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【エジンバラ 大学留学:後期】Research method③Mixアプローチについて

こんにちは。今日は、Conceptualising research: Foundations, assumptions and praxis(Research Method 2、通称RM2)で学んだMixアプローチの方法について、理解を深めるためにまとめようと思います。

Mixアプローチとは

定量的研究と定性的研究のミックスということです。

定量研究の目的(正確には、Positivistの立場をとるなら)、事象の法則の発見や一般化、定性目的(Interpritivistの立場を取るなら)、事象の深い理解ですよね。

Mixアプローチは両者のいいとこ取りともいえますが、逆にいえば、少し中途半端とも言えるかもしれません。

そのため、どのような目的の場合、どのような方法でMixアプローチを取るのかという点を中心に理解していきたいと思います。では授業のまとめに行きたいと思います。

本レクチャーの構成(第一部と第二部)

第一部:Mixアプローチ方法を用いた研究における重要なこと

Q.1 Mixアプローチ方法とはなにか、特徴は?(What)

Q.2 なぜMixアプローチ方法を使うか? (Why)

Q.3 どうやってMixアプローチ方法をデザインするか(How)

Q.4 どうやって教育分野でMixアプローチ方法を使うか(How)

個人的には、Q1は重要性なし、Q2,Q3を理解し、Q4で当てはめることはとても参考になりました。

第二部:Mixアプローチ方法を使うときの、各研究プロセスの留意点

Q.1 研究においてMixアプローチ方法を使用する場合、何を考慮するか

ではまず、第一部から入りましょう。

第一部:Mixアプローチ方法を用いた研究における重要なこと

Q.1 Mixアプローチ方法とはなに?(What)

この方法の特徴は、
ー定量データと定性データの両方が必要となること。
ー両データを統合したり、Mixする

Q.2 なぜMixアプローチ方法を使うか? (Why)

ー他の方法よりも正確ないし、深い理解が可能な場合にこれを用いる。

抽象的なので、これをより具体的な理由にすると以下の5つの理由があります。この5つの要素はとても重要そうに見えます。

Triangulation(三角測量方

なかなか聞き慣れない言葉ですよね。こちらのサイトを参照させていただきました。いろいろな方法を用いて、いろいろな角度から検証できるということですね。これの目的は、方法や質問者のバイアスを打ち消すことで、所見の妥当性を高めることです。


社会調査ではその意味を転用して、質問紙調査、インタビュー、参与観察など、複数の方法で観察を行い、その結果を照らし合わせることで、観察する事象を多面的な角度から把握するという意味あいで使っている。

Complementarity(補完性)

各方法で得られた結果を補足できるという理解をしています。定量分析では、傾向を掴めても深い理解にはならないですよね。

例えば、おむつコーナーでビールが売れるということが、定量分析で事実相関関係があることがわかっても、なぜそうなっているかの深い分析には定性的な分析が必要となります。そのため、例えばそのお店のケーススタディやインタビューを行い、原因を明らかにする必要があります。この場合、そのお店の特殊事情(例えば、地域や年齢、家族構成)によるものなのか、一般的にも当てはまりそうな事情なのか明らかにすることができれば、仮説構築ができますよね。それをさらに他の店舗で検証し、定量分析をし、因果関係が確認できれば、全国で使える方法となりますよね。

コンサルタントの仕事はまさにこれですよね。


Development(発展)

一方の方法の利用を他方のに使うために利用する。

例えば、定量調査のための変数を特定するための定性インタビュー (定性的アプローチ)を利用するなど。

Expansion(拡大)

定性的データと定量的データの両方を活用して研究の幅を広げる。
過程である。例えば、定性的データを用いて定量的な結果を拡張し、説明に役立てる 定性的な知見を一般化するために定量的データを用いる

Initiaiton

矛盾点を探し、新たな思考の刺激を探す。

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まとめ

正直各要素の違いはよくわからず。イメージでは、両方使うことで、エビデンスが相互に利用できたり、厚みを増すことで、より深い研究、一般化した研究ができるという理解をしました。

Triangulation(三角測量方)はComplementarity(補完性)セット(Triangulationを行えるので、保管される)、DevelopmentとExpansionはセット(深度を深めるのか、横の広がりを求めるのか)のような理解イメージを持っています。


Q.3 どうやってMixアプローチ方法をデザインするか(How)

重要な要素は、三要素です。
①Mixアプローチを使うタイミング 
②定量と定性研究方法のどちらに重きを置くか
③定量と定性データをミックス(統合)

①Mixアプローチを使うタイミング 
 (1) 同時に並行して行う
 →上記でいうTriangulation, Complementarityと相性がいい
 確かに三角測量をするから、両者の情報が補完出来ますしね。


