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1日15000歩、それでも「まだ歩きたい」と思わせてくれるビブラムファイブフィンガーズに、歩行の意味を教わった

「え、これ靴なんですか? 靴下? 足袋?」

見た人は、みんなこんな感じで声をかけてくれる。ほぼまちがいなく、コミュニケーションを誘発してくれる靴、それがビブラムファイブフィンガーズだ。

ビブラムファイブフィンガーズとの出会い

出会いは、数年前にさかのぼる。shio先生のブログ「Shiology」を愛読している。その中でShio先生が何度か言及していた靴、それがビブラムファイブフィンガーズである。

最初の印象は「おお、5本指の靴かー。履くのに勇気がいるな」だった。そこから数年間、ビブラムファイブフィンガーズは気にはなっていたものの、実際に手に取ることはなかった。

数年後、ジム通いで訪れた転機

転機が訪れたのは、2019年の下半期だ。ひょんなことからジムに通うことにした。最初の2ヶ月ほどは、いやいやながら通っていたのが正直なところ。マシンの筋トレで軽い重量をあげるのに四苦八苦している自分と向き合うのが辛かった。

だが、いやいや期を乗り越えることができた。3ヶ月ほどで、体つきが目に見えて変わり、体重と体脂肪率が落ちていった。筋肉量も増えた。そうなるとしめたもので、ジムに通うのが楽しくなる。11月は15回通うことができた、何の苦労もなく、ジムを習慣化できた。

そのころから、ジムに持っていく持ち物を最適化しだした。普通のTシャツ、普通の短パン、普通のトレーニングシューズをジムに行く日は必ず持ち運んでいた。これらはかさばる、使っていてもテンションがそんなに上がらない。物事を習慣化・継続する際には、物事をなすための道具を磨くことが意外と効く。

一番の難関は、トレーニングシューズだった。とにかく分厚い。アークテリクスグランヴィルのバックパックに入れると、半分くらいのバック内の空間を占領してしまう。もっと身軽にしたいし、カバンも小さくしたい。

ビブラムファイブフィンガーズが思い浮かんだ。確か薄いタイプのプロダクトがある。持ち運びに便利そうだ。ジム内で使うだけなら、5本指の形状に対する人目もそれほど気にならない。多分、みんな自分の筋トレ姿を見ているはずだ。ジムでなら、履けそうである。

こうして、ビブラムファイブフィンガーズを買おうと決心した。ビブラムファイブフィンガーズはたまに各所でポップアップストアを開いている。ほぼ全種類を実際に試着できるチャンスだ。ちょうど中目黒でポップアップストアが開かれるということで、赴いた。

買おうと決めていて、試しばきをして、即決で購入したのが、こちらのタイプ。紐がなく、スリッポンのようにスルッと履けてしまう。厚さもそんなになく、軽くて、持ち運びに苦労しない。

出会ってから数年経ち、ようやくビブラムファイブフィンガーズを使うことになった。こういった時に、つくづく物事が何かしら結実するには、時間とタイミングがすべてだと感じる。

足の指が開けるようになるまで

ジムのトレーニングに使いだしてから、歩くことが楽しくなってしまった。まず、最初の1週間は、ビブラムファイブフィンガーズをスルッと履くことができなかった。足の指がまったくひらけなかったり、中指に人差し指を入れてしまうといったことが起こりうるのである。そりゃそうだ、これまでの靴はすべて足の指を閉じるように、織り込むようになっている。そもそも、足の指を開くことがない。足の指は、普通は開いているはずなのに、固く閉じてしまっていたのだ。

1週間ほどで、ビブラムファイブフィンガーズを履くのに苦労しなくなった。足の指を意識的に開くことができるようになってきた。それもそのはず、ビブラムファイブフィンガーズを履くと、足の指から土踏まずの前を着地して歩くようになる。フォアフットと呼ばれる歩き方で、本来の人間の歩き方はこれらしい。つまり、常に足の指や前側に意識が向くようになる。すると、足の指も自然と開くようになる。薄いソールのため、歩く所作がダイレクトに体に伝わってくる。これが気持ちいいのだ。

