見出し画像

「ウクライナ戦争が開戦数週間にして終結していた可能性」~ウクライナーロシア長期戦化~”支援疲れ”のドイツで”幻の和平合意”が話題に②2022年3月「仮調印」ウクライナ-ロシア間の和平合意文書の内容をドイツ紙が論評


【画像①2022年3月、トルコのエルドアン大統領は始まったばかりのウクライナ戦争に際し、ウクライナとロシアの間に立って積極的に和平斡旋に努めた。イスタンブールでの両国交渉は「安全保証国」を立てることを含めて、かなり具体的な内容まで検討され、基本線での合意まで図られていたことが判明している。今回の「WELT」報道は重要な内容について明らかにしている。2022年3月、ゼレンスキー大統領と会談するエルドアン大統領。】





◆”幻の和平合意”(2022年3月)は戦争を止められなかったのか?




5月12日配信記事「ウクライナーロシア長期戦化~”支援疲れ”のドイツで”幻の和平合意”が話題に①ウクライナ側の根強いロシア不信も合意発効を妨げた」に続き、再度ドイツ有力紙「WELT」による”幻の和平合意”そのものに関する報道を紹介する。ウクライナ、ロシア双方により、2022年3月に「仮調印」された同文書は、プーチン大統領によって昨年末に内容を暴露された。


それまでは、戦争が始まってすぐのこの時期、トルコのエルドアン大統領の仲介によって双方の和平交渉がイスタンブールで行われ、かなり具体的な話が検討されたものの突如”発生”した「ブチャ虐殺」により、話がうやむやに終わった感があった。ちなみにこれ以前にもベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介した和平交渉が2度にわたり行われたが、全く不調に終わっている。


「インテリジェンス・ウェポン」としても、メルマガの時代に不調に終わったように観察された和平交渉の経過を見直して、何があったのかをまとめたいと思っているが、”ウクライナ支援疲れ”のドイツで改めて「まとまりかけた和平合意とは何だったのか」が取り上げられたことに注目し、特に今回は内容を検討する報道が出たことについて、これらがまともに取り上げられない日本の読者にお伝えしておきたいと考える。


以下、「WELT」紙が4月29日付で伝えた記事「ウクライナ戦争を終わらせることができたはずの秘密文書」の概訳をお伝えする。「WELT」によれば、ドイツ語圏メディアでは同紙が唯一、プーチン大統領が示した「仮署名」済みの合意文書(写し)を入手したのだという。例によって、読者の理解を助けるため、合意文書の内容を紹介、解説した記事中に見出しを筆者(篠原)の判断で追加した。



<戦端が開かれて数週間後に平和的解決の可能性があった~開戦2年以上を経ても、好ましく思える「合意文書」>




「ロシアによるウクライナ侵攻の直後、交戦両国の交渉担当者は平和条約を起草した。『WELT AM
SONNTAG』は17ページに及ぶその文書を独占入手した。2年以上にわたる戦争を経てもなお、この協定は振り返ってみると好ましいものに思える」


「ロシアによるウクライナ侵攻から数週間後、平和的な解決がなされる可能性があった。これは、2022年4月15日までに両戦争当事者が交渉していた合意草案が発効していたら、のことである。『WELT
AM SONNTAG』が入手した文書の原本によると、キエフとモスクワは戦争終結の条件についてほぼ合意した」


「いくつかの点だけが未解決のままであった。これらは、ウラジーミル・プーチンとウォロディミル・ゼレンスキーが首脳会談で直接交渉することになっていた。ーしかしこれは実現しなかった」



【画像② 2022年2月24日、突如ウクライナ全土にわたる長射程ミサイル攻撃や空爆による百数十か所の軍事拠点への同時打撃と共に首都キエフ近郊を含みウクライナ北部・南部・東部への奇襲的な侵攻をロシア軍は進めた。キエフ郊外のブチャでも両軍の交戦が行われたが、3月上旬にロシア軍が同地から撤退した直後、多数の「虐殺遺体」が同地に遺棄されていることが発見され、キエフ政権は「ロシア軍による残虐行為」と断じた。現在、これはイスタンブールで進められていた停戦交渉をご破算にするための方便として、何者かが工作したのではないか、と疑う説も出ている。22年3月段階のブチャの惨状。】





<モスクワは交渉でキエフの降伏を実現しようとした>




開戦直後、ロシアとウクライナの交渉担当者は敵対行為の終結に向けた交渉を開始した。ロシアの侵攻に世界とウクライナ人が衝撃を受ける中、モスクワは交渉の席でキエフの降伏を実現しようとした。…ウクライナが戦場でますます成功を収めたことを受けて、ロシアは自国軍の最大限進出ラインから退却した」


「3月末、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の仲介の下、イスタンブールで行われた初の直接交渉で、交渉はついに頂点に達した。ボスポラス海峡での会談の様子から、戦争の早期終結に対する世界的な期待が高まった。実際、双方はその後、合意案の作成に着手した」



<ウクライナが約束した「永世中立」=NATO加盟の見送り>

ここから先は

4,304字 / 3画像

インテリジェンスウェポン正会員

¥1,500 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?