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GDPかGNIか。海外からの所得の純受取の増加を考慮してGNIに注目してよい。

 長らくGDP(国内総生産)が経済成長率の測定、さらには国民医療費、防衛費、株価時価総額などとの対比に使われてきた。GDPとは日本国内で生み出された付加価値の合計だ。しかしこの数値には、海外からの所得の純受取=日本の法人・個人が海外から受け取る所得から海外の法人・個人への支払いを控除した差額、が反映していない。GDPに、この純受取を加えたものが、国民総所得(GNI)である。
 GDPとGNIー2つの数値の違いを、実際の数値で以下確認しよう。

   なおこの表の範囲内の出来事として、2007年から2009年にかけては2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻を危機の頂点とする「世界金融危機」、2011年3月11日の「東日本大震災」に始まる日本経済の2012年にかけての低迷、さらに2020年から2021年にかけて「コロナパンデミック」による世界的な需要の落ちこみがあった。
 ところで海外からの所得の純受取は、おおむねGDPが伸びるときに増え、GDPが減るときには減る傾向があるようだ。そのためGDPに海外からの所得の純受取を加算した値であるGNI(国民総所得)は、GDPよりも増減の振幅が激しい。また、海外からの所得の純受取のGDPに比しての大きさは次第に大きくなっているように見え、その比率は2006年度には2.8%であったが、2022年度には6.0%に達している。国民医療費や防衛費の大きさの比較にGDPを使うなど、なにかにつけGDPが重視されてきた。しかし海外からの所得の純受取がかなり大きくなったこの状況を考慮すると、GDPだけでなくGNIをもう少し重視してよいのではないか。


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