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【投資家対談vol.1 】グロービス高宮慎一が賭けたスタートアップ企業アルプ 事業の先に見据えた未来像

さいしょに

アルプは、先日総額12.5億円のシリーズA資金調達を発表いたしました。(記事)それにちなみ、今ラウンドのリード投資家であるグロービス・キャピタル・パートナーズの高宮慎一さんとの対談を社内向けに開催いたしました。
本noteはそちらの様子をまとめたものとなっております。アルプへの出資に至った経緯や、経営陣・Scalebaseへの期待など大いに語っていただきましたので是非お読みください!

高宮 慎一
グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー
略歴:グロービス・キャピタル・パートナーズでは、デジタル領域の投資を担当。投資先に対して社外役員として参画し、ハンズオンで支援。Forbes Japan’s  Midas List 日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング 2018年1位、2015年7位、2020年10位。
投資実績には、アイスタイル、オークファン、カヤック、ピクスタ、メルカリ、ランサーズ、しまうまプリントシステム、ナナピ、クービックなどがある。

伊藤 浩樹
アルプ株式会社代表取締役CEO
略歴:東京大学卒業後、モルガン・スタンレー、ボストン・コンサルティング・グループを経て、2013年にピクシブ株式会社に入社。新規事業開発や開発組織のマネジメントなどを経て、2017年に代表取締役社長兼CEOに就任。2018年8月、継続収益ビジネスを支えるクラウド販売・請求管理システム「Scalebase」を展開するアルプ株式会社を設立。

長年の想いが実って実現したパートナーシップ

高宮:本日はよろしくお願いします。グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、グロービス)は、アルプさんには、前回のラウンドでもラブコールしていたのですが、タイミングがあわず実現せずで。今回やっと念願叶って投資できました。中学の時から好きだった子に告白し続けて、大学生でやっと付き合えたみたいな感覚です(笑)。

伊藤:恐れ入ります(笑)。そうおっしゃっていただけて大変ありがたいです。我々もどこかでご一緒できればとずっと考えていたので、継続的に事業の状況をお伝えし、アドバイスをいただいていましたよね。今回の調達ではグロービスさんに大きくリードをとっていただき、本当に有り難かったです。
弊社が展開するScalebaseについてお話させていただいた当初と現在を比較して、大きく変化したと思う部分はどんなところか教えてください。

高宮:1つ目は、対象のマーケットの変化です。当初は、スタートアップあるあるですが、経営陣が気合いと人間力でエンタープライズ企業に立ち向かって、大きなアカウントを取ってくるという印象を持っていました。現在は、顧客のニーズとプロダクトのバリュープロポジション(提供価値)の親和性が一番高いSaaS業界はもちろん、顧客のニーズを抽象化することで、業界横断的に月額課金/継続収益ビジネスの事業者も対象だと捉えて、情報通信産業にも進出するなど対象マーケットを拡大させていますよね。このマーケット/ターゲットの広がり感は大きなポイントでした。

2つ目は、請求業務を効率化・コストや手間を削減させるツールから、クロスセル・アップセルの機会を顕在化させて売上向上に貢献する、経営者にも刺さるソリューションに進化しているのが大きな変化だと思います。簡単に言うと、ARPAがより大きくなるソリューションになっていました。

「世の中の課題に対する解決法と大局観を併せ持つ企業に投資したい」

伊藤:これまで、メルカリなどの有名企業に投資されていますが、どのような基準で投資先を選んでいるのでしょうか?また、アルプとはどのような共通点がありますか?

高宮:投資する我々は、スタートアップという船に同乗させてもらっている気持ちです。「この船長は信用できるか?逃げ出さないか?」という基本的な信頼はもちろんですが「みんながついていきたい船長なのか?」などを見ている部分が大きいです。僕は伊藤さんに初めて事業の話を聞いた時から「シャープな戦略と泥臭くやりきる力の両方を持っている、イケてる起業家だ」と注目していました。

加えて、世の中の大きな課題を解決するといったブレない大局観を持っていることが大事だと思っています。

請求業務の効率化、SaaSを中心に、プライシングモデルとしての月額課金/継続収益ビジネスの最適化問題は確実に起こる一方で、そこがあまりに属人的な対応になっていて、解決策が求められていることは明らかです。

それを解決するための、実際のHOW、例えば、ターゲットをどうするか、顧客の組織の中の誰をターゲットに営業していくのかなどは、走りながらPDCAを高速で回して柔軟に定めていくことが重要だと思っているんですよね。やってみないとわからないことも実際多いわけです。そうした、ブレない大局感の中で、柔軟な戦略性を持つ、それを併せ持つということがすごく大事だと思っています。

