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ニゲロオリゴ糖の2020年「素晴らしいなあ...」と思ったコンテンツベスト3


2020年に出会ったとある3つのコンテンツがクソほど最高だったので、このテンションを何かのかたちで残しておきたいな、この3つならたぶん文章がよさそうだなと思い、記事にしました。

なんていうか、衝撃よ衝撃。
ど頭をクソデカハンマーでぶん殴られるようなそういう感覚を求めて日々生きてるみたいなとこがあり(比喩です)、その快感をどストレートにぶち抜いてくれた最高の3つです。

その3つというのは、
①つやちゃんさんによるTikTokを論じたコラム
②ひまつぶし卓によるTRPG動画『沼男《スワンプマン》は誰だ?』
③𝟶𝚋𝟺𝚔𝟹さんのバーチャル作品『hope』

前置きをダラダラ話しても誰も幸せにはならんので、さっそくそれぞれの話をしていきたいと思います。


①つやちゃんさんによるTikTokを論じたコラム

有料記事なので全文はぜひお金払ってでも読んでくださいという気持ちですが、ざっくり言うとTikTokはサンプリングなんですよっていう話。

なんていうか、理解できなかったんですよTikTokのことが。
そういう人多いと思いますけど、何がおもしろいのか感覚的に理解できなかった。

その理解できない感覚が180度ガラッと変わったのがつやちゃんさんのコラムです。

感覚的に、本能的に楽しめないことであっても、文章あるいはロジックで説明されることで楽しめるようになるっていうまさに人類のみに許されたハッピーな体験ですよ。

人類最高。言葉って大事。

つやちゃんさんいわく、
TikTokはサンプリングである、と。

サンプリングとは、ヒップホップでお馴染みの手法であり、過去あるいは現在に存在する楽曲のフレーズを意図的に拝借し、自身の楽曲やパフォーマンスに落とし込むこと。

その拝借の仕方が上手いかどうかでヘッズは盛り上がるわけですよね。

「あの伝説的な曲のあのワンフレーズをいまこの時代のこの曲でサンプリングしてるのやべえ」みたいな。

TikTokも他人の曲を拝借して、自分なりの表現あるいはTikTokの文脈に変換して、動画を投稿するわけです(この辺の具体的な事例は上記の記事をご参照くださいませ)。

そう理解した上で、TikTokを眺めていると、あるひとつの動画を見つけました。​

@naenano

国際法にのっとり! #幼女戦記

♬ 幼女戦記 - 🤭

アニメ『幼女戦記』のセリフを利用した動画が一時期流行ったんですが、楽曲だけでなくアニメのセリフであっても、TikTokではサンプリング対象になるというおもしろさ。

この動画が流行ってるのを見てて理解したのは、TikTokでサンプリングされるモノはTikTokでウケればなんでもいいってこと。

この世にあるすべてのモノがサンプリング対象であるし、それをTikTokerたちは無邪気に遊んでるわけです。

しかも、この『幼女戦記』のTikTokネタは、ひとりのユーザーが『幼女戦記』のセリフと全然関係ない洋楽を組み合わせてTikTokに投稿したMAD動画から派生したもの。

既存のコンテンツAとBを組み合わせて何か別のコンテンツCを作り、さらにそのコンテンツCがTikTokで流行って、いろんなユーザーがそのコンテンツCをもとにコンテンツNを生み出すというこの構図。

複雑...!