ジムや室内以外でも、ビブラムファイブフィンガーズで歩きたくなった。足全体を使って、正しく歩きたくなってくるのだ。僕は毎日、数千歩から1万歩ぐらい歩いている。日によっては、1万5000歩から20000歩を歩くこともある。それだけ、くらしの時間の多くを歩くことに使っている。だったら、歩くことに意識的でありたいし、実りのある時間にしたい。

2度目のポップアップストアに足を運んだ。店員さんには「すっと履けてすごいですね。みんな、最初は履けないんですよ」とお声がけいただいた。「そうです、数ヶ月前までは履くのに苦戦していたんです。でも、ビブラムファイブフィンガーズを履いてきたおかげで、足の指が開くようになったんです」と自信を持って言えた。体に確実な変化が出たと実感できた瞬間だ。

2足目として購入したのは、こちらのモデルだ。

今までは、歩くことができていなかった

そこから、歩くことが再定義されてしまった。

このモデルを履いて歩いた1日目、これまではかかとで歩いていたことをまざまざと知った。フォアフットを意識するも、うまく歩けない。ソールを引きずりながら歩くような感覚だった。存分に歩いた1日目は、右足のふくらはぎを筋肉痛が襲ってきた。今まで、足全体の筋肉を全く使わずに歩いていたことを痛感したのだった。

2日目、3日目と歩き続けていくと、ふくらはぎを中心として、足の筋肉をしっかりと使って歩いている感覚が得られた。とかく、足をしっかりと使えているという感覚は、歩くことの自信をもたらしてくれた。やっぱり、筋肉痛は続いた。今まで歩いていたのは、真に歩いていたのだろうかと問いなおさざるをえない。

1週間もすると、ビブラムファイブフィンガーズで歩くことの気持ちよさが出てくる。一歩ずつ、地面をしっかりとフォアフットで踏みしめて、歩くことができている。坂道は特にそれを実感できる。一歩一歩が重たく、足全体を使って坂道を登っていると感じるのだ。この感覚によって、正しく歩くことが少しはできてきたのかなと思い返す。

ビブラムファイブフィンガーズを履いて歩き続けたことで驚いたのは、「もっと歩きたい」と思えることだ。15000歩を歩いた日があった。これまでの靴を履いた状態では、10000歩も歩くと「もうしんどい、歩きたくない」と体が悲鳴をあげていた。でも、この日は違った。足が疲れていないし、多分もっと歩いてもそんなに疲れない。もっと、正しい歩き方で歩みを進めたい。そう思えた。

今は冬場で最高気温が1桁から10度ぐらいの時がある。ビブラムファイブフィンガーズの歩数が増えれば増えるだけ、体が寒さを感じないのだ。これにも驚いた。いつもは水沢ダウンのジッパーを全部閉めて、手袋をつけた状態でもまだ寒いと感じていた。だけど、ビブラムファイブフィンガーズで歩き始めると、体がぽかぽかするのだ。手袋を脱ぎ、首元のジッパーを開いて、真冬の最中を歩けてしまう。

足の裏は第2の心臓と呼ばれるらしい。足を正しく使えば、血流が良くなり、体全体に血がめぐる。血流がよくなれば、体が温まる効果があるのだろう。ビブラムファイブフィンガーズのこのモデルは、そんなに生地が分厚いわけでもないし、むしろ薄い。歩き始めや立ち止まった時は寒さを感じてしまうのだが、歩き続ければ寒さはなくなる。こんな感覚、少なくとも今まで30年以上経験してきた歩行で感じたことがなかった。

ビブラムファイブフィンガーズが教えてくれたもの

ビブラムファイブフィンガーズと出会えて本当に良かった。ビブラムファイブフィンガーズ「以前」の歩くと「以後」の歩くは、その意味合いが変わってしまった。これまでは足全体の筋肉を使って歩くことができていなかった。だましだまし歩いていたのかもしれない。

ビブラムファイブフィンガーズを履いている今なら「大地を踏みしめて歩いている」と胸を張って言える。そして、歩くことがこんなに心地いいものとは思ってさえいなかった。ビブラムファイブフィンガーズは、人間にとって歩くことが心身に心地よいものという本当の意味を教えてくれた。


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