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【有料】イラストレーターがBtoB(企業)案件を獲得する方法【マーケティング|営業】

【1. はじめに】

日々、フリーランスやイラストレーターのビジネスについて発信をしていると、たくさんの質問をいただきます。その中でも上位を占めるものが「BtoBのイラスト案件の取り方を教えて下さい」というものです。このnoteでは、この質問に対する回答を、僕が知る限り出し惜しみなく書き尽くしたいと思います(ずっと書く書くと言いながら何年も書けず、今回やっとこうしてまとめられました。お待たせしてしまった方、すみませんでした)。

【2. BtoB案件とは?】

BtoB案件とは「企業からの案件」のことです。拙著『世界一やさしい フリーランスの教科書 1年生』の図解を引用して説明したいと思います。

BtoC(ビー・トゥ・シー)とはBusiness to Consumerの略で、対個人消費者のビジネスのことを指し、BtoB(ビー・トゥ・ビー)とはBusiness to Businessの略で、対企業のビジネスのことを指します。イラストの仕事を例に挙げると、個人の依頼主から「自宅に飾るための愛犬のイラスト」を依頼されればBtoCですし、企業から「会社案内パンフレットや名刺等に使うためのイラスト」を依頼されればBtoB…ということになります。


(『フリーランスの教科書 1年生』コラムより)

別の例を挙げるなら、同じ似顔絵アイコンのイラストの依頼でも、個人がTwitterのプロフィール画像用に使うためならBtoCだし、会社の名刺に入れるためならBtoBとなります。

本記事では、BtoB案件を取るべき理由と一般的なBtoB案件の獲得方法を無料ゾーンに、そして一般的にはあまり知られてない方法や、僕が独自に編み出した裏技的な方法、更には僕が実際にやっているBtoB案件の紹介などを有料ゾーンに書きたいと思います。

ちなみに、クラウドソーシングはこの記事におけるBtoBの定義には入れないこととします。クラウドソーシングでも企業からの案件を獲得できますが、あまりに単価が安く、継続的な案件獲得方法としてはオススメできないからです。ここでは、あくまで企業から「あなたのイラストがほしい」と指名を受けて依頼されることをBtoBの定義としたいと思います。

【3. なぜBtoB案件を取るべきか】

理由①. 単価が高いから

一番の理由は何と言っても単価です。同じような内容やサイズのイラストを描いても、個人からの依頼と企業からの依頼では金額が全く違います(その差はケースバイケースですが、二桁違うことも少なくありません)。個人相手やクラウドソーシングでは、一点1000円もしないようなカットや似顔絵も、企業からの依頼の場合は使用用途や媒体によっては数万円になることもありますし、しかもまとまった点数を受注する事も多いので、一気に数十点の発注を受けて1案件で数十万円の売上発生…ということも決して珍しくありません(一方で、個人のクライアントが1点1万円のイラストを一度に20点発注してくれることは、まずありません)。これだけでもBtoBを重要視すべき理由としては十分だと思います。

また、BtoBの中でも使われる用途や媒体によって金額は異なります。例えばよく言われるのは「広告は出版よりも桁がひとつ大きい」ということです。つまり、同じA4サイズのイラストを描いても、出版(雑誌の表紙や扉など)だと20,000円なのに、それが広告に使われるものだと200,000円もの値段がつくことも珍しくないのです(これは広告のイラストは契約上、競合他社の仕事を一定期間受けてはいけない等の制約がためでもありますが、いずれにしても高単価であることには違いないので、大きな広告の案件はイラストレーターが目指すべき目標のひとつであると言えると思います)。なので、そういった業界の事情も知った上で、より単価の高い案件を取れるように戦略を立てていく必要があります。

理由②一度気に入ってもらえると、リピート率が高いから

BtoC(個人相手)のビジネスの難しい点のひとつにトレンドの変化スピードが速いというのがあります。消費者は常に新しいものや流行りのものを求めるので、イラストレーター側も常にトレンドを意識して作品に取り入れ続けないといけないし、それを最大限やったとしても、ある程度の期間が経つと飽きられて買われなくなることが多く、短命に終わるケースが目立ちます。