しばしば「元ネタどれ...?」「第一発信者だれ...?」ってなるほど、むちゃくちゃ複雑なんですが、TikTokerな皆さんが何をどうやってサンプリングして動画を作るのか?っていう視点で見ると、むちゃくちゃおもしろいんですよね。
(それこそMADカルチャーに近いのかもしれない)

個人的には、2020年代は、「既存のコンテンツをいかに自分なりのアイデアに落とし込んで作品にするか?」っていうことが主流になってくると考えているんですが、“既存のコンテンツで遊ぶ”をアプリの主機能に組み込んだのがTikTokなのかもしれない。

結局、SNSの登場で、1億総クリエイター時代なんて言われたりもしますが、だれもポッと出のクリエイターの作品なんて興味もないし、それがいいか悪いか、あるいは新しいかどうかなんてだれも判断できないわけですよ。

だから、理解できる共通項が必要なのであり、既存のコンテンツや流行に乗っかることが機能として備わっているTikTokは強いし、イラストレーターやコスプレイヤーは二次創作をするし、YouTuberはメントスコーラを持って大物YouTuberに凸したり、大蛇丸のモノマネをするわけです。

あるいは、その最初の萌芽は、インターネット発であまたの個人クリエイターを生み出した初音ミクを中心としたボカロカルチャーだったのかもしれない。

初音ミク・ボカロという共通の遊び場があることで、認知されやすいし、新しい試みも受け入れやすくなる。

TikTokは、そういう共通の遊び場をとてつもなく早いサイクルで生み出し続け、ユーザーによる二次創作的な行為を誘発する画期的なシステムのようにも思える。

音楽やゲーム、VTuberが、もちろんある一定の条件はあるけれど、二次創作的な行為に対して歩み寄っている現代において、 TikTokはそのひとつの新たなプラットフォームとしておもしろい。

イマイチTikTokのおもしろさを理解できていなかった中で、その魅力を改めて理解できる、再考するきっかけになったつやちゃんさんの記事はほんと素晴らしい記事でした。


②ひまつぶし卓によるTRPG動画『沼男《スワンプマン》は誰だ?』

お次は、ひまつぶし卓の『沼男《スワンプマン》は誰だ?』。

これはまじでほんとにオススメです。


ma34さんのシナリオ「沼男は誰だ?」を、ひまつぶし卓というメンバーたちが遊んだTRPGのプレイ動画。初投稿が2015年の3月で、そこからコツコツと投稿を続け、2020年2月に21話にて堂々の完結。

いわゆるTRPGのプレイ動画なのですが、(TRPGのプレイ動画ってなに?みたいな話は別で記事書いたので読んでね)

素敵なアニメや漫画、ゲームをラストまで完走すると「はああああ……(脱力)ええ物語やった……(ご満悦顔)」ってなると思うんですけど、『スワンプマンは誰だ?』もその感覚を味わえるレベルでむちゃくちゃ素晴らしい物語でした。


TRPGのプレイ動画は、アニメや漫画、ゲームなど長く歴史のある物語形式に対して、そこに肩を並べうる可能性があると感じました。

そして、なにより、TRPGのプレイ動画でしか体験できないような物語の構造があります。

そのTRPG動画の独自性は、キャラクターとプレイヤーと視聴者という「物語を体験する視点が3つあること」。

なんだか複雑な感じもしますが、ゲーム実況という概念を通過してる人類に怖いものはなく、つまり、ゲーム実況者とゲーム実況者が演じるキャラクターと、その配信を観る視聴者ってことです。

その視点の三重構造が『スワンプマンは誰だ?』という物語の根幹にぶっ刺さっていて、それによってキャラクターもプレイヤーも視聴者もみな地獄に叩き落とされ、「アニメや漫画では体験したことのない残酷さ」に心を抉られました(それが最高なんだがな)。

TRPGのプレイ動画は、『スワンプマンは誰だ?』以前もちょこちょこ観てはいたけど(まにむさんオススメですよ)、ホラー的な世界観でゲラゲラ笑いながら観るもんという印象でした。

けど、スワンプマンはある種の泣きゲーとでも呼べるようなジャンルで、"笑える作品もあれば泣ける作品もある"という幅の広さは、TRPGというジャンルがいろんな趣味嗜好の人にも受け入れてもらいやすい可能性があるってことだなあと。

