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AbemaTVが見ていた夢? タイで独自に進化するLINEの無料動画配信サービスLINE TVの話

LINEが展開している動画配信サービスというとライブ配信サービスのLINE LIVEがまず頭の中に出てくるかもしれないけれども、実はLINEがタイで展開している無料動画配信サービスLINE TVが非常に好調らしい。

LINE TVがタイで結構見られているという話を聞いたのは、ちょうど今から1年前。バンコクでテレビ局やスタジオ関係者と食事をしていた時だった。サービスの存在自体はもちろん前から知っていたけれども、ジオブロックされて日本では見ることができないし、そもそもタイ語が読めないのでそれまで情報をきちんと得ることができなかった。ただちょうど先日「LINE TV NEXPLOSION 2019」というイベントが開催され、その発表内容がコーポレートサイトなどにも出ていたので、これを機にちょっと整理してみたい。もっとも、そんなことを知って得する人は殆どいなそうだけれども。ちなみにLINE TV自体は台湾でもサービス展開中。

LINE TVは、アプリ・ウェブを介して"無料"でテレビ番組(動画)を視聴することができるサービスで、2014年10月にスタート(正式リリースは2015年2月)。当初はコンテンツが集まらず、比較的調達しやすい韓流コンテンツなどが中心だったようですが、その後タイの現地スタジオと共同でLINEオリジナル番組の製作を開始。またタイのテレビ局と提携して、テレビ番組の見逃し配信・同時配信に対応することで劇的に成長しました。日本で例えるとAbemaTVとTVerが合体したようなサービスといっても良いかもしれません。米国で言うとPlutoTVとかTubiTVとかと似たポジションでしょうか。

現在LINE TVにはChannel 3・Workpoint・Channel 8・one31・GMM25など主要なテレビ局、有力スタジオ・出版社・新聞社・音楽レーベルなど160以上のパートナーがコンテンツ提供しており、視聴者は3,300万人。1日の平均視聴時間は2時間43分とかなり長いです。視聴者属性は男性59%・女性が41%。世代別の視聴者の割合は25-34歳が39%、45歳以上は25%、35-44歳が20%、そして18-24歳が16%。年齢層が高いユーザーを取れているのはなかなか珍しいんじゃないでしょうか。

タイにおいて最もユーザー数が多い無料動画配信サービスは紛れもなくYouTubeだと思いますが、LINE TVは動画広告のビューワビリティーやブランドセーフティーの観点から広告主から評価されており、広告収入もビューティー・衛生用品カテゴリーを筆頭に伸びていて、2017年Q4と比較して2018年Q4は400%も成長しているようです。昨年話を聞いた時には花王も出稿していると聞きました。



LINE TVのオリジナル番組に関して言うと、TV Thunder・JSL Global Media・ Bear Cave・Nomadik・GMMTV・Kantana Group・Workpointなどと一緒に共同製作を進めており、今回新たに「Great Men Academy」と「Infinite Challenge Thailand」を発表。前者はNadao Bangkokが製作する学園ドラマ。後者は、韓国の同名のバラエティ番組「Infinite Challenge (무한도전)」のタイ版で、今勢いがあるテレビ局/スタジオのWorkpointが製作。

その他にもこれまで「Together With Me: The Next Chapter」「GGEZ」「It’s Complicated」 「Hipster or Loser」「The Deadline」「Dance Dance Dance」「The Hidden Songs」 「Food Tribe」「Kor Ku Tam Mai Penn」「Drag Race Thailand」などを製作・配信しています。ちなみに「Drag Race Thailand」は、"レディーボーイ"に代表されるように、タイならではの企画っぽいですが、もともと米国VH1向けに放送されていた「RuPaul's Drag Race」のフォーマットをKantana Groupが購入して、LINE TV向けに作られたもの。「Dance Dance Dance 」も、もともとは英国ITVで放送されていた同名のダンスコンペティション番組のフォーマット。

尚、配信されているコンテンツの6割はテレビ番組の再配信もので、オリジナル番組は2-3割という状況。


タイはデジタルテレビ放送の開始に伴い新規参入が増えたのですが、一部テレビ局は免許料の支払いが滞り廃業、黒字化したのは視聴率1位のBBTV Channel 7と制作・放送の垂直統合モデルによって勢いに乗っている新興のWorkpoint TVくらいだった時も。

またタイのテレビ局は社内に制作部門を持つことがこれまで稀で、基本的には編成方針に沿った企画内容を提案したスタジオに広告枠も含めて枠を販売し、スタジオは広告枠と番組内のタイアップ、リアルイベントなどを組み合わせて収益化する事業モデルとなっており、テレビ局は割と楽な商売をしてきました。

ただ2017年は余剰な広告在庫が問題となっており、とにかく接触ポイントを増やすためにも、FacebookやYouTubeなど放送以外に番組を無料配信していくことが当たり前になっています。そのためLINE TVに番組を出すことも自然の成り行きだったと言えるのかもしれません。なかなか日本で同じことが起きるとは思えませんが、AbemaTVが目指していることって、もしかしたらLINEがタイで既に実現していることなのかなという気がしてきました。









140文字の文章ばかり書いていると長い文章を書くのが実に億劫で、どうもまとめる力が衰えてきた気がしてなりません。日々のことはTwitterの方に書いてますので、よろしければ→@hideaki