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SOUL'd OUT今聴いてもカッコい…いやダサ! 超ダセェ!(でもそれがカッコいい…)という話

SOUL'd OUTを今さらめちゃくちゃ聴いてる。止まらない。Diggy-MO'の声で脳がドロッドロに溶けてる。元々「TOKYO通信」が好きだったんだけど、当時はあっさり聴いて終わったグループだ。最近Spotifyのプレミアム会員になって、日本中、世界中の音を漁ってる最中、ふと彼らのことを思い出して、この際だから“ちゃんと”聴き直してみた。そしたらドップリ行った。SOUL'd OUT最っっっ高やんけ。

「TOKYO通信」がリリースされた当時、俺はまだ20代半ばで、就活もせずに大学を卒業してフリーターだか無職だかわからない生活を送っていた。まともな人としての形状を持っていない不定形の生命体だった。
そんな人間以下の俺も、SOUL'd OUTというグループがいるということは認識していた。ただ、90年代にヴィジュアル系ばかり聴いていた生命体はこのグループに対してなんとなく脊髄反射で苦手意識を持っていた。なんかラップとかあるし、クラブとかにいそうな人たちだし、みたいな。でもテレビかなんかで「TOKYO通信」を偶然耳にして、思いがけないキャッチーさと不思議なスルメ感にやられてしまった。

なんだこの音楽。なんだこの声。この歌い方。この気持ち悪さとダサさとカッコよさの三竦み。でも不思議と耳に残る。最初は変な声だなと思ってたのに、気になって2~3回くらいリピートしてると「あれ? この曲めちゃくちゃいいんじゃない? たまんないんじゃない?」ってなってくる。そうして気が付けば俺はSOUL'd OUTを好きになっていた。近所のTSUTAYAでCDをレンタルしてきて、それをmp3にして「TOKYO通信」をサルみたいに単曲リピートしていた。

でも、当時の俺はそこで終わった。シングルを数曲とアルバムを1枚くらい聴いて「TOKYO通信はいいな」で止まってしまった。そして時を経てSOUL'd OUTはいつの間にか解散していた。


最近、ふとしたきっかけでジャパニーズHipHopに興味が湧いた。そしてプレミアム会員に登録したばかりのSpotifyで最近のやつをいろいろ漁っていた。

そしたらあのSOUL'd OUTをふいに思い出した。

誰がこのnoteを読むかわからないのでこの際言っておくけど、俺はHipHopに全然明るくない。ファンクやハウスといったクラブっぽいジャンルもほぼ無知だ。なるべく色んな音楽を聴くようにはしている。でも根本的にはゲーム音楽とアニソンとヴィジュアル系で育った生粋のオタクだ。俺が若い頃、オタクとHipHopは完全に対極に位置する文化だった。その後遺症でとにかくHipHop文化への理解力がない。理解しようとしてもそもそも感覚として染みついてないんだ。だから何がHipHopで何がHipHopじゃないかなんて全然わからないし、「ああそういやTOKYO通信好きだったな、ジャパニーズHipHopリストにでも放り込んでおくか」という、そんな軽い気持ちでまたSOUL'd OUTの音を耳にしてみた。

ウッ! 来た! この変な声! この高速ラップ! この曲! このメロディ! この気持ち悪いんだかダサいんだかカッコいいんだかよくわかんねえ感じ! HipHop? いやこれHipHopとは全然違わねえか? 一応ラップしてるけど曲の構成は完全に歌謡曲だよな? ミクスチャー? でもギターがゴリゴリじゃないな? 音はファンクっぽいな?