根っこの部分のWHATとして、大局的なニーズがちゃんとあるというのが一番大事なんです。その上で、その大局的なニーズを、チューニングしながら芯を捉えていく力、ラーニングの速さを持っていることが大事かなと思っています。

伊藤:そもそも私が起業した当時は、サブスクリプションビジネスの決済基盤を作れば、いろんな課題解決に繋がっていくはず、というくらいの考えで始めました。しかし、開発を進めていく中で、近い将来、“物がどれだけ売れたか”ではなく、“誰が、どのように、利用したのか?”、そして“どのように請求・決済するのか?”という、「利用」を軸にしたビジネスモデルにどんどん転換が進むと感じましたし、そこに適合した販売管理/業務システムが絶対に必要になると確信していました。

それが1年後なのか、はたまた10年後なのかもしれませんが「絶対にその時が来るとしたら、今からやるべきだ」と、私を含む共同創業者全員が自信をもって事業を推進してこれたのは、高宮さんのおっしゃる大局観を持てていたからだと思います。
戦略を変えながら大きいマーケットに向き合い続けることでチャンスが巡ってくることも、まさに体感と一致するところです。

成長フェーズに突入したら親離れ子離れの環境が重要

伊藤:おかげさまで現在、多くのお客様にScalebaseを利用いただいており、今回の調達を足がかりに組織の規模を2〜3倍にする予定です。こういう段階からアクセルを踏んで成長していける企業/足踏みする企業と出てくるかもしれませんが、例えばどういうところで明暗を分けるとお考えですか?

高宮:例えば、プロダクトマーケットフィットを探ったり概念実証しているフェーズの企業でいえば、強い創業者の属人性で勝負しているスタートアップも多いと思います。しかし、社員が50人を超えたあたりから、創業者やシニアマネジメントなど強い個だけで事業をスケールさせるには限界を迎える時がきます。いかに組織として、定型化したプロセスで、同じ成功を再現できるかが重要になります。

したがって、チームメンバーの採用方法や組織作りも変わってきます。ポイントはいかに一年先を見越した採用や組織設計を行っていくか、だと思います。
投資先だったメルカリでは、今この瞬間に必要な人材を採用するのではなく、一年半後の事業展開を見据えて採用活動を行っていました。一年半後、事業が進捗して、本当にその人が必要なタイミングになった時には、その人のラーニングも終わって、フル稼働できる状態になっている。そうして、メンバーが事業に完璧にフィットし、真価を発揮する時期と今後の展開を合わせにいっていました。

むしろ、その過程で経営陣は、そういう人をどう採用するのか、どううまくワークする仕組みを作るのか、どうオンボーディングするのか、最前線で戦うよりもそのためのインフラをつくることにシフトしていた印象です。

ともかく、個人や経営陣に依存せず、どう組織で勝つのか、どう組織の力を高めていくのか?が非常に大事になってくると思います。

調達によって、ある程度お金のボトルネックがなくなった今こそ、それをどう活用して、いかに早く山頂に到達するか?が大事なわけです。大胆な打ち手を打っていくことが必要ですね。先行投資で採用するなど調達したお金を上手に使って成長速度や角度を加速させてほしいです。

伊藤:ありがとうございます。組織の再現性をどう高めるか、は非常に大きいイシューと捉えていますが。足元で我々がやるべきこととしてはどういうものがありそうでしょうか?

高宮:社員100人ぐらいまでは、ギリギリ伊藤さんと接点がある環境ですが、500、1000人と増えていくと、伊藤さんが直接アルプのカルチャーや方向性を直接一人一人に伝承していくことは難しくなってきます。そんな時に、これからのアルプの中核を担う現在のメンバーやこの一年ジョインするメンバーが、アルプの今後の方針や展開をいかに深く理解し、体現できるかが大事になってきます。

現場のメンバーは、これまで経営陣が担ってきた戦略的な業務、例えば顧客の経営者とのコミュニケーションやプレゼンなど重要な仕事をどんどん奪っていくべきです。メンバーは経営陣を頼らず、経営陣も教育的な立場からあえて退き、成長するためのスペースを空け、親離れ子離れの環境になるのが良いと思います。

例えば従業員1000人以上とかのメガベンチャーでいうと、経営メンバーも20人規模とかでいるわけですよ。アルプも今の2-30名やまたこの一年入られる方々も、その20人になる将来のコアメンバーなんです。そして、そのみなさんが、アルプが500-1000名になっていたときには、アルプの文化を伝え、経営レイヤーで価値を出していけるようになってないといけない。

