見出し画像

人と人の時間感覚の違いを知ることが、コレクティブインパクトにつながる(かも?)


お寺出身で、心と共にあるウェルビーイングな生き方をつくるサポートをしている三浦祥敬くんと、「時間環境問題」をネタにざっくばらんに1時間半話しました。
うーん、楽しかった!!


まず、時間感覚の違いや時間環境問題はこんな理解です。
(以下はあくまで私の理解のため、詳しくは祥敬くんの記事や、提唱者の生物学者の本川達雄先生の『生物学的文明論』を参照ください)

・自然環境が育つまでには時間がかかるが、人ははるかに速く消費している(例、木が成木になるまでの時間と、伐採して使われるまでの時間)
・社会生活のテンポが速くなっていると感じており、ヒトという生きものにとって適切な時間環境との乖離が起きている。これは時間環境が破壊されていると言えるのではないか
・この乖離が様々なものを引き起こしているのかもしれない。逆に、環境や社会の時間と体の時間を取り扱うことは、解決のきっかけになるのでは
・本川先生は『ゾウの時間 ネズミの時間(本)』の著者で、生きものの体重と時間感覚の関係を紹介している(ゾウはネズミに比べ18倍ゆっくり)
(参考)こちらも時間に関する記事。「時間学、はじめました。人類はどのように時間を認識してきたのか。」Kosuke Matsushima


上記のような、「人と人」「環境や社会と人」の時間感覚の違いがありそうだということをふまえて、私が関心ある人の内面とコレクティブインパクトや社会変革のつながりについてざっくり話そう、となりました。


■時間感覚とパートナーシップ

まず、身近な時間間隔の違いについて思い出したことをシェアしました。
私が4月からフリーランスとして独立、パートナーも学校に入りなおすと人生が大きく変わるタイミングで、コロナ禍になりました。娘が2歳になり、さてどんな生活になっていくんだろう?と考えていたところで、パートナーと下記の問いをシェアし合いました。

・この期間(ひとまず3ヶ月を想定)自分にとって最も大切なことは何か
・今後数ヶ月間、自分のキャリアにおける相対的優先事項は何か
・この期間の子育ての原則は何か
・この期間、相手から必要とするものは何か
・最も心配なことは何か
元ネタ”How Dual-Career Couples Can Work Through the Coronavirus Crisis”by Jennifer Petriglieri March 27, 2020 ハーバードビジネスレビュー


お互いの想いをシェアしたおかげで、自分の心身のコンディションを認知でき、自分の大事さをわかってくれている安心感を持てて、家族にとって一番怖いことへの対策をうつことができました。
また、私がオンライン会議でピリピリした会話をしているとき、同じ部屋で娘が元気に甘えてくるなど、画面上の感情と室内の感情のずれに戸惑っていて。パートナーに打ち合わせの温度感を伝えつつ娘のサポートをしてもらうことで、完全ではないものの心理的に安心して画面に集中できるようになりました。
(ちなみに上記の問いや双方のコンディションのシェアはいまでもしており、それが互いの時間感覚の違いを知り合う機会になっています)

■時間感覚とチームづくり

昨年度、NPO法人ETIC.とNPO法人かものはしプロジェクトで「子どもの未来のための協働促進助成事業」を立ち上げました(私は業務委託としてETIC.と契約)。今振り返れば、事業の立上 × 組織や背景が異なる人たちによるチームという状況は、時間感覚の観点でも互いを知り合うための様々な試行錯誤をしたなあと。

例えばの取り組み
①組織の歴史と現在の位置づけのシェア(事業を通して何を学んできて、なぜこの機に協働する意義があるのか)
②スタッフごとの想いや人生上の位置づけのシェア
③ETIC.内では、私と事業責任者、スタッフ間でのシステム・コーチング🄬の実施(関係性を深めるワークを4-5回)
④外部環境、事業の段階や、組織を越えたチームづくりとしてどのような位置にいるのかを知る対話やセッションの実施(外部ファシリテーターも入れた2日間のセッション等)

個人、組織、組織を越えたチーム、事業や社会的な時間軸を知り合うことによって、私たちが協働する意義や面白さを感じ合いました。また、終わりが見えない雑木林を走っているような時期があり、それをチームで確認し合うことで「越えるまで踏ん張ろう」と支え合ってもいたかなと思います。

もし、関係性を整え合う機会がなかったら、遠慮が重なって会話のすれ違いが増えたり、業務の頑張る時期を間違えて個々の想いがバラバラになっていたかもしれません。
(チームのほぼ全員がシステム・コーチング🄬等の人の内面や関係性を取り扱う知見を持っていたので、取り組みやすかったのはあります)

画像2

2日間のセッションのレゴ®シリアスプレイ®のワーク


■時間感覚とコレクティブインパクト・社会変革

では、時間感覚と社会変革のつながりは?という話に移りました。どのような社会問題でも、様々な当事者の人たち・セクター間の複雑な関係性と、それらの積み重なった個人・組織・コミュニティ等の長い歴史があります。
「時間感覚」という観点では、2つの要素が大事かなと思いました。

