黒になるように調整しました。
(絵師様にも協力いただきました…その節はありがとうございます😭)

ちなみにこの絵は別ページでも出したこれなんですが…

絵:Yuba様

どうして端とそれ以外で黒色が違くなってしまったかというと、塗り足し用に新たに黒を足したからですね。イラスト集だけでなく、小説含め同人誌作る場合は塗り足しって重要なのでチェックしておいたほうがいいです。

ほんとうならイラストを拡大してしまえばいいんですが、私はこのラムズの髪の毛が切れるのが嫌だったので拡大はせず、黒を足すという作業をしましたw

塗り足しについてはこっちで語ってます。



アンチエイリアスなし

イラレではアンチエイリアスを付けることができるのですが、これは印刷時にはどうやらない方がいいらしいです。これのせいでも一度保存したデータを再度保存しなおしましたw


英語の推敲

これはもうアートブックとかイラスト集とか関係ないじゃんって感じですが、備忘録のためにも残しておきます。

船の名前は斜体のほうがいい。the Garnetとか

本のタイトルの始まりは「the」を付けてもつけなくてもいい。例えばSTAR WARSはその前に「the」をつけてもよかったけど、仰々しく感じるので外されている模様。

→愛殺の場合は一巻の「The Shark Pirates」は、やっぱり「シャーク海賊団」って感じにしたかったのでtheを付けた。転移者という意味の二巻「The Apparator」(造語)も、やはりある一人のことを示しているということもあり、theを使いました。


神様の英語は「god」より「deity」がふさわしい。godは一神教の神、deityは多神教の神を示すよう

→ギリシャ神話が「god」表記だったので「god」にしていましたが、厳密にはdeityのほうが間違いがなさそうなので、こっちの表記に統一しました。


あとは「illustという英単語はない」とかも見たけど見なかったフリをしましたw


その他、今まで使用していた英文も改めて推敲しなおし、少しずつ違和感のあったところを直しました。本場の方が見たらまだ甘いかもしれないけど、素人の英語好きがやるにはここが限界だったのでとりあえずこれで…😭


RGB→CMYKの変換・調整だるい

これについては別記事でまとめました。

この記事を出したあとも、絵に戻って細かい調整を頑張りました……。元のRGBイラストと変換後のCMYKイラストを見比べながら…泣

勝手なイメージですけど、自分が描いたわけでもないのにここまで色味にこだわってる同人誌制作者、なかなかいない気がする😇
描いた本人や絵師さんなら気になるの普通な気がするけど……。
私は絵自体にすごくこだわりがあるし、その色合いとか絵のタッチとか筆遣いとか、絵を拡大して細かいところまで眺めるのが好きな変態なので、たぶんCMYK変換でもうるさいんだと思います😇

こんだけ頑張っても、やはりあくまで画面上のCMYK表示と、実際の印刷物の色味は絶対に違うので、万が一愛殺の絵を描いてくださった方がこの本を手に取ったときに「違うけど????」となっても許してください🥺
(まぁそんな冷たい絵師さんはいませんが…!!笑)


ノンブルの位置調整

ノンブルの位置を各ページ正確に外側6mmずつ離れるように調整。&★の位置が数字の中心にくるように、数字ごとに調整。

上記の画像の場合だと、1の真ん中に★がきています。4に合わせても真ん中にあるように見えないので、1に合わせました。
このフォントは数字がold Englishなので、それぞれの数字に合わせて星の位置をずらそうかなと…。ページをパラパラめくると★の位置がずれてしまいますが、おそらくオンデマンド印刷なら確実にページは少しずつずれて断裁されてしまうと思うので、「どうせずれるなら★の位置は綺麗にしよう」ということで、こっちを直しました。
(もうこんなん細かすぎて誰もよくわかってないし誰も気にしないよねうん知ってる😭😭😭😭)




だいたいわかりやすく書ける(書けてない)「苦労した点」はこんなものかな……。

あとは普通に若干文字がずれてるなとか、フォントサイズが小さすぎor大きすぎとか、pngの入稿用データにしたあとで気付いたせいで、何度も直していましたね…。
自分のデータ作りが雑なのかもしれないが、あまりにリテイクやりすぎて疲れました……。いったい何度「最終データにしようこれ!!」と思って画像書き出ししたことか……白目
もうやりたくない……。最後はついに粗さがしを諦めて、「もう大丈夫、ミスはないだろ!!!!」って勢いで入稿しました白目。あったとしたら泣くけどもういいや……。


今後本格的に売るときは、カバーを付けるかどうか悩みますね…。正直なくても映えてる本ではあるというか、ない方が自然な本ではあるかもしれません。それこそ映画のパンフレットってカバーついてないやん…??

でも同人誌のイラスト集=カバーなしがセオリーなので、むしろ私は付けたいなっていう……。
箔押しとかもなしではないのかなぁ…できたっけ……。

遊び紙も入れようと思って、今回疑似遊び紙用意しましたが、むしろ本の雰囲気を壊した可能性もある……。色の選択がむずかしいなぁ。


こんなところで愛殺のワールドブック制作小話を終わろうと思います。本が手元に届いたらまた記事を書こうかなぁ…。
あでゅ~💎🌒

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