当時の彼らがHipHop界隈になぜかやたら嫌われて叩かれているという話は、HipHop文化圏にまったく属していない俺のところにも伝わってきていた。「SOUL'd OUT聴いてるやつダセェ」みたいな空気もなんとなくわかった。当時は「なんだ? HipHop界隈ってめんどくせえなあ」って横目に見ていたけど、今こうやって改めて聴き直してみるとわかる。こいつらHipHopじゃない。もっと正確に言う。HipHopの範疇に収まるにはあまりに曲が良すぎる。ラップしてるしスキルも凄いんだけど、それ以前にメロディーセンスが良すぎて歌モノとして成立し過ぎてる。

なんだこれ。わけがわからん。なんなんだこいつら。

そうだ。これがSOUL'd OUTだ。なんだかわからんけど、なんか耳に残って、気が付けば鬼リピしててハイになってる音。SOUL'd OUTは相変わらずジャンル分類不能で最高だった。気が付けば俺はSpotifyにある音源を片っ端から貪るように聴いていた。


「TOKYO通信」は相変わらず最高にカッコいい。でも「COZMIC TRAVEL」のキャッチーさも相当なもんで遜色ない。「ウェカピポ」はもはや鉄板の雰囲気だ。「GASOLINE」の脳筋全振りパワーごり押し感もたまらない。

「VOODOO KINGDOM」はジョジョを踏まえて歌詞を読むと「おお、スゲー! DIOだ!」ってなる。でも音だけで聴くとDiggy-MO'の声の癖と早口ラップが超絶過ぎるのとで正直何を言ってるのかわからない。「イルカ」はキャッチーで聴きやすいけど延々パチャパチャ鳴ってる音がちょっと邪魔くさい。でもとにかくカッコいい。もっと聴きたい。「To All Tha Dreamers」「BLUES」「ALIVE」「Starlight Destiny」とか、もうただただ、めちゃくちゃいい。ああこれ、もう完全に中毒症状だ。シャブ中が塀の奥にぶち込まれてようやくシャブ抜きして娑婆に出てきてついうっかりまた一本決めちまった感じのアレだ。

アルバムを1枚ずつ聴き直してみると、ベスト盤やシングルコレクション以外にも良曲が埋もれているのがわかる。so_mania収録「IMA」とか、ATTITUDE収録「FUNNY GIRL DUCKY BOY」とか、まさに“隠れた名曲”だ。なんでこれベスト盤に入れなかったの? サビのメロディー良すぎない?
もうね、本当にただただクセになる。耳がね、勝手にSOUL'd OUTという音をムシャムシャと食べ始めるんだよ。止まらない。気が付けばリピート再生というおかわりを無限に繰り返している。多分こういう音の聴き方は脳のバランスに良くない。だが知ったこっちゃない。SOUL'd OUTを聴きすぎるとアララステロールやディビディ体といった悪玉物質が蓄積されると言われるがそもそも脳からドーパミンがドバドバ出てるから関係ない。

解散寸前に出したアルバムに収録されている「Sweet Grrl パイセン」とかいう意味不明なタイトルの曲もマジでカッコよかった。末期までこんなにカッコいい音をやっていたのか。熱心に追っていなかったことが悔やまれる。
アルバム曲などはYouTubeに公式MVがないから貼れないけど、サブスクリプション(月額契約)の音楽配信サービスに登録すれば大体聴けると思うから、「SOUL'd OUTwww中学生の頃聴いてたわwww黒歴史www」みたいなアラサーくらいのやつらはぜひ聴いてみてほしい。とりあえずこのnoteで俺が挙げた曲は確実にいい。俺が保証する。俺を信じろ。

ちょっと話が変わる。
あのさ、SOUL'd OUTの“ジャンル分類不能感”って、往年のサザンオールスターズに似てない?

時は1978年、サザンオールスターズはシングル「勝手にシンドバッド」でデビューしたらしい。当時の邦楽リスナーは「なんだこの音楽は!?」「すげえ!!」「日本語めちゃくちゃじゃねーか!!」と賛否両論だったらしい。サザン以前にはあんな音符1つに日本語をいくつも詰め込むせわっしない邦楽が存在しなかったらしい。らしい、らしい、って、そのころ俺はまだ生まれてなかったからね。でもSOUL'd OUTの“分類不能感”ってこのサザンオールスターズに通じるんじゃないかな。なんとなくそう思ったんだよ。そう思いながら聴いてるとDiggy-MO'が桑田佳祐に聴こえてくる。不思議だね。

あとこれはファンクを基調としているのもあるんだろうけど、ちょっと前のSuchmosにも似ている。「STAY TUNE」とかすげえ「TOKYO通信」っぽい。

つーかぶっちゃけ俺Suchmosが出てきた時思ったもん。
「あっ! ダサくないSOUL'd OUTだ!!」って。

ダサくないSOUL'd OUTでしょ彼ら。大鍋でよく煮込んで丹念に灰汁や脂分を取って、メロディーの臭みを程よく消して、早口やめさせて、アララァとかディビディとか言わないようにしたSOUL'd OUT。そんな感じしない?

