【漫画原作】ハイウェイスター 第三話(完)
○荷台の中(夜)
宗田が「ロン!」「ツモ!」とアガりつづけている。
赤猫「どうした、サクコ? されるがままじゃねえか。もうオーラスだぜ」
サクコ「……うるさい! おまえこそ、ちゃんと火はついてんのかよ」
点棒状況は、サクコが20600点、ヤクザAが18000点、赤猫が17300点、宗田が44100点。
サクコ M〈……トップ目の宗田を逆転するには、親満12000の直撃か、親ッパネ6000オールのツモしかない……〉
宗田が配牌を見て、ニタニタと笑い、
宗田「そう易々と借金返されてたまるかいな。サクコ、お前はワシの手から離さへんでぇ」
一方、サクコの配牌が以下。
🀊🀍🀏🀐🀐🀑🀔🀖🀗🀝🀟🀀🀁🀅
サクコ M〈あの様子じゃ宗田の手はきっと早い……でも、私の手はアガリが遠い……勝てないのか……〉
赤猫「諦めるのは勝手だが、マットレスの上でもマグロ状態なのは勘弁してくれよ」
サクコの目つきが鋭くなる。
サクコ「ナメんなよ、クソ野郎……おまえは自分の心配でもしてな!」
と🀁を切りだす。そこからサクコは🀌、🀒、🀕、🀞、🀝、と怒涛のツモ。
そしてサクコの手牌は以下となる。
🀌🀍🀐🀑🀒🀔🀕🀖🀗🀝🀝🀞🀟 ツモ🀘
サクコ M〈ドラは🀝……このツモで一通の目も出てきた〉
とサクコは手牌を見つめて、
サクコ M〈🀞or 🀟切りなら、狙いは一通。🀘ツモ切りなら、狙いは567~678の三色……どっちが正解……?〉
と手牌の上をサクコの手がただよう。
サクコ M〈……迷うなんて私らしくない。ドラの🀝切りが、一番受けが広いんだ。三色も一通も消える可能性があるけど、贅沢はいってられない。宗田より早くアガって、連チャンしないと……〉
と🀝に手をかける。そのとき、
赤猫「敵から、目を離すんじゃねえよ」
サクコはハッとする。赤猫の捨て牌が以下となっていることに気づく。
🀔🀜🀞🀒🀗🀡
サクコは手牌から🀌を切り飛ばす。
サクコ M〈私はどこを見てたんだ……アカネコが一発逆転のチンイツを狙ってるじゃないか。アガリを目指すなら、危険を冒してでもマンズを払っていくしかない!〉
そのとき、宗田は以下の手牌で、🀝‐🀠待ちのテンパイだった。
🀈🀈🀈🀙🀙🀚🀚🀛🀛🀞🀟🀠🀠
宗田「……チッ。なにトロトロしとんねん」
ツモ番になった赤猫がツモ牌をとり、
赤猫「赤猫警報の発令だ。気をつけな」
と手牌のなかから🀂を切りだす。
サクコ M〈字牌が出たということは……まさか〉
宗田 M〈アカネコはテンパイしよったか……?〉
やがてサクコのツモ番。ツモ牌を手牌のなかに入れ、手が止まる。
赤猫「さっきの🀌切りも強引だったんだ。もうアツくならんほうがいいぜ」
サクコは牌を抜きだして振りかぶり、
サクコ「私は絶対、男のいいなりにならない」
と切り飛ばす。それは🀍。一座に緊張。
赤猫「意地っ張りなところ、気に入ったぜ。お前をどうしてもモノにしたくなった」
赤猫の手牌は倒れない。
宗田 M〈……通ったからええけど、危ないなあ。サクコは盲滅法になっとる〉
ヤクザAは🀂切り、赤猫は🀃をツモ切り。
ツモ牌をとった宗田の手牌が以下。
🀈🀈🀈🀙🀙🀚🀚🀛🀛🀞🀟🀠🀠 ツモ🀉
宗田 M〈……🀉はアカネコに絶対切れへん。せやけどウマいこと三面待ちができたわ〉
と牌を抜きだし、
宗田「ワシはサクコとちごうて、手堅くイカせてもらうでぇ~」
宗田が牌を切る。それは🀠。
サクコ「そんなに簡単にいくと思ってんのかよ」
宗田「……えっ?」
サクコが手牌を倒す。アガリ手は以下。
🀐🀑🀒🀓🀔🀕🀖🀗🀘🀝🀝🀞🀟
サクコ「ロン! ピンフ・一通・ドラドラで親満、12000点!」
宗田「んなアホな……!? ワシの、負け……」
そのとき、トラックが急停車する。卓上の牌が崩れ、皆が倒れる。
ヤクザA「じ、事故か?」
と荷台の後面を開ける。
すると、大勢の警官が入ってくる。
警官「警察だ! 全員頭の上に両手を置け!」
トラック内が大混乱になる。
赤猫「おい、ソウちゃん。サクコの借金とやらは、これで済んだんだな?」
と一千万の金を宗田に投げて、
赤猫「ま、その金は賭博準備金として、おれの仲間にすぐ没収されちまうだろうが」
宗田「……お、おまえ、まさか……!?」
赤猫はイヤホンを耳から取って、
赤猫「おれは組織対策(そたい)の赤い飼い猫でな。実地班が来たら、おれの仕事は終わりだ」
とサクコを引っ張って、トラックを抜け出そうとする。
サクコは先ほどの衝撃で倒れた赤猫の手牌を見つめていた。赤猫の手牌は以下。
🀇🀇🀇🀇🀈🀉🀊🀋🀌🀎🀏🀏🀏
サクコ M〈私の切った🀍で……アカネコは役満・九連宝灯をアガっていた……?〉
○高速道路(早朝)
トラックが何十台というパトカーに囲まれている。
赤猫とサクコは遠巻きにして、それを見ていた。
サクコ「バカにすんなよ……なんで、私を助けた!」
赤猫「ちょうど相棒を探してたんだ。おれとコンビを組め」
サクコ「……ふざけるな。デカの相棒になんか、死んでもなるか」
赤猫「男の気持ちがわからん女だな」
サクコ「私は男の力なんか借りない」
赤猫「にしても、おまえはおれに借りがあるだろ。NOとはいわせんぜ」
とサクコを担ぎあげる。
サクコ「きゃあっ!」
赤猫「ちったぁ可愛い声も出せるじゃねえか。もしや処女か?」
サクコ「なっ、なにいって――お、おろせ!」
サクコはパトカーの助手席にほうりこまれる。赤猫は運転席に乗りこみ、
赤猫「おれと組みたきゃ、もっと色っぽくなるんだな」
(了)
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