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さらば友よ、旅立ちの時。

森山直太朗が好きです。
Byさくら

とてもあっけなく、とても明るく朗らかに、マダムは旅立っていきました。

餞別のワイン2本と一緒に、ずっと机に置いていた空の段ボール箱を抱えて。その段ボール箱は、私がマッキーでヒョウ柄とマダムの名前を書いたやつ。まだまだ使える文房具や、半分残ってるファブリーズを置いて、ヒョウ柄の段ボール箱を持って帰ってくれた。

マダムの退職手続きをするべく、派遣元会社から営業の人もやってきた。私は派遣元会社でも取りまとめの立ち位置に就かせてもらっているために同伴したんだけど
ちょうどマダムの退職手続きの前に、我がチームの上長と営業も ご挨拶と新人紹介もかねて面談しており
すべての手続きが終わった後、上長から もう一人今のチームメンバーが辞める予定である事実を告げられた。


マダムと3人で仲良くしているご近所メンバーである。
いわずと知れた、ここでも昔々書き綴ったことがある、恋心が芽生えそうで芽生えなかった1つ年上の殿方(通称:天使)だ。

天使からは、数か月前に
『家庭の事情で仕事を続けようかどうか悩んでいる』と相談を受けたことがあった。いなくなるのは寂しいしできれば続けてほしいと思ってはいるけれど、家庭の事情を最優先して考えてくれと伝えた記憶がある。

その後、天使からは何の追加情報も報告もなかったので、そのまま流れたモンだと思っていた。がしかし、年明けの自社面談の時、営業から『実は来週までに結論を出すと言われている』と突然暴露された。

まだ考え続けていただけだった。
そしてその【来週】は過ぎ、営業から報告はなく、営業の担当者も突然の交代により新しいお兄ちゃんが面談に来るようになったので、こちらからはそのことに触れないでいた。


マダムの卒業により、4月から後継者になるニューフェイスが入ってくる予定。40代男性。コミュニケーションは取れるらしい(私が散々『仕事のスキルよりコミュニケーションのスキルを重要視してくれ』と訴えた結果)。

4月は年度始めなタイミングもあり、私がつきっきりで教育して差し上げることができないので、誰かに代行をお願いしなければならない。

私以外に残っているのは、仕事ができる通称:大臣と、天使と、コミュニケーションスキルがほぼゼロの20代女子のみ。

20代女子は私の次に経歴が長く、8年目の選手だ。彼女のことは今は多くは語らないけど 私が前の派遣会社の社長と揉めて退職に至ったきっかけになった子。

大臣は年度初めの激烈別任務を手伝ってくれているので、必然的に20代女子か天使に教育を任せることになってしまうんだけど
次に来てくれるニューフェイスが40代男性ということもあり、ひとまず話しやすくて人としてのコミュニケーションも取れる天使にお願いすることにした。

というのも、ニューフェイスも私や天使と同じ派遣元会社からやってくるので、チームの上長だけじゃなく 派遣元会社の営業にも そのことを相談していた。

新しい営業は、天使が教育係になることを『適役だと思います!』と目を輝かせながら言った。
彼は天使が辞めることを、私に一言も言わなかった。


教育係の相談をした日と
天使が辞めることを知った日は
同じマダムの最終出勤日。

そこに時間差はないし
天使が辞めることを知ったのは、最後の最後 私が帰り際に手続きが終了したことを伝えに行った時にチームの上長が言った『天使のことは聞いてる?』という一言。

聞いてなかったけど
『はい、聞いてます。』と咄嗟に答えた。


まぁ全く聞いてないわけじゃないから、嘘ではない。
でももう、上長の話では終了日まで決まっていた。


天使も自社の営業も
正式に天使が辞めることが決まっている事実を私が知っている ということを知らない。

だから確認することもできなければ
教育係の任命を撤回することもできない。

新人さんは、自分の教育係になった最初の先輩が
たった2か月でいなくなることを知らずに業務に就く。


天使の隣を空けるため、席替えをした。
移動したのは私だけだけど
とても複雑でもどかしい気持ちで、引っ越した。



マダムがいなくなった心細さと
天使がいなくなることや、それを分かった上で教育を任せるしかない現状、残されたメンバーのバランスの悪さ

そしてそれに加えて
信頼していたチーム長が4月に別の事業所に異動になってしまう。


ばあちゃんが死んだ時も
会社で血を吐いた時も
『俺だってツラい』の一言で心に寄り添う素振りもみせてくれなかった前のチーム長と違って、今のチーム長は日頃から助けを求めなくても常に我々配下社員に気を配ってくれる優しい人だ。

新しいチーム長は、常に威圧的な態度と口調で目下の社員を精神もろともぶっ潰す宿敵A主任だそうだ。

今やA主任の強すぎるツッコミに歯向かう人は私以外にいない。
私自身も何度となくヤラれて来たが、今やお偉いさんの一人を除いてぶっちぎりで経歴の長いお局様になった私だからこそできること。

私なんぞ経歴が長いだけで、立ち位置としては単なる派遣社員の下っ端だ。
たとえA主任以外全員の意見が一致していたとしても、主任に対して『それはおかしいと思う』という一言だって、本来はアウトかもしれない。

それでも、明らかに間違っていないことや意見を伝えることで、宿敵と一時的に戦うことにはなっても、周りからの絶大の信頼と確固たる味方を手に入れた。

A主任に潰されかかった何人もの社員のメンタルケアを重視してきたし、自分自身のケアも時には必要としながら だいぶ扱い方を学んできたつもり。


でもやっぱり、どうしても手に負えない時には助けを求めてチーム長に間に入ってもらうこともあった。
そんなチーム長がいなくなる。そしてそのチーム長の立ち位置に、A主任が昇格する。

最高のバディだったマダムもいない。
唯一コミュニケーションが取れていた天使もいなくなる。

新人さんがどんな人なのか、2か月でどこまで成長できるのか、20代女子はちゃんと協力してくれるのか、大臣も辞めてしまったりなんかしないだろうか、もはや不安しかない。



大丈夫だ、今の私には全力でどんな自分になっても支えてくれる恋人タミオ君がいる、恐れずに立ち向かえばよろし なんて
自分に言い聞かせるように書き殴っておきながら
その後次々と発表される衝撃の事実に心も脳みそも追いつかない。



*****



31日、年度末処理で一番心も体も忙しい最終日。

マダムの家で、お別れ会をする予定だ。
マダムも忙しくてその日しか空いてないらしい。

ご近所チームだけで行われるお別れ会。
私と天使とマダムの3人で、卒業とお誕生日と同棲のお祝い予定。


果たしてそこで天使は、自身の卒業を発表してくれるのか否か。


31日の約束があったからこそ、24日の最終日は必要以上にしんみりせずに送り出すこともできたけれど
なんだか今となっては全然楽しみじゃなくなってしまって、しかも正月以外で1年に1度あるかないかのタミオ氏2連休がその日に重なっていて、どうせ仕事も休めないから夜しか一緒には過ごせないいつも通りの2日間になりそうだけど もういろいろと くじけそうだ。


くじけないために書いている。

くじけないために。


余計な事あんまり考えないで、頑張ろう。


桜が散っちゃう前に
今年こそタミオ君と、お花見できたらいいな。

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