quora回答:何故、様々な国の神話に三叉槍が登場するのでしょうか?


「三叉槍」については、
「三叉」の部分と、
「槍」について分けて説明いたします。

〇「三叉」について

・3は基本的な神聖数のひとつ

佐藤 靖彦さんがご回答されているとおり、
https://qr.ae/pyJslR

「3は基本的な神聖数のひとつ」

というのが主要因です。

西ヨーロッパでは「三機能仮説」
インドでは「ヴァルナ(の再生族)」
が特に関連します。

・「3つの階級の民の象徴」

後述しますが「槍」がある種の「王権」「王笏」であり、

「民を支配するもの / 民の繁栄の責務を追うもの」

としての象徴の側面があるため、

「3つの階級の民の象徴」としての「三叉」

ということです。

・「三界」・支配者・主宰神の象徴

天上(神界:空・大気とは別)、
地上(空・大気を含む)、
地下(冥界)
「三界」の象徴
そしてその支配者・主宰神という側面もあります。

※後年に、新しい神によって主宰神の座・信仰・神話を失ったけれども、
三叉槍というシンボルは残った、というケースもあり得ます。
*
また、
メソポタミア神話では「世界樹キスカヌの三界」、
北欧神話では「世界樹イグドラシルの三界」
「(三尊形式での崇拝における)トール・オーディン・フレイ」、
エジプト神話では「オシリス、イシス、ホルス」、
インドでは「トリムルティ」、
道教では「三清」、
日本神話では「造化三神」「三貴子」などなど、
「主宰神群」という側面もあります。
*
<参考>
https://en.wikipedia.org/wiki/Trident

・ポセイドンとオシリス/アンジェティのネクハクハ

・ネクハクハ/殻竿(からざお):
「三つ」の殻がついた竿。〝ネクハクハ〟は力と権威を表している。

アンジェティは前王朝時代に遡る最も古い神さまで
(エジプト神話の主宰神)オシリスの先駆者です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Andjety

オシリスの妻イシスは、ポセイドンの妻デメテルと同一視されています。

イシスの習合先ハトホルは、
シリアのビュブロスにおいて「海の貴婦人」という称号で呼ばれており、
アスタルテ・アナト・アシェラ/アーシラトと同一視されています。

これらの神々は、イシュタル/イナンナと同一視されています。

これらのことから、オシリスが習合したアンジェティが持つ

「三つ」の殻がついた竿:ネクハクハ

が、元々は「大地神であったポセイドン」について、
その妻デメテル
イシス・ハトホル・アーシラト(海の貴婦人)・イシュタル/イナンナ
へと繋がるので、「海の神」へと変化させられて、
漁撈道具である銛や、(元主宰神としての)戦神としての槍へ変化した結果

「三叉」の槍:トリアイナ、トライデント

になった、という可能性があります。

下エジプトで灌漑農耕が開始されたのは

「ナカダ第2期(紀元前3400~3200年頃)」

と考えられているが、この頃にエジプトに
農業や金属精錬、煉瓦製造、文字、埋葬の技術を持ち込んだのが

メソポタミアのシュメール文明に関わる人々

だったと考えられている。

そして、オシリスとは彼ら(シリア地方)が持ち込んだ外来神であったらしい(※或いは、彼らの指導者の神格化との説も)。

エジプトでは神々は獣や鳥の頭部を持つ姿で描かれていたが、
オシリスが最初から人頭の神であるのもそうした理由からかと思われる。

オシリスの語源には諸説があり、一説にはマルドゥクのエジプト読みであるとも言われるが、神性に関しては下エジプトで信仰されていた豊穣神のアンジェティなる神と習合した事で定着したとされている。

https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/33175.html

(オシリスの妻)イシスはまた、ギリシャやローマの神々や、他の文化の神々との広範なつながりを持っていました。

彼女はギリシャのパンテオンに完全には統合されていませんでしたが、さまざまな時期に、デメテル、アフロディーテ、または牛に変えられギリシャの女神ヘラに追われた人間の女性イオなど、さまざまなギリシャ神話の人物と同一視されました。

デメテル崇拝は、ギリシャ到着後のイシス崇拝に特に重要な影響を与えた[185] 。

紀元前 2 千年紀のフェニキアビブロスでは、(イシスの習合先)ハトホルは地元の女神バーラト ゲバルの姿として崇拝されていました。

https://en.wikipedia.org/wiki/Isis#In_the_Greco-Roman_world

フェニキアのBaalat Gebal ( b'lt gbl ) は、ビブロスの貴婦人」と翻訳できます。
「Baalat Gebal」が固有名ではなく形容詞として理解されるべきであることを証明しようとしばしば試みてきました。[13]

彼女はアシェラの現地の形態としてさまざまに特定されており、ウガリットアナト(エドワード・リピンスキーの示唆)では「海の貴婦人」と呼ばれているため、特に港町の守護女神として適切であると主張されている。一般にアスタルテ

https://en.wikipedia.org/wiki/Baalat_Gebal

・ポセイドン、樹木崇拝と馬、地下水の神

シリアやアナトリアなどのアジア地方においては、
樹木崇拝と馬を結び付ける信仰があり、かつ、
地下水(冥界)を司る神だったという示唆もあるので、
上では妻デメテルとイシュタル/イナンナの繋がりも考慮すると、
メソポタミアの「エンキ」に由来するのかもしれません。

エンキの名前は「地の主」、大地神を意味します。
エンキの元とされるアプスー/アビス「地下(冥界)の海」の神です。
エンキの神殿の名前はエ・アブズの家)。
そして、オシリスの「聖地」はアビュドスです。

エンキの妻ニンフルサグは、一方で、エンリルの妻ニンリルの別名であり、その別名としてさらに「ベーレト・イリ」が挙げられています。
「ベーレト」は上の「バーラト(ゲバル) = ハトホル」と同じです。

そうであれば、
ポセイドンとデメテル、
オシリスとイシス、
エンキとニンフルサグ
(あるいは次の世代の、ドゥムジ/ダンムズとイナンナ/イシュタル)

