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個人投資家・覆面座談会―IRnoteマガジン参加社から読み解く(後篇)

このnoteは、主に「IR noteマガジン参加企業の方々」と「これからIR noteマガジンを始めようと考えている企業の方」に向けて書いたものですが、IR業界に携わる全ての方々にとって有益な内容となってます。

はじめての試みなので、至らぬ点もあると思いますが、「よりよいIRの世界」を目指す想いから生まれた企画なので、温かい目で読んで頂けたら幸いです。

私はかって大手広告代理店・広告マンでしたが、もともと証券業の血筋です。株屋の血筋と言ったほうがいいかもしれません。父は最後は大手証券会社・子会社の役員でしたし、祖父は証券会社を経営していました。幼少の頃から兜町の証券会館のレストランへランチに連れていかれ、株屋の背中を見て育ちました。わたしはそんな2人を見て「株屋ってクソだな」と思って育ったのも事実です。ぜんぜんスキになれませんでした。以来「マネーゲームで儲けたいオーラを出してるヒト」に嫌悪感があります。美意識の問題ですので、コレばかりはしかたがない。というわけで社会にでた時は、広告の世界に飛び込んでました。
そんな私が、縁あって株式会社Figurout中のひとになった経緯はこのnoteに書いたので割愛しますが、株とコミュニケーションが重なり合う世界とも言える「IR界隈」に関わることになるとは誰が想像したでしょう。人生は偶然と突然に囲まれている。面白いものです。

後篇は、経緯やノウハウが中心ですが、この覆面座談会は、単に個人投資家の方々の意見を集約したものではありません。きっかけは、1月のIR大新年会からはじまります。「情報発信」であるはずのIR note が「情報開示」の延長線上に書かれているところに違和感を感じたのです。

というわけで、IR noteマガジン参加社の全サイトを読みました。そのためには必要な筋力とスキルが必要になります。そこから得た知見を覆面座談会の進行・モデレーションに注ぎました。ご参加いただいた個人投資家の皆さまのご協力に感謝します。その情報を皆さまと共有できたら嬉しいです。8,000字ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

前編は ⇒ コチラ

池松潤(いけまつ・じゅん)
コミュニケーションデザイン / 株式会社Figurout中のひと/文筆家
慶應義塾大学卒・大手広告代理店を経てスタートアップの若手との世代間常識を埋める現役57歳。ときどき婦人公論コラムなど⇒ https://lit.link/junikematsu




―1:「なぜ覆面座談会なのか?」はnoteから始まった

情報発信量(アウトプット)が多い方は、インプットである読書量が多い傾向があります。体験的な確信によれば、インプットとアウトプットの両方が多い方は「知の体系化」が進んでいるので実際にお会いしてコミュニケーションがスムーズです。文章を書かないヒトには「その違い」が理解できません。

リンクスリサーチ・小野社長の出会いはnoteから始まりました。IR界隈で名前を出して情報アウトプットしている方は少数です。殆どが匿名評論文章が大量に出回っています。note継続的にアウトプットされていたのが、小野社長でした。

noteから始まる出会いは、他の出会いより安心で安全である確率が高いのです。noteが優れている点は「文章力から理解るコミュニケーション能力」なのかもしれません。

このnoteにも書きましたが、縁あって株式会社Figurout中のひとになった出会いと経緯もnoteからでした。

ただしコレは全てに当てはまるわけではありません。中には嘘や盛ってるヒトもいるからです。その事例として「面白い文章を書くヒトほど実際に会ってみると違う」というのが挙げられます。しかし書いてる本数が多い場合はその違いを見抜くことができるのです。

←池松 小野社長→



―2:「おまえ何者?」池松のnote経歴について

私の成業はコミュニケーションデザインであり、スタートアップCEOの壁打ち相手です。その他にWeb婦人公論にときどきコラムを書いたり、小説を書いています。noteを書いて7年になります。

雑誌コラムや小説とnoteでは「読まれる文章の文調」が違います。特にnoteで読まれる文章は、紙の文章と異なります。noteで読まれる文章は一人称の距離感が近い文章であり「わたしにも手が届く身近な成功体験」が好まれる傾向が強いと感じます。

