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読書サイクリング

先日会社からの帰路に電車に乗っていると
4人が対面する座席で私の前に
パーマ姿の若い男性が座った。

背が高く、少し大きめサイズの服を着た
いかにもチャラそうな若者である。

公共交通機関なので色んな人が利用するのは
当然であるが、
何となくこのようなチャラい雰囲気の若者が
近くにいるときには構えてしまう。

ごくまれに非常識な振る舞いをする人が
いるからである。

一人ならば滅多になくても、複数人になると
若者は少し怖いというのが本音である。

今回私の前に座った若者は2人組の一人。

まさに私が身構えてしまうパターンである。

座席にドシっと座ると、
パーマ君はカバンの中をあさり出した。

スマホならばポケットに入れているだろうに
何を取り出すのかと思いながらちらちら見ていると
驚いたことにパーマ君はカバンから
ハードカバーの本を取り出したのだ。

私は聞いたことがない本だったが、
外装の感じから小説だと思われる。

パーマ君がページを開くその様子からは
「早く続きが読みたい」という感じが
とても伝わってきた。

そうして本を読み始めたパーマ君を見ていると
本の1分ほど前まで私が持っていた印象が
ゴロっと変わっているのを感じた。

チャラい苦手な若者という印象だったのが
一気に親近感に変わったのである。

それは読書をする人がマイノリティだと
日々の生活の中で実感しているからである。

会社の中で聞いてみても読書が好きという人は
ほとんど見たことがないし、
通勤電車の中を見回してみても
本を読んでいる人はごくわずか。

驚くほど皆、本を読まないのである。

もちろん、本など読まなくても
何も困ることはない。

しかも紙の本なら場所も取るし
持ち運ぶのも重い。

そして、今の時代は本の内容を
要約して動画にしたようなコンテンツが
YouTube上に無料で当たり前のように
転がっている。

別に本でなくても学べる時代なのだ。

そんな中で本を読むというだけで、
パーマ君に対して仲間のような気持ちに
なってしまったのであろう。

私は本が好きである。

先ほど書いたような要約コンテンツではなく
本を自分で読むのが好きなのだ。

それは、自分で考えながら読めるからである。

動画でも考えることはできるだろうが、
基本的に動画の場合は相手のペースで
相手の解釈を聞いているに過ぎない。

ここにその情報を受け入れるか否かという
プロセスは入らないのである。

しかし、本を自分で読む時には、
一次情報として自分がその内容を読み、
そしてそれに対して受け入れるかどうかを
考えながら読むことになる。

時々受け入れられないような内容に
出会うことがあるが、
その時には自分がどのような部分で
なぜ受け入れられないのかを考えながら
読み進めることで、
結果として本の内容を咀嚼することが
できるのである。

恐らく動画ならば、受け入れられない内容は
動画停止ボタンを押して
視聴する動画を変えるだけで終わるであろう。

やはり、この違いは自分で考えて読むかどうかが
大きく影響していると思うのだ。

自分で考えながら本を読むことは
一見するととても面倒で疲れることのように
見えてしまう。

実際、多くの人はそれが面倒だと思うから
読書をせず動画視聴をするのであろうが、
私はこの面倒さこそが読書の醍醐味だと
思っている。

これはサイクリングと同じである。

自転車は自分の足でこがなくては
前に進まない乗り物である。

単純に速い速度で前に進み
景色を楽しむだけならば、
バイクや自動車でも十分楽しめるはずだが、
サイクリングをする人は自分の足で
ペダルを踏みしめて
自分の好きなスピードをコントロールしながら
道を走ることを楽しむのである。

言うまでもなく自分の足でペダルをこぐと
疲れるし、エネルギー消費も大きい。

だが、その疲労があるからこそ
景色は余計に印象に残る。

まさに読書はこの感覚に近いのでは
ないだろうか。

仲間の少ない趣味を楽しむ者同士、
パーマ君と私は電車の中で
束の間の読書サイクリングを
一緒に楽しんだ。

先日何でもやってみる母さんが紹介されていた
この本の文庫版が昨日届いたので

https://amzn.to/4akouLo

今日はこれを楽しみに通勤時間を過ごそうと思う。

とても嬉しいことにnoteには読書サイクリング仲間が
何人もいる。

noteは私にとってサードプレイスであるとともに
サイクリング仲間がそれぞれの旅の面白さを
報告し合う部室のような場所なのかもしれない。

ちなみに以前は読み終わった本を都度メルカリで
出品したりしていたが、
売却にかかる手間がとてももったいない気がして
最近は処分できずに結構な量が溜まってしまった。

自分が面白いと思った本をサードプレイスに置いて
オススメ図書文庫のようなものを作れたら
面白そうだなと思いながら
妻に何か言われる前に処分しようと考える
今日この頃である。



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