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「吉利の正体」については…「業界では、吉利集団は習主席の義弟の企業」と認識されている

2020/10/27
以下は前章の続きである。
七十年間で関係を'破壊' 
ボルボに話を戻そう。
スウェーデンでは「3つのV」、「VOLVO(ボルボ=車)」「Vovve(ヴォヴェ=かわいい犬の意味)」「Villa(ヴィラ=一戸建て)」が人生の成功を定義すると言われる。
いわばスウェーデンの魂と言える。 
ところが、ボルボ・カーズは前述のように、10年前、吉利集団に買収され、さらに今年2月、その傘下の「吉利汽車との合併を検討」というニュースが報じられた。 
ここに至るまでの流れを、端的に紹介しよう。
習近平が浙江省トップに就任した2002年、吉利汽車を視察し、「吉利のような民間企業を発展させなければならない」と発言。
07年の上海国際モーターショーでは、同年に上海市のトップに就いた習近平が「吉利汽車のグローバル進出を一日も早く実現させたい」と述べた。
吉利汽車の晴れ舞台には、常に習近平の姿があった。
それどころか彼の出世に連動するかのように、吉利集団は破竹の勢いとなった。 
前述の通り、吉利集団(浙江省杭州市)は2010年3月、「ボルボ・カーズ」をフォードから買収。
さらに、経営破綻していた英国名物のタクシー、ブラックキャブの製造最大手「マンガニーズ・ブロンズ」も13年、傘下に収めた。 
17年にはマレーシアの国産自動車メーカー「プロトン」の株式49.9%も取得。

プロトン傘下にある英国のスポーツカーメーカー「ロータスカーズ」の株式51%の取得もあわせて発表されていた。 
何より世界を驚かせたのは2018年2月、吉利集団の会長が高級車メルセデス・べンツで有名な独ダイムラー社の株式を約9.69%取得。
筆頭株主になった時である。 

ブルームバーグによると、同集団の創業者で会長の李書福は、この買収案に約75億ユーロの資金を投じた。
その際、世界では「李会長が習主席と近い関係にあるため、ダイムラーの株式取得には政治色が強い」との見方が報じられた。 
「吉利の正体」については、李会長の妻が習主席の妻、彭麗媛の妹(彭麗娼)と同姓同名であることから、「業界では、吉利集団は習主席の義弟の企業」と認識されている。
自由競争とはほど遠い、露骨すぎる'縁故資本主義'は、もろ刃の剣にもなる。
習政権の国内外での立場・評価が登り調子ならまだしも、米国やスウェーデンのみならず、西側社会で急速に四面楚歌になっているのだ。
とすれば、スウェーデン人の象徴であり、代名詞であるボルボを快く差し出すことは考え難い。
サーブを失ったことも、同国のトラウマになっていると聞く。
ニューヨークタイムズ(NYT、6月14日付)も「スウェーデンの政治・ビジネスリーダーにとって、ボルボの協定が新たな論争の源になっている」と、この一件を仔細に報じている。      。
「中国のメーカーがスウェーデンの車を救おうとした際、温かく歓迎された。十年後、より完全な合併の計画は、冷ややかな雰囲気のなかで議論されている」
「ヨーテボリにあるボルボのオフィスと工場。自動車メーカーはスウェーデン西部の経済の中心地で、1万9千人を雇用するが、同国では合併がボルボの本社を中国に移転することを意味するかもしれないとの懸念がすでにある」 

ボルボ側は合併案について、NYT記者へのコメントを拒否し「詳細はまだ議論中」と述べた。 
「ボルボが、その名前と独立性を維持することを可能にする」と李会長は約束したが、このような「利他的」な契約を中共の手垢にまみれた中国企業が順守する? 
それと、「合併後に誕生する新会社は、香港を介してグローバル資本市場にアクセスし、その後、ストックホルムでも上場する予定」と2月に報じられたが、香港国家安全維持法が施行されたなか、「香港を介して」の計画は白紙に戻ったはずだ。 
ヨーテボリ空港の到着ホールには、ボルボの新型モデルが常設展示されている。
「ヨーテボリはボルボ」「ボルボはヨーテボリ」との誇りを持ってきた市民はもちろん、スウェーデン国民にとっても重大事であることは想像に値する。 
スウェーデンは、中華人民共和国の建国以来の”大恩人”だった。
しかも外交官第一号として、同国の大使を務めた耿飈(こうひょう)氏は、習近平が卒業後、秘書を務めた最初のボスなのだ。 
だが、「井戸を掘った国・国民」を恫喝し、後ろ足で砂をかけた。
70年間で関係を”破壊”へと向かわせた責任が誰にあるのかは明らかだ。

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