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日本の学校教育を変えるには

今日のおすすめの一冊は、藤原和博氏の『どう生きる?人生戦略としての「場所取り」の教科書』(祥伝社新書)です。その中から「どの場所に陣取るか」という題でブログを書きました。

本書の中に「日本の学校教育を変えるには」という心に響く文章がありました。

今、大きな注目を浴びているのが「教育」です。 学校という装置が、きわめてウソくさいものになってきているのです。 20世紀の工業化時代、教室では机が工場のように配置され、教壇は一段高くなっていて、 上から知識を与えるように設計されていました。

学校は、情報処理力に長けた「早く、ちゃんとできる、良い子」を大量生産する装置だったのです。 だから、「ひとりひとりに寄り添った学習」「個性の発揮」「ダイバーシティ」など新しい時代のキーワードには、まったく向いていません。

「静かにしなさい!」 小学校の先生がもっとも口にする言葉はこれです。場合によっては「黙りなさい!」。 児童生徒は、中学生になっても「意見は勝手に言うな!」と抑えつけられます。 

高校生になると、特に進学校に顕著ですが、大学入学共通テストの四択問題に答えるためには「考えるな!」とまで教わります。記憶したことを反射的に答えるには、考えないほうがいい、というわけです。 はたして、これで本当の意味での教育が行えるのでしょうか。

児童生徒を教室に閉じ込め、外部からの刺激を断ち、もっぱら教員が知識を授ける「一斉授業」のスタイルは、戦後50年は機能しました。工場で、大量生産の製品を作るならそれでいいでしょうが、もはや日本はそういう段階にはありません。 

2009年、シンガポールでは教育改革を行い、育てる人材の目標が変わりました。それまでの「追いつけ追い越せ型」から、「自信のある個人」「自律した学習者」「活動的な貢献者」へと変化、「思いやりのある市民」となることを目標としたのです。

クラスは成績に関係なくミックスして、個別指導も取り入れる。好きなことをやりたいだけやっていい。世界で高い競争力を誇る国が、方針転換を始めているのです。 

こんな時代に、ウソくさい日本の学校教育を変えるにはどうすればいいでしょうか。 それは、教室を世の中に開いてしまうことです。 児童生徒のスマホやタブレットをWi-Fiにつなぎ、グーグルもChatGPTもフリーに使いながら授業を進行する。そんなネットワーク型の授業に変えるのです。

世の中とつながり、みんなで対話しながら創造的に学ぶ。 主体的・協働的にコミュニケーション力を磨く、アクティブ・ラーニング型に変えていかなければなりません。

新しい学校教育のもとでは、児童生徒の発言がきわめて重要になります。スマホやタブレットに書き込まれた意見を、大型のスクリーンでみんなが見られるようにする環境が必要になるでしょう。 

かつて教室で教員が盛んに言っていた「静かにしなさい!」は、むしろ逆になるのです。 また、スマホ時代に言われ始めた「携帯の電源を切りなさい!」も必要のないものになります。 「カンニングしてはいけません」もなくなるかもしれません。

「静かにしなさい!」と言っていたら、児童生徒からは発言してもらえません。たくさん の意見が出てこないと、教室での共有もできないし、ブレーンストーミングもできませんよね。さまざまな意見が出てこそ、納得解に近づけるのです。 

また、スマホを切ってしまったら、グーグルやChatGPTが使えなくなります。 正解はスマホで見ることができますが、正解がない課題はスマホや級友の意見を参考にして (カンニングして)考えを進化させなければ、納得解に至りません。 

つまり、児童生徒のおたがいの創造的対話こそ、必要なことなのです。 ChatGPTは、日本の学校の仕組みと教員に引導(いんどう)を渡すことになる。 私はそう思っています。なぜなら、ただ正解を教えるのなら、オンライン教育や生成A Iで済んでしまうからです。

◆今、注目されている教育の考え方がある。今から90年以上も前にドイツの教育学者ペーター・ペーターセンが取り組んだ学校教育の考え方「イエナプラン」だ。

それは、いくつかの特徴がある。
《異年齢学級》 イエナプラン・スクールでは、通常、3学年(幼稚園では2つの年齢集団)の生徒たちから 成るファミリー・グループと呼ばれる異年齢学級が基本単位になっています。子どもたちは、 同じ学級で3年間過ごし、年少・年中・年長という異なる立場を経験します。

《4つの基本活動》 イエナプラン・スクールでは、4つの基本活動をもとに学校での活動を企画します。それは、対話・遊び・仕事・催しの4つです。

●《リズミックな時間割》 毎日の日課は、教科ごとに区切られてはおらず、上の4つの基本活動が循環するように決められています。そこでは、すべての時間を科目ごとに同じ長さで区切るのではなく、その日の子どもたちの雰囲気や活動への関心の度合い などを考慮して柔軟に伸ばしたり短縮したりできるようにしています。

《ワールドオリエンテーション》 科目の壁を越えて、生きたホンモノの題材をもとに、子どもたちが、協働で探究する学びです。 ワールドオリエンテーションは、イエナプランのハートと呼ばれており、子どもたちの学校生活のすべてにかかわるものです。 つまり、ワールドオリエンテーションのテーマは、遊びや催しのテーマにもなるし、教科学習の内容にも可能な限り反映されます。

《生と学びの共同体》 学校は、子どもたちが1日の大半を過ごす場です。イエナプラン・スクールでは、学校を「生と学びの共同体」と呼び、家庭と同じように、生活の場として考えると同時に、教員は、子どもたちの学びをファシリテートする養育者であると考えます。
以上『イエナプラン 実践ガイドブック』(教育開発研究所)より

大量生産大量消費の工業化社会の時代から、今、社会経済活動が大きく変わった。マニュアルを早く覚え、手足を使い、一斉、画一的に、如何に効率的に仕事をこなしていくか、という画一的で従順な人材を創る教育からの転換だ。

それは、自ら考え、創造し、自ら律するという「自律」して行動するための教育。

まさに、この教育改革を平川理恵氏(元広島県教育長・元リクルート)は「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」と言っていた。これは、リクルートの創業者江副浩正氏が社訓としてつくった言葉だ。

藤原和博氏もリクルート出身。常に新たなチャレンジをし、新しい価値を生み出し続ける姿勢はこの「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉に凝縮されている。

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