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【ショートショート】猫、ご機嫌

 妻から誕生日プレゼントをもらった。
「なんだろうな」
 わくわくしながら赤いリボンをほどき、箱の中から黒い紐のようなものを取り出す。姿勢矯正ベルトであった。
 いつも座っている背もたれ付きの椅子に座り、右肩から左腰にかけてカチッとセットした。
 オレは姿勢が悪く、すぐに腰が前に浮き出て椅子に寄りかかる形になってしまうのだが、いまはベルトが全身を締め上げているので、だらけられない。
「いいでしょ」
「健康のためにはね。ちなみに、解除はどうするの?」
「自分ではできない」
「えーっ」
「心拍やいろいろな数値をモニタリングしているから、トイレや睡眠のときは自動的に解除になるって」
 妻はリモコンで、セッティングを行っている。
「属性は、愛猫家」
 猫が鳴くたび、びびっと電流が流れる。トイレや食事の世話はもちろん、ベランダに遊びにでるときも付き合わねばならない。
 猫が飽きて家に入るまで、オレは凍える冬も熱中症になりそうな夏もベランダの椅子に縛り付けだ。
 猫は膝の上で気持ちよさそうに昼寝している。
 このプレゼント、いちばんうれしいのは猫だろう。大きなあくびが出て、オレも意識が遠くなった。

(了)

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