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ピンク色のSDGs

朝礼で課長は言った。

「この中でSDGsがわかるものはいるか?」

静まりかえった職場。
少し間をおいて1人の女性が手を上げた。

「小池さん、説明お願い出来るかな?」

「はい、SDGsとは持続可能な開発目標のことで、✕✕が○○で、△△を✕✕とした○○であります」

「うん、さすが小池くんだ」

誰かが拍手をし、それが全体に広がった。
正直、小池の言っていることが何一つわからなかったが、とりあえず拍手をした。

「先日の幹部会議において、SDGs推進チームを作ることが決まった。メンバーは各部署からの選抜となるので、今から呼ばれる者は前へ」

同僚達はざわざわと色めき立った。

「小池たまき」

「はい!」

小池は意気揚々と前にでた。
傍目に見てもやる気に溢れているのがわかる。

「高宮フミ」

えっ?!
私はしぶしぶ皆の前に出た。

「我々の代表として頑張ってくれ」

盛大な拍手に包まれて、私は選抜チームに入ることになった。

***

夕飯を食べながら、妻にSDGs推進メンバーに選ばれたことを話した。

「そっちの会社はSDGsに取り組んでるの?」

「あんなの余裕のある会社がPRでやるものでしょ。うちは直接利益に結びつかないものはやらないわよ」

「まあ、そうだよね」

「でも、私はSDGsに思うところはあるの」

「何?」

「ストローを紙にしてるけど、それよりもカップを紙にしてほしいわ」

「結構みんな言ってるよね」

「ストローでさえ紙にすると、コーヒーの味が変わるから嫌なんだけどね」

「それなら、マイボトルにしたらいいんじゃない?」

「そこまで意識高くないから!あなたはマイボトル持ち歩いているから、それでもいいかもね」

「俺のボトルは、あなたが昔買ったやつだけどね」

「じゃあ、あなたのはワイフボトルね。妻が使わなくなったボトルの再利用。SDGsっぽくていいわ」

「これもSDGsなのかな?」

「あんなの雰囲気よ。SDGsって言っとけば、そうなるの。だいたいね、持続可能な取り組みの推進とかいいながら、2030年を期限としてるのに矛盾があるのよ。10年後にはまた新しい活動が出て、SDGsなんて忘れ去られるに決まってるわ」

「なんか、意外に詳しいですね」

「地球環境をよくしたい気持ちはあるのよ。ただ、流行りに踊らされたくないだけ」

SDGsに賛否あれど、それが考えるきっかけとなれば、この活動には意味があるのだろう。
私のできることとして、「ワイフボトル」はこれからも続けよう思う。

ギブミーマネー!ギブミーチョコレート!!