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今は亡き父と、NHK・井上二郎アナウンサーについてよく話した。

テレビをつけたら、NHKの夕方6時の全国ニュースに、糸井アナウンサーではなく、井上二郎アナウンサーが出ていた。

あれっ?と思った。

井上アナウンサーの目つき、ますます優しくなっている。

20年前の井上アナウンサーは残念ながら、小さい子が泣き出してしまうほど、目つきが鋭かった。

町中の巨大スクリーンに映し出された井上アナウンサーを見たときは、ビクッとしてしまっていた。

でも、時を経るごとにどんどん目つきがやわらかくなっている気がする。

私がふるさとに帰省するたびに、今はもう亡き父と必ず話題にしていたのが、井上アナウンサーの目つきについてだった。

しかも、それについて交わされる会話の内容は、いつも、そして何年も同じ内容で、

「井上アナの目つきが、どんどん良くなってきた」

の一点だった。

そんなさなか、もともと既に全国区だった井上アナが、私の生まれ故郷である、とある地方局へ異動していた。

それで、父にとっては、井上アナをテレビ画面で見る機会がますます増えた。

帰省するたびに、やはり父は井上アナのことを話題にした。

しかも、頻繁にテレビ画面で見るようになったせいか、父は井上アナのことを

「イノウエ」

と呼び捨てにしていた。
(昭和の男にあるあるなんだろうか....)

昨日、久しぶりに井上アナを画面で見かけた。

もうずいぶんと長いあいだ、井上アナの目つきについて誰とも話してないなぁ、としんみりしてしまった。

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