もりやす

森保監督は優秀な監督という前提は正しいのだろうか?


アジアカップ初戦となったトルクメニスタン戦は、まさかの辛勝であった。パワーバランスから考えると引き分けでも不合格なのにまさかの苦戦であった。

試合は、ニコ生の実況・解説をしながら観戦していたのだが、非常に重苦しい試合で、前半は何を話そうか本当に困ってしまった(反動で後半に流れが来てからはノリノリになった)。


アジアカップでは、五百蔵容さんと二人で実況・解説を務めさせた頂いているのであるが、五百蔵さんの基本的な姿勢は「森保監督は国内屈指の知性を持つスーパー監督」であって、「森保監督時代は問題ないが、引き継げる人がいないので次の監督が課題」となっている。


でも、それって本当なのだろうか?森保監督で勝てるのだろうか?


もちろんもちろん。偉大なる森保一監督の実績は疑わない。
選手として日本代表に選抜されたことは、当時の記憶としては残っていないものの、確かな実績であることは間違いない。

そしてこちらはしかと目撃した!!サンフレッチェ広島での3回の優勝。サンフレッチェ広島というクラブの規模を考えると、4年で3回優勝するのは、絶対にありえないことではないものの、極めて実現が難しいはずの出来事だった。

J1優勝回数3回の監督というと誰がいるのだろうかと検索したらちょうどまとめてくれているブログが見つかった。


監督の優勝経験数のところを抜粋して引用させて頂く。

【3回】(2名)
オズワルド・オリヴェイラ (鹿島07〜09)
森保 一 (広島12、13、15)

【2回】(5名)
松木 安太郎 (東京V93、94)
桑原 隆 (磐田97、99)
トニーニョ・セレーゾ (鹿島00、01)
岡田 武史 (横浜FM03、04)
鬼木 達 (川崎17、18)

【1回】(10名)
早野 宏史 (横浜FM95)
ジョアン・カルロス (鹿島96)
ゼ・マリオ (鹿島98)
鈴木 政一 (磐田02)
西野 朗 (G大阪05)
ギド・ブッフバルト (浦和06)
ドラガン・ストイコビッチ (名古屋10)
ネルシーニョ (柏11)
長谷川 健太 (G大阪14)
石井 正忠 (鹿島16)


オリヴェイラと並んでトップタイの3回の優勝を経験している。ただ、そこで比較しないといけないのがクラブの差。8回優勝している鹿島と、3回優勝して、そのすべてが森保監督の広島とでは状況が異なる。

それはオリヴェイラ監督の貢献が小さいという意味ではなく、森保監督の実績が異様なまでに際立っているという意味合いである。

戦力が拮抗したJ1で優勝するというのは本当に難しいことで、監督が悪いけどまぐれで優勝できたということは起こらない。もちろん、選手の能力が圧倒的であった場合には、そういうケースも起こりえるのだが、広島はどちらかというと選手を引き抜かれていく側のクラブであって、お金で選手を集めて回ることは出来ない。

だから、J1で3回優勝したという実績の前には、沈黙せざるを得ない。森保監督の能力を疑うことは出来ない。森保監督バンザーイ!ポイチさんバンザーイ!明治安田生命Jリーグとフルネームで呼んでくれてありがとー!


Happy End 


……


とはならない!!

もちろん、ぼくは森保監督の実績には心の底から敬意を払っている。しかし、森保監督が良いとする根拠は、僕の中では2つしかない。

1つは、J1での実績。
これは上述した通り。

もう1つは、「だって、五百蔵さんがいいって言うから」である。

ヴェルディサポのふかばさんが超絶長文ブログ記事の中で言及してことを思い出す。ふかばさんがちくっと指摘していたのは、五百蔵さんが良いと言うから良いというのは思考停止なのである。


J1で実績があるのは間違いない。しかし、森保監督は、長期的な視野を持ってチームを組み立てて行くことが得意な監督なのかもしれない。いや、それは間違いないのだが、もしかしたら「長期的な戦いは得意だが短期決戦は苦手」という可能性もある。

