トップ画像引用：Freaky Flower

■ ジャンタルマンタル

2024年5月5日（祝・日）午後4時40分
－東京都某区　スナック忘れな草－

「結果論だが、ハズレのほうを引いちまったわけだ・・」

タコ社長が苦虫を嚙み潰したような顔で言った。NHKマイルカップが終わった1時間後だった。みんなが力なく頷く。

タコ社長が言っているのは、今日のNHKマイルCの優勝馬番16番だ。大阪杯から続いていた勝利ゲートのカウントアップ。ストレートな15番は来なかった。

みんなで出した結論である、24時間制から12時間制へのマイナーチェンジ。正逆3番が来るという読みは当たっていたのだが、選択したのは3番ディスペランツァ。正解は人気の逆3番ジャンタルマンタルのほうだった。

大阪杯　　　　11番
桜花賞　　　　12番
皐月賞　　　　13番
天皇賞（春）　14番　
NHKマイルC　16番（逆3番）

大阪杯～皐月賞　　　 ：11時→13時（十二時辰の午）
皐月賞～NHKマイルC：13時→3時（＝15時）（十二時辰の未）

「24時間制の15番ではなく、12時間制に直した3番で一度ひねり、それをさらに逆番にすることで二度ひねった。これで多くの競馬ファンは、勝利ゲートのカウントアップは完全に終了したと思っているでしょうね」

マスターが腕を組みながら言った。真一郎が訊いた。

「・・・ということは、まだ続きがあると？」

■ 午→未→？

「もちろんその可能性はあるでしょう」

そう言いながら入って来たのは、くろたんだった。ノーコスプレのダンディくろたんだ。

タコ社長の右隣りに座り、前回来店した際に入れておいた未開封の眞露のボトルと、油性ペンをマスターに頼んだ。くろたんは続ける。

「ジャンタルマンタルの逆3。つまり午後3時。これは、十二時辰（じゅうにじしん）で言うと、午後1時から午後3時である『未（ひつじ）』の終りの時刻です」

みんながうんうんと頷いた。

「だが同時に、次の午後3時から午後5時までの2時間・・・すなわち『申（さる）』の始まりでもあったのです！」

そう言いながらくろたんは、眞露のボトルに書いてあった『屁こき田プー太郎』の文字を二重線で消し、『ヤマニンサルバム』と書いた。

「しまった！！」

マスターは思わずそう叫んでいた。天井を見上げ悔しそうに顔を歪める。そして、くろたんのほうを向き喉の奥から声を絞り出した。

「NHKマイルカップの前に発走した新潟大賞典。勝ち馬ヤマニンサルバムには『サル（申）』があったのですね！」

くろたんは深く頷いた。

「みなさんなら気づいていると思ってましたよ・・・」

マスターはがっくりとうなだれた。午（うま）→未（ひつじ）と来そうなのだからその次は申（さる）。なぜそこまで読めなかったのか。

「申（さる）は午後3時、4時、5時の2時間・・・ヴィクトリアマイルでも継続なら4番・・・ちゃんと話題にのぼってたのにね・・」

ギョニ子が眉根を寄せて言った。京都新聞杯の4番ギャンブルルーム。馬名にひっそりと『ヴィクトリア』があることを言っている。

京都新聞杯
3－（04）ギャンブルルーム
（馬名意味：イギリス、V&A博物館にあるシャンデリアが目を惹く空間）
3－05　ウエストナウ　2着

V&A博物館：ヴィクトリア＆アルバート博物館
→ヴィクトリアマイル＝4番

タコ社長が言った。

「なるほど悔しいなあ・・・同枠のウエストナウが走ってしまったことで、ギャンブルルームのことをうっかりしてたかもなあ・・・」

真一郎が続ける。

「ギャンブルルームが、ヴィクトリアマイルの4番を予告しているということが頭にあったら、NHKマイルカップからは3番、4番、5番と申（さる）を形成する・・・そこから逆算して、新潟大賞典で『サル』を馬名に持つヤマニンサルバムが走る・・・そんな推理ができたかもしれないですね・・」

みんながうんうんと頷いた。

大阪杯　　　　11番
桜花賞　　　　12番
皐月賞　　　　13番
天皇賞（春）　14番　
NHKマイルC　16番（逆3番＝15時）
ヴィクトリアマイル　正逆4番（＝16時）？

11時→12時→13時→14時→15時→16時

大阪杯～皐月賞　　　 ：11時→13時（十二時辰の午）
皐月賞～NHKマイルC：13時→3時（＝15時）（十二時辰の未）
NHKマイルC～オークス：3時→5時（十二時辰の申）？
オークス～安田記念　　 ：5時→7時（十二時辰の酉）？

