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井上陽水「5月の別れ」レビュー

 井上陽水が1993年にシングルとしてリリースした「5月の別れ」。
 日本の自然豊かな風景を感じさせる名曲だ。
 毎年、5月になると、自然の中を散歩しながら歌いたくなる。

 爽やかで希望を感じさせるようなメロディー。だからこそ「別れ」というタイトルが似つかわしくないように感じられる。

 最初は、付き合っていた若い2人が5月に別れる歌なのかと思って聴いていたのだが、何ともしっくりこない。

 なぜなら、1番のBメロで「鐘が鳴り花束が目の前で咲きほこり」と来るから、結婚式の風景を思い浮かべてしまう。
 しかも、2番では「微笑み」が出てくるのだから、結婚式の風景だと思いたい。

 井上陽水は、楽曲の歌詞についてインタビューでも大抵「歌を聴いてください」といった発言ではぐらかす。だから、彼の歌詞には諸説が入り乱れる。

 私は、毎年、5月にこの曲を聴いたり、歌ったりしているうちに、勝手に自分でこの歌を解釈するようになった。 
 「5月の別れ」から私が想像するストーリーはこんな感じだ。
 
 青空の下の結婚式。バージンロードを歩く父と娘の2人。

 逆風をものともせずに結婚を選んだ若い娘と新郎。
 結婚式が盛大に行われた後、青空の下で幸せをかみしめる娘。

 結婚式の後、父と娘は別々の道を進む。
 「月と鏡」。これは、水月鏡花がモチーフだろうか。水に映る月と鏡に映る花。
 月も鏡に映るからお似合いということなのだろう。月の模様は、女性の横顔に例えられるから、離れて手の届かないところに行く娘の比喩かもしれない。

 2番のサビで出てくるレタスは、レタスだけのサラダ「ハネムーンサラダ」がモチーフという説がある。
 「レタス・アローン」をもじって「レット・アス・アローン(私たちだけにして)」。2人だけになりたいハネムーンということらしい。
 その2人に芽生えるとなれば、子供の誕生を意味していると考えられる。

 そして、時間が過ぎ去った後、父から愛された思い出を引き継ぐように、娘が子供を愛する思い出を残していく。

 そんな壮大なストーリーを感じてしまう。
 この解釈は、私の考えすぎなのかもしれないけど、抽象的な表現の歌から、想像を膨らませるのは、ファンの自由だと思う。

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