同じ、あるいは非常に近いと言えるかもしれません。
ベロッソスの言う「物語の骨子」ですね。
※「冥界下り」「死と再生の植物神」「冥界の主/三界の支配者」

この場合、三叉の槍トリアイナ、トライデントというのは、
世界樹キスカヌの小枝(メー)モチーフ・由来になっていて、

・ヘルメスの杖ケリュケイオン(アポロンから貰った小枝)や、
(アポロンは太陽の運行に車を使う)

ケイロン(半人半馬)の聖なるトネリコの槍(小枝)
ポセイドンの父クロノスが馬に変身して(中略)生まれた子供)

オーディンの槍グングニル(トネリコの枝)
オーディンの馬スレイプニル)

などと同じ起源
の可能性があります。

また「世界樹の小枝」には、
金枝篇に登場する伝承や、
ウェルギリウスの冥界下りにおける、ペルセポネーの金枝、
ヘラクレスの冥界下りにおける、ポプラの枝の冠
ギルガメシュの海底(冥界)にある不老の草(枝という説があり)
オシリスの死と再生の祭儀においても「小枝」が使われます。

これらもまた「三界」の支配者、という象徴だと言えると思います。

ポセインドンは、元来は大地や地震、地下水を司る地下世界の神だったと言われているが、クレタ島の怪物ミノタウロス伝説と絡め、牛を聖獣とするミノア文明の豊穣神、或いは天馬ペガサスや馬祖アリオンなどに代表される馬との関わりの深さから、近東の印欧語族系が崇拝していた馬と水の神がその原型であるとも言われる。

https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%9D%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3

セオフィラス・G・ピンチェスは「ニンニルすなわちベーレト・イリは、ニントゥ、ニンフルサグ、ニンマフなど7つの異名を持つ」と記している[1][2]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%AB

コーイアクの月の終わりに、オシリスの死と再生の祭儀のいくつの側面は樹木崇拝と関係。
エジプトイチジクの樹で作られた牝牛の像の前で行われる。
牝牛の像には、頭のない人間の像が埋め込まれ、イシスから転化したハトホルであるシェンティを表現。
数日後の日没に、クワの樹で作られた棺に納められたオシリス人形が墓に葬られる。
翌日の夜明けに、一年前に、埋められた人形が取り出され、エジプトイチジクの小枝の上に、置かれた。

世界樹木神話 https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%A8%B9%E6%9C%A8%E7%A5%9E%E8%A9%B1-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B9/dp/4896949196

ウェルギリウスはアウェルヌスの聖林の中に
ペルセポネーの聖なる樹木「金枝があり、
その枝を折り取ってペルセポネーに捧げることで、
生きたまま冥界へと下って行き、また帰って来ることができるとしている。

アイネイアースは巫女シビュラの指示に従ってこの枝を折り、
また渡守カローンに枝を見せることで冥府の川を渡り、亡き父アンキーセースの霊と会うことができた[21]

また、ディオニューソスギンバイカの木と引き替えに母親のセメレーを冥府から帰している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%9D%E3%83%8D%E3%83%BC

〈冥界〉へとへーラクレースが下りていったとき、彼は、ポプラの枝で冠を作ってもらった。

冥界の神ハーデスは、レウケーをポプラに変えて、地獄の入り口の門に置いた。

したがってパエトーンの姉妹が白いポプラに化したことは、そこで一団の巫女たちが部族の王の予言をとりついでいるあの黄泉の島のことを暗示しているのである。

彼女たちはまたはんの木(klhvqra 学名Alnus glutinosa)にもなったというが、そうだとすればますますこの考えかたの正しいことがわかろう。

なぜかというと、このはんの木は、アドリア海の湾頭、ポー河の河口から遠くないところにある黄泉の島キルケーのアイアイエー(「嘆き」)をふちどって生えていたからである(ホメーロス『オデュッセイア』第五書・64および239)。

http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/poplar.html

〇「二叉」について

・「水脈占い」の杖と、ケリュケイオンの「二匹の蛇」

古代の西洋においては「水脈占い」で杖を利用していました。

二叉に別れた一本のハシバミ/ヘーゼルナッツの
を杖として利用していました。

ハシバミは水と深い関係があり、ケルトやゲルマンでは魔術と結びついています。
※ポセイドンも水(地下水・海)の神です。

この杖は、ヘルメス神のケリュケイオン(に絡まる2匹の蛇)に由来するものです。
出典:ジャックブロス著:「世界樹木神話」

そして、ケリュケイオンのページによれば


ヘルメースの黄金杖 (χρυσόρραπις) は葦笛と引き換えに[14]、
あるいは友好のしるしとして[15]
アポローンからもらった黄金造りの牛追い棒(または小枝) →「金枝」
だという神話があり、
『ホメーロス風讃歌』の第四番ヘルメース讃歌に謡われている[16]。

この杖が象徴するものは
平和・医術・医学・医師[2]・商業・発明・雄弁・旅・錬金術など[3]。

しばしば「杖にからむ蛇」として表される螺旋(らせん)は
生命力や権威などを象徴

二重の蛇の螺旋は,いずれも超自然的な力を示す

https://ja.wikipedia.org/wiki/ケーリュケイオン

とされています。

「二叉」における
ケリュケイオンの蛇が象徴する権威・超自然的な力
というのは、「三叉」と似たようなものと言えると思います。

※「二叉」と水・ポセイドンとの繋がりは
「三叉」との繋がりよりも、「神話の伝搬による影響」だと思います。

・「二叉槍:バイデント」について

引用にあるとおり、
「釣り道具(海での漁労の道具)」
農耕道具」
としての象徴であり、生産活動・豊穣神としての象徴でもあります。

また、「プルートーと二叉槍」「ポセイドンと三叉槍」が混同されている
ケースについての示唆があります。

そして、上で書きましたとおり
空、地、海の領域を統一」
という
「三界」・支配者・主宰神の象徴
という象徴でもあります。

古代エジプト人二叉槍を釣り道具として使用し、
時には糸に取り付けたり、時には風切羽で固定したりしていました。
*
ローマの農業では、ビデン( genitive bidentis ) は
両刃の引き鍬[5]または二股のマトック[6]であったが、
「マトック」と「熊手」の現代的な区別は押し付けられるべきではない。
岩が多く硬い地面を砕いて変えるために使用されました。
*
古代エトルリアのヴルチで発見されたキュリックスは、
かつてはプルートー と二叉槍を描いたものと解釈されていた。
奇妙な二股の器具を持った黒ひげの男が、ペルセポネと思われる女性を追って手を伸ばしている。