いやいや、広島の時は2013年の天皇杯準決勝でFC東京をぶち破ってたよなどというご指摘もあるかもしれない(この試合は拙著の中で紹介したので一生忘れない、西川周作おーおーおー)。だけど、それはあくまでも、時間を掛けてじっくりと信頼関係を醸成することが出来たサンフレッチェ広島の選手と戦えたからかもしれない。

日本代表でそれが出来るのかというと、それは現時点では誰にもわからない。もちろん、ぼくも応援はしているので、森保ジャパン頑張れー!という気持ちで見ている。

だけど、やはり五百蔵さんが良いっていうから良いっていう姿勢では駄目なのだ。もっと自分の視点で森保監督のサッカーを見ないといけない。

そして、森保監督は、会見ではまったく何も説明してくれない。何となくそれっぽいことを言って、煙に巻いてしまう。森保監督がやろうとしているサッカーは、会見からは読み取れず、展開しているサッカーの中から読み取るしかないのだそうだ。

そういう意味でも、実況解説をしながら、森保監督の思考を読み解いていくのは非常に重要なことで、ニコ生ではその思考過程を含めて記録に残していくこともミッションとしている。

言うならば、秘密主義者の森保一監督と、サッカーファンの推理ゲームである。

この推理ゲームを行うために必要なのが、文系風に言うと方法的懐疑であり、理系風に言うと作業仮説である。

森保一日本代表監督の技量を一度疑ってみる。色々な角度から、この監督は駄目なんじゃないかという疑問を投げかけ、その疑問に対する回答が得られていく過程で、森保監督のサッカーを理解していくという手法だ。

ぼくは思想系の学科(文系、倫理学)から、科学系の大学院(理系、農学)へと移ったので、こういう思考の仕方を好む。

森保監督が真に優れた代表監督であれば、アジアカップの間に巻き起こる様々な疑問に対して、回答を示してくれるはずだ。それが見つかれば、森保監督は間違いないと根拠を持って納得することが出来る。

優勝が出来なかったとしても、プロセスとして正しいことがわかれば問題はない。勝つ負けるはとても重要だが、どれだけ正しいプロセスをしても負ける可能性はゼロには出来ない。結果だけで語ると大局を見誤ってしまう。

実際に、ロシアワールドカップは大成功であり、ハリルホジッチ監督の解任も大成功だった。解任に動いた関係者は勇者だというような論調もある。

日本では勝てば官軍という言葉もあるので、そうなってしまうことはある程度容認しなければならないのだが、どう考えても解任するためのプロセスがおかしく、ハリルジャパンのプロセスが正しかったのかどうかが、誰も検証できなかったことが大問題なのである。

というのは、もうワールドカップ前に発狂するほど書いたので、そっちの件についてはいいのだが、大事なのはプロセスだということ。

トルクメニスタン戦では、森保監督の良いところが見えたとは言いがたい。5バックに対する想定をしていなかったこと、またそれを打破するための指示も出せなかったこと、ディフェンスの連携が取れていなかったこと……。

そしてぼくがとても問題にしているのは、選手たちの戦いへと向かうメンタルセットが出来ていなかったように思えたこと。もちろんこれは、キャプテン長谷部や、精神的支柱となっていたケースケ・ホンダの不在なども影響しているのかもしれない。

これは主観的な指摘なのだが、失点後にGKの権田選手が少ししょんぼりしてしまったり、成功しない攻撃を何度も繰り返してしまったり、そんな中で誰かがムードを変えるような声出しなどをしているように見えなかったり……。

森保監督といえば、選手への手厚い気配りが有名なので、今回の選手たちとも十分なコミュニケーションを取っているはずだ。しかし、森保監督の仕事をみていると、直球で良い点悪い点を指摘するというものではなく(ハリルホジッチはそういうタイプだった)、選手が傷つかないようにさりげなくヒントを置いておくというやり方だったように思える。

