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【5/19文フリ東京新刊】笹塚心琴歌集「わけあり物件探し」ご紹介します!

このたび友人でありnoteの創作仲間、笹塚心琴さんより、このたびの文学フリマ東京(5/19㈰東京流通センター会場)で頒布の新刊歌集をご恵贈いただきました。どうもありがとうございました。

私はnoteでの心琴さんの作品に魅せられているひとりです。心琴さんの作品をひとことで言うと、そうですね、「不穏さと隣り合わせの柔らかな日常」とでも表現いたしましょうか。穏やかでつつがない日々を詠むのがお上手で、でもその日々は案外薄氷の上にあるのかもしれないな、と想像をかきたてられます。

心琴さんの作品は、鋭利なガラス破片のようで、でもその切り口の透明な光に魅せられたりもして、でも一方でそのガラスで手を切った傷口にそっとあてられるガーゼみたいなところもあって。繊細な世界観がとっても多面的に表現されています。そして言葉の選び方や観察眼も、とても「いい」。

好きな歌を何首か「わけあり物件探し」から挙げましょうか。

◆食パンの袋を留めるやつの名を知らないことも共通項だ

私は、文章表現というのはおしなべて「そ、そんなところに注目して描写しちゃう⁉」という驚きあっての面白さだと思っていまして。そういう意味で、この一首は読者の「あ、たしかに私も知らないかも」という共感をまねき、「共通項ということは、もう一人『知らなさ』を分け合う存在がいるんだな」という理解を伝えてくれます。「知らないことが、二人をつなぐちいさな絆になっている」ことが、微笑ましいです。

◆しゃぼん玉みんな必ず消えるから過去なんてもうどうでもいいよ

おそらく、はかないしゃぼん玉にひとの人生を重ね合わせた一首。その妙味が深く、目の前ではじけ消えるしゃぼん玉を、過去を否定している誰かの隣で見ていて、でもこの歌を詠んでいる人はぶっきらぼうな言い方ではあっても、その過去に頓着していない。隣の存在をただ肯定するやさしさが伝わってくる一首です。

◆臓物にまで優劣はつけられる焼き鳥だったらハツが好きだな

「臓物」という言葉が持つ生々しい響き、そして焼き鳥の部位にも値段の高い低いがあるという事実、それを上の句でごろんと投げ出し提示する視線には、どこか冷静さを感じます。その一方で下の句では、その選別される臓物らから「ハツが好きだ」と選び取り言い切る強さ。優劣に対し憤りを感じているはずなのに、一転して「それでも自分自身も好き嫌いで優劣をつけてしまう」矛盾。とても鮮烈な一首だと思います。

心琴さんの短歌の魅力、すこしでも伝わりましたでしょうか?

文学フリマ東京38での、心琴さんのブースは「すー19」だとのことです。既刊もふくめ、たくさんの人に手に取っていただけますように!

微力ではありますが、私も心から応援してます!
心琴さんの創作が、これからもたくさんの人の心まで届きますように。

次の日曜日は、ぜひ文フリ東京へ!


とってもおしゃれな装丁です!猫ちゃんかわいいな。



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