しかし、この花瓶は不適切に復元されており、このカップルはポセイドンとアエトラである可能性が高いです。
*
ケンブリッジの儀式主義者 、A.B. クックは、
二叉槍をローマのパンテオンの主神であるユピテルが使用する道具であると考え、ローマの二叉槍の儀式、つまり落雷に打たれた場所を犠牲の羊によって聖別する儀式と関連させ、二叉槍と呼ばれた。

したがって、ユピテルの手の中の三叉槍または二叉槍は、
二股に分かれた稲妻
を表します。

稲妻、二叉の槍、三叉の槍で、空、地、海の領域を統一し、
不吉な3段階を表している。

それぞれは神の意志を伝えるために使用される一種の稲妻を表している。
彼はエトルリア人のリディア起源を認めたため、
両方の形態を同じメソポタミア起源にたどり着きました。

三叉槍と二叉槍は多少互換性があるかもしれないということは、
ビザンチンの学者によって示唆されており、
ポセイドンが(三叉槍ではなく)二叉槍で武装している
ことに言及している。

https://en.wikipedia.org/wiki/Bident

バイデントの形状が農業用フォークに類似しており、上でもその象徴として扱われていたことから、古い大地神・豊穣神としての
牧神パン/ファウヌス/プーシャン
との関連性
も示唆されています。
プーシャンは冥界神としての側面も持つ。

魔女が崇めるのは牧神パン。森はネメトンだったはず。
魔女の箒はヘルメスの杖であり、牧神パンとの関係で男性器に関わる。
箒にまたがるcalifourchonというのは、ブルトン語で睾丸kallと、
悪魔を想起させるフランス語の農業用大型フォークfourcheとの合成語。

世界樹木神話

・「戦神」化による、武装化

ある神が、時代が下ることによって

「戦神の側面が加わって、武器を持つ」

ということがあります。

サラスヴァティ → (八臂)弁財天:宝棒・戟(槍・矛)・弓矢・剣」

クベーラ/ヴァイシュラヴァナ 
→ 毘沙門天:(チベット仏教化した際のクベーラは)」

マルスが軍神になったのも、保護していた農民が、土地を守るために兵士にならなくなってからのこと。もともとは、花咲く自然の神だった。」
<世界樹木神話から>

などがそうです。

・「武器」としての変化

上で書いたヘルメス神というのは、
東方へ伝わると
ファッロー → クベーラ → ヴァイシュラヴァナ → 毘沙門天
へと変化していきました。

ですので、
ヘルメス神の杖ケリュケイオンと、毘沙門天の槍は同じ
ものです。

このことから、
「杖が槍へ変化」
していくことが分かります。
https://www.youtube.com/watch?v=IdxJe1MqVaE
https://www.karakusamon.com/2016k/tanabe_katumi.html
*
ケイロン/キロンの聖なるトネリコの槍も、
ケイロンがアスクレピオスの師であり、
アスクレピオスの杖は、ヘルメスの杖ケリュケイオンと同じ
伝令杖カドゥケウスなので
これも「杖が槍へ変化」したものと言えると思います。

*******

「持っていた道具が変化する」というパターンもあります。

「ニンギルス/ニヌルタ:2本の棍棒 
→ (同一視される)ザババ:2本のシミター

「イナンナ/イシュタルのシタ(cita)とミトゥム(mitum)という
2つの鎚矛(槍)は、棍棒(杖)だとされる場合もあます

・「別の姿 / 別の神格」

別のパターンでは「持っている道具が変化」するのではなく、
「別の姿 / 別の神格」とされることもあります。

「パールヴァティ/マハーディーヴィ → カーリー/ドゥルガー」や
「ハトホル/イシス → セクメト」などです。

・本来は「王笏・杖(非武装・王権の象徴)」

HB Walters による競合する提案によると、
ポセイドンのトライデントはゼウスの蓮の笏に由来しており、
ポセイドンは海洋の側面においてゼウスであるとされています。[13]

https://en.wikipedia.org/wiki/Trident_of_Poseidon

これらと同じように、

本来は「王笏・杖(非武装・王権の象徴)」

であったものが、主神として
「他の部族や国家との戦争に参加
することになると、戦神としての側面も求められることになり、

「槍(武装・王権の象徴)」へと変化

した、ということです。

古代ローマにおいてsce-ptrum(王笏)という単語が
ギリシア語から入るまではhastaという語が使われており、
これが「槍の柄としての王杖を意味していた」ことを指摘している

hastaはラテン語においてまさに

槍の柄としての《王杖》 

を意味していたと思えるのである。

ゲルマン民族の王杖に関していえば、
ラテンの歴史家たちはそれを《槍》contusと呼んでいる。

https://core.ac.uk/download/pdf/228494492.pdf

この辺りは「テュルソス」と関係があるかもしれません。

テュルソス(古代ギリシア語: θύρσος、thyrsos)は、
ギリシア神話に登場する

オオウイキョウでできており、ブドウのツルや葉などで飾られ、
先端に松かさをつけたものである。

タイニアと呼ばれるリボンのようなものがつけられる(※)場合もある。

テュルソスは宗教的儀礼や祭儀のにおける、神聖な道具であった。

テュルソスは葉の中に鉄の突起を隠しており
ディオニューソスやその信者達が持つとき、
恐るべき武器に変わったともされる[4]。

そのため、テュルソスは

「ブドウの葉に包まれた槍」「木ヅタを巻いた槍」

などと表現されることもあり[5][6]、その先端の突起が狂気を引き起こすと考えられた[7]。

「テュルソス」とカンタロスは、「王笏」と宝珠と同様に「男性性と女性性」の組み合わせであるとされる[10]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/テュルソス

