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【創作帯付レコード Vol.1】Yellow Magic Orchestra / S.T.

個人的なプロジェクトとして、アナログレコードの帯を自分で新たにデザインする、創作帯活動をしています。レコード帯とはなんぞや?という方のために簡単に説明します。



レコード帯とは?


レコード帯とは本来、レコード屋などでアルバムの特徴を説明する広報の補助媒体として1950年代後半からぐるりとタテに巻いて、アーティスト名やアルバム名、収録曲や特徴を説明するものとして付録されてきました。いかに買ってオトクかというのを、レコード会社の広報部デザイナーがレタリングに凝ったり、コピーにこだわったりと、四苦八苦して販売していた形跡が当時の雰囲気を伝える側面と、現代までそれが残されているものは逆にレコードの保存状態の高さを表すものとして、高いレアリティを有無側面もあり、国内だけでなく海外でも高い人気を誇っています。

オリジナル帯:イエロー・マジック・オーケストラ


今日の創作帯は、イエローマジック・オーケストラの1stアルバムです。
さて、どのように仕上がったかの前に、もとの帯デザインを見てみましょう。

オリジナル盤につけられた帯

 いまやイエロー・マジック・オーケストラといえば、細野晴臣・坂本龍一・高橋幸宏によるテクノミュージックを代表するバンドですが、当時の売出しはまだ3人の中で知名度が高かった「細野晴臣の新プロジェクト!」といった趣でした。

 帯のコピーは「デジタル・コンピューターと人間とのセッションによって生まれた二〇〇一年からのリズムがこれだ!!」とあります。シンセサイザーを多用した音楽といえば、当時クラウス・シュルツや冨田勲、クラフトワークといった現代音楽、プログレッシヴ・ロックの文脈で語られていた、コアな音楽ファンのものといった印象が強かったためか、一般大衆向けに伝えるのにはどうすればいいか……といった苦戦している様子が明らかです。
 「Catch Up Fusion」という括りからも、フュージョン界への新しいアプローチとして捉えられていた様子も垣間見えます。Youtubeも、Twitterもない時代です。聞けばいいとわかるものを、聞かない人に説明するのは実に難しいこと。ましてや人間味あふれる怪しさ満点のトロピカル三部作を出した後に、人間味を排除した方向性なんて、過去の実績も使えないとなると更に難しかったに違いありません。

 さぁ、ではわたしの解釈したの帯を見ていただきましょう。




創作帯:イエロー・マジック・オーケストラ


「超一流アーティスト3人で結成された夢のスーパー・グループYMO 話題の初アルバム」
斜めからのショット
裏面(補充注文票つき)

 異論を恐れずいうと、私にとってイエロー・マジック・オーケストラは、エマーソン・レイク・アンド・パーマーの再来なんです! と、書くと本当のファンの人たちから猛攻撃くらうかもしれませんが、異論は受け付けません。胸張ってもう一度いいます。イエロー・マジック・オーケストラは、エマーソン・レイク・アンド・パーマーだと。

 Z世代にエマーソン・レイク・アンド・パーマーを例えに出して伝わるのか?という疑念はありますが、そもそもELPがどうとか言っても、平成生まれからは「ELT?」とか聞き返されるのがやっとだと思うし、コアなレコード屋通いの人間か、学生時代暗い音楽に浸り続ける中で、ふと横を見るときらりと光る同じ暗さを持った石が落ちているなと思い、拾ってみるとそこに「E….L…..P??」と書いているのを見つけた人くらいしか知らないでしょうからノータッチでいきましょう。

YMOの3人の構成は、細野さん(ベース)・ユキヒロさん(ドラム)・教授(キーボード)です。一方EL&Pは、グレッグ・レイク(ベース) /カール・パーマー(ドラム) / キース・エマーソン(キーボード)の3人。



似ていませんか……?もう構成からしても、かぶって見えませんか?
そんなことない?

たしかにそうかもしれませんね。



さらに、YMOがベテラン・ミュージシャンによるバンドであるという事実(細野さん=はっぴいえんど・ティン・パン・アレー、ユキヒロさん=サディスティックス、教授=セッション・ミュージシャン、アレンジャーとして有名)と、EL&P(グレッグ・レイク=キング・クリムゾン、カール・パーマー=アトミック・ルースター、キース・エマーソン=ナイス)も、有名バンド出身メンバーで組まれたという事実からも、両者の類似性がはっきり汲み取れるでしょう。

しかも、両グループともにモーグ・シンセサイザーをメイン楽器に据えたサウンドを構築しています。

え、まだ薄い?


では最後に決定的なポイントをお教えしましょう。



それは、バンド名の長さ!

イエロー・マジック・オーケストラ=YMO
エマーソン・レイク・アンド・パーマー=EL&P

どちらもアルファベット3文字で略されます!
こんな偶然、信じられますか?



信じるも信じないも、あなた次第です (©関暁夫)


エマーソン・レイク・アンド・パーマーのオリジナル帯付デザイン


YMOは日本のEL&Pだ!


ということで、YMOの結成モデル、EL&P説を唱えてまいりましたが、
なんでしょう?創作帯の方を見てみると、ユーロ・プログレのレコードがまだあったんだ……と錯覚してしまいそうなくらい、マニアックな音楽臭さが出て、また違う一面が見えてくるような気がします。


だからなんなんだ?



創作帯は、だから何なのかとも思える試みのデザインですが、歴史にイフはないと言っても想像するのが人間の性というものです。源頼朝が日本を逃れて、中国にわたりチンギス・ハーンとして活躍したという説が、今なお語られるほど妄想と空想に世の中は支配されています。

YMOがこんな売られ方していたら、今ほどのブレイクをしていたかどうか、はたまた別の人脈でカリスマ視されていたのでは?など様々な想像ができるのではないでしょうか?

そういったものとして、シャレで見てフフフと笑ってもらえると、作者である自分は大変満足です。
シャレです、シャレ 笑  (©山下達郎)


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また、こんな帯を作ってほしいといったオーディエンスの声や、リクエスト(ある程度検討し)にお答えして制作いたします。

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