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【ショートショート】自由研究

 その日の朝、ぼくは日本橋にいた。
 これから始める冒険は、夏休みの自由研究だ。昔の東海道五十三次、いまでいう国道一号線を二週間で歩いてレポートを書くのである。
 昼前には品川に到着した。
 東京って案外狭いなと、昼食をとりながら思った。
 川崎を過ぎるあたりから、だんだん道が荒れてきた。アスファルトが割れ、雑草が伸び放題になっている。人も車もほとんど見かけない。
 そのうち、道がだんだん細くなり、やがてどん詰まりになった。
 ぼくは玄関のベルを鳴らしてみた。
 出てきたおじさんに聞く。
「ここは国道一号線ではないのですか」
「そうだよ」
「どうして家が建ってるんてすか」
「誰も使わなくなったからだな」
「通ってもいいですか」
「いいよいいよ、なんせ国道だからな」
 家の中を通り過ぎ、勝手口から外へ出た。また家があった。
 空を見あげると、空中自動車がびゅんびゅん行き交っている。
 このまま無理に進んでも意味がなさそうだ。
 冒険は初日にして挫折した。
 ぼくはタクシーを止め、空を飛んで自宅に帰った。

(了)

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