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【イベレポ】国内カスタマーサクセスの文化と未来

◆イベント概要
https://hicustomer.jp/events/cs_roundtable_2/

◆登壇者紹介

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ALL STAR SAAS FUND Managing Partner 前田 ヒロ氏
シードからグロースまでSaaSベンチャーに特化して投資と支援をする「ALL STAR SAAS FUND」マネージングパートナー。2010年、世界進出を目的としたスタートアップの育成プログラム「Open Network Lab」をデジタルガレージ、カカクコムと共同設立。その後、BEENOSのインキュベーション本部長として、国内外のスタートアップ支援・投資事業を統括。2015年には日本をはじめ、アメリカやインド、東南アジアを拠点とするスタートアップへの投資活動を行うグローバルファンド「BEENEXT」を設立。2016年には『Forbes Asia』が選ぶ「30 Under 30」のベンチャーキャピタル部門に選出される。
投資実績は、SmartHR、ANDPAD、KAMINASHI 、hacomono、Instacart、Slack、Everlane、Thredup等。

Sansan株式会社 カスタマーサクセス ストラテジスト 山田 ひさのり氏
大学卒業後、ゲームプログラマーとしてキャリアをスタート。その後Web開発のPG/SEを経て、スタートアップのビジネス開発に興味を持つ。
KLab株式会社でモバイルゲームのプロデューサーや新規事業開発の部長を歴任後、 2013年「世界を変える新たなビジネスを」という考えに共感し、Sansan株式会社に入社。エンジニアリング知識とビジネス開発の経験を活かし、SansanのプロダクトアライアンスマネージャーとしてSansan Open APIの開発に従事。
その後、カスタマーサクセス部のDXと既存顧客へのマーケティング強化を推進。現在は同部門の戦略の立案・実行サポートを行う傍ら、IT企業へのカスタマーサクセスアドバイザリーに従事。2020年7月、Sansanのカスタマーサクセスのノウハウを集約した『カスタマーサクセス実行戦略』を著作。

HiCustomer株式会社 代表取締役 鈴木 大貴(モデレーター)
高専卒業後、医療器械メーカーや人材系企業、ITベンチャーを経てB2Bスタートアップへの投資を行うアーキタイプに入社。スタートアップ支援と事業会社向け新規事業開発コンサルティング業務に従事した後、2017年12月にHiCustomer会社を創業。国内初のカスタマーサクセス管理ツールをSaaS事業者向けに提供している。

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◆02. 国内SaaSのメトリクス

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・少し単価が上がっている。高額な1000万円を超える、高単価のものも増えている。

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・内訳として低単価のものが多い。

<Q&A>
鈴木様(以下 鈴木):いろいろなスタートアップを見ている中で、伸びやすい、こんな価格だといいという、レンジに関する考えはあるか。

前田様(以下 前田):会社のフェーズによる。ACVで立ち上がりが早いのは250~300万。
【理由】
・特にそこまで高い決裁者にリーチしなくていい。
・比較的、金額感として倫理が通りやすい。
・インサイドセールスに見合う単価のレンジ。

ただし、上記の金額だと、10億を超える成長曲線を作ることが難しいため、ACV1千万を目指す必要がある。
フェーズによるが、前半は低め、後半は高めにしていくことが理想。

鈴木:カスタマーサクセスの視点、価格感について価値を積み上げてほしいと会社からオーダーを受けたことがあるか

山田様(以下 山田):定着しやすいのは、現場の人をサクセスさせること。
低価格だと現場サクセスが早い傾向があるが、長期に渡った経営が難しい。
現場サクセスまで1~2年程度で、そこは満足してもらえることが多い。
その後は経営の数字の方に繋げていく必要が出てくる。

鈴木:CSMを現場で使ってもらったとき、戦略的なコミュニケーションの仕方、情報の伝え方はありますか

山田:プロダクトが変化していく前提がある。
営業の現場もそれを望んでいるので、それなりのシナリオを、特にエンプラだとアカウンタブルにやっていく必要がでてくる。

プロダクト戦略に引っ張られてそうなっていく傾向がある。

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・2%以下の解約率で優秀だと評価できる。

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・タイプ別の差分は弱い。

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・提供年数によって、当然長くなるほど解約率は下がる。
プロジェクトの成熟度が高まり、CSのオペレーションも洗練されていくため。

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・年間売上規模も上がるほど解約率は下がる

<Q&A>
鈴木:ご支援されている会社さんも同様か?

前田:ほとんどの支援先は月次解約率が2%未満。次が3~5%で季節性のあるサービス。それ以外は業務組み込み型など、日々使うものは1%未満も多い。
単価は大きな要因で、ACV1~5千万だとチャーンはなく、100万以下だとチャーンは高くなっていく。

山田:1%を切ると優秀。2%くらいでも努力していると評価できる。

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・立ち上げから時間が経つにつれて、チームの規模が大きくなる傾向にある。
・CSのチームの規模感がどんどん高まっている→従事する人口が増えている。

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・投資は加速、来年以降従事する人も増える。

<Q&A>
鈴木:採用、特に経験者を取ることが難しいという声を聞くがどうか。

前田:継続、アップセルが重要な指標で、SaaS企業が成熟しているほど既存のお客様の重要性が高まる。
セールスフォースも新規で作る7割はアップセル、クロスセルで、これが成長のキー。
投資対象が減っている日本では、新規に頼らず既存に対する価値を高めていく重要性がある。