キャラクターとプレイヤーと視聴者という視点の三重構造は、今までの物語形式にはない新しさでもあり、かつ、それは今っぽさのある構造。YouTubeでもにわかに再燃してる感覚もあり、2021年はより加速してスワンプマンを越えるような素敵な物語がたくさん生まれることに期待してます。

絶賛TRPGにどハマりしてる私ですが、スワンプマンが衝撃すぎて完全に沼に落ちたきっかけでもあり、TRPGのプレイ動画の可能性を確信した作品でもあったので、2020年のマイベスト3のひとつです。
(近々、TRPG動画の考察記事第二弾を出すので、気になる方はぜひフォローお願いします―!)


③𝟶𝚋𝟺𝚔𝟹さんのVR作品『hope』

https://www.vrchat.com/i/garol-bootysophia-4fff2

前2つはこれまでの文脈的にもくっそおもろい変化だと思うので、全人類ワクワクしてくれって思ってるんですが、『hope』に関しては、私個人の趣味嗜好にぶっ刺さった傑作でした。

全人類向けではないかもしれないけど、まじで素晴らしかったです。

(『hope』を遊んだあとの率直な感想)


『hope』は、𝟶𝚋𝟺𝚔𝟹さんがVRChatにおけるワールドのひとつとして制作された作品で、VRAA2というバーチャル空間デザインアワードへ出品もされた作品。

なんていうか、これは“希望と絶望の物語”だと感じました。

そして、私は、その“希望と絶望の物語”がむちゃくちゃ好きなんですよ…

ヒトとサルの違いは、未来に対して絶望するかしないか?だと思っていて、ヒトは未来という概念を理解できてしまうことで、それによって「いつか自分は死ぬ」という漠然とした恐怖を覚えることになる。

「自分はいつか死ぬ」という現実に絶望しないために、ヒトは“フィクションという希望”を生み出したと考えてます。

イマココじゃない何かに希望を見出すこと、現実じゃないフィクションにすがりつくこと。

そういう構造が大好物でして…

例えば、大好きな漫画『プラネテス』で、

という台詞があるんですが、これがまさに“希望と絶望”の話だと思ってます。


隙自語が長くなってしまいましたが、『hope』もまさに「この先にきっと何かがあるかもしれない」という“希望と絶望の物語”でした。

そして、VRという性質上、一人称視点であることによって、まさにこの私がその“希望と絶望の物語”の主人公として、VRの中で歩みを進めるわけです。

人気がなく心細さが常につきまとう『hope』の世界観もあり、没入感という言葉がVRでは喧伝されてたりもしますが、孤独さという意味では、ほかの物語形式では味わえないような作品でした。

例えば、作品中でテレビをブラウジングする場面があるんですが、「何かおもしろい番組はないか?」という感情は、「自分の絶望を紛らわせてくれる番組はないか?」という感情に等しい。

そういう仕組みが随所にあり、その希望と絶望の繰り返しの果てにあるモノにどうしようもなさを感じて、「素晴らしいなあ...」と感慨深い気持ちと、「ああでもないこうでもない」というぐちゃぐちゃとした気持ちになる。

こんなモノを生み出す人がいるのか...という感動すらある。
どういうロジックを積み上げたらここにたどり着けるのか、ロジック云々とかそういう次元でないのなら、ほんとにクリエイターという生き物は素晴らしいなあ...ほんとにぶっ刺さりました。

ちなみに、𝟶𝚋𝟺𝚔𝟹さんの『𝙶𝙷𝙾𝚂𝚃𝙲𝙻𝚄𝙱』は全人類にオススメです。色合いがすごくカッコいいので。


以上、ニゲロオリゴ糖の2020年「素晴らしいなあ...」と思ったコンテンツベスト3でした。

いまここで触れたモノ、あるいはこれまで触れてきたモノとはまた全然違う何かをおもしろがっているような2021年になればいいなあと思ってます。

それでは。

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