(※)このリボンは、卜占杖に付けられるリボンで、蛇だとされています。つまり、ヘルメス神の杖ケリュケイオンに由来します。
ですので「杖が槍へ変化」したと言えます。

<似たようなことを考えている人もいました>
蛇ではなく鳥になっていますが、

 ・「リボン」が「鳥」として解釈されるようになった

 ・イナンナの世界樹フルップ(小枝・杖)に住み着いた
  アンズーと蛇が入れ替わった。

 ・オシリスの息子ホルスの杖が、
  (ポセイドン同様に)ギリシャ神話へ引き継がれた

 ・エジプト・ビュブロスを含む近東において、
アッシュル神を始めとして
   「鳥(有翼円盤)」を「主権」のシンボル
としていたので、
   
それを主権を示す杖の先端に描いた

などの可能性が考えられます。

後世の絵画でハデスは二叉槍を持つ姿で描かれ、セラピス神としてのハデス(プルート)像の再現想像図の手にも同じような物がある。

しかし王座に座る姿なら、手に持つのは王笏では
ここからは勝手な想像だが、陶器に見られるハデスが持つ翼を広げた鳥がついた王笏が、時代を経て二叉槍に変化したのでは

ゼウスも「翼がついた生物が先端についた王笏」を持つ姿で描かれる。
1枚目は生きた鷲が止まっているようにも見える。
3枚目は鳥ではなく有翼の人物。
4枚目のイアソンの叔父ペリアスが持つ王笏の先端にも鳥がついている。

https://twitter.com/orange_milk_tea/status/1289019868809842689

(ホルスの姿は)隼の頭をもつ人間あるいは、「隼の頭を着けた杖」を携えたの頭をもつ人間として表現された[4]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%82%B9

有翼円盤は、古代近東(エジプト、メソポタミア、アナトリア、ペルシャ) における神性、王権、権力に関連付けられた太陽のシンボルです。

古代エジプトでは、このシンボルは古王国時代(紀元前 26 世紀のスネフェル[要出典] )から証明されており、多くの場合、両側にウラエウス(コブラ・蛇)が配置されています。

初期のエジプトの宗教では、ベフデティのシンボルはエドフのホルスを表し、後にラー・ホルアクティと同一視されました。

彼のイメージは、翼のあるソーラーパネルとして櫛の本体に刻まれた碑文の中で最初に発見されました。
櫛の時代は紀元前約3000年です。
このような翼のあるソーラーパネルは、後に第5王朝のファラオ・サフラーの葬儀写真で発見された。

ベデティはファラオの守護者とみなされています。
彼の絵の両側には、コブラの頭を持つ女神ワジェト(※ウアジェト。ホルスの左目。)の象徴であるウラエウスが見られます。[2]

詳細情報:アシュール (神)
紀元前約 2000 年頃から、このシンボルはメソポタミアにも現れました。
それは王族の象徴としてアッシリアの支配者のレリーフに現れ、ラテン語ではSOL SUUS (文字通り「彼自身、太陽」、つまり「陛下」) として転写されます。

ギリシャ:翼のある太陽は、伝統的にヘルメスの杖であるカドゥケウスのノブとして描かれています。[要出典]

https://en.wikipedia.org/wiki/Winged_sun

〇「王笏」と「王権」について


上で引用したpdf資料が詳しいです。
一例を抜粋しますと

太陽神と司法神を兼ねるシャマシュ神が、バビロン第一王朝の第六代として即位したハンムラピ王(治世B.C.1728~1686年頃)に「王笏と王冠(環)」を手渡している

https://core.ac.uk/download/pdf/228494492.pdf

という風に、神から王権あるいはその象徴として王笏が王へ渡されます。


その他の例は以下のとおりです。

杖は古くから権威の象徴だった。
ゼウスやハーデースが持つ王笏には鳥の装飾が先端に付いている。

*
エトルリアでは壮麗な王笏を王や上級神官が使った。
古代ローマの王笏はエトルリアから派生したものと見られている。

*
中国:象形文字「尹」は王笏(權杖)の意であり、
命令をするための口を加えた字が、
東アジアの漢字文化圏の王朝でみられた君主の称号「君」である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/王笏

セプターは、王権または帝国の記章のアイテムとして統治君主が手に持つ杖または杖であり、主権の権威を表します。

ワスやその他の種類の杖は、古代エジプトにおける権威の象徴でした。
このため、たとえ全長の杖であっても、
しばしば「セプトル」と呼ばれます。

最古の王笏の 1 つは、アビドスにある
カセケムウィの第 2 王朝(BC2890 – 2686の墓で発見されました。

*
セプターはメソポタミア世界でも中心的な役割を果たし、
ほとんどの場合、主権者や神の王室の記章の一部でした。

これは、文学および行政文書および図像に示されているように、
メソポタミアの歴史を通じて続いた。

メソポタミアの笏は主にシュメール語でĝidru、
アッカド語でḫaṭṭum と呼ばれていました。[1]

*
ゼウスまたはハデスが王笏を持っているとき、その先端は鳥です。
それは神々の王でありオリンポスの支配者であるゼウスの象徴でした。

*
古代の論文によると、
王を民と結びつけていたのは 王の槍 ではなく
タミル語で「センゴル」として知られる 正義の王笏 であり、[5]
王が民を守っていた限りにおいては、王自身の王笏であったという。
良い規則が彼を守るだろう。[6]

*
チョーラ王(BC300~)などの古代インドの王国や王朝では、
戴冠式の際に象徴的な笏を使用する習慣がありました。[7]

https://en.wikipedia.org/wiki/Sceptre

<参考>:ヘラ(ゼウスの妻・女王も王笏を持つ。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10174030055
https://sumikuni.hatenablog.com/entry/2021/02/22/065451

<参考>:ジュノー(ユピテル/ジュピターの妻・女王)も王笏を持つ。
こちらは王笏の場合と、と盾の場合がある。
https://www.tiara-int.co.jp/SHOP/250310.html
<参考>:ここでは「デーメーテール♀(王笏と小麦の束)」
ゼウス♂(雷霆と王笏?})」が紹介されています。
https://note.com/anima_solaris/n/nb3813bb99974

