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まなが、焼きそばの作り方のお題をもらうと…

こんばんは。

みなさん、お元気ですか?

じゅんママと、まなの二人三脚で

jun_manaです。


今夜は、ふと、まなの書いた文章を

見ていただきたくなったので…。

まなは、noteでも、いろいろ自分の

信念とも言えるような文章もよく書いて

ました。

まなは、書き始めると、一気に書く

タイプで、


ママ、出来たよ !

読んでみて ‼️

絵でも、文章でも、一番に私に

見せてくれるのが、私も、いつも

とても うれしかったことを思い出します。


焼きそばの作り方

っていうお題があってね、まなやったら

どんなん書くんかな ?

と、自分で興味持って書いたら  

こんなん出来たよ‼️

と。


少々、長いですが、よかったら

楽しんでくださいね。😊


冬を迎え、年の瀬にさしかかり、日中もなぜだか船をこぐことが多くなってきた。
人間といえども、所詮は文明という後ろ盾があるにすぎない獣だ。ひゅう、と薄く薄情な風が吹きすさぶ音、鼻の奥をつん、と刺す冷やっこい空気。常に身に纏わり付く鈍い眠気の隙間から、本能のまま働き続ける五感が、冬眠の時期を察しているのだろう。
ふらふらと睡魔に揺れる頭の片隅で、そんなことを考えてみるが、どうも思考が霞みがかっている。そういえば、晩飯を食べていなかった。眠いことに変わりはないが、気づいてしまった空腹の度合いは、かなりのものだ。食物という恵みの雨が降ってこないかと、切実な眼差しで胃袋が食道を見上げているのを、まざまざと感じるほどである。そんなことはあるわけがないのだが、しかし。うーん。
眠い、腹が減った。眠い。腹が減った。
壊れたラジオのように繰り返す思考は纏まることがなく、永遠に続く追いかけっこのようだ。
今の己の脳は、10%も稼働していないんじゃないのだろうか。
そういえば、二、三日前の夕方、『今週は大雪で荒れた天気が続く見込みです』というニュースを見て、近所のスーパーで即席麺をいくつかまとめ買いしていたことを、ふと思い出す。現在深夜零時。繁忙期を迎えた仕事柄、こんな夜中まで起きていたが、今から己のために手料理を作る気力など微塵もなかったので、これ幸い!と僕は意気揚々と台所の下に備え付けられた引き出しをからからと開けた。
中には、素っ気なく並べられた、使う気があるのかないのか分からないような調味料がいくつか。そして、その間を埋めるように、即席麺が側面を向いて挟まっている。一応端っこに積み重ねておいていたはずであるが…まあ、乾燥麺と、ミリグラム単位の『かやく』が同封されただけの軽い容器のタワーだ。引き出しを開けたり閉めたりする程度の衝撃でも、赤子の手を捻る感覚で、いとも容易く崩壊してしまうのだろう。
いやいや、そんなことはどうでもいい。僕は今、眠気と同じくらい、食欲にのうみそが浸蝕されているのである。いいか、早く食べて、早く床につくことだけを考えろ。お前が為すべきことはそれだけだ。

そこからの僕の行動は、いやに早かった。
四角いから土台にいいよね、と買い出しから帰ってきた僕がそこまで考えていたかはわからないが、兎にも角にも、即席麺タワーの一番下にあった大きめの容器を取り出しつつ、同時進行でそばにあった薬缶の蓋を片手で開ける。がらんどうの鉄の中に、冬のきんきんに冷えた水道水を適当に流しこみつつ、即席麺の開封作業に入っていく。ちなみに、今夜のチョイスはカップ焼きそばだ。
脳裏にソースがしっかりと絡んだ麺を思い描くと、なぜだか少し楽しくなってきて、僕は小さく鼻歌を歌いながら薬缶を火にかけた。
パチパチ、と音を立てながら、赤とオレンジの火が薬缶の底を一周して、蒼に落ち着く。ひんやりと底冷えした台所に、ささやかながら人工の温もりが添えられる。うん、こうしてみると、真冬の夜中も悪くないもんだ。
コンロに近いところへ陣取り、素早く『ここまで開けてください』というゴールテープめがけ、蓋を捲る。ついでに『かやく』も放り込めば、何故か野菜も摂取した気になれるのだから、インスタント食品というものは恐ろしいものだ。そのまま、何をするわけでもなく突っ立っていると、しゅんしゅんと薬缶が甲高い音を上げ始めた。僕はあまり気が長い方ではないので、水を沸かすという単純作業においては、強火で一気に!が基本スタンスだ。急激に温められたせいか、怒るようにぴゅーぴゅーと鳴く銀色の塊に少し笑って、服の袖を引っ張り、火を噴くコンロから救い出してやる。
反対の手で火を消し、流れ作業で容器にあつあつの湯を注いでやると、湯気が立ち込める滝がこぼれ落ちた先から、硬直した肌色がじんわりと解けていく。いまのままでは到底食えないが、その様子はまるで雪解けのようで、僕はこの瞬間を高見の見物するのが好きだった。
必要なものはすべて揃えてやった。あとは五分後に、僕の胃袋を満たす最高の幸福として完成してくれるのを待つだけである。

さすがに無音の部屋で飯を食うことには抵抗があったので、目についたリモコンを手に取り、電源ボタンを押して適当にテレビをつけた。名前も顔も知らない、あからさまに売れない芸能人という雰囲気の男女五人が、内容のなさそうな話で盛り上がっていたので、僕は虚ろな目になりながら、チャンネルをザッピングした。たどり着いた先は、深夜のテレビショッピング番組だ。こういう時に観る、こういう番組は、なぜか妙に面白く感じるのだが、その理由は二十五年余り生きてきても分からないままだった。
何にせよ、適度に心地よいBGMを手に入れた僕は、もう一度台所に戻り、目を瞑ってでも失敗しないと言い切れるほど慣れた手つきで、湯切りを行った。ほわほわとやわらかい塩気を感じさせる湯気の上から、開封した袋を優しく拳の中で絞り、とろりと気怠そうに顔をだしたソースを激励しつつ、麺に茶色の化粧を施す。愛用の箸でさくさくかき混ぜ、足取り軽くテレビの前の机に台形の白い容器を置けば、僕の真夜中の食卓は完成した。
ソースの香ばしさを引き連れて立ち上る湯気は、液晶画面の向こうにいる、小綺麗な妙齢の女性の顔をふにゃりと歪ませたが、今の僕はさして罪悪感を抱くこともない。空腹の前では、なにもかもが湯気の向こうに霞んでしまうのである。
いただきます!手を合わせて勢いよくすする焼きそばの、なんと旨いことか。口の周りに甘辛いソースの残骸がつくことも気にせず、僕ははくはくと夢中で麺にかぶりついた。
『人間の脳というのは、普段からキャパシティの3%未満しか動いていないのだそうです』
記憶力促進を謳う画面の中央で、サプリメントを見せびらかす女性がわざとらしく驚いてみせる
どうやら僕の脳みそは、空腹でなくとも3%も働いていなかったようだ。


おしまい





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