■ 優駿2歳馬サイン

「まあそんなに落ち込まないでください。東京ＧⅠシリーズはまだあと4戦あります」

くろたんは響のロックを舐めながら言った。

「くろたんさん、ヤマニンサルバムをあぶり出したサインって優駿を使ったんでしょう？」

麗子ママが尋ねた。くろたんが頷く。

「優駿5月号に2歳馬特集がありました。新潟大賞典は第46回。46番のナンバーを与えられていた馬が、コスモグッドラックでした」

優駿 2歳馬特集
215頭をナンバリングして掲載

第【46】回新潟大賞典

【No.046】 コスモグッドラック【512K】

8−16 ヤマニンサルバム 前走【512K】

みんながおおという声を挙げた。

「そのヤマニンサルバムをサポートしていたのが、同枠15番レーベンスティール。佐々木蔵之介がＧⅠのある東京競馬場ではなく、新潟競馬場に来場。示唆していたのはこの騎手しかいないでしょう」

新潟競馬場
ゲスト 佐々木蔵之介(佐々木秀明)

8−15 レーベンスティール 津村(明秀)

みんながなるほどと頷いた。

「さあ、私はこれで失礼しますよ。みなさんのお邪魔になってはいけない・・・あ、そうそう。その眞露は差し上げますよ」

くろたんはそう言って、タコ社長に軽く右手を挙げて店を出て行った。

その後、30分ほど雑談や軽い検討が続いたが、ヴィクトリアマイルに大きな進展はなかった。今日のところは、大阪杯から継続している十二時辰サインの継続に期待して、正逆4番に注目しようということでお開きとなった。

スナック忘れな草
ヴィクトリアマイル　注目ゲート
正逆4（十二時辰の申・継続）

■ 15頭立て

2024年5月6日（祝・月）午後6時半
－東京都某区　スナック忘れな草－

その日の最初の話題は、ヴィクトリアマイルの頭数についてだった。マスター曰く、過去18回のヴィクトリアマイルで、15頭立て以下になったことはないという。

＜ヴィクトリアマイル　頭数＞

16頭：1回
17頭：2回
18頭：15回

「登録が15頭ですから、これで最少頭数での施行は確定しました」

マスターの言葉に、みんながうんうんと頷いた。

「同じ古馬牝馬女王決定戦の、エリザベス女王杯のほうはどうなんでしょうか？」

真一郎の質問に、マスターは答えを用意していた。

「3歳馬限定戦の時代を除くと、ぴったり15頭立ては過去に5回ありました。簡単に結論付けるのは危険ですが、ＧⅠを勝っていない馬が勝利という共通点があります」

＜エリザベス女王杯　15頭立て＞

1997　エリモシック
2001　トゥザヴィクトリー
2003　アドマイヤグルーヴ
2016　クイーンズリング
2023　ブレイディヴェーグ

※5頭すべてがGⅠ初勝利

みんながなるほどと頷いた。

「もしもヴィクトリアマイルでもその法則が踏襲されるなら、ＧⅠ馬を1着で狙うのは危険・・・そういうことかしら？」

ギョニ子がみんなに質問を投げかけた。タコ社長が言った。

「あくまでエリザベス女王杯と同じことが起こるなら・・・だな？それにヴィクトリアマイルが15頭立てになったとは決まっていねえ」

麗子ママが続く。

「今回のヴィクトリアマイル、ＧⅠ馬は秋華賞馬スタニングローズと、昨年のマイルチャンピオンシップ勝ち馬、ナミュールの2頭よね？」

みんなが頷く。

「さっきの15頭立てのエリザベス女王杯。トゥザヴィクトリーとアドマイヤグルーヴは武豊だわ。ナミュールは今回その武豊が騎乗。そして・・・」

そのあとはマスターが引き継いだ。

「藤岡康太騎手、最後のＧⅠ勝利でもありますね・・・」

店内に沈黙が落ちた。5秒ほどして、タコ社長が軽く頷いてから言った。

「あくまでエリザベス女王杯の話だが、15頭立てはＧⅠ未勝利馬が勝っている。しかしそのうち2頭は武豊騎乗。ＧⅠウィナーナミュールには武豊が騎乗・・・・・矛と盾だな・・・」

