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銀行員が驚いた、地方銀行の"すごいサービス"BEST3!~銀行の「マーケティング」と「営業企画」の教科書~

みなさん、こんにちは!
今日は、地銀の企画経験20年の私が「これはすごい!」と驚いた商品・サービスを、ランキング形式でご紹介します。
本当はたくさんご紹介したいところですが、今回は厳選したベスト3を発表します。


第3位 スルガ銀行ANA支店

静岡県に本社のあるスルガ銀行、常に時代の先を行く斬新なサービスを展開されています。
中でも、今から20年前、2004年に開設されたANA支店のサービスには、度肝をぬかれました。
ご想像の通り、取引に応じてANAのマイルが貯まるという、マイラーの心を鷲づかみにするサービスを売りにしています。

近年、銀行の機能を事業者へ提供するBaaS(Banking as a Service)と呼ばれる取り組みが増えてきました。
高島屋、JAL、ヤマダ電器等と提携した住信SBIネット銀行、JR東日本と提携した楽天銀行(2024年5月サービス開始)がその一例です。

スルガ銀行は、BaaSなんて言葉が世の中にない、はるか昔、20年前からBaaSが目指す顧客価値を提供していたことになります。

では、具体的にどのくらいマイルが貯まるのか見ていきましょう。
(2024年4月10日現在の情報をもとにしています)

①住宅ローンを借り入れると、毎年、東京-福岡往復できる!

例えば、年末の住宅ローン残高が3,000~5,000万円の場合、毎年15,000マイルもらえます(最長10年間)。
東京-福岡間を往復するのに必要なマイル数(レギュラーシーズン)はちょうど15,000マイルですので、毎年1往復できることになります。

②日常使いでも、マイルが貯まる!

住宅ローンのような、特別な商品だけでなく、日常使いでもマイルが貯まります。
例えば、給与振込を受け取ると毎月50マイル、VISAデビットを年間100万円以上利用すると3,000マイル貯まります。

これ以上お話しすると、「オマエ、他行の商品おすすめしてどうするんだ!」と怒られそうなので、これくらいで・・・(笑)

第2位 きらぼし銀行(きらぼしテック)「前給」

「働いた分のお金を、好きなタイミングで、前もって受け取れる」、それが「前給」です。
給与の前払い制度、今では珍しくはないようですが、リリースされた2005年当時は、そんなサービス、世の中にありませんでした。
前身の東京都民銀行で、ビジネスモデル特許も取得しています。

サービス開発のきっかけは、こんな頭取の一言だったそう。

「学生が8月の夏休みに一生懸命アルバイトをしても、そのお金をもらえるのは9月になってから。せっかく働いても給料が入るのは夏休みの後になり、どこにも行けないのはかわいそうだ」

https://money-bu-jpx.com/news/article049005/

まさに、お客さまのアンメットニーズ(満たされていない欲求)から生まれた素敵なサービスですね。

では、「前給」の”3方よし”を確認してみましょう。

①従業員・アルバイト

→急な出費が必要なとき、ちょっと足りないときに給与を前払いしてもらえる。しかも、利息は0円。

②導入企業

→人材不足で、求人がうまくいかない中、「前給」を導入することで求人応募数が増加!定着率もアップ!

③きらぼし銀行(きらぼしテック)

→導入企業から手数料を得られる。従業員・アルバイトの顧客情報を得られ、将来のローン取引等につなげられる。

これほどきれいな”3方よし"も珍しいのではないでしょうか。

その後、ユーザーを大きく拡大させ、今では、日本マクドナルドやすかいらーく、くら寿司といった大企業でも「前給」が活用されています。

現在は、きらぼし銀行のFinTech子会社である、きらぼしテックでサービスを展開されています。報道によると、きらぼし銀行だけでなく、他行を通じて企業への案内をはじめられる模様。注目すべき、DXの取組みです!

第1位 大垣共立銀行「スロットATM」

20数年の企画経験の中で、もっとも衝撃を受けたのが、大垣共立銀行の「スロットATM」です。
ATMの手数料、みなさんも取られるの嫌ですよね・・・
そんな、ネガティブな感覚をゲームで忘れさせてしまうのが、この「スロットATM」です。

大垣共立銀行のATMを時間外に使うと、ご覧のスロットゲームが現れます。
そして、「777」が揃うと、ATM時間外手数料(110円)は無料に!
別の絵柄が揃うと、なんと現金1,000円がプレゼントされます。


この企画だけでも素晴らしいのですが、本当にすごいのはここからです。

手数料110円を銀行が負担しているのかというと、実はそうではありません。
ルーレットが回っている間に、提携先企業のCMが流れていて、当選したときは、この企業がお客さまに替わって手数料を負担してくれるのです。
つまり、どれだけ当選が出ても、銀行は痛くないわけです。

これって本当にすごいと思いませんか!思いついた方に頭が下がります。

ちなみに、大垣共立銀行は、これ以外にも驚くべきサービスがたくさん・・・

①銀行員アイドルグループ「OKB45」

AKB48全盛の頃、本物の行員でアイドル集団つくっちゃいました。
本当に45人集めたのがすごすぎる・・・
最近はSKE48(こちらは本物アイドル)で、OKB5ってユニット作ってますね。

②手のひら認証

通帳やカード無しで、ATMからお金を引き出せるサービスです。
独自キャラクターがシュールです。

③ドライブスルー窓口・ATM(全国初!)

その名の通り、車に乗ったまま手続きができてしまいます。

発想がサービス業の鑑です。
大垣共立銀行の顧客満足度が高いのもうなずけます。
聞くところによると、若手行員が直接経営トップへ企画案を説明し、その場で決裁をもらってくるらしいです。
こうした社風も斬新なアイデアを生むことにつながっているのですね。

おわりに

いかがでしたか?実は今回ご紹介したサービスは、いずれも2004年から2005年に誕生したサービス。お客さまの深層心理をとらまえたサービスで、当時の先輩方のチャレンジ精神には頭が下がります。

金融商品は、なかなか差別化が難しいですが、視点を少し変えるだけで大ヒット商品が生まれることも。
これこそ、銀行の「営業企画」の醍醐味ではないでしょうか。


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