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イベントレポート:「今こそ知りたい!STEAM教育」

2024/3/8に開催したグロービス・ワーキングペアレンツ・クラブのイベントレポートを、幹事の土屋紀子(2023期東京校)がお届けします。

今回は、グロービス23期生として学びつつ、様々な事業を行われている草場勇介さんをオンラインでお迎えし、「今こそ知りたい!STEAM教育」というテーマでご講演いただきました。

草場さんとは?
for next(株)株式会社CEOでありながら、NPO法人キャリアbase理事長も務められる、ベンチャーとNPOの二刀流経営を体現される教育起業家。zunŌw STEAM教育研究所の講師でもあり、Voicyパーソナリティーでもあり・・。とてもエネルギッシュに活躍されており、当日は多くの草場さんファンが集まりました。

■zunŌw(ズノー)STEAM教育研究所
https://fn-zunow.com/
■NPO法人キャリアbase
https://career-base.jp/
■for next株式会社
https://sg-kitakashiwa.com/company/
■Voicy
https://voicy.jp/channel/3980

①講演「今こそ知りたい!STEAM教育」


STEAM教育の「STEAM」とは、Science(化学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Arts(芸術)・Mathematics(数学)のそれぞれの頭文字を組み合わせた言葉です。STEAM教育では、異なる分野を横断的に学びながら、自ら課題を発見する力・解決する力を育んでいきます。文部科学省による今後の教育方針に関する報告書(2018年)の中では「AI時代に対応するために必要な力」を養うためにSTEAM教育が必要であると紹介されており、今最も注目される教育手法です。

その必要とされる背景には、現在の日本の「解決すべき教育課題」があります。

 OECDが進めているPISAと呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査において、日本は数学的リテラシー(1位/5位)、読解力(2位/3位)、科学的リテラシー(1位/2位)3分野全てにおいて実は世界トップレベルです。一方で、自律学習に対する自信のなさ、プログラムを作成したりトラブル対応の自信の低さなどが目立ちます。これらは自己肯定感の喪失、自己決定力の低下にも繋がる深刻な問題です。また「学力テスト競争」は日本以外は着目しなくなってきているという現実もあるそうです。
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/

 草場さんは、STEAM教育が1つの解決策になると考え、活動されています。知的好奇心を育み、仲間と「協働」してPBL型学習(自分達で課題設定する)を小さく繰り返す。自分が作る”何か”が誰かに影響を与えて評価を受ける、これがとても大事であるとお話しいただきました。
ちなみに、この「教科縦割型から分野横断的な学習へ」を体現している身近な例としてTV番組の「ブラタモリ」が挙げられていました。確かにタモリさん、理系か文系かわからない造詣の深さですよね。

 そしてSTEAM教育が実現したいことは、誰かが、ではない「”誰もが”未来を想像する時代」。従来の教育は受動的、固定的な学びですが、STEAM教育は能動的、想像的な学びです。そんな答えがないコンストラクション型の学びには、インプットの時間とアウトプットの時間をバランスよく取り入れていくことが大事とのことでした。

 ではその「答えがない」学びをどう進めて行ったらいいのでしょうか?
実は子供の成長の段階別にテーマがあり、幼少期は根っこを強くするために五感を強化する「筋トレ」が大事。そして小学生前半は「何で?」と問うことを習慣化し、わからないことがあれば「一緒に調べようよ」と声をかけ、子供よりも親が感動することが大事だそうです。親はリアクション芸人になる能力も求められますね。笑
そして小学生の後半は、集中力の拡張期。なるべく叱らずに、スポーツなど好きなことに没頭させてあげると飛躍的に能力が伸びるそうです。

 そして子供が将来AIを使いこなす側に立つために、必要なのは「問いを立てる力」。そのために、STEAM教育を専門的に難しく考えず、子供に種を蒔き続けること、教えないで一緒に楽しむスタンスを取ることが大事であるというお話を聞いて、STEAMを何か新しい教育法をとして身構えていた自分は少しほっとしました。