池松調べ

2018年〜2019年頃は、noteクリエイターの活動が最も盛り上がった最初の時期で全国でワークショップや講演を年間50本以上開催していました。noteピンバッチ(番号:006)を頂いたのもこの時期です。

noteピンバッチ(番号:006)

note酒場」や、CXOの深津さんがいらっしゃった「非公式noteオフ会」その当時の様子は下記にまとまっています。

「note10周年 と私たち」をご覧頂ければ、何者でもなくインフレンサーでもない私が「何故noteにこだわるのか?」感じて頂けるかもしれません。

中央の集合写真の「ど真ん中」にいらっしゃるのが「非公式noteオフ会」に参加されたCXO深津さん



―3:上手なIR noteの書き方について

「情報開示」と「情報発信」のちがいと具体的なノウハウ

「個人投資家・覆面座談会―IRnoteマガジン参加社から読み解いた3つのポイント(前編)」を書いて「自社のIR noteへアドバイスをもらえないか?」というお問い合わせを数多く頂きました。ありがとうございます。

そのような情報はnoteで公開・共有した方が良いと思いましたので「note利用初心者の方へ」役立つノウハウをシェアできればと思います。

「IR情報開示」については、IR協議会や、IR向上委員会などで学ぶことができます。東証の事例集経産省の「上場・未上場スタートアップの IR・開示に関するガイダンス」をご参考にされてください。


そもそもの前提①:「情報開示」と「情報発信」のちがいを明確にする

「情報開示」と「情報発信」は役割が違い、両者は補完関係にあります。

そもそもの前提②「IR情報の種類が増加」した

「紙とPDFだけの時代」と「youtubeとnoteがある時代」は情報量が違います。情報大洪水の時代です。素早く的確に伝わる「情報の要約力」に加えて「他にはない情報」が求められているのではないでしょうか。



ダメな事例と良い事例のちがい①:そもそも「編集」の概念が無い

ダメな事例に共通する傾向として、読み手を意識したコンテンツになっておらず、情報が整理されてない、誰に何を伝えたいのか不鮮明です。良い事例は、読んで欲しいターゲットが明確です。読み手である投資家がどのような情報を望んでいるか?明確なのだと思います。

例えば、企業はPLを重視して開示しているのに対して、投資家は資本効率を重要視しています。その違いが理解されていない情報開示が多い。

2020年度一般社団法人生命保険協会 生命保険協会調査 企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート 集計結果https://www.seiho.or.jp/info/news/2021/pdf/20210416_4-5.pdfより要約抜粋した株式会社アバント資料より


企業はPLを重視して開示しているのに対し、投資家は資本効率を重要視している。その違いが理解されていない情報開示が多い。

2020年度一般社団法人生命保険協会 生命保険協会調査 企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート 集計結果https://www.seiho.or.jp/info/news/2021/pdf/20210416_4-5.pdfより要約抜粋した株式会社アバント資料より

そもそも「情報開示」に齟齬のあるのに「情報発信」でそのギャップは埋められるのでしょうか?そこに、IR活動の難しさが垣間見えます。


答)①:編集力をつける方法

多くのヒトは「答え」を求めて「答えだけをパクる」ヒトが多いのですが、果たしてそれで読まれるnoteが書けるでしょうか?それは「痩せたいけど、痩せれないヒト」に思考様式が似ていると思います。

そのために重要なのは「編集概念とスキルを持った仲間」を作ることから始まります。しかし編集力を一日で作れるわけがありません。ハックできないのです。

例えて言うなら、パリの高級ブランド店へ行く状況をイメージしてください。編集概念さえ無いあなたは、「超カッコいい服を買いに行くために、その店に行く相応しい服がない状態」に似ています。その状態を脱するための最初の一歩だと思って読んで頂ければ幸いです。

Zeroからはじめるnote・5つのポイント

①:声を出して音読してみる。
校正する。できれば数日いったん寝かせて読み直してみる。時間がないときは「ご飯」を挟んで気分転換する。

②:「誰に読んで欲しいか」解像度を高める。
具体的に「誰か?」イメージする。そのヒトの24時間1週間をイメージする。どこで「何を」知りたがっているか?理解を深める。その情報を「何に」活用して、「どんなシチュエーション」で活かすか推察する。そもそもなぜあなたの会社の株を買うのか?360度視点で考察・分析・推察する。

③:「何を読みたいか?」解像度を高める。
隣接競合など事例をググりまくる。企業広報など越境して調べる。興味を持って調べまくる。友人や知り合いに聞く。生成AIなど使えるものは何でも使う。読み手が欲する「それ知らなかった」とか「なるほど凄い」とは何か。この行動力の「厚み」が編集力に効いてきます。