自分がアルプの社長だったらと想像して、空いたスペースを埋めていく、そうしてできることを最大化していくこと、経営陣の業務も引き継ぐくらいの気持ちで臨むことで、スタートアップの魅力の一つでもある、自己実現・成長の機会になるかと思います。

伊藤:ありがとうございます。まさに今のアルプがぶつかりつつある課題でもあり、また成長フェーズでの醍醐味も併せて話していただいて、非常に深く刺さります。

高宮:スタートアップに参画するからには、道があるかないか、ではなく、自分達がその道を作るんだという気概が大事だし、それができるのが醍醐味だと思います目指している世界観を実現するために、1年後、2年後に、こういう機能・チームが必要だ。だから今整えよう。うまくいくかどうかじゃなくて、いかせるという意志が大事だと思います。

伊藤:このお話もすごく奮い立たせられますね。しかし、伺えば伺うほど経営陣の想像力が問われるなと痛感します。ここは株主・投資家としてどういうふうに見ていますか?

高宮:ゴールへの解像度は、素晴らしい経営者みんな解像度が高いし、そんなブレもないんですよね。一方、HOWの解像度が低いことはままあると思っています。みんな初めてのことが多いので。どこに登るかはめちゃめちゃクリアな一方でどう登るかを知らないんですよね。登ったことがないからわからん。という。

だからこそ、シリアルアントレプレナーは途中までの登り方は、一定わかっているので、その点での有利さもあるというわけです。伊藤さんもピクシブでの経験は非常に有利だと思います。

ただ、いずれにせよ、いままで到達したことのない高みまでたどり着くと、初めてのこと、わからないことには絶対にぶつかっていきます。その時に、ゴールへの登り方をわかっているプレイヤーに、素直に教えを請いにいく。この柔軟性、成長意欲、素直さみたいなのを持っている人は、本当に成長し続けると思います。

本当に前人未踏の高みまで到達したら、ゴール達成のために、Think outside the box、既成概念に捕らわれず、考えられる人は強いと思います。誰もやったことない、登ったことがないから、ゲリラ的にでもいいからどうやってでも答えひねり出す、泥臭くてもいいから突き進んでいく。問題を0から定義して、ソリューションを出せることが最後の最後は大事だと思います。

顧客の真の課題を知るソリューションパートナーへ

伊藤:ありがとうございます。これからのアルプへの期待についても伺いたいです。高宮さんは、アルプ/Scalebaseの5年後、10年後はどうなっていると思いますか?

高宮:基本的にどんなサービスもプロダクトも顧客に役立つ力が大きければ大きいほど良いわけです。企業の課題は、領域や職種でも大小ありますが、解決すると最も価値が高い課題は、経営者での課題があげられます。現状の機能や今後の展開を鑑みるに、経営課題を解決する手段としてのScalebaseになっていくべきだと思います。

お客様に聞いても、「売上が伸びないんで困っています」といった表面化している課題だけが返ってくる場合も多いので、その裏にある真因を洞察する必要があります。そのためにも、プロダクト、セールス、CSそれぞれの立場において、お客様以上にお客様の事業を知り、価値を出せるソリューションパートナーにならなければいけません。

伊藤さんたちなら、アルプなら、時価総額1000億円、5000億円、1兆円の高みを目指せる企業だと感じ、応援しようと決めました。

伊藤:ありがとうございます。資金調達の過程でも、「時価総額5000億、1兆円規模の企業を目指す規模にスケールさせますよね?その覚悟ありますよね?」と都度お話いただいてましたよね。時価総額が全てではないですが、少なくとも「そう言うスケールの事業を作っていくよね?それなら一緒に走り切るよ」というメッセージを強くいただいたことが自分にとっての励みでもあり、気が引き締まる思いで、日本に深く根ざす経営インフラを作らねばならないと覚悟を新たにしました。

現在、採用にリソースを割いて、さまざまな職種のメンバーの拡充に力を入れています。プロダクトの機能やデザイン、CSなど日々ブラッシュアップを重ねて、市場をどんどん広げていき、この領域で確固たる位置を確立します。

高宮:アルプにそういう期待をさせられる根っこは、やはり伊藤さんたち経営陣、今いるメンバーの皆さんが常に成長意欲が高く、視座も高いところにあると思います。アルプに参画しているメンバーの皆さんは、全て自分たち次第の大振りのチャレンジにワクワクして、ここにいるわけですから、自分たちで自分たちの思い描く未来を実現させましょう!

伊藤:そのお言葉を胸に未来にフルスイングしていきます!ありがとうございました!

さいごに

いかがでしたでしょうか!
アルプでは、日本に深く根ざす経営インフラを創るべく、ともに取り組んでいく仲間を切実に求めております。全職種・全領域で絶賛採用中です。
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