王の責務は豊穣。  
神話が歴史に登場するより以前の古い時代では、豊穣神・農耕神=王

ジャック・ブロス著「世界樹木神話」

〇神々の武具「アストラ」と「世界樹の枝・葉」

・神々の武具「アストラ」

インド神話には、その神の性質・神格・権能を、
そのまま具現化したような武具「アストラ」というものが登場します。

形状は様々で、飛び道具・投擲武器・弓矢が一般的とされます。

本来は武具というよりは、どちらかというと魔法の類に近く、
必ず呪文・口訣を必要とします。
また、ものによっては「(世界樹の)葉」を必要とするものもあります。

【A】来歴: ブラフマシラス、飛び道具の名
(一度だけ、ブラフマーストラ Brahma-Astraと呼ばれている[10.15.21])
来歴:ブラフマーの光輝から生まれた武器[10.15.07]。

①アルジュナにこのアストラ(武器)を与えるとき、
ドローナは人間に対して使わないように言った。
ただし戦闘で超人的な的に攻撃された場合を除く。
テジャス(気炎?)の低い相手に発射されると、
その飛び道具は世界を燃やす。

②性急な気質を持つことが分かっていたアシュヴァッターマンに教える時、ドローナは戦闘で緊急事態であっても使用してはならない、特に人間に対しては駄目と言った。(10.12.7)

ドローナはアルジュナに、
この使用法(プラヨーガ)回収法(ニヴァルタナ)
の両方を伝授した。

*
「アルタナ (अर्तन)」は、サンスクリット語で
「振り払う」、「除く」、「取り除く」、「救う」
などの意味を持ちます。
この語は、悪や病気、苦しみ、悲しみなどを打ち払う
解決する、救う、取り除くなどの行為を表現するために使われます。

アルタナは、古代インドの宗教や哲学、医学、文学などの分野で広く使用されていました。
たとえば、ヨーガの哲学では、アルタナは精神的な苦しみや迷いを取り除くための手段の一つとされています。
また、アーユルヴェーダの伝統医学では、病気を治療するために、アルタナが使用されることがあります。

「ニヴァルタナ (निवर्तन)」は、サンスクリット語で
「帰還する」、「戻る」、「返る」という意味を持ちます。
この語は、ある場所や状態から別の場所や状態に戻ることを表します。
ニヴァルタナは、古代インドの哲学や宗教の概念としても重要です。
たとえば、ヒンドゥー教の概念である「サンサーラ」とは、
人々が生まれ変わりを繰り返しながら、
この世界での苦しみを経験することを意味します。
このサンサーラから抜け出すためには、ニヴァルタナすなわち
「帰還すること」が必要
であり、それが「ムクティ (解脱)」
と呼ばれる状態へとつながります。
また、ニヴァルタナは、インドの古典的な文学や演劇においても重要な役割を果たします。

回収法は非常に難しく、いったん発射されると、アルジュナを除いては、インドラさえ回収することができない(10.15.5)
(※ラーマーヤナ5巻38章、6巻22章に似た話がある。
ラーマもまた梵天の武器を回収できない。)
禁欲?制戒?(brahmachari)を遵守する者しか回収することができない。

相応しくない者が回収法を使おうとすると、
それ(アストラ)は使用者の首を斬り落として、
その一族郎党を皆殺しにする。


アルジュナは誠実、勇敢、ストイックで、師匠に忠実だったなどの理由で、回収法を使うことができた。

アシュヴァッターマンがマジでそれを飛び道具(イシーカー)として使おうとしたので、クリシュナはアルジュナにブラフマシラスを使って反撃するように言った。
アルジュナは弓矢を手に戦車から降り、
 →注)アストラを使うために「弓矢」を手にしています

まず(first to)アシュヴァッターマンに、
それから彼自身と兄弟(パーンダヴァ)に対して
「善かれ(svasti)」と祈った[10.14.5/1.1.155]

さらに神々と恩師たちに礼を捧げて、幸福を祈り、
「このアストラが(アシュヴァッターマンの)アストラを宥められますように」と言って、彼(アルジュナ)はブラフマシラスを解き放った。
→注)アストラを使う前には、「祈り」と「言葉」が必要とされます。


炎が永劫の終わりの炎のように燃え上がり、
アルジュナのアストラの炎は
アシュヴァッターマンのアストラの炎と拮抗した。
(以下、世界がヤバイ描写)

 →注)アストラを使うときには「弓矢」ですが、
  アストラが解き放たれた後は「炎」として描かれています。
  ですので使用に際しての祈りと言葉も含めると
  「武具」というよりは「魔法」に近いです。

ナーラダとヴィヤーサがやってきて、
「ブラフマシラスが人間に使われるなど前代未聞だ」と指摘した。
その要請にこたえて、アルジュナはただちにブラフマシラスを回収した。
だが、アシュヴァッターマンはできなかった。
ブラフマシラスが他の武器(パラマーストラ/ブラフマシラスを含む)により宥められた場合12年間、雨が降らなくなる。
 
→注)宥められる = 相殺される というニュアンスだと思います。
  12年、雨が降らなければ、不毛の地になり誰も住めなくなる、
  餓死者が大勢出るので、それを避ける、ということだと思います。
そこで、アシュヴァッターマンは飛び道具をパーンダヴァの胎児にうち放った。
 
※12年というのは、普通の時間ではなく、梵天の時間であって
  12 梵天年 = 37.32兆人の人間の年
  =人間にとっては「永遠」という説もあります。

*
プリターの息子ダナンジャヤ(アルジュナ)は、ブラフマシラスという武器を熟知していた。
(だが)憤怒からでも、戦闘で汝(アシュヴァッターマンを滅ぼすためでもなく、彼はその武器を撃ち放った。
アルジュナは、そうではなく、汝の武器を止めるために、それを使ったのである。彼はその武器を回収した。(注:回収する能力が備わっていた)

https://privatter.net/p/5824868

■ナーラーヤナーストラ不発: アシュヴァッターマンはナーラーヤナーストラを放つが武器を捨てたパーンダヴァに対して不発に終わる
 →注)ナーラーヤナ・アストラは、武器や敵意を持つものにだけ
    作用する「アストラ」。
無抵抗なものには何も効果を与えません。

https://www.evernote.com/shard/s99/client/snv?isnewsnv=true&noteGuid=566f0102-bdc0-4b9d-930a-dbfbf856414c&noteKey=ab273218f4844814&sn=https%3A%2F%2Fwww.evernote.com%2Fshard%2Fs99%2Fsh%2F566f0102-bdc0-4b9d-930a-dbfbf856414c%2Fab273218f4844814&title=%25E3%2580%2590MB%25E3%2580%259110%25E5%25B7%25BB0014%25E7%25AB%25A0%25E3%2583%25A1%25E3%2583%25A2%25E3%2581%25BE%25E3%2581%25A8%25E3%2582%2581