④:まずは掴みが大事。読まれるnoteは表題から始まる。
例えば、渡辺将基(新R25編集長)のnoteタイトル付けは「2つの意識」を持つだけで劇的に良くなるという結論に行き着いた(有料)にヒントがあります。「読みたくなる」表題を考えて⇒やってみて⇒改善を繰り返す。これには本数が必要で時間がかかります。ココで諦める方が多いと思います。そういう時は、仲間をつくりましょう。壁打ち相手を作ることで乗り越えられます。IR noteマガジン仲間を作ってみてはいかがでしょうか。だから、まずは相手へ貢献しましょう。同じ苦しみを分かち合えば、より良い解決策を見出すことが出来ると思います。

⑤:最後まで読んでもらう工夫をする。
「自分が伝えたいこと」と「読んでもらうこと」はちがいます。いちばん大事なのは、書いたものは校正して削ること。削って濃縮することです。自戒を込めて(ココまでで6,000字ごめん)



ダメな事例と良い事例のちがい②:業務で致し方なく最小エネルギーでやってる

IR noteマガジンで最も多いパターンがコレです。読み手の解像度が低い。情報発信の量(蓄積)が少ない。業務としてやってるので、省力化のかたまりになっているコンテンツです。具体的には単なるコピペ情報の場合です。

そのnoteを読んだ投資家がどう思うでしょう。「耳の痛い指摘」ほど誰も言いません。「その情報は誰のため?」なのでしょうか。

答)人手不足・時間不足を補う方法

①:「編集企画」を「時短」に焦点を絞る。
「統合報告書」を「時短用」に細かく分割して「読みやすくnote用」に加工してシリーズ展開する手法があります。前編でご紹介した「ユナイテッドアローズ 統合レポート解説」を参考にしてはいかがでしょう。他のIR情報とは区分してマガジンにまとめてある点も素晴らしいと思います。ターゲットの「時短」に貢献するのは、情報大量発生の時代に必要な視点だと思います。

②:自分の脳内をAI文字書き起こしする。
◆まずは自分のネタ集をつくる。
自分の頭の中に考えてることをスマホに喋る。その中から「ネタ」をリストアップする。頭が真っ白になって止まったときは、生成AIに「◯◯◯をネタにIR noteを書きたい。項目を考えて表にして」と聞く。コツは表にしてもらう。編集とは「視点」からはじまります。この表は「視点漏れ」を防ぐ意味でも重要です。
「セルフ壁打ち相手」として生成AIを活用する。
リアル壁打ち相手が居ないときは生成AIを使い倒しましょう。
Microsoft Bing Copilotは、Chat GPT4が無料で使えるのでオススメです。OpenAIのChat GPT3と併せて使うことで、自分がほしい切り口が見つかるでしょう。

③:そもそも「時間や予算を捻出するための仲間をつくる」
孤独感が仕事を絶望に追いやります。3人集まれば文殊の知恵と言うではありませんか。希望は絶望の先にあると言います。まずは仲間を作りましょう。そのために、相手のXをシェアする、引用noteを書く、まずは自分にできる貢献から初めてはいかがでしょうか。

※まず「仲間を作ること」から初めてはいかがでしょうか



ダメな事例と良い事例のちがい③:そもそもnoteなどSNS情報発信に不慣れ

「文章を読むヒト(情報消費者)と、文章を書くヒト(情報発信者)は似ていて非なるもの」です。

「若いからSNSとか使ってるでしょ。やってよ」
「SNSは誰でも使えるもの」だと思いこんでいる場合が多いと思いますが、これが現場の悲劇を生み出していることを日経新聞は書いてはくれません。

◆「経営者の情報発信」が重要
「自分で理解できないスキルは評価できない」
IR noteマガジン参加社で、CEO、CFOがSNSで情報発信しているのは、40社(2024年3月時点・アカントを持っている数)。
そもそも経営者がSNS利用を理解しているか?「経営者のSNSネイティブ度」が重要です。

全IR noteマガジン参加社を読み込んで感じたことの一つに、孤軍奮闘しているIR担当者が多いことでした。

「解決Before/After:参考になるIR note事例集」を作りたいと考えています。そこには、作る側にしか集まらない貴重な情報もあると考えています。想像しただけで大変そうですが、ご興味がある方は、X(旧twitter)DMへご連絡ください。

答)SNS情報発信に不慣れを卒業する方法

自分一人のスキルで不慣れを克服するのはハードルがあります。まずは似たような状況で悩んでいるnoteから仲間を探して横のつながりを作ってみましょう。

①:仲間を作る
②:仲間と協調して引用など相互にシェアする
③:困ったときは、仲間と助け合う



―4:法人note「人材採用note」と「IR note」のちがいから学べること

note株式会社では「法人note勉強会」が開催されています。先日私も参加しました。法人note利用の基礎が学べます。

法人noteの利用ケースとして代表的なケースに「人材採用に活かすnote」があります。「IR noteとの違い」を表にしてみました。分かりやすいように「個人note」を入れた3種類のnoteを比較してみました。

