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「Apple PayがNFCタグに対応するってよ」をやさしく解説してみる

ここ数日「Apple PayがNFCタグに対応」関連ニュースやら投稿やらを読みまくってるんだけど、どの記事でも強調されてるのは「アプリを入れなくてもかざすだけでApple Payで支払えるようになる」というところ。でも今だってWalletアプリは標準インストールされてるわけで「アプリを入れて使ってる」という感覚を持ってる人はいないはず。じゃあこれどういうことよ?

ということで、一応この領域では先頭集団の一角にいると思い込んでる僕が、この話題の盛り上がりポイントはどこにあるのかNFCの技術的な側面も踏まえつつやさしく解説してみようと思います。このためにnoteアカウント作ったし😁

今のApple Pay

まずおさらい。現行のApple PayでもiPhoneをかざすだけで支払えてるわけだけど、かざしてる対象はコンビニレジとか改札ゲートとか決済端末とかですよね。iPhoneという端末をかざしてるけど仕組み的にはSuicaカードをかざしてるのと同じで「NFCリーダー機器にかざしてIDを識別してもらう」ことで支払ってるのです。


今度のApple Pay

これに対して来月のWWDCで発表されようとしている新しい仕組みでは「支払う対象のIDをiPhoneが識別」します。これがいかに破壊的なのかは後述するとして、iPhoneがNFCリーダー機器として動作するんですね。スマホにNFCが搭載されたことの最大の功績は「読み取ってもらうこと(=NFC(FeliCa)カードの代替)」ではなく「読み取れること(=リーダー機器になれる)」だったと僕は考えてますが、Appleはつい最近までこの機能を使えないようにロックしてました。OS11になってやっと使えるようになったものの「リーダー機能を持つアプリを入れれば」という条件付き。そして昨年発売されたXS/XRでやっとアプリ不要になった、というのがこれまでの経緯です。


そこに今回の発表です。「アプリ入れなくても支払えるようになるよ!」

繰り返すけど現行のApple Pay=「識別してもらう支払い」では今でもアプリインストールは不要です。そして「(iPhoneが相手を)識別する支払い」は、少なくともAppleはこれまでリリースしていません。というか僕が知る限りNFCリーダー機能を使ってApple Payで支払えるサービスとしては僕らのスマプレPAYくらいしか無いはず(米国にもう一社あったかも?)。そしてスマプレPAYはiPhoneの標準機能で動作してるのでXS/XR以外では今のところリーダーアプリが必要になります。

ということは、希望的観測もあるけど今回の発表は以下2つのいずれか(あるいは両方)と、Apple Pay専用タグ仕様の公開だと予想できます。

・XS/XR以降を対象に、スマプレPAY的なリーダーモードで動作するサービス
・iPhone7・8・Xを対象に、OSがリーダー機能を標準搭載(個人的にはこっちだととても嬉しい)
【参考】iPhone XSでのスマプレPAYの動き(NFCタグもしくはQRコードが指定する相手にApple Payで任意の金額を支払うアプリインストール不要の仕組み。クレジットカードやAlipayにも対応。特許取得済)

で、何が変わるのか

では最後に最も重要な話を。リーダーモードで支払う=相手を識別して支払えるようになると何が変わるの?

まず、販売者側にリーダー機器が不要になります。コンビニのレジとかマックのレジに並んでるアレが不要になるんですね(*1)。送金先を指定する識別情報を持った1枚数十円のNFCタグを貼っておくだけで決済できるようになる。電源すら不要です。2年前にスマプレPAYを発表した時「屋台でもApple Payで焼きそばが買えるようになります」って言ったけど、今回の発表はAppleがそれを標準化するということ。いずれは買い物だけじゃなく個人間送金にも対応するんじゃないでしょうか。(*1 コンビニのリーダー端末が無くなるわけではないです。POSレジと連動したあの端末はあの場所には必要です。そういった機器を設置できない場所でApple Payが使えるようになるということです)

(2017年発表時の弊社スライドより)

Pay to Things

そして「モノに直接支払う」ことができるようになる。「Pay to Things」という新しい概念です。これが無限の可能性を秘めてる。モノ(端末ではない)にスマホをかざせば支払い完了。これを、引用した記事や投稿に書かれてるようなパーキングメーターとかシェアスクーターみたいな機器と連動させたらもうイノベーションが止まらないわけですよ。アプリがいらないってことはパブリックな場所に向いてるわけです。一時的に利用するサービスとかね。一見さん大歓迎=コアユーザーに限らないから突発的に起こる少額決済なんかにも最適です。どこでも、あらゆる場所が、モノが、現金やレジや端末を置かずに、決済ポイントになる。しかもApple Payだから生体認証で本人であることを確認した決済です。Apple Pay Everywhere、これはすごいぞ。

QRコードじゃダメなんですか?

とここまで読んで「QR決済でいいじゃん。QRコード貼っとけばいいじゃん」と思った人、はい挙手。

まずアプリ不要というところでUXもサービス設計も全く違うわけですが、QRコードには絶対に超えられない壁があるんです。それは不正の防止。静的な識別情報でしかないQRコードと違ってICチップを内蔵したNFCタグでは複製や改ざんを防止する情報(トークン)を動的に生成することができる。貼るだけのQRコードではこれは実現できないから不正が横行する。これをセキュアに(動的に)するには画面を備えたデバイスが必要になります。一方のNFCタグでは「モノへのアクセス」を証明できるから不正ができない。しかもデバイスどころかバッテリーすら不要。これをイノベーションと言わずして何と言えばいいでしょう。今回のApple Payタグもおそらく絶対に改ざん防止対策してくるはずです。

モノとつながる未来へ

モノに支払う・モノとサービスがつながる・デバイスレス・アプリレス・低コスト。今回のWWDCでのAppleの発表は全てのオンラインサービスに新しい可能性をもたらす転換点になるはずです。自社サービスがモノとつながることの可能性、ぜひ考えてみてください。

最後に・・我田引水。
ここまで書いてきたことはほぼ全て、実は既に弊社のスマートプレートに実装済みです。いずれも僕が何年も前から言ってきた・やってきたことなんですね。だからこれだけ言い切れる。
てことは競合になるの?Apple Payタグは驚異なの?・・とは全く考えてなくて、むしろ追い風になるとわくわくテカテカしてます。活性化するのはとても良いことだしそもそも僕らはペイメント事業者ではない。モノにかざす文化を醸成することがミッションであって今回のAppleの発表は僕らの船が向かう方向が間違っていないことの証左にすぎないわけです。スキッパーとして今はむしろ安堵を感じています。WWDCまではねw
#Appleの発表は当日まで何が出てくるか分からない #でも信じてる

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