1つ目は、取り組むテーマに関して必要なステークホルダーの間で、共通の時間感覚があることです。
様々な主体の中では、危機意識が強い人、じっくり対話したい人、既存事業やプライベートが多忙な人、中長期的な話を望む人、歴史や文化や自然を大事にしたい人、関与せず自分だけの時間を過ごしたい人など、様々な時間感覚を持つ人がいるでしょう。
「コレクティブインパクト」という社会変革に向けた1つのアプローチ手法でまず重要とされるのが”readinessチェック”であり、3つのチェック項目のうち1つは「取り組むテーマが緊急的かつ重要である」と、感覚的かつ科学的な根拠のもと、対象地域の中で一定程度認識されていることです。

地域にいる様々な主体が、長い期間人・お金を費やしてリスクをとり、関係性が深くないひとたちと協働して挑戦をしていく。主体ごとにリーダー、スタッフ、ステークホルダーがいて、挑戦には少なくない影響を被ると見込まれます。それでもなお「挑戦する」とみんなで選択していくには、なぜいまなのか?という理由があります。
(readinessチェックと言いつつ、最初から全ての主体で緊急かつ重要だという時間感覚が揃っていることはまずなく、時間をかけて探っていくのが大事とされています)


2つ目は、取り組む社会変革に必要な時間をかけていく、という「ゆっくりさ」の時間感覚です。
ソーシャルイノベーションを専門に扱うSSIRというメディアの掲載記事では、社会の改革に必要な時間をかけていくことを勧めています。同記事内の下記図のように、社会システムの構造は各層にある様々な要素が相互に影響し合って動いています。エボラ出血熱の対応や教育の改革を、短期間で成し遂げられるのか?そのスピードの速さがもたらすのは良い影響だけなのか?と伝えています。

別の記事("Four Strategies for Large Systems Change,Steve Waddell,Spring 2018")では、社会変革を成し遂げた事例を挙げ、その戦略を紹介しています。
その1つの事例は同性カップル間の結婚の平等性についてです。アメリカでは1973年までアメリカ精神医学会では同性愛を「精神障害」と説明し、1996年にビル・クリントン大統領は同性結婚を禁止する結婚防衛法に署名したところから、2015年には米国最高裁判所同性カップル間の結婚は憲法上保護された権利であると裁定されました。この42年間には様々な変化が起きており、社会システムが大きく変わった代表的な例とされています。

画像4

(引用)図1”Changing Systems? Welcome to the Slow Movement", Christian Seelos (Winter 2020)",購読者のみ閲覧可


上記の事例で重要なのは、社会変革は様々な非連続な変化の積み重ねであり、時間が必要な場合があるということです。特に、主体者同士が対立し合って傷つき疲れていて、それでもなお諦めず協働して取り組んでいこうとするときは、お互いを知り合う中で赦し/癒すプロセスになることもあります。これはとても勇気のある行動であり、時間がかかるだろうと想像されます。

コレクティブインパクトも下記図2のように5つのフェーズに分かれ、成功事例として取り上げられているのは最速で5年、平均して15年以上経ているという印象があります。(社会変革の定義によりますが)
また実務的には、下記図3のように協働していくためのガバナンスを整えていくことが成功の要因とされており、必要な時間はかけていった方がいいのではと思っています。


画像3

(引用)図2コレクティブインパクトの5つのフェーズごとの4つの項目(”Collective Impact Self-Assessment and Planning Tool”)
 ⇒いま有志で翻訳中で、後日公開するのでお楽しみに。

画像1

(引用)図3:『ソーシャルプロジェクトを成功に導く12ステップ』
協働ガバナンス・モデル図(佐藤真久氏、広石拓司氏)

別観点の参考記事:
社会運動の6つのフェーズごとの7つの項目(”Movement Cycle Worksheet”)


■実験してみたいのは自分や他の時間感覚を生かすこと

余談ですが、2年ほど前から私の右足のふくらはぎを痛めていて、今でも座り続けるとズキズキします。そこで学んだことは、痛みの原因は10数年かかって蓄積された姿勢の悪さと運動不足で、根本的な解決を望むなら時間をかけて段階的に新しい身体をつくるべし、ということです。

痛みが出た当初は、整体で痛みを部分解消⇒また痛むことを繰り返していて、時間がかかることを受入れた後は、原因を探りながら新しい姿勢を模索しつつ、必要な筋肉を取り戻す努力をしていました。
何より大変だったのは、健康体で長引く怪我は一度もなかった自分の人生で、「痛みが続く自分=弱さがある」というのを受入れることでした。


今回祥敬くんと話していて、今後も実験してみたいなと感じたことは、まず自分の時間感覚を知ること、その上で他の人や社会、自然等の時間感覚を感じること。それらの時間感覚の違いが何につながっているのか?を探りながら、他の時間感覚に自分を合わせることで何が起きるのかを試したいと考えています。

時間感覚の差から誰かとすれ違ったとしても、相手の感覚やその背景を知ろうとしたり、自身が急いていれば自然の時間に合わせることでゆっくりを取り戻したり。そういう知見が、社会変革やコレクティブインパクトにも生かせる(かも)と考えています。
長くなりましたが、時間環境問題について話したいと声かけてくれた祥敬くんと、心臓の鼓動が人より早く、焦りがちな私のスピードを落ち着かせてくれるパートナーと娘に感謝を伝えて終わります。
(娘はどんな時間を生きているんだろうなあ)

画像5


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?