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踊る大競馬戦〜第3話〜『説教泥棒ハヤテフクノスケ』

ひとけのない深夜0時

一人の泥棒が闇に紛れていた

俺の名は「颯 福之助」
(はやて ふくのすけ)


こんな縁起の言い名前だが
俺は泥棒だ‥

まぁ泥棒といっても
ただの泥棒じゃねぇ
俺は無敵の『説教泥棒』だ

『説教泥棒』なんて言葉があるかは
知らねぇが俺の手口はこう

金持ちそうな家をねらい侵入‥
盗るものをとったならあとは
家の主人が俺に気づくのを待つ
あとはそいつが納得するまで
説教をたれる!

おいっそんなの
すぐ警察に通報されるだろ!って
思うだろ?

しかし俺の説教は
魔法の説教だ
どんな奴でも改心し
最後にはやつらから金を差し出す

この前の白髪混じりのジジイなんて
『福之助さん!ありがとうございました!』

なんて言われたもんだ!
"さん"づけで
お礼を言われる泥棒なんて俺くらいだろ

そして最後にコイツを渡す

『ハヤテノフクノスケ』

俺も競馬新聞をみて最初にコイツを
見つけた時は驚いたぜ!
まさか俺の名前みたいな競走馬が
いるなんてな!

それで俺はこの馬券を名刺がわりに渡すんだ
『俺の名前入り的中馬券だ
福が来るぞいくらで買う?』ってな

その白髪ジジイなんて
この馬券を2000万円で買っていった‥

俺の説教にはそれぐらいのパワーがある
もちろん福之助信者となった奴らが
警察に通報することなんてない
コレが無敵の説教泥棒だ

おそらく俺の前世は
日本No.1ホストか
どっかの宗教団体のトップ
だったんだろうな‥

さぁ‥今日も信者を増やすとするか‥


今日は前々から計画していたこの家だ

福之助は柵のあるお金持ちの住んでそうな家を見つけて柵にひょいっと登った

下には犬小屋と立派なドーベルマンが見えた
『犬なんて警備の役にたつわけねぇだろ』

福之助がカバンから取り出した
大きな一本の骨をなげると
ドーベルマンは尻尾を思い切りふりながら
一心不乱に骨にしゃぶりついた

福之助はそのまま侵入できそうな窓をみつけ
『こういう金持ちそうな家に限って
ケチでセキュリティも甘い‥
有名な警備会社のシールも貼ってるだけ
この窓のカギがかかってないのも偵察済み‥』

福之助の計画通り窓は簡単に開き
セキュリティシステムも作動しなかった

 福之助は難なく家の中に侵入し
金庫もいとも簡単にあけ
その場にあぐらをかいた‥

『さぁあとは物音に気づいて
この部屋に入ってくる
主人を待つだけだ‥』

福之助は目をつぶりその時をじっと待った

ついにその時が来た‥

真っ暗だった部屋の
電気がついたと同時に福之助は
声をかけた

『おい!‥』

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