 ブラフマーストラの上位互換として、『ブラフマシールシャーストラ(サンスクリット語:ब्रह्मशीर्षास्त्र/brahmaśĪrṣāstra)』と
『ブラフマーンダーストラ(サンスクリット語:ब्रह्माण्डास्त्र/brahmāṇḍāstra)』があり、これらはより強力な破壊兵器とされています。
この単語に含まれる『aṇḍa』とは、『卵』という意味であり、このアストラは『ブラフマーの卵(梵卵)の矢』ということになります。
 『ブラフマーの卵(梵卵)』には、宇宙を1つの卵に見立てた『宇宙卵』という意味合いがあるでしょうから、まさしく宇宙の全てを破壊するような威力があるのでしょうか。
 →注)「宇宙卵」というのはローラシア神話において、
  「世界樹」と対をなす概念です。
  一般的には卵か樹のどちらかが、世界創世の根源とされます。

https://www.sky-oracle.net/2020/04/14/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8-%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%91/

 『シヴァ・プラーナ』によると、強大な力を持っていたシャンカチューダを倒すため、カーリーはブラフマーストラを使おうとしますが、シャンカチューダは『適切な礼拝』によってそれを逸らしたとか。
 →注)(ブラフマー神への)『適切な礼拝』
     によって逸らす
ことができるというのも
    「武具」というよりは「魔法」や「神の権能」に近いです。

*
 叙事詩では、この後ハヌマーンが持ってきた蘇生の薬草『サンジーヴィニ〈注3〉』により、ラクシュマナとラーマ軍の兵士たちが蘇ったと記されています。
 インドラジットはハヌマーンに対してもブラフマーストラを使用しましたが、ハヌマーンは前以てブラフマーから与えられていた恩恵により助かりました。
 
→注)ブラフマー神からの恩恵で助かるというのも
    アストラが「神の権能」に近いものと言えます。

 この薬草はヒマラヤ奥地のカイラス山にあり、ハヌマーンはこれを得るために目的の丘に到着したが、薬草を見つけることができなかった。
 そこで彼はサンジーヴィニが生えている丘全体をすくいあげてラーマ軍のもとに戻ると、サンジーヴィニの香りが届くやいなや、ラクシュマナと戦死した兵たちが蘇ったという。
 →注)カイラス山は聖地であり、
  世界樹は一般的に聖地の「丘」に生える
  
とされていますので、「薬草」は「世界樹の葉」と言えます。
   冥界下りにおける「枝」と同じように、
  「生と死を行き来する(蘇生効果)」
   効力があると言えます。

 カラスの姿になっていたジャヤンタは、世界中を飛び回ってブラフマーストラから逃れようとしましたが、この矢には敵を仕留めるまで止まらない追尾機能がありました(恐ろしい!)。
 結局ジャヤンタはラーマのもとへ逃げ込んで降参しましたが
 ひとたび解き放ったブフラマーストラは収めることができない
 
と告げられてしまいます。
 止むを得ず、ジャヤンタはせめて右目のみに衝突するようにしてほしいと言い、彼は右目を失うことになりました。
 核兵器並みといわれるブラフマーストラですが、このように威力を調節することもできるようです。
 →注)これもまた「武具」というよりは
   「魔法」や「神の権能」
に近い性質です。

*
 止むを得ず、ブラフマーストラは海の代わりに『ドゥルマトゥリヤ(Dhrumatulya)』へ放たれ、その地は永遠に砂漠と化してしまったそうです。

*
 しかも彼は不死の霊薬アムリタを飲んでいるので、通常の攻撃では殺すことができません。
 そんなラーヴァナでも、ラーマから放たれたブラフマーストラを受けると、体内のアムリタが蒸発して死んでしまいました。
 つまりブラフマーストラ級の火力があれば、不死とされる神々でも殺すことができるということでしょうか……。
 →注)アムリタはソーマという植物から作った飲み物であり、
    ソーマはハオマと同じで、
    ハオマは世界樹ガオケレナとされ
    死者を復活させ不老不死にする効果があるとされています。
    *

    世界樹の枝は、冥界下りでもそうであるように
    「生と死を行き来する(蘇生効果)」
    ことからすると、逆方向、つまり
    「不死者から不死性を奪う」
    ということもできるということかもしれません。

https://www.sky-oracle.net/2020/04/18/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8-%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%92/

 このアストラは、『草の葉』のようなものでも魔術的な『触媒』となり、神聖なマントラの詠唱によって呼び出すことが可能とのことです。

※その他のアストラとして、パーシュパターストラ、ヴァイシュナヴァーストラなどがあげられています。

『その1』の記事でも書きましたが、インド神話の超兵器は科学的な兵器というよりは『魔術兵器』という面が強いです。
 パーシュパターストラも例外ではなく、「精神により、目により、言葉(マントラ)により、そして弓により放たれる」——シヴァはこのようにアルジュナに言っています。
 

https://www.sky-oracle.net/2020/04/19/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8-%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%93/

『大神』の名前に因まないながらも、強力なアストラとして描かれたのが『アーグネーヤーストラ(サンスクリット語:आग्नेयास्त्र/āgneyāstra)』です。
それはまさに世界の全てを焼き尽くす『サンヴァルタカの火(終末の火)〈注2〉』のようでした。
 サンヴァルタカは、講談社の『梵和大辞典』によると『世界破壊の火』という意味になっている。
*
このヴァイシュナヴァーナストラは、ブラフマーンダーストラやパーシュパターストラと同じく『至高の三大天界兵器』の1つとされています。
 ヴァイシュナヴァーストラの性能は、攻撃対象の強さ・性質に関係なく(例えば堅固な鎧や盾、あるいは防御に長けた技術を持っていたとしても)、その対象を完全に破壊できることです。
 アルジュナはこの兵器の危険性を認識していませんでしたが、彼の戦車の御者を務めていたクリシュナはよくわかっていたため、その攻撃を自身の胸で受け止めました。
 さすがのヴァイシュナヴァーストラも、ヴィシュヌの化身であるクリシュナには通用せず、花輪に代わってしまったそうです。

https://www.sky-oracle.net/2020/04/27/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8-%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%94/

