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ひろがるしゃしん

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架空の書籍の目次だけをつくってみたら実際に出版することになりました。写真についての考え方や生き方、はたらき方についての本になります。
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#距離感

猫になりたい

写真において、その人らしさを形成する要素として、大きく分けて、視点、距離感、色彩の三つがあると考えています。撮影者がそれぞれをどのように定義し、どれくらい一貫性を持って取り組むかが、その人らしい写真の輪郭を描くひとつの秘密になる気がしています。 このうちの「距離感」については以前、『主観と客観を超えた眼差し、その距離感』で自分の考え方に触れました。これは”ゴースト”という目には見えない、未来に死んだであろう自分自身を架空の匿名的な存在に見立て、その目線に立って撮影することに

主観と客観を超えた眼差し、その距離感

いつから写真を? と聞かれたとき、決まってある一枚の写真を思い出します。それは生まれ育った家の勝手口に息子が静かに佇んでいるというものです。その姿を撮ろうとしたとき、直感的に「あれは『私』だ」と感じたのです。自分もまた幼かった頃、まさしくあの場所に座っていたことを思い出したからです。子供をまるで自分の生まれ変わりのように感じたそのとき、記憶の奥底に眠っていた光景が一気に目を覚ましました。そして、その光景をファインダー越しに見つけたとき、言葉にし難い奇妙な感覚に襲われたのです。