「個人note」・「人材採用note」・「IR note」のちがいの表

法人noteコンテンツには、編集のヒントが沢山眠っています。越境して「法人note仲間」と仲良くなることをオススメします。

両者には共通する「編集ノウハウ」があります

「note pro運営チームが読んで、note proを利用する方へおすすめしたいと思った、すてきな法人noteを集めたマガジン」があります。notePRO(8万円/月・税別)の利用事例集ですが、IR noteにも役立つ視点や情報が沢山あります。もちろん読むのは無料です。

https://biz.note.com/m/m5f671f85f117

その他に、note pro公式アカウントには「法人note同士のコラボの仕方」など色々な工夫の事例もあります。参考になるのではないでしょうか。

2/27 法人note勉強会 @四谷noteオフィス




―5:その情報は誰のため?

そもそもIR活動は「企業価値や株式市場を意識する経営者」の理解度にかかっています。しかし実際には「資金調達」や「M&A」など具体的な経営課題が生じなければ「経営者が企業価値や株式市場を意識すること」は少ないのではないでしょうか。だからなんのために情報発信するのか?

その情報は誰のため?

誰でも情報発信できるようになった時代だからこそ、大事なのは「対話のための情報発信」ではないでしょうか。

「出来高を高めたい」「潜在株主に認知をしてもらいたい」IR現場の課題は色々あります。「時間がない、人手が足りない、予算がない」というのもあるでしょう。

で。「対話は誰とするの?」

で。。「企業価値を高めるって誰のため?」

株主のため?利害関係者のため?経営者によって様々な見解があるでしょう。そこでグルグルまわる。現場のシゴトはしなきゃならない。ではどうするか?

会社の値段 (ちくま新書)森生 明 (著)より引用

皆さんに問いかけたいのは「むかしからこの国は空気に弱い」ってことです。だから「空気を変えること」が突破口なのではないでしょうか。

当局が言うから。機関投資家が言うから。きっかけは色々あるでしょう。その状況を前向きに「空気を醸すこと」から始めるのは一つの手だと思うのです。

情報発信には「空気を醸し、生み出し、変えるチカラ」があります。

そんなカンタンではないよね。という声が聞こえそうです。確かにその通りでしょう。理解されない場合は「お前ナニ言ってんだ」状態かと思いますが、ココまでで8,000字。大きな仕組みの問題だからこそ個人単位でも出来ることから考えたいと思います。

ここまで貴重なお時間を割いて読んで頂いた奇特な方に感謝して「後篇」を終えたいと思います。ありがとうございました。

著者の分析は古びるどころか現代社会の現実を鋭く言い当てている。「空気を読め」「アイツは空気が読めない」という言葉が当たり前に使われ誰もが「空気」という権力を怖れて右往左往している。そんな今こそ日本人の行動様式を鋭く抉った本書は、昭和52年の発表以来、40年を経ていまだに多くの論者に引用、紹介される名著である。


この続きとして、「株式発行している事業者」「機関投資家」「個人投資家」「金融機関」「IR支援企業」の方々が、フラットでオープンに出会え、満足を持ちかえれる「ミートアップ的なる新しいタイプのイベント」を、6月中旬~下旬を目指して準備中です。ご興味のある方、ご協力頂ける方は、XのDMなどでご連絡ください。皆さんと一緒に盛り上げていければと思います。

※イベント予告情報は
(旧twitter)である
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株式会社Figuroutの
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フォロー&チェックよろしくおねがいします。




IR noteマガジン 参加社一覧(2024年4月時点・順不同)

株式会社 Figurout/フィギュラウトは、企業価値に関わるデータを可視化するIRをDXするSaas「Hooolders Analytics」で、IRnoteマガジンを応援しています。


▼IR noteマガジン 参加社noteご紹介

※2024年4月時点


◆IR noteマガジン未参加の注目IR note


◆ここまで読んで頂いた方へ

貴重なお時間を割いて読んで頂きありがとうございます。このnoteに書ききれない情報が沢山あります。6月中〜下旬開催準備中のイベントにご興味のある方、一緒にやりたい方はXのDMへご連絡ください。新しい共有知がシェアできれば幸いです。




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