『VCから見た「伸びるSaaSスタートアップの特徴」』 セールスフォース・ベンチャーズ 日本代表 浅田 慎二氏 メモ

SaaS REAL 〜急成長SaaS企業の“リアル”経営ストーリー〜で、セールスフォース・ベンチャーズ日本代表浅田慎二さんの、『VCから見た「伸びるSaaSスタートアップの特徴」』 というお話が面白かったので、またメモでまとめておきます。

(大前提)VCから見た伸びるスタートアップの特徴

1. 原体験に基づいた事業であること
・長い経験があるということを求めているわけではないが、何がしかの体験があるとないでは全然違う
・商機に魅了されて参入するとやっぱり弱い、バックグラウンドなしにAI/ブロックチェーンにミーハーにいくとかは刺さらない(決してAI/ブロックチェーンがどうということではない)
2. 強烈に問題解決に対する情熱があること
・解決したいパッション、このままほっとくと3時間話し続けちゃうなという勢いがあるかどうか
・かつ、抽象度の高い話も具体的な話も解像度高くできること
3. 強烈に具体性があること
・プロダクトレベルで具体的にビジョンがあることがいい
・経歴がピカピカだろうが、お客様が接するのはプロダクトでしかない
4. 強烈な仲間がいること
5. 強烈なファンがいること
・ニッチでも少なくてもいい。明確であればあるほどいい

VCからみた伸びるSaaSスタートアップ

大きくは、人、セールス、プロダクトの3観点で分かれる

■人
その1:因数分解力&逆算思考 T2D3 3倍3倍2倍2倍
・初年度からの3倍3倍ということではなく、プロダクトが立ち上がった時からの3倍3倍という意味
・The Model(Marketing→Inside Sales→Field Sales→Customer Success)はまさにこの因数分解と逆算を体現
・投資先でもThe Model実践企業は強いし高い成長率をあげている

その2:コツコツ型(長期戦と理解している) T2D3に囚われすぎない
・特にPMF得るまではなかなか長い
・Docusignは2003年創業、2018年IPO

その3(人):Domain Expertise
・領域の専門家であればあるほどいい
・ビジネスモデルの合理的じゃない点・どこのプロセスを刺しに行くのかとかを理解できている方がいい(そりゃそう)

■プロダクト
その4:外注型ではない(他社に開発を外注しない)
・製品のバージョンアップのスピードが極めて遅い
・メイカーなのにメイクしないのはSaaSではない
・外注でスケールする会社は一切ないと言っていい
・外注率が高い会社ほどチャーン高いしスケールしない
・だから、エンジニアの仲間を見つけよう!

その5:フォーカス型
・対象顧客が絞れている(一言でこのお客さんと言える)
・機能面でone wowがある。遠くまで伝播するから
・wow = ワークフローが極めて短いとか、何か一言でいえる特徴があること

その6:社名=サービス名である

その7:サブスクリプション売上割合が80%以上(コンサル的サービスに依存しないこと)
・コンサル売上のが単価も高いし、とれてしまうことがあるのでそっちに行きたい
・しかしコンサルは労働集約型だし、再現性がない
・大手のSaaS企業はコンサルサービスほとんどやっていない(依存度低い)

その8:ワークフロー型 & SoR型:解約率が低くなる特性
・ワークフロー型:複数の人・複数の部署にメリットがあるのは解約されづらい。起案者にとってめんどくさくても決裁者にとってはいいとか。
・SoR(System of Record):記録型、データが溜まる型
解約したらデータがきえちゃう。csvがダウンロードできると言われても、しょうがない

その8:顧客から見たときの明確なROIを提供できるか
・このプロダクトを使って何が良くなるのか?それを明確にする
・セールスフォースの例:使ったお客さんに前年度比の売上20%成長できますとコミットした
・売上アップSaaSは売上が伸びる話なので、決裁のハードルがコスト削減とは違ってやりやすい
・コスト削減SaaSは、そもそもコストセンターの予算を取るということになりのなかなか大変
・Sales & Marketing Tech(売上アップSaaS)にVCも注目、集中している!

■セールス
その9:複数セグメントへ展開可能(SMBからEnterpriseへ)
・シリーズBCDのフェーズにはなるが、スケールを意識しながらプロダクトのUI/UXを設計しておく。いつまでもSMBとか固定のセグメントにいないこと(いてはダメ)、SMBならそこから上のセグメントに伸びていける設計で考えられているか
・SMB → MID-MARKET → ENTERPRISE
・No Touch → Low Touch → High Touch

その10:アカウントExpansionが可能(Churnが低いのが大前提)
・お試しができて、メリットができて、関係者が巻き込めていて、(チャーンも低い)なら、アカウントの拡大はかなり見込めるはず
・2016-2018のセールスフォースの売上:売上の25%程度しか新規じゃない
・アカウント数が増える、別製品を買うといった、既存からの売上(Expansion)ができるかどうかが、セールス積み上げの鍵

FAQ

Q1. サブスクリプションでいくべきという中でのコンサルの位置付け
(PMFする前はコンサルしないとキャッシュ回らないとかもありそうだけど、どういう建付でコンサルを見るか?)
 