 ブラフマーンダーストラは七聖仙により創造されたものであり、宇宙の根本原理『ブラフマン』を超える『パラブラフマン(至高原理)〈注3〉』のアストラとされているのです。
 全宇宙を破壊することも可能であるが故に、当然、ブラフマーンダーストラは入手が最も困難なアストラとされています。
 ブラフマーンダーストラが造られた目的は、それ以前に造られた兵器に対抗するためであり、それらにはブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァといった『三大神』の超兵器さえも含まれていました。
 故に、この兵器は防御用としても最上の性能があり、ブラフマーストラとブラフマシールシャーストラのような大量破壊兵器さえも飲み込んで無効化してしまうとか。
 →注)「飲み込む」というところが「要点」になっていて
    ブラフマーンダーストラは「宇宙卵」であるならば
    「蛇が(宇宙)卵」「飲み込む」
     ミドガルズオルムやウロボロスなどと言えるかもしれません。
    (卵ではなく)「世界樹」であれば、根を齧るニーズヘッグ
    ヘスペリデスの樹を守るラドンなど。
    その意味において「世界樹そのもの」と言えるかもしれません。
    そしてケリュケイオンには2匹の蛇が巻き付いています。

*
 いくつかの伝承文では、ブラフマーンダーストラは『ブラフマダンダーストラ(サンスクリット語:ब्रह्मदण्दास्त्र/brahmadaṇdāstra)』と呼ばれることもあるらしい。
 この単語に含まれる『ブラフマダンダ(brahma-daṇda)』とは、直訳で『ブラフマーの』となり
 →注)杖は元々、これまでの話によれば「世界樹の枝」のことなので
    この意味でも「世界樹そのもの」と言えると思います。

https://www.sky-oracle.net/2020/04/28/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8-%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%95/

・「世界樹の枝」

バビロニア神話では、三界(冥界、地上、神界/宇宙)に渡って聳え立つ
聖なる樹/世界樹キスカヌ
果実・ラピスラズリ・星々(アストラ)が神々だ、とされています。

世界樹の枝についてはこれまで色々とあげてきました。
・ヘルメスの杖ケリュケイオン(アポロンから貰った小枝)
・ケイロン(半人半馬)の聖なるトネリコの槍(小枝)
・オーディンの槍グングニル(トネリコの枝)
・ウェルギリウスの冥界下りにおける、ペルセポネーの金枝
・ディオニューソスにギンバイカの木
 (と引き替えに母親のセメレーを冥府から帰している)
・ヘラクレスの冥界下りにおける、ポプラの枝の冠
・ギルガメシュの海底(冥界)にある不老の草(枝という説があり)
・オシリスの死と再生の祭儀においても「小枝」

*
また世界樹の枝が変形したもの(槍・杖・笏)も解説してきました。
・ポセイドンのトライデントはゼウスの蓮の笏に由来
・槍の柄としての《王杖》 
・テュルソスは「ブドウの葉に包まれた槍」「木ヅタを巻いた槍」
 リボンは、卜占杖に付けられるリボンで、蛇だとされています。
 つまり、ヘルメス神の杖ケリュケイオンに由来します。
・ゼウスも「翼がついた生物が先端についた王笏」を持つ姿で描かれる。
・(ホルスの姿は)隼の頭をもつ人間あるいは、「隼の頭を着けた杖」
・有翼円盤は、古代近東(エジプト、メソポタミア、アナトリア、ペルシャ)  における神性、王権、権力に関連付けられた太陽のシンボルです。
イナンナの世界樹フルップ(小枝・杖)に住み着いた
 鳥アンズーと蛇が入れ替わった。

このように、世界樹の枝が変形したものについては
蛇や鳥を示すものが付属して、それが世界樹の枝であることを補足します。

・「世界樹の葉」

また「世界樹の枝」に似たものに「葉」があります。
・聖書に出てくる「生命の樹の葉」
・神々の武具アストラを使用するための「葉」
・聖地に生える「蘇生の薬草」:サンジーヴィニ
・聖地に生えるソーマ/ハオマ/ガオケレナの「葉」
・聖地ドドナのオークにおける「神託の葉」
・ギルガメシュの海底(冥界)の「不老の草」
どれも不老不死や癒しに関わるものです。

世界樹の「枝」冥界との往来生と死について
そうであったのと同じです。

冥界⇔地上については「不老不死」「生と死」「冥界下り」
地上⇔神界/天界については「主権」「神権」「王権」「神の権能」
のように、三界を貫く世界樹としての象徴ということが良くわかります。

十字架の起源はいくつかあり、
・神殿の水平な二本の梁(アダムの死後に生えた生命の樹で作られている)
から切り取った
・(上の生命の樹の一部を切り取って捨てた)
 池から浮いて水面を漂っていた
・レバノンスギ、イトスギ、ナツメヤシ、オリーブの4つで作った。
 レバノンスギは不死性、イトスギは、ナツメヤシは
 復活のフェニックスと同一視。

*
ゴルゴダの丘には、ハドリアヌス帝の建てた神殿があり、それを取り払って地面を掘ると、3つの十字架が見つかった。
三番目の十字架を死者の上に置くと蘇った。

世界樹木神話

イエス・キリストの復活についても、
生命の樹=世界樹
三界の支配者=主
として語られることがあります。
※元々旧約聖書は、メソポタミアの諸々の神話をベースにしているため。