 また最後に、学校での実際のSTEAM教育の取り組みについて実態を紹介いただきました。私立は取り組んでる学校もありますが、公立はまだこれからといったところ。そこで、草場さんご自身がNPO法人キャリアbaseにて、地域の学校で「総合的な学習(探求)の時間」としてPBL型の総合探求授業を行っているそうです。この「コミュニティ・スクールを通じて学校運営に参加していく」という活動は個人的にとても新鮮でした。お住まいの地域によっては学校の選択肢があまりない場合もありますが、そんな際もコーディネーターの方を通じてこちらから提案することで、新たなプロジェクトを起こすこともできる。「学校を選ぶんじゃなくて、学校をオモシロクしちゃえばいい!」という提案は、皆さん目から鱗の発想だったのではないでしょうか。新たな学びの連続に、講演を通じてチャットも大いに盛り上がりました。

②親はどうする?

後半は事前アンケートの中から関心の高い内容をディスカッションポイントとして、草場さんから回答いただきました。

■STEAM教育の提供体制って? 
✔ 学校
先程のお話のように、実態としてはこれから。STEAM教育がしっかりしている学校は、修学旅行にこだわっている、という草場さんの見解がありました。参加者の方からは、ディズニーランドに行くならPLやBSを見て仮説を立てながら参加するといいとの声も。笑

✔ 学校以外(オンライン講座は?)
オンラインはなかなか難しいので、可能なら理科実験教室などがおすすめだそうです。

■STEAM教育対象時期
✔ 幼児期から始められることは?現在の幼児教育にも要素はある?
改めて、STEAM=プログラミングではないというお話がありました。
それよりも、汚してもいい部屋を1つ作る。何やってもいい部屋が子供のためにあると、それだけでSTEAM教育になるとのこと。

✔ 本格的に取り組むことが最適な年齢って?
こだわらず、親がどんどん体験させて、ハマるものを探してあげればそれで良い。無理してSTEAMを探さなくて良いというお話をいただきました。理科実験教室やボーイスカウトの活動もSTEAMな選択肢の1つで、個人ごとの適性を見ながら得意分野にフォーカスするのが良いそうです。

■家庭でもSTEAM教育の取り組みはできる?
例えば子供はYoutubeにハマりやすいが、中でも結構面白い理科実験をしているチャンネルが多いので、そういった動画に誘導してあげると良いとのこと。

■STEAM教育の現場見学
当日、草場さんの運営されているSTEAM教室「zunŌw」の一室から中継いただき、貴重な事例をご紹介いただきました。
「メントスコーラ実験」や、ピタゴラスイッチ的な流しそうめん装置の設計など、身近な材料を活用した取り組みを見て、STEAM教育が意外と身近な存在であることを実感することができました。
(草場さん、ありがとうございました!)

③明日からやってみたいことシェア

参加者の方に、明日からの具体的なアクションをチャットに書き込んでもらいました。

「普段見ているYouTUBE動画を1つ理科実験に変える」、「地元のボーイスカウトについて調べてみる」、など、STEAM教育がより身近になったことが伺えるコメントが多くあり、新たな視点を得た一体感を感じました。

また最後に参加者の方より、興味がまだ湧いていない子供をどう導くか?という質問がありました。草場さんが実際に行っていることとして、競争心がモチベートになる子が多いので、競わせることもある。集団に入りやすい子かどうかなどを見極め、どういったコミュニケーションが最適か個性に合わせて頑張る、というお話がありました。
私自身3歳の子供がおり、いつも「きょうそうしよう!たたかおう!」と言われたり、集団のコミュニケーションは大丈夫かな?と思うことが増えた時期だったので、そういった暖かい試行錯誤で背中を押してくれる教育の場があるという話はとても希望を感じました。

盛り沢山な濃い1時間半で、STEAM教育についての学びをスタートする良いきっかけになった方も多いのではないでしょうか。個人的には終わってすぐに、眠そうな夫を捕まえてうんちくを一通り話してしまう夜になりました。

さて次回は4月19日(金)、幹事メンバーである佐々木理絵子さん(20期仙台校)にご登壇いただき、「これだけは知っておきたい!選択肢としての『中学受験』」をお話していただきます。お楽しみに!


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