しかし、BtoBは少し事情が違います。業界にもよりますが、例えば僕が多くの仕事を受けるビジネス系やIT系のメディアや業界におけるイラストのトレンドは、それほど流行り廃りのサイクルが速くないので、最低限時代に合うセンスやスキルを維持しつづければ、突然市場に飽きられて干されるということはほぼありません。

また、BtoBの場合は発注の基準が個人の好みではなく市場に需要があるか(あるいは「ありそうか」)なので、一旦良いイラストレーター(メディアの雰囲気にマッチする/エンドクライアントや消費者に好まれる)イラストレーターを見つけると、その企業(担当者)は、その後繰り返し発注してくれるリピーターになってくれる確率が非常に高いです。というのも、企業の担当者も一会社員なので、わざわざ余計な冒険をしてリスクを冒したくないし、そのために新しいイラストレーターを探す手間や時間をかけるのがそもそも面倒(というか、事実上そんな時間が無いことが多い)だからです。

なので、一旦「こういう傾向の案件やクライアントなら、高田ゲンキさんにお願いすれば間違いない」という安心感を持ってもらえれば、その後何年も仕事を継続的にもらえることが多いのです(有料ゾーンでは、そういった案件の例もお見せします)。

理由③. 金銭面での精神的ストレスが少ないから

SNSでBtoC案件を取っているイラストレーターから、たびたび「見積もりを出したら“高すぎる”とイヤミを言われてイヤな気持ちになった」という話を聞きますが、これはBtoBではほとんど経験しません(一部の経営者が窓口も兼ねているような小規模な法人の場合は例外もありますが)。これはなぜかと言うと、BtoC案件のギャラの出処が個人の懐であるのに対して、BtoBの場合は会社の(自分が担当する業務の)予算からギャラが出るので、担当者の懐は全く痛まないからです。なので(これは前項で説明したこととも共通しますが)、ほとんどの場合企業の担当者は「いかに安くイラストを描いてもらうか」ではなく、「与えられた予算内で、いかに的確なイラストを時間内に描いてもらうか(そして、ひいては社内やクライアントから評価を得るか)」を重要視するので、この条件さえ無難にクリアできるなら、イラスト料が高くても不満は無いのです(もちろん、予算内での話ですが)。

【4. 前提として必要なもの】

この記事の内容を有効に活用するために前提として

① 十分なスキルレベル
② ポートフォリオ
③ 名刺/ウェブサイト

が必要です。以下、補足説明します。

4-①. 十分なスキルレベル

本記事では、BtoB案件を獲得するための方法について説明しますが、前提として充分なクオリティ(一般に世間に出回っている出版物や広告等に使われているイラストと比較しても遜色ないレベル)の成果物を作成できることが当然必要です。

よく「自分のイラストはプロとして通用しますか?」という質問をいただきますが、少なくとも画力という意味においてはイラスト(絵)ほど比較しやすいものは無いので、本当は誰かに聞く必要が無いことだと思っています。もちろんそれでも判断が難しい部分はあるかもしれませんが、例えば文章やプログラミングなどと比較すると、自分のイラスト制作のスキルレベルがプロとして通用するかどうかを見極めるのはかなり容易ですし、そのくらいの客観的視点がなければ、プロとしてスキルを維持向上し続けていくことも難しいと言えます。フリーランスクリエイターの適性というのは、そういう点も含まれていると考えましょう。

4-②. ポートフォリオ

営業をするには、当然ポートフォリオ(イラストファイル)を用意する必要があります。

ポートフォリオのサンプルをご覧になりたい方は、こちらの僕のnote記事を参考にしてください(有料・500円)。

4-③. 名刺/ウェブサイト

名刺やウェブサイトに関しては、特に調べるまでもないと思いますが、自信がない人は、僕の本『世界一やさしい フリーランスの教科書 1年生』に名刺作成にあたっての留意点などをまとめていますので、是非そちらをチェックしていただけると嬉しいです。

【5. 一般的なBtoB案件獲得方法】

一般的に知られるBtoB案件獲得方法をいくつか挙げてみます。

注)ちなみに、下記に挙げた3点以外にも、商談イベント(クリエポやデザフェス等)への出展やオンラインサロン等のコミュニティへの参加などが手段として挙げられることもありますが、これらは出展料や参加費に対して見返りが少ない(つまり、費用対効果が低い)ので、オススメはしません。僕個人の意見としては、本気で企業からの仕事をほしいなら、そのお金と時間をもっと効率の良い方向性で活かすべきだと考えています(積極的に勧めないだけで、個人が自分の判断と責任で出展や参加する分には止めたり反対したりはしません)。