 (2) 別々に行う。(1つの方法の後、もう1つの方法を行う)
 Step1 定量分析 
 Step2 定性分析
 →こちらは、DevelopmentとExpansionと相性がいい。
 確かに、一度調査結果が出てから、深堀するための追加調査できるとう ことですもんね。

②定量と定性研究方法のどちらに重きを置くか
 これは、3パターンできますよね。
 (ⅰ)定量と定性の需要性が1:1の時(定性=定量)
 →Triangulationデザイン

 (ⅱ)定量>定性
 →Expansionデザイン

 (ⅲ)定性>定量
 →Expansionデザイン

 ちなみに、定量のことを英語では、QUAN、定性はQUALと言います。

 ③定量と定性データのミックス(統合)

 データをミックスする

 研究プロセスを調査、分析、DIscussionとすると、Mixアプローチを使うオプションは2つあります。

 (ⅰ)(分析後の) Discussionと推論部分で統合

 →この場合、分析段階は、定量データを定量方法、定性データを定性データで分析を行う。その上で、データを比較し、突合などしてDiscussionと推論部分に用いる。

   (ⅱ) 分析段階及びDiscussionと推論部分で統合

 個人的にはこちらの方がよく使うのかなと思います。

 以下の図が重要ですね。

 4つの区分に整理しています。詳細は表をご覧ください。

    (a) データ変換 定性データを定量データへ
  (例、アンケートのスケールでの)点数集計

    (b) データ結合

    (c) データ類型整理

    (d) データ比較 パターンを探し出すこと

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まとめ

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Q.4 どうやって教育分野でMixアプローチ方法を使うか(How)

ここからは実例を見ていく感じですね。ここの実例の理解は、他の論文を見る上でもとても参考になると思いました。

(実例1 :定量=定性、並行調査の研究) 
チャレンジングな環境での20の成功した学校の要素と実践の調査

一番左の目的や方法、分析、Doscissionのところで何をしているか着目するのが大事ですね。例えばこの件では、AnaysisとDiscussionのところで、TriangulationとComplementarityがされています。

この場合は、分析の部分で深堀するために、定量データを定性化して、調査結果を利用したんですね。その上である程度妥当な結論が導けたという感じですね。

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◆方法論

定量手法 学校の改善に関連した学校生活に関する440人の教師の見解
定性手法 教師、生徒、保護者の無作為サンプル(回答者グループごとに80名)を対象に、学校の成功の特徴、学校文化、教育目標についてのインタビュー

◆分析

以下のようなものがあった。
質的分析(帰納的数学的分析)と量的分析(因子分析)を行った。
その結果、教師の学校改善観の9因子と学校改善に関連した11のテーマが明らかになった。
議論では、定量的要因の「定性化」は、データ変換によって物語性を持たせ、その後、マトリクス状の定性テーマとのデータ比較を行った。(定量データを定性化して物語に反映)

具体的には、”学校の指導者は、教師の能力開発のための支援的な環境を提供している。”というデータを定性化し、リーダーシップの育成に組み込んだ。

→Triangulation

◆Discussion
議論では、「豊かな理解」のための知見の重なり合う部分について、クオンとクオリファイの両方のデータを用いて議論が行われ、両方の手法の強みを引き出した。

→Complementarity
これらの手法が、同時並行で行われ、量と質の重要性も1:1でおいた研究であることを示唆します。


(実例2 定性>定量、Stepに分けた研究) USのPhDにおけるエンジニアの経験の調査(卒業率が本国58%,留学生70%)

次は、Stepに分けて検証を行う方法で、質>量の型の研究です。

MethodologyのところでDevelopmentとExpansionされていることがわかります。

このケースの場合は、最初の調査方法はインタビュー などの定性的な方法ですよね。そこで得られた情報で定量研究につなげています。この場合は、定性研究の結果を見て、その後の検証方法を決めているので、裏付けの研究というわけでなく、Developmentのような位置づけになるんですね。

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◆調査方法(定性)
1つの大学の学生30名を対象とした9ヶ月間のエスノグラフィー
1つの大学の学生との半構造化された個別インタビュー20回

◆分析手法
 データのテーマ別コード化
 (演繹的に仮説を探り、それを可能にするもの)
 その結果、6つの重要なテーマが導き出された。
    ここから→Expansion、developmentをしていきます。

 定性→定量化
 6つの構成要素(インタビューで浮かび上がった6つのテーマに基づいた)を持つ定量的な調査。研究者はインタビューのコメントから調査質問を作成した。
 質的データ調査および定量調査の内容
 「研究グループの学生は 徒党を組んでいるようなものですか」
 「リッカート尺度(1~5)。あなたは以下の文にどの程度同意しますか?」
 「研究グループには、主に相互に交流する学生の徒党(サブグループ)があるか」

(実例 3定量>定性、Stepに分けた研究
 留学後の中国人留学生の帰国後の動向の調査

この調査で明らかにしたいことが、パワポを読んでも論文の内容が掴めなかったですが(留学後の中国人の人が本国で、需要があり。いい仕事についているとか?)、定量データ(アンケート調査)し、なんらかの基準で14名に絞って深掘りしていくイメージだと思います。