といっても、広島サポに比べると森保監督の育成的な指導についてはニワカ中のニワカなので、全然違う側面もあるのかもしれない。そのへんを含めて学んでいきたい。

そして、もし、そういったさりげない示唆が得意な監督であったとしたら、一年を戦うリーグ戦で勝ち続けるチームは作れたとしても、極限状態に追い込まれる短期決戦では結果が出せないかもしれない。

偉大な監督なのは間違いないものの、アジアカップや、オリンピック(U-23)、そしてワールドカップでは勝てない監督である可能性もある。

というわけで、ぼくは次の試合では、選手たちのメンタルセットが変わっているかどうかに注目したいと思っている。

アルゼンチンで指導者の勉強をしている河内一馬氏(Twitter)に伺ったところ、ピッチ上で意志を伝えるには怒るのが一番いいのだそうだ。そういえば長谷部はいつも怒っていた。川島も怒っていた。

ただ、今回のメンバーを見ると怒りそうな選手がいない。だからここは、吉田麻也選手に頑張ってもらうしかないのかもしれない。だからキャプテンに指名されたのかもしれない。

権田選手はあまり感情を出さない。それでもFC東京の時は闘志をみなぎらせているように見えることも多かったのだが、代表戦だとなかなかそれが出せていないように見える(これも主観)。

東口選手は、比較的ぶち切れがちなので、もしかしたら交代もありえるかなという話もした。流石に変えないだろうという話にはなったものの。

ニコ生では、権田が1対1でPKを与えた時に、権田に責任はないと言うことですぐに片付けた。そして、吉田麻也がどうして、ボールから離れてしまったのかを考えたのだが、その時点ではわからなかった。

とりあえず、吉田ー槙野のディフェンスの中核に良好な連携が生まれていないことは明らかなので、二人は一緒のベッドに寝て、じっくり語らって欲しいといった。

ただ、やはりうまくいかないときだからこそ、選手たちは主張し合うべきだったし、GKの権田も大声でコーチングするべきだったと思う。もっと怒気をはらんで、チームを覆う悪い雰囲気をまとめて吹き飛ばしてくれるようなことが求められたんじゃないかと思った次第だ。

ちょっとこのメンタルセットの話は、かなり主観的なので、怒る人もいるかもしれない。しかし、本当に勝ち上がるのが厳しいアジアカップという大会において、一番大切なのは、メンタルセットだと考えている。


本日はオマーン戦。
試合キックオフの30分前 22時からニコ生で実況・解説を開始する。サッカーの画面はテレビで見つつ、スマホやPCなどでニコ生を流しながら見て頂くスタイルとなっている。こういうのを裏実況というらしい。

ニコ生の特徴は、プレー実況よりも、一つ一つのキーになる展開をじっくり掘り下げていくことと、戦術・戦略・作戦という観点から、森保ジャパンの戦い方を徹底的に分析していくことだ。

また、なるだけコメントを見るようにしているので、視聴者と一緒に作っていける実況放送になっていると自負している。

今回のオマーン戦では、「森保監督は本当にカップ戦における優秀な監督なのだろうか」という、方法的な疑問を持ちながら、時折五百蔵さんにぶつけつつも、自分の目で見て、自分の頭で考えていきたいと思っている。


是非、裏実況はニコ生で!!

あ、ライブで見れなくても、タイムシフト予約をしておくと、後から試合前のプレビューや試合後のレビューを見ることが出来るので、タイムシフト予約だけは是非!!

シェアも大歓迎です!!裏実況のライバルが元日本代表選手ばっかりなので、30歳からサッカーをはじめたリフティング20回くらいしか出来ない私を是非応援して下さい!!

どうでもいいけど、この原稿は、渋谷でフットサルをした後、表参道のスターバックで書いています。目の前に座っているおねーさんがものすごく綺麗なわけなのですが、ぼくはNIKEのエナメル製スポーツバックに、シャワーを浴びた時にびしょびしょになったタオルを巻き付けて入店したのでかなり浮いています。蛇足。

タオルは別府の竹瓦温泉で買ったものです。蛇足2。


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