そうか。サザンオールスターズとSuchmosを悪魔合体させるとSOUL'd OUTになるんだ。これだ。これだわ。めちゃくちゃしっくり来たわ。


SOUL'd OUTの音に関しては「時代が早すぎた」とか「いまなら売れる」とかあんまり思わない。トラックは一聴すると今風なんだけど、やっぱりメロディーが意味不明に昭和臭いし、すぐアララァとかディビディとか言う。なんかオシャレっぽいのにオシャレじゃないし、アニソンみたいにド直球でクサいかって言われるとまたそうでもない。郊外のイオンの2階くらいにあるちょっとイキったティーンズ向けの服屋みたいな、クリスチャン・ラッセンのカレンダーみたいな雰囲気。なんかよくわかんないしちょっと恥ずかしい。
多分2019年のいま彼らがデビューしても「よくわからない」「ちょっと恥ずかしい」という理由でパッとしないと思う。それこそカーステでSuchmos聴きながら都内を流してるような層からは敬遠されるだろうし、フリースタイルダンジョンの流行で増えたHipHop好きの層からも「早口なだけじゃん…」「何が言いたいのかわかんないな…」って思われるだろう。まあね、だってよくわかんねえもん。俺もよくわかんねえし。でも、よくわかんねえけどなんか耳に残って離れない。SOUL'd OUTはそういう音楽なんだ。

自分の好きな音を探す際の指標として“ジャンル”はそれなりに優秀なタグだ。俺もジャンルを目安に音楽を聴くことが多いし「得意なジャンル」「どっちかっていうと苦手なジャンル」がある。
でも俺は苦手なジャンルでも興味を持ったら全力で突っ込んでいく。この姿勢だけは何歳になっても大事にしている。「あーあれは苦手だから…」と敬遠して外から偏見でああだこうだ言ってるのってすげえ損なんだよ。だせえし。何もわからないまま突っ込んでみると苦手意識のあったジャンルでも案外面白い音と巡り合えたりするんだ。
流行りの音楽に関しては、“流行ってる理由”を感じたいがためになるべく積極的に聴くようにしてる。ただし「こんな音楽聴いてる自分カッコいい」とか「こんなの聴いてるやつはダサい」とかは思わない。
てかさ、音楽聴く時に一番肝心なのは「耳が幸せになるかどうか」なんじゃないの?「その音を聴いて自分の耳がハッピーになるかどうか」しかないでしょ。音楽なんてそれしかねーよ。自分が良ければ他人の評価はなんだっていいんだよ。

2019年、夏。相変わらず世の中ではいろんな音楽が流行ってる。しっちゃかめっちゃかだ。動画サイトから若いアーティストが無限に湧いてくるし、邦楽ロックにも時々カッコいい音があるし、アイドルも意外と尖ったことやってたりするし、ジャパニーズHipHopもフリースタイルダンジョンの影響で盛り上がってるらしい。サブスクリプションの音楽配信サービスにでも契約して海外に目を向ければもうそれこそ一生かかっても聴き尽くせないほどの音が溢れている。狂っちまうよ。
だってさあ、ガキの頃小遣い握りしめてCD屋さんまでチャリこいで行って、気になるバンドのCDアルバム10曲入りを3000円で買って「今回はイマイチだな…」とかやってた人間が、月1000円くらい払うだけで世界中の音楽を無制限に聴き放題の環境に来ちゃったんだぞ。頭がおかしくなるに決まってるだろ。いやほんと仕事とかしてる場合じゃねーからこれ。

だけど、あと2~3日くらい、SOUL'd OUTの遺した音を楽しませてもらおうと思う。俺の耳は久しぶりに聴いたSOUL'd OUTの音で最高にハッピーになってるし、Diggy-MO'の声で脳がドロッドロに溶けちまってるんだ。


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