99%は、コンサルをしてプロダクトを作っていくとかキャッシュ回すとかそういう話になるし、それはそれでいいと思う。ただし、PMFが見えたらコンサルサービスは捨てて行くこと。それくらいクリアに分けておいたらいいと思う

Q2.社名 = サービス名、これはいつやるべき?
シード期、言い換えるとピボット期。シリーズAの段階でそろってないと自信のなさも感じてしまう

Q3. T2D3が達成できていなくても、何があれば投資側として伴走していけるのか?
最重要指標は「チャーン」ここの問題を解決しない状態で他のKPIをいじっても何も意味がない!
チャーンレートは、大企業向けのプロダクトだと、月次で0.8%未満、年で10%未満。SMBは20-30%が許容範囲。
SaaSはチャーンレートを見てそこが安定していれば、顧客獲得コストが高かったり他の数字が悪くても、一緒に伴走していける

Q4. 最初からきれいに逆算で積み上げれたり、オペレーションをかっちりできるのだろうか?

・オペレーションがThe Modelみたいに因数分解できない問題は、人数が少なすぎることにまず起因する。毎日のタスクが少数に重なり過ぎている。
・そして、そのためにVCマネー、。多少のPMFを見せれば今の市況環境も踏まえると、シリーズAで数億円前半は全然不可能ではない。
・そうやって獲得した資金で3人でやっていたことを10人、10人を30人と増やして行く。その上で因数分解できるオペレーションを作り、役割を分担させて行くのがいいのではないか。そのための参考はThe Model
・2人だったらマーケット+インサイドセールス & フィールドセールス+カスタマーサクセス、そっからどんどんチームがわかれて行く。

Q5. 初期のプライシング設計や、顧客にフィットしているかの検証をどうするか?
・まず、無料で出さないこと。 
・有料で行く時、聞くべきことは、(あえて単純化すると)「このサービス御社で作るとき、いくらかかりますか?」ということ。つまり、メイク or バイの二択でしかない
・大企業は、そもそもリソースが潤沢でないとするとメイクの時は、外注するしかない。その時にそれいくらの話ですよ?と答えられるか?
・事前に、SIerとかの友人にちゃんと外注するとした時の答えを聞いて、自分たちでもっておくとなお強い
・始めるときはなるべく高くから始める。下から高くしていくのは大変だから。

Q6.チャーンがまだ出てないときに、何を見るか?
・「アクティブ率」をみる
・見る角度としては、「1. ログイン率 2. データ利用量 3. ダッシュボード利用率」とかが信用できる情報だと思う
・ちなみに、解約するお客さんに対するアンケートは、適当な理由が多い、ほんとのこと言ってくれない。つまり手遅れ。とらないよりはとった方がいいとはいえ!

Q7. SaaSであるべきは「年間契約」というが、それではお金を出しにくいというお客さんとのジャッジをどうするか?
・12ヶ月のメリットを訴求するほかない。とはいえ、なんだかんだ、月次にも意味がある・・・
・12ヶ月はキャッシュフローが安定するし、売上を積みませている雰囲気はあるけど、クライアントにフィットしてるかわからないという問題もある
・よって、どM的に月次で頑張って行くと言う道
・ただ、法人営業の月次契約は受発注だけで終わるので、現実的には3ヶ月-6ヶ月がいい(セルフサーブならまだ月次でもオペレーション上なんとかなるが)
・それでも、というのなら、もうフリートライアルにするとか、目の前ででも見せるのでフィードバックくれとかなんかそういう話なのではなかろうか
・ちなみに、フリートライアルは短ければ短いほどいい。一ヶ月以内。だいたい長くても最後のちょっとしか頑張って触ってもらえない

以上!

なお、セールスフォース・ベンチャーズが発行しているこちらにノウハウが集約されてる模様ですのでご参考まで。
SaaS スタートアップ 創業者向けガイド

最後に

私もSaaS事業で起業したばかりですが、創業期を支えてくれる、一緒に組織とプロダクトを創っていける仲間を募集しています!

ご連絡お待ちしています!気になられた方はこちらのMessengerからでも!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?