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天皇の行方 第二章及び第三章


著:GeArmy888





二 天皇と日本人


日本では十二月になるとクリスマスの飾りがつけられるが、
十二月二十五日をすぎると、それらの飾りは撤去され、ほとんどの家庭や
商業施設ではお正月の飾りをつける。これはほとんど日本でしか
見られない光景である。海外ではクリスマスの飾りには
「Merry Christmas and a Happy New year!」
と書かれており、新年もそのまま飾り続けられる。日本ではそのようなことはない。正月というのは単に年初ということではなく、日本最古の宗教行事
であり、仏教伝来以前から存在していたと言われている。
日本人は宗教心が薄いとよく言われているが、正月には門松やしめ縄が
飾られ、年が明けると、多くの人が初詣や初日の出を拝む。
これらはすべて神道の宗教行為である。
日本人は無自覚にそれらを行っているので、ある意味、とても宗教心に
篤いと言えるのかもしれない。このような宗教史がある限り、日本人は
クリスマス飾りをつけたまま新年を迎える気にはなれないはずである。
そして、このようなほぼすべての日本人に宿っている宗教を司る最高権威
が天皇であると考える。古来より、天皇の最も重要なつとめは祭祀を行う
ことであるとされていて、年間三十回も皇室祭祀が行われる。
古代日本においては祭政末分の営みの中である祭祀の卓越者が
大衆に仰がれ、権力の発するところとなり、自然に最高権威者としての
地位が決定した。
そして幾千年の歴史を経て、今現在もその万世一系の子孫が国の祭祀を
司る最高権威者の地位に在り、国の安定を祈り続けている。
天皇とはそのような世界にも類を見ない奇跡のような存在である。

日本人はほとんど無自覚に天皇と繋がっている。
その自覚がないからこそ、日本の長い歴史の中で天皇が存続してきたのかもしれない。

三 天皇の姓

昭和天皇のお名前は「裕仁」、上皇陛下のお名前は「明仁」、
今上天皇のお名前は「徳仁」である。皇太子殿下は現状空位である。
しかし、位の高い人を名前で呼ぶことは失礼に当たるため、
一般的に天皇や皇太子の本名を口にすることは少ない。
そして、天皇、皇族には「姓」がない。
元来、「姓」というのは氏族という共同の祖先を持つ集団を称するもので
天皇が臣民にその印として賜与するものであった。したがって、それを
与える側の天皇には姓がないわけである。また、古代シナには「易姓革命」
という思想があった。これは統治者の「姓」が「易」わることを意味し、
王朝の交代のことである。古代しなでは天子が天命を受けて
天下を治める事になっていた。天命を受けて、前王朝を倒したものが
新しい王朝を開く。
しかし、日本では万世一系で世襲によって皇室が続いてきた。
世界では「世界最長の王室」と言われている。日本では権力者が天皇を
倒して易姓革命を起こすことがなかった。そのため、天皇に姓がない
とされている。
また、元号はシナに起源を持ち、漢字文化圏であったベトナム、朝鮮でも
使われた。朝鮮はシナの属国であった時期が長く、その間はシナの元号を
そのまま使用した。一方ベトナムではシナ王朝から独立した九百七十年
から独自の元号を使用した。東寺、独自の元号を持つということが独立の
証だったのであり、日本は元号においても最も早くから中華文明から独立していたのである。元号は本家中国でも辛亥革命による清朝の滅亡により
消滅、朝鮮ベトナムでも千九百四十五年に廃止されたので現在は日本に
しか残っていない貴重な文化である。
しかし、敗戦によって元号を制定する法的根拠が消滅した。日本政府は
それに変わる元号法を制定しようとしたが、GHQが天皇の権威を高める
元号の存続を許さなかった。
そして、昭和天皇在位五十年をきっかけに元号法制化の検討が政府で
始まり、元号を制定する法的根拠が回復されたのである。



次回、第四章「皇居と元首」第五章「三種の神器」
御清覧いただきありがとうございました。

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