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競馬における“巡り合わせ”

日本時間11月5日未明、出資馬のシャフリヤールがブリーダーズカップターフに出走しました。結果は、直線でしっかり脚を使って3着。ドバイシーマクラシック以来の勝利とはなりませんでしたが、札幌記念11着大敗、喉の手術を経ての遠征だっただけに、「頑張ってくれてありがとう」という気持ちです。
それにしてもオーギュストロダンは強かったし、R.ムーア騎手の手綱捌きは素晴らしかった。レース後に気付きましたが、インを突き抜けてきたR.ムーア騎手の馬にやられるというのは、去年のジャパンカップと同じでしたね(笑)。

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アルアインは2016年の10月デビュー。
牧場自体の評判は素晴らしかったのですが、いざ、入厩すると併せ馬では遅れが目立ち、調教の動きは今ひとつ。
デビュー週には、日本ハムファイターズと広島カープの日本シリーズが行われており、解説のために北海道に滞在していました。ちょうどいい機会ということで、雑誌の取材も兼ねて(アルアインが育成されていた)ノーザンファーム早来に伺うことになったのです。
取材中、案内してくださった事務局の方に「調教の動きが一息みたいで…」と切り出してみたところ、「そうなんですか?心配要らないと思いますよ」と全く意に介していない様子。その即答ぶりに、杞憂だったのだと安心したのを覚えています。きっと自信があったのでしょうね。

その新馬戦で、アルアインは単勝2.3倍の支持に応えて勝利を収めます。
とはいえ、ゲートはもっさり遅れ気味で、道中は10番手からの競馬。鞍上のR.ムーア騎手が懸命に叱咤激励して、なんとか差し切るという内容でした。
のちに、管理する池江調教師とお話しした際、「ライアンが馬の間に敢えて入れることで、この馬のスイッチをオンにしてくれた」と聞きました。R.ムーア騎手でなければ新馬勝ちできていなかったかもしれないし、そうなれば、その後の馬生は大きく変わっていたことでしょう。
シャフリヤールの前に何度も立ちはだかるR.ムーア騎手が、アルアインの素質を開花させた立役者だった。競馬の巡り合わせというのは面白いですよね。

新馬→千両賞を連勝し、続くシンザン記念も勝てるものだと信じて観ていたのですが、直線で進路が狭くなって6着に敗退。賞金を上積みするため、次走は毎日杯に出走することになりました。
当初、レポートではアーリントンCへの出走が検討されていた記憶があります。デビューから3戦続けて1600m戦を使われていたことからも、陣営はマイラーとしての資質の高さを感じていたようにも思えます。もし、シンザン記念を勝ち、毎日杯に向かうことがなかったら、マイラー路線を突き進んでいたかもしれません。あくまで推測でしかありませんが、シンザン記念で不利を受けて負けてしまったからこそ、クラシック路線への道筋が繋がったという可能性もあるわけで、これもまた、競馬の巡り合わせですよね。

奇しくも、毎日杯の直前に、今度はペーパーオーナーゲームの取材でノーザンファームを訪れており、取材中に何度も「今週は楽しみですね」「はい。期待しています」なんてやり取りをしたのを覚えています。レース出走週にノーザンファームを取材するというのは新馬戦の時と同じパターン。これは吉兆ではないか、密かにそう思っていました。

毎日杯では、同じ池江厩舎のサトノアーサーが圧倒的な人気を集め、アルアインは離れた2番人気でしたが、2番手追走から抜け出すと、追ってきたサトノアーサーに半馬身差をつける完勝。2着サトノアーサー、3着キセキというのちのG1ウィナーを正攻法で降したのですから、今思えば、この時点で将来の活躍は約束されていたのかもしれません。

こうして無事に賞金を積み重ねたアルアインは、勇躍、皐月賞へ。
そこには、野球では体験したことのない種類の感動が待っていました。

(次回更新は11月21日となります)

やまもとまさ
プロ通算219勝、3度の最多勝、沢村賞、史上最年長でのノーヒットノーラン、50歳での登板など、記録にも記憶にも残る活躍を果たした球界のレジェンド。現在は野球解説者・スポーツコメンテーターとして活動している。ラジコン、クワガタ飼育等、多趣味としても知られる。競馬への造詣も深く、一口馬主としてアルアイン、シャフリヤールに出資する相馬眼の持ち主。X(ツイッター) @yamamoto34masa

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