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令和の女は一周回ってビジュ重視?

ここ最近、周りの恋するアラサー女たちに共通して、とある現象が起きている。

好きなタイプやパートナーの好きなところを挙げる際、軒並み「一周回ってビジュ重視」という結論に帰着するのだ。
ビジュとはつまりビジュアルのことで、つまり見た目だ。

数年前まで我々は、職業や年収、学歴、趣味、学生時代の部活など幾多の条件を並べ、業務用防虫ネットくらい細かい網でフィルタリングしていたのに。


私の周りだけで巻き起こった珍現象かと思いきや、どうやら全国的に風向きが変わってきているらしい。
2021年の国の調査*によると、結婚相手に求める条件として相手の「容姿」を「重視する」もしくは「考慮する」と答えた女性は過去最高の81%を記録。
なんと、男性のスコアをわずかに上回る結果となった。

この結果だけ見ると「結局イケメンが好きなのか。どうせ相手にされないぞ」と叩かれても文句は言えない。
だが我々は、決して相手の美醜だけをジャッジしているわけではない。

むしろ“イケメン”なんぞ避けて通りたい大ワナだ。
30年も生きていれば、世間一般で言うイケメンを見ると心臓がトクンとするどころか、頭の中で赤い警告灯がチカチカ点滅するようになる。
顔の良さにあぐらをかいて生きてきた一部のイケメンの言動に振り回され、傷つけられてきた経験がありすぎるからだ。

「一周回ってビジュ」が指すところのビジュアルの良さとは、「全人類が認めるイケメン」ではなく「私のミットに突き刺さる見た目」である。

「見た目」とは顔の造形だけでなく、人相や雰囲気も含む。

くしゃっとあどけなく笑う人、猫っぽい遠心顔のひょうひょうとしている人、仏頂面でTHE硬派な戦国武将顔の人……など、我々は自分だけのスイートスポットを絶妙に押さえた男性たちにハマるようだ。

「40を過ぎたら自分の顔に責任を持て」というリンカーンの言葉のように、人相や顔つき、雰囲気にはその人自身の性格や習慣、生き様が現れてしまうもの。

なぜ今、ここにきて「ビジュ」なのか。

背景としては女性の平均賃金の向上や自立志向の高まり、カタログ的に異性をジャッジできるマッチングアプリの浸透など様々な理由が考えられるが、つまるところ「色々なことに目をつぶれる」からだと思う。


誰しも経験があるだろう。タイプの顔の人に謝られるろと、つい許してしまう。
この野郎……!と思っても数時間後に寝顔を見ると、もういいかと妥協してしまう。
自分の好きな顔というものは、パンパンに張り詰めていた怒りの風船から少しずつ空気を漏らしてしまう魔法を持っているようだ。


そして「価値観の合う人を探せ」とは百万回ほど聞いたことのある言説だが、しばらく大人をやっていると自分とぴったり価値観が合う他人になど層層出会わないことに気づく。

この人なら、と思って一緒に住んでみると、お互いの潔癖度が致命的に違ったり、相手の発した一言にぎょっとしたりして、勝手に裏切られた気分になる。

それと同時に、自分の変なこだわりや悪癖、狭量さにも辟易して、
「もういい。一生一人で生きていく」とすぐに崩れる決意をするのだ。

自分とぴったり価値観の合う人など、どうせ存在しない。

そんな悲しい前提に気づいた我々が「色々合わないところがあっても目をつぶれる人」を探して行き着いた結論。
それが「一周回ってビジュ」なのだろう。


もしかすると今後は、二周回って声、三周回って体臭、になるかもしれない。
だが何周回ったとしても、片目もしくは両目をつぶり合える相手がいいなと思う。



3/18発売「私たちのままならない幸せ」より抜粋





*2021年「出生動向基本調査」:結婚相手の「容姿」を「重視する」もしくは「考慮する」と答えた女性の割合

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