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バスはこれからどうなっていくのか

通勤で毎日バスに乗っている。

今の会社で働き始めてからずっとなので
約10年間ほぼ毎日乗り続けていると
もはやバスに新鮮さは無くなった。

だが、先日もいつものようにバスにのり
文庫本を開いたとき、
とあることに私は驚いてしまった。

それは、運転手さんの声がとても
ハッキリとしていて気持ちよかったからである。

「発車いたします。お立ちのお客様はご注意ください」
「社内温度が合わないお客様はお申し付けください」
「現在定刻より2分ほど遅れての運行となっております」

このような基本的なアナウンスもとても
活舌が良く聞き取りやすいし、
顧客とのやり取りもとても気持ちが良かった。

バスに毎日乗っていると色んな運転手の方に
出会う機会がある。

何一つアナウンスをしない人もいれば
乗客に対して居丈高な態度の方もいる。

また、運転手さんの仕事はアナウンスだけでなく
運転技術自体もあるわけだが、
これも個人差がとてもあるのだ。

バスの運転手は今のところ
人でないとできない仕事に分類されている。

恐らくではあるが、我が国日本で自動運転が
導入されて、
公共交通機関であるバスに採用されるまでには
まだ相当な時間がかかるであろう。

運転手を取り巻く環境は決して良くない。

色んな業界で人手が足りないと言われる中で
タクシーの様に露骨な高齢者の方に
任せることが難しいからである。

タクシーに比べてバスは考慮しないといけない要素が
多くなる。

当然ながら車幅が大きくなるので
運転技術も求められるようになるし、
車いすの乗客への対応、
乗客からの問い合わせへの対応、
ICカードへのチャージなどの対応

これらが求められるようなる。

また、タクシーの様に個人でやっている人は
基本的にいないので、
運転手の方は基本皆が会社員ということも
高齢者の方が働けない一つの理由であろう。

これらの理由から、明らかな人手不足に
直面しているのである。

以前に私が毎日乗っている路線が
減便された話を記事に書いた。

これからさらにこの流れは加速していき、
不採算路線は最低限のインフラとしての
本数を残すのみに減便されていくであろう。

このような状況になるとあることが予想される。

それは、運転手の仕事の質が不均一になることである。

人手が沢山いる時ならば、十分に研修をしたり
余っている運転手が他の運転手の車に同乗して
OJT(On the job training)ができるだろうが、
人手が少なくなればそのような研修にかけられる
工数は極めて限られてくるであろう。

また、人手が少なくなれば多少適正に欠ける方が
運転手として採用される機会も出てくる。

では、そのようなムラを無くすためには
どのようにすればいいのだろうか。

その一つの形が接客の自動化である。

基本的に顧客とコミュニケーションを
取ることはAIなどにお任せし、
運転手は運転することだけにフォーカスする。

そうすることで、当面の間人手を確保しつつ
バスの仕事の品質を均一化することが
できるのである。

私が乗るバスの路線でも最近社内で流れる
自動アナウンスが一新されて、
若干ながら英語が入るようになった。

増加する訪日外国人への対応と
それに応対する運転手の業務負荷を
多少でも軽減する措置なのであろう。

この流れは今後、間違いなくさらに進み
タッチパネル化や質問はAIに問いかけるような
仕組みになっていくであろう。

バスは性質上高齢者の方の利用率が高い
乗り物なので、
これらの自動化に対してどこまで顧客が
対応できるかが課題にはなるだろうが、
もはや待ったなしの状況が迫っているのは
間違いないのである。

そんなことを考えながらバスに揺られていると
とある停留所にバスが停まった。

杖をついた足元がおぼつかないおばあさんが
バスを降りようとされているのが入った。

すると、
「焦らなくて大丈夫ですよ。ゆっくり降りてください」
と運転手さんがすかさずアナウンスする。

降りるときのおばあさんの「ありがとうね」という
声はとても温かく私の耳には聞こえた。

これはどう考えてもAIにはマネできない
仕事であろう。

今後間違いなく進んでいく自動化の中で、
このような人間らしいやり取りは
高い付加価値になるのかもしれない。

そこそこ高齢な運転手さんではあったが、
この方の仕事が大きく報われて評価されるような
世の中になってくれればいいなと思う
平日の夕方であった。

ちなみに以前に何度か遭遇した運転手さんで
「両替、チャージは停車中に早めにお済ませください」
このワードをしきりに連呼する方がいた。

あまりに連呼するので、
この運転手さんに遭遇する度に
頭の中でこの言葉を先取りするほどであったが、
ある時、とある乗客の方が降車間際に運転手さんに
「ICカードのチャージをお願いします」と言った。

すると「次回から停車中に早くお済ませください」と
明らかに不機嫌な声で運転手さんは言いながら
チャージ対応をしていた。

停車時間を可能な限り短くしたいという
運転手さんのこだわりなのだろう。

しかし、あれだけ連呼されていたのに
降車時にチャージをしようと思ったこの乗客の方の
ハートの強さもなかなかなもの。

バス通勤もネタの宝庫である。


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