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小原嬢VS限界の小野




西暦2021年。
劇団天体望遠鏡、旗揚げ20周年となるその年。
昨年より続いた〝コロナ禍〟。拍車を掛けるように、開催が1年先送りとなった『東京オリンピック』の影響で、期間中は都市部を中心に感染者数の伸びが爆発的に上がり、我々を〝活気〟と〝不安〟の渦中へと追い込んでいった。

その一方で、国の対応にやや不満はあれど、〝コロナワクチン〟の登場により、コロナ禍の脅威は徐々に〝沈静化〟へと進み、劇団天体望遠鏡 第16回公演『賛成の天体』が上演される頃には、我々の暗雲立ち込める日常に〝希望〟の『光』が差し込んでいるのを〝敏感肌〟で痛いほど感じていた。






うん。なのでー、






『打ち上げ』をしました。





〝万全〟の注意を払い『貸切』でー





ワ レ ワ レ ハ ウ チ ア ゲ ヲ シ マ シ タ…。



岩手県地域
  『新型コロナ感染者数〝0〟連続13日目』


         〝千秋楽〟



ー裏話ー

時刻は午後9時をまわった頃だろうか?

舞台『賛成の天体』全4ステージなんとか無事に終わりを迎え、逃げ出したい気持ちを〝グッ〟と抑えながらバラしも怪我なく済ませ、今は〝某〟宴会場へと皆が集り、互いに労いの言葉をかけ賑わっている。


ーと思う。



と、言うのも俺は〝悪酔い中〟で酒の席で天井を見上げている。



…。



天体の〝宴〟の席には〝特有〟の『空間』が存在するのだが、これを文章で伝えるのはなかなかに難しい。

代表川辺は初期段階の稽古から、台詞と台詞に『間』をつくるなと演者に対し、厳しく何度も何度も指導してきたのだが、天体の〝宴〟の席には常にその『間』が存在するのである。


『え⁉︎何この間?ナニ?』こんな感じである。


斯く言う、自分は舞台の上以外は口下手で、飲みの席で自分から言葉を掛ける行為が苦手であるのだが、そう言う〝引っ込み思案の集まり〟という『類』の話ではない。


そして、天体〝特有〟の『空間』を作り出し〝支配〟しているのは、何を隠そう『間』をつくるなといつも指導していたー、


   『酔った代表』その人である。


まず特徴として、誰かが何かの『話題』で盛り上がっていると、その盛り上がりを『酔った代表』は〝ぶった切る〟


       うん。あれは…


     〝遮断〟と言うべきか。


     そして自分の話をしだす。


   『え?』小さな『間』が生まれる。


遮断して自分の話を持ってくるまではいいのだが、話に着地点は無い。


       〝存在しない〟


『酔った代表』もそれに途中で気付き、一生懸命に話の落ちどころを探すのだが、やがてー


 自身が大きな『間』となり『廃』になる


『酔った代表』は芝居以外の話をするのは基本…


         〝NG〟


その場に居合わせる人間全員が対象となる。少しでも芝居以外の話で盛り上がろうものならー


   『酔った代表』の熱弁が始まる



        〝勿論〟



      〝着地点は無い〟




        するとー、



     ある〝現象〟が発生する



居合わせた皆んなが『酔った代表』の〝落ちのない話〟を〝聞きてるフリ〟をしだすのだ。




そして会場全体がー





   不思議な『空間』に包まれるのだ




『何だここは!?』



こんな〝宴〟の席を何度も繰り返していると、皆んな要領掴めてきてるのか、見ていてそれが分かる。

皆、落ち着きがある。

それが長い付き合いなのだ。


多分。



…。




代表は『ワイン』が大好きである。実はこの『ワイン』がその『空間』をつくる〝トリガー〟なのである。




代表は『打ち上げ』の最中に『ワイン』を美味しそうに飲み始めてしまう。するとー、




ものの30分で『酔った代表』の完成である。




…。




俺は、そんな『ワイン』を美味しそうに呑んでる代表が大好きさっ!!!


俺、代表の話、誰よりも真剣に向き合って聞いてるもん!!



………。



しかし、今の俺は悪酔い中である…。




時を少し遡るー。



〝某〟宴会場。
身体の様子がどうもおかしい。どうやら俺は悪酔いしているようだ。

怒涛の天体公演を最悪のコンディションで乗り切った自分に、その日の麦酒は身体に合わないようだった。


時刻は午後8時を回った頃だろうか?


やたらと時計が気になってしまう。


体調不良時に起こる典型的な〝焦り〟症状


『吐きそうだー』


そんな劣悪な状態であっても、何とか自分を取り戻そうと、話の輪に入ろうとするのだが、難聴気味の俺には皆んなの声が聞こえない…具合も益々よろしくない。

それでも、

今回のオッパ…いや、『賛成の天体』で〝ポニョ〟を熱演した『小原嬢』と『琳子姫』に対し『謝罪』をした。


          〝事故〟に見せかけた〝故意〟


      〝罪〟無き〝罪〟


            『オッパイ揉みしだき計画』


その壮大なスケールで描かれた
〝お互いにな〜んのストレス無く、オッパイを楽しんじゃおう計画〟その全貌を2人にそれとなく伝え、2人の反応を確認し、そして、この計画を成功させる為に絶対必要な最終項目‼︎


 
  お父さんにこのこと…喋ってないよね?



    という『確認』と『念押し』




     通報だけはしないでね



     という『泣き落とし』




    なんなら『土下座』いります?



…的な心からの『懺悔』をして、この計画を完璧なものとしたかったのだが、そこに『酔った代表』が話を〝遮断〟する。


酔った代表
『そんな事でいちいち謝って芝居止めちゃダメよ!』


いや、止めた事は1度も無いです。


酔った代表
『俺が旗揚げ当初に和善くんと、取っ組み合
 いのー、』


あ、話ソレた、話持ってかれたー。


酔った代表
『服が〝ビリっ〟て3回くらいー』


小野
『その話、落ちってありますか?』



あゝ、限界だ…。目が回る。

俺はその場に横になり天井を見上げた。


…。


俺は思うー。

自分は〝演劇〟を趣味とした〝社会人〟である。

社会人は社会のルールに従って生きて行かねばならない。

代表が言う、演劇人ならー、その言葉に〝共感〟もする。

だが、所詮は地元で活動する〝アマチュア劇団〟である。


〝プロ〟として生きてはいないのだ。


劇団天体望遠鏡に入って18年。今では年配者に位置する自分。

そんな自分は『演者』と『社会人』その二つの〝見本〟となれるよう、若い世代の前を歩かねばならない。


だから俺は


   『謝罪』の言葉を迷いなく口にする



   〝オッパイ触ってごめんなさい〟


〝見本〟となるべく、これからの生活に〝しこり〟を残すまいと若い娘達に〝手本〟を示す。


だから『小原嬢』と『琳子姫』はー、



『ご両親に〝オッパイ触られた〟とか言うな』



       と言われたらー



『間』を置かず、被せ気味に〝元気〟な声で



        『はい!』



ーと、俺を『安心』させなければならない。




それが〝縦社会のルール〟なのだから…。




続くー

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