・アストラの類似物

それ以外についてもいくつかピックアップしますと・・・

*
・魔術・ルーンの神であるオーディンのグングニル(槍)
「決して的を外さない」

・インドラがカルナに与えた
「決して的を外さない槍(グングニルと同じ) 
ヴァサヴィ・シャクティ」。

※これは本来、主宰神インドラが持っている「アストラ」です。

ルーの槍森の名だたるイチイの樹 / アッサルの槍」も
「決して的を外さない」。
しかも「呪文を唱えれば的中させたり召還ができる」というのは、
「アストラ」の性質と同じです。

*
ヌアザの剣
何者もこの剣から逃れることはできず
一度鞘から抜かれればこれを耐える者はいなかった」とされています。

似たような剣であるダーインスレイヴ
「ひとたび抜かれれば必ず誰かを死に追いやる。
その一閃は的をあやまたず、また決して癒えぬ傷を残すのだ。」
とされています。

*
アサセの剣は以下のとおりです。

「彼女が剣に戦うよう命令すると、剣は出会った者を皆殺しにした。
彼女が「クールダウン」と言って剣に戦いをやめるように命令すると、
剣は戦いをやめた。

ある日、アサセが家を出ると、アナンセは彼女の剣を盗みました。
敵軍が近づいてきたとき、アナンシは剣に戦うよう命じた。
それは敵軍をすべて殲滅した。

しかし、アナンセは剣を止める命令を思い出せなかった。
殺すべき敵はもう残っておらず、剣はニャメの軍勢(味方)に向けられた。

アナンセだけが生き残ったとき、彼も殺されました。

それからそれは地面に突き刺さり、
触れた人を切るほど鋭い葉を持つ植物に変わりました。
植物は今でも人を切ります。」

https://en.wikipedia.org/wiki/Asase_Ya/Afua#Asase_and_her_magical_sword,_how_Ananse_stole_it_and_the_plant_that_cuts_people


とされているとおり、この剣の形状をした自律兵器(?)は
「植物」「葉」とされています。
*
これはインド神話の「アストラ」も同じような性質があり
「(アストラを)収める技・術」を習得していなければ、
自身を滅ぼすことになる

とされています。
「アストラ」は、その神の性質・神格の象徴を、そのまま具現化したようなものです。
なのでここで紹介した槍や剣というのは「神格・神権・権能そのもの」ということができると思います。

これもまた、
神権・権能の象徴である「杖・王笏」が
「槍」などの武器へ変化する例
と言えると思います。

・その他の杖・棒・槍

その他の類似物もまた、
「アストラ」や「世界樹の枝」を起源に持っている
かもしれません。

<杖>
※基本的には杖自体が王権の象徴なので、杖に対して固有名詞が付く方が稀です。
・ウアス - 力または支配の象徴、プタハ神はウアス杖とジェド柱とアンクを組み合わせた杖を持つ。
 ※ジェド柱は世界樹のことです。
・ヘカ(en:Crook and flail) - オシリス神の持つ牧畜用の笏杖。
 ※オシリス神は冥界の神かつ植物神です。
・カラダンダ - ヤマ神の杖。
 ※ヤマ神は冥界の神です。
・アロンの杖(旧約聖書出エジプト記) -
 モーセがイスラエルの神から授かり、兄のアロンが使用した。
 敵対者に災いをもたらす杖。
 モーセが海を割るときに使用された杖とも言われる。
 ※この杖はモーセが「アダムの死後生えた生命の樹からとった枝です。

<棒>
・アイムール - 撃退を意味するバアル神の武器。  
・ヤグルシ - 追放を意味するバアル神の武器。
・トゥクル - ニヌルタ神の武器。
・ミトゥム - 女神イナンナの武器。ニヌルタ神も持っていたとされる。 
・エリムサルエ - ザババ神(ニヌルタ神)の武器。
・クルドゥブバ - ザババ神の武器。
・ネケク(en:Crook and flail) - オシリス神の持つ殻竿[14]。
 もしくは鞭。ネヘハとも[15]。
・カウモーダキー(英語版) - ヴィシュヌ神の棍棒。
・カトヤンガ - シヴァ神の棍棒。
・ウコンバサラ - ウッコ神が持つ槌。
・ヘラクレスの棍棒
※いずれも主宰神クラスの神々です。

<槍>
・ロムルスの槍:ローマ(建国)の王ロムルスの持つ槍。
彼の槍はパラティウムという丘の上に突き刺した際、樹木になった。
・天沼矛:植物神としての生成力の象徴。
 ※イザナギの黄泉平坂における生と死の神の象徴

https://ja.wikipedia.org/wiki/架空の武器#槍・鉾・薙刀

〇おわりに

こうして総じて見ると
「人間の想像力は昔からあまり変わっていない」
というような気がします。

余りにも突飛な想像物は、
世間一般の人々には受け入れられず
引き継がれていかないので忘失していく

ということでしょうか。

*
また別の視点からすると、
「多くの人の心に残る物語(神話)」
「リスペクト・オマージュ・二次創作」されていって、

(ベロッソスの言う)「物語の骨子」

が引き継がれていく

ということでもあると思います。
細部はアレンジされて、増えていく、ということですね。

神話の最古の記録から4000年以上たった現在でも、
原神・FGO・ブルーアーカイブなどの様々なゲームや、
様々なライトノベル・映画などでも、神話はテーマにされていて
「リスペクト・オマージュ・二次創作」によって
バリエーションは増える一方です。

※ゲーム「聖剣伝説」シリーズでも、
聖剣」は元々マナの女神の「杖」であり、
マナの権能・力の象徴であって、
聖剣という物理的な形状は見る人の心によって形づくられた物であり、
本来は不定形です

※※アーサー王伝説の聖杯なども、本来のキリストの聖杯から離れて
世界樹の枝・メーの万能性と同じようなもの
変化してしまっています。

*
そんなわけで「人間の ”伝承”・”創作” という性質」によって、
杖になったり、棒になったり、笏になったり、
槍になったり、斧になったり、剣になったり、
二又になったり、三叉になったり
色々と形は変化するけど、

全部元々は
「王権」「主権」「神権」という概念を「具象化したもの」
と言えると思います。

*
そして、さらに言えばその起源というのは

「世界樹(キスカヌ)の枝」 ≒ 「メー」 
≒ 世界樹に輝く星々である神々、その「神々の権能そのもの」

ということになります。

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