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【本屋】買うべき本は、光って見える?!

《買いたい本は光っている》

「本屋さんで歩いている時、
買うべき本は、光って見える。」
そう語っていたのは、
作家であり、書店ラバーの芸人、
ピース又吉直樹だ。

なんて本屋さん好きなんだろう、
私はまだ本が光って見えたことは
なかった。
又吉直樹はさすがだ。

私の場合は、
作家や作品名を見て
ほぼ一目惚れして買っている。

最近はそんな一目惚れも
すっかり減りましたが、
今年は既にもう2冊も、
一目惚れをして買いました。

一冊めは、
西村賢太の遺作の文庫
『雨滴は続く』。文春文庫。

西村賢太が芥川賞をもらう前夜の
一部始終を私小説作家らしく
描いていたなんて、
こんな貴重な小説、
買わないはずがない。

西村賢太の作品は、
時々、無気力になる。
虚無感に取り憑かれる。

情けない主人公の、
情けない右往左往が、
これでもか、これでもかと
描かれているから。

それが私小説作家、西村賢太の
良さであり、短所でもある。
ですが、芥川賞受賞前夜は
興味深いですものね。

それから、もう一冊、
一目惚れした新刊文庫があります。
え?今さら?と思われるほど
衝撃的な一目惚れでした。

それは、サリンジャー
『ナインストーリーズ』の
柴田元幸訳。河出文庫。

何が嬉しかったか?というと、
もともとは、
柴田元幸さんの会社でもある
ヴィレッジブック社から
ハードカバーが出て、
その後、もう10 年前に
同じ会社から文庫も出ていました。

ただ、ヴィレッジブック社は
悲しいかな、小さな出版社だから
本屋さんで、所定の棚がない。 
本屋さんでは、新刊期を過ぎると
出版社に送り返されてしまう。
棚が約束されないから、
大型書店に行っても、
なかなか、ないことも多い。

それで、売れ行きは良くなくて
しばらくしたら絶版になる。
あとは中古を探すしかない。
あるいは、アマゾンで
中古を買うしかない。
一体どうして、
サリンジャー最高の短編集が、
中古でしか手に入らないなんて、
そんな馬鹿なはずが、、、、。

でも、これには理由がある、
かもしれませんでした。
それは、文庫最大手の新潮文庫で
ずっと古くからの翻訳が
出ているからです。
それは、昭和49年から出ている
野崎孝の翻訳バージョンです。
野崎孝さんは、
最初にサリンジャーの
『ライ麦畑で捕まえて』を出した
功労者であり、
『ナインストーリーズ』も
同じく新潮社から出していた。

ただ、字が小さくて、
文字組みがギチギチで、
文章も今からしたら表現が硬い。

そんな哀しみをずっと、
『ナインストーリーズ』は
抱えてました。

だから、河出文庫から
今年早々に復刻で出された事が嬉しい。

柴田元幸さんは
日本有数の翻訳家であることは、 
誰もが疑わない事実ですよね。

ただ、柴田さんは
おおらかというか、
お金に興味が余りないようで、
ご自身が訳した本が
出版社で絶版にされようと
余りに気にしていないタイプ。

柴田元幸さん訳で
絶版になっているのは、
まだまだありますが、
サリンジャー作品が
復活したのは、本当に嬉しい。
きっと河出文庫編集部に、
熱意ある編集者がいたのかな。

今年はまだ始まったばかりで
既に2冊も一目惚れをした。

いつかピース又吉直樹みたいに、
本屋さんの中で
買うべき本、
欲しかった本が光って見える
ようになってみたいものです。

幸(さい)先いい感じです。

欲を言えば、
大江健三郎の老時三部作、
これはなぜか没後のタイミングですら
抜け落ちたかのように、
重版がでませんでした。
講談社の担当者が、
重版した分が売れ残ると
判断してしまったんでしょうね。

私が文庫編集者になれたら、
復活させたい本はヤマほどある。
ただ、私はそろばんが弾けない。
きっと赤字にしてしまいそう(笑)。

本は、文化でもあり、
と同時に、商品でもある。
そのあたりの葛藤が
チラチラ見えてきます。

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