みんながうんうんと頷いた。

■ データ分析コピー

10分ほど休憩を取ったあと、ギョニ子が珍しくデータ分析コピーの話を持ち出した。材料が乏しいので久し振りに見てみたら、やたら文字数が長いのが気になったという。

ヴィクトリアマイル　データ分析コピー
「数多くの名牝が歴代優勝馬に名を連ねる上半期の古馬牝馬頂上決戦」

「ね、長いでしょう？数えたら30文字あったわ！先週のNHKマイルカップなんてたったの9文字よ」

NHKマイルC　データ分析コピー
「3歳マイル王決定戦」

ヴィクトリアマイル　データ分析コピー
「数多くの名牝が歴代優勝馬に名を連ねる上半期の古馬牝馬頂上決戦」

みんながなるほどと頷いた。

「文字数か・・・」

タコ社長が腕を組みながら言った。

「マスター、データ分析コピーの文字数なんて、データ取ってあるかい？」

タコ社長が言い終わる前に、マスターはパソコンを操作していた。文字数に注目して整理したことはないが、2020年以降のコピーはすべて保存してあるので、何かわかるかもしれないという。

「ほほう・・・」

マスターの目がキラリと光った。何か見つけたらしい。みんなが注目する。

「ヴィクトリアマイルのデータ分析コピーですが、なんと昨年もぴったり同じ『30文字』でした」

みんながおおという声を挙げた。

「そして2020年以降の平地GⅠに限ると、データ分析コピーが前年と同じ文字数だったのは、過去にたった一度しかありません。2022年の菊花賞です」

2021　菊花賞　データ分析コピー　
「三冠最終戦が今年は阪神で開催」（14文字）

2022　菊花賞　データ分析コピー　
「クラシック最終決戦の幕が開く」（14文字）

～～～

2023　ヴィクトリアマイル　データ分析コピー　
「一時代を築いた名牝たちが歴代優勝馬に名を連ねる春の女王決定戦」
（30文字）

2024　ヴィクトリアマイル　データ分析コピー　
「数多くの名牝が歴代優勝馬に名を連ねる上半期の古馬牝馬頂上決戦」
（30文字）

※「過去の文字数との一致」ではなく「前年文字数」との一致

みんながうんうんと頷いた。真一郎が言った。

「菊花賞には『最終戦』と『最終決戦』という似た文言があります。ヴィクトリアマイルは、『名牝たちが歴代優勝馬に名を連ねる』と、『名牝が歴代優勝馬に名を連ねる』という似たような文言がありますね。何か共通点があるのかも・・」

それは面白そうですねとマスターが言った。

「さて、今年のヴィクトリアマイルを含め、2020年以降ではたった二度しかない文字数の前年との一致。前回はどんな類似点があったのか？」

2021　菊花賞
1着：2－03　タイトルホルダー（弥生賞馬）
2着：8－18　オーソクレース
3着：6－11　ディヴァインラヴ

2022　菊花賞
1着：7－14　アスクビクターモア（弥生賞馬）
2着：2－04　ボルドグフーシュ
3着：8－17　ジャスティンパレス

「パッと見て気づくのが、いずれも勝ち馬が弥生賞ディープ記念馬ということですね」

みんながうんうんと頷いた。

「出目のほうも、前年1着タイトルホルダーの2枠3番をひとつずらした2枠4番ボルドグフーシュが2着、同じく前年2着オーソクレースの8枠18番をひとつずらした8枠17番でジャスティンパレスが3着」

みんながなるほどと頷いた。ギョニ子が訊いた。

「出目のほうは枠順が確定してからあらためて見るとして、同じ重賞を勝っているという点に着目すると、ヴィクトリアマイルでは何が浮上するかしら？」

それを合図にみんながスマホやパソコンを操作しだしたが、答えはすぐに見つかった。

■ ソングライン

「ナミュールですね！」

マスターの言葉に、みんなが力強く頷いた。

「昨年覇者のソングラインと多くの点が一致します！」

2023　ヴィクトリアマイル
ソングライン
前年古馬混合マイルGⅠ優勝（安田記念）
前年古馬混合マイルGⅠ優勝後1着なし
前年ヴィクトリアマイル　4着以下（5着）
富士ステークス勝利歴あり（2021）
前走海外（1351ターフスプリント　10着）
ヴィクトリアマイル　テン乗り騎手（戸崎圭太）

2024　ヴィクトリアマイル
ナミュール
前年古馬混合マイルGⅠ優勝（マイルCS）
前年古馬混合マイルGⅠ優勝後1着なし
前年ヴィクトリアマイル　4着以下（7着）
富士ステークス勝利歴あり（2023）
前走海外（ドバイターフ　2着）
ヴィクトリアマイル　テン乗り騎手（武豊）

みんながうんうんと頷いた。これだけ一致点があれば十分だろうと、満場一致でヴィクトリアマイル注目馬、兼本命候補馬が決まった。

スナック忘れな草
ヴィクトリアマイル　注目馬（本命候補馬）
ナミュール