5-①. コンペに出す

直接的な手段ではありませんが、イラストのコンペに出すのもひとつの方法です。コンペで入賞するとたくさんの人の目に触れる機会も得られるので、企業の担当者の目に留まって仕事の依頼が来やすくなります。

5-②. ファイルに掲載される

年鑑形式でイラストレーターの作品を掲載するイラストファイルに掲載されると、そのファイルを見た企業からの案件が来やすくなります。ただ、そういったファイル全てが有効なわけではなく、多くの場合は掲載料が高額な割に効果が薄いことがほとんどです。僕が知る限りで信頼できるファイルはイラストレーターズ通信のファイル『年鑑イラストレーターズ通信』と、玄光社が発行する『イラストレーションファイル』で、このうち自薦で掲載してもらえるのはイラストレーターズ通信の『年鑑イラストレーターズ通信』のみです(年鑑掲載にはイラストレーターズ通信への参加が必須で、会費と別にファイル掲載料がかかります)。

『イラストレーションファイル』の方は既に日本で活躍するイラストレーターを紹介する年鑑なので、「これからBtoB案件を獲得したい」というフェーズのイラストレーターはまず掲載してもらえません。まずは実績を増やしましょう

5-③. エージェントに登録する

イラストエージェントという会社も存在します(僕もいくつか登録しています)。わかりやすく言えば、マッチングや仲介をしてくれる会社で、営業をして案件を持ってきてくれる代りに、イラスト料からは一定のマージンが引かれます。

大手の企業などは、イラストレーターを探す際に時間を節約するために、一から自分で検索したりはせずに、最初からエージェントに依頼して、そこに登録しているイラストレーターから候補を出させてコンペをすることも多く、そういった意味ではエージェントに登録しているだけで、BtoBの(しかも大口の)仕事を得やすくなるというメリットはあります(ただし業界で高く評価されている業者に限ります)。

一方で、エージェント経由の仕事は前述もした通りマージンが引かれてしまうので、直接取引で発生した案件よりイラストレーターの取り分が安くなってしまうというデメリットもあります。この点に関しては、エージェントに登録しながらもエージェントを介さない直接取引も並行する方法を取りつつ、良い条件の案件だけ受けるようにすることである程度回避できます(もちろん、エージェント専属になった方が大事にしてもらえますが、そこはトレードオフです)。

また、そもそも論として、まずエージェントに登録する際にはある程度の実績(特にBtoB案件の経験)が必要なので、前項のイラストレーションファイルと同様、「これからBtoB案件を獲得したい」というフェーズのイラストレーター向けの方法ではありません。

5-④. 自分で営業する

そして、最も一般的で確実なのは「自分で営業すること」。方法も直接的でごくごく単純です。そう、仕事をくれそうな会社(出版社やデザイン会社や広告代理店など)を探して、電話をかけ(あるいはメールを送り)、訪問あるいは郵送でポートフォリオを見てもらって仕事をもらう…という方法です(もらえない場合ももちろんありますが)。

具体的な手順やテレアポの方法等は、↑でも紹介した拙著『フリーランスの教科書 1年生』でも詳しく書いていますので、これから営業を始める方は是非ご活用ください。

こうして見ると、営業をするのが最も無駄がないということが分かると思います。しかし、いざ営業をしよう!という段階で誰もがぶち当たる壁があるのです。それが

「営業先ってどうやって探せばいいの?」

という疑問です。

雑誌や書籍の編集部への営業程度ならその方法は調べれば分かると思いますが(僕の著書でも書いています)、イラストのBtoB案件はそれだけではありませんし、むしろ(前述の通り)単価が高いのは広告等のイラストであり、そういった分野の営業先の調べ方や仕事の取り方を説明した記事や書籍は、僕が知る限り確かに世の中に存在しません。

というわけで、以前からその点に関しての質問を多くいただいていたので、(前置きが長くなりましたが)この先の有料ゾーンで、その方法について説明していきたいと思います。

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