山田:とても聞くし、しんどい、取り合いになると思う。
そもそもCSが盛り上がってきたのも2、3年前で、ある程度完成したCSの人はいないとも思う。
CSのメトリクスを知らなくても、自社のプロダクトやお客さんと向き合えばトライアンドエラーでやっていける。
そういうトライアンドエラーの高速回転ができる人材が、重要なのではないか。

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<Q&A>
鈴木:CSあたりのARR事業計画で悩むポイント。

山田:よく聞かれるが、難しく、しっかりとした回答があるわけではない。
自分たちのプロダクトを定着させるために、最低これくらいは支援しないといけないという金額を知ることが重要で、半年、1年やってくれば大体見えてくる。
成し遂げるためにどれだけお客の毎月流入があって、毎月、前者にそれをやる場合何人いるのか。
そこから割り当てていくことが必要で、その結果がグラフのようになっているのではないか。
考え方としては、自分たちのサービスのオンボーディングをきっちり終えるには何人いるのか、営業がとってきたCSにパスされる流入がどれくらいあるのか。
他社も参考にはなるが、プロダクトや市場は違うので、それらをウォッチすると見えてくるはず。

場合によって、やりすぎていると感じることもある。
見直す時期は3、4年目であるので、そこは擦り合わせていく必要がある。

鈴木:投資判断で、一人当たりのARRは重視しているか。

前田:重視はしていない。
一方ARR100億を超えている会社は、売上原価を2割くらいに抑えていて、カスタマーサクセスの人員がコストほとんど。
1CMSあたり500万で20%に抑えることが難しい。
アメリカでは1億円という声もあり、最終的に目指す必要があるのではないか。
成長フェーズだったら意識しなくていいが、目標として持っている必要がある。

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・CSがデータを見れるようにする、それを元に業務改善することを課題、やりたいと考える。

鈴木:どの工程が考えた方が良いテーマか。

前田:傾向はあると思っていて、プロダクトデータだけでおさまらなくなってきたとき。
プロダクトの利用率は当初から見るが、大体は利用や売上は健在だったら初期は説明できる、ユーザーも熱心なため。
ただプロダクト以外のデータを見なくてはいけないという感覚にはなる。
そういう状況になったら、データの可視化をした方がいい。
プロダクトデータはほとんど見えているので、それ以上のことを求めているという回答だと思う。

鈴木:こういった課題感を投げられることはあるか。

前田:組織としてどのようなKPIを追いかけるべきかはよくある質問。
いろんなスコアがあるが、どこにまず集中するべきかも聞かれる。
初期だと、お客様が使えているかどうかをはかる指標が必要。

◆顧客中心文化の形成について

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<Q&A>鈴木:投資検討する際に、顧客中心文化を見極めるためのポイント

前田:経営者以外の従業員にインタビューする。
必ず今の目標、なぜその目標になったのかなどを聞くが、その際にお客さんの話がよく出て来るようであればカスタマーサクセスを重要視していると感じる。
特にプロダクトチーム。
お客さんにもサービスについて聞き、お客さんへの向き合い方も判断する。

サース企業はプロダクトとサービスが差別化要素。
会社のバリューも聞くが、この2点について掲げるべき。

山田:Sansanの場合は名刺管理から入って、売れたがそこから使わないという状況になってしまって見直した。
失敗したときは顧客中心文化を取り戻すチャンス。
そこに対してフォーカスしたことで、自然とそういった文化が根付いた。

営業、CSがリスペクトした関係になっていると評価できる。
そのためにはフィットしているお客さんへのPDCAが重要。
他社さんの支援をすることもあるが、自社にフィットするお客さんを判断せずに売ることも多い。
みんなが理想の顧客を知っている必要がある。
長く向き合うお客さんを知る上で、営業とCSがリスペクトする姿勢が如実に現れる。
習慣や文化がないと、向いている方向が揃わず、リスペクト感も醸造されない。

◆カスタマーサクセスのキャリア

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<Q&A>
鈴木:CSMのワークする評価基準、伸びるポイントはあるか。

山田:Sansanでは評価基準があり、オンボーディング、エクスパンションなどなるべく多くの役割を持つ、MRRの高いお客さんを持っている、負ってもらう責務などが基準となっている。

前田:SaaS企業は、分業しやすく細分化しやすい事業体。
その分組織が大きくなり、お客様との距離が遠くなってしまいがち。
いかにCSのメンバーが多部署やチームと連携、伝達していくかが重要。

部署間連携を促進するような取り組みは特に重要。
例えば、目標設定に連絡責任を取るような仕組みを作る。
あとは、幹部層は積極的にコミュニケーションをたくさんとること。また、取れる人がそういったポジションにつく。
風通しの良い環境を作っていく必要がある。

◆経営者から見たカスタマーサクセスの重要性について

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・アメリカのデータとほぼ近しい結果となっている。

<Q&A>
鈴木:カスタマーサクセスが強い人は、どういった特徴があるか。

前田:お客様の解像度。
理解しようとしているか、興味を持っているか、解像度高く語れることが重要なポイント。
そうでないと文化を浸透させることは難しい。

山田:顧客解像度の高さとカスタマーサービスへの意識の高さは一致している。
話せばわかるし、それが全てだと感じる。
自分たちの顧客が誰がわかろうとしている、言える必要がある。

以上。

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