【ショートショート】チリトリ鳥
公園のベンチでテイクアウトしてきたハンバーガーを食べていたカップルが、食べ終わるなり、ぽいっと包装紙とペットボトルを捨てた。
いつ見ても、いやな光景だ。
問題がないのはわかっている。
空からチリトリ鳥が急降下してきて、ゴミをざっと腹のゴミ箱に詰めると、すぐに飛び去っていった。
チリトリ鳥は、環境保護団体が作ったチリトリとドローンを組み合わせた機械である。いつもわれわれを監視していて、ゴミが出たとたんに清掃する。
最初は海岸とか山登りの清掃で利用されていたが、だんだん里に下りて来るようになり、いまでは樹木や電線などに止まっている。
鳩やカラスはすっかり駆逐されてしまった。
大型のチリトリ鳥もいる。
スマホで検索し、ナンバーを入れると、指定した場所までやってくる。
壊れたパソコンや家電、テレビなどを持っていってくれるから、とても便利だ。
ある日、駅前を歩いていると、ホームレスらしき男性が段ボールを敷いて寝ていた。
たいへん暑い日であり、熱中症の危険がある。
私は救急車を呼ぼうかとスマホを取り出した。
だが、そのとき、大型チリトリ鳥が降下してきたのである。誰だ、人間をゴミ扱いしたやつは!
チリトリ鳥は倒れている男を腹に収容した。
私は思わずいっしょに鳥の腹に飛びこんだ。
「どこに行くつもりだい」
「救急病院です」
私はホッとした。
あの冷淡な野次馬どもよりよほど人間的だな。
(了)
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