定量調査
652名の回答者を対象としたアンケート調査(人口統計学的要因と帰国者の国際交流からの知覚された個人的・職業的変化)。

定量分析
年齢層間の違いを探るための分散検定、因子分析による帰国者の中国再入国経験と留学生の経験から得られる知覚された職業上の利益に関連する変数間の相互相関関係を探るための因子分析。

ここから上記の結果を受けて→Expansion、developmentをしていきます。

定性調査
4名の回答者へのインタビュー。回答者は、人口統計学的データ(年齢、性別、英国滞在期間、海外での資格、中国への帰国年など)とアンケートへの回答に基づいて選ばれた。

定性分析
インタビューデータをテーマにコーディング
各回答者の物語性のあるストーリーの作成

Discussion
質的段階と量的段階の結果を比較・統合(データ比較、データ統合)し、研究のための考察・推論を行った。

ようやくPart1が終わりました。。ここからはPart2に入っていきます。

第二部:Mixアプローチ方法を使うときの、各研究プロセスの留意点

3つのプロセスを理解します。この各プロセスで何を気をつければいいかを説明していきます。

Mixアプローチを柔軟にこのフレーズごとでどう使うかを考えていきます。

①概念フェーズ:研究のデザインをする時
ふーんという感じです。
研究の最初のコンセプトを考えるときに行うものは、
(i) 既存の理論の文献レビューを行う。
(ii) 研究の枠組みとなる世界観について考える。
(ⅲ) 研究目的及び研究課題を明示すること。

以下の図が重要なので、転載します。

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Mixアプローチの方法とデータのところに着目します。

方法
-アンケート
- 構造化インタビュー(イメージ法則を探すインタビュー)
- 観察法
- 詳細/半構造化
- 面談

データ
- クローズエンドデータ※
- 数値オープンエンド
データ
- ワード/画像/音声

※closed-ended questions / open-ended questionsについては、以下のブログを参照ください。要は Yes/Noとか回答があらかじめあるものか、そうでなど自由回答なものかです。(身長は?とかも含みます)

定性的な方が、open dataを使うのも理解できますよね。もちろんOpen dataで数量等を聞けばその後定量分析は可能ですが。

リサーチクエスチョンについて

話は少し変わりリサーチクエスチョンの話になります。

研究ゴールであるので、この時点で、Mixアプローチ採用を決めておいた方がいいようです。まあ、ここで研究方法も決めるのでそれはそうですよねという感じ。

その際に、以下の2つの要素を考えるのがいいようです。(並行アプローチの時の話ですね)
Triangulation

 量的結果と質的結果はどの程度一致しているか

Expansion

定性的データはどのようにして定量的結果を説明するのに役立つのか?
量的データは、質的知見を一般化するのにどのように役立つか?


②実証フェーズ:データ収集と分析(整理、計算)の時
Mixアプローチを使う際に、以下の3つのことを考えましょう。

(ⅰ) プランニング時

 タイミング(並行でやるか、Stepでやるか),優先度,-データ統合

(ⅱ)サンプリングとデータ収集時

研究のゴールを考える
量>質の場合(拡大、説明目的)→サンプルは少なくて、任意でも良い
質>量 (拡大、一般化目的)→サンプルは多く、異なるサンプルが必要

(ⅲ)データ分析
分析と推論に使うのか 
データ変換、データ統合、タイポロジー開発、データ比較が必要

最後の推論文だけ使うのか
定性的アプローチを用いて質的データを分析する (質なら質)
定量的アプローチを用いて定量的データを分析する(量なら量)


③推論(結論フェーズ)

このフェーズは、論文の最後の部分ですよね。”データを解釈することで研究から理論や説明を展開”をします。データを集めて、加工、計算を分析とすると、ここからどういった結論が導かれるかですね。

Mixアプローチの 2 つの段階
(i)Mixアプローチからの推論の展開

データ比較
2つのデータセットの分析結果を比較して、類似点と相違点を探し、一方のデータセットのデータが他方のデータセットのデータをどのように確認したり、説明したり、矛盾させたりするかを調べます。

データ統合
質的・量的な調査結果を「合成」(Creswell & Plano Clark 2011: 67)、または「織り込み」(Greene 2007: 17)して、研究の質問に答えるのに役立つ議論にするプロセス。


(ii)Mixアプローチによる研究とその知識・政策・理論・実践への影響の提示
学位論文の説明会と指導者からのアドバイス

長くなりましたが以上です。今週で方法論の主な説明が終わったので、来週から実戦となり、week5で授業は終わりとなります。

今週末から中間課題のエッセイなども考え出さないといけないなあ。時間管理とモチベーション維持、体力が課題ですね。

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