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ステージの君に、僕はどう見えているのだろう

時々、ステージが見えているかどうかを気にしないこともある。

地下アイドルオタクのかべのおくです。


ライブに通っていると、「ステージからの景色ってどんな感じなんだろう」と考えることが幾度となくあります。


空間が舞台と客席に2分されるコンテンツは、演劇、バンド、お笑いなど枚挙にいとまがありません。しかし、なかでも地下アイドルのライブはステージとフロアの距離が近く、演者と直接コミュニケーションをとる機会が多いために、オタクは上記のような疑問を素朴に抱くことが多いのではないでしょうか。


もちろんオタクがステージに立つことはできませんが、人間には体験したことのない感情を伝えるための「言葉」が存在します。今回のnoteは、僕が実際に見聞きしたアイドル達の言葉から、ライブ中の地下アイドルとオタクの関係性を考えます。


①「楽しそうでかわいい」

「何言ってんの?」と思われるかもしれませんが、実際はこの感想が一番沢山言われます。同種のコメントとして以下のようなものも当てはまります。

  • 「(曲名)のとき楽しそうだったね」

  • 「今日、カメラ越しに目が合った?」(撮影可能現場のとき)

  • 「(曲名)のときにレスしたんだけど気づいた?」

  • (ライブで法被を着ているオタクに向かって)「町内会のお祭りみたいでかわいい」

これらの言葉はオタク個人に向けられていることもあれば、フロアにいるオタク全体を一括りにされて表現されることもあります。総じて、オタクの反応はアイドル側から意外とつぶさに見られていると言えるでしょう。これは、応援してくれているファン一人ひとり認知しやすい地下アイドルではとくに顕著なのかもしれません。


ただし、こういった言葉をかけてくるアイドルは大体同じメンバーです。あるメンバーとは毎回こういう会話をしますが、そうでないメンバーとはまったくこういう会話をしません。おそらく本人の性格的に一人ひとりを観察するのが好きでやっているか、ステージ上である程度の余裕があるんだと推測します。

僕が話した事があるアイドルだと、JamsCollectionの保科凜さんやPeel the Appleの浅原凜さんは毎回こんな感想を話してくれます。

共通点としては、どちらも人懐っこくてオタクと直ぐに打ち解ける性格、つまりコミュ強なアイドルといえるでしょう。


②「いると安心する」

次によく言われるのがこんな言葉です。とくに大事なライブとか、「今日のライブ、知り合いのオタク少ないな…」と感じていたときに特典会に話しに行くと決まってこんな言葉をかけられます。


地下・地上関係なく、アイドルは人気商売というのが現実です。対バンなら他の出演グループと、単独ライブなら他のメンバーとオタクの動員(つまり指名入場してくれる人)を競い合わなくてはいけません。また数字どうこうではなく、シンプルにアウェーな環境でライブするのはしんどいことは想像に難くありません。たとえ少数でも見に来てくれるオタクがいたら嬉しいし、大切にしたいと思うのは当然でしょう。


自分の知る限り、こういった言葉をかけてくれるのはFES☆TIVEの青葉ひなりさんやドラマチックレコードの河西栞さんなどです。

グループとして、または個人として、ライブで結果を残して上に行きたい、上昇志向が強いアイドルと分類されるように思います。

たとえリップサービスだとしても素直に嬉しいし、自分を見つけて少しでも笑顔になってくれた時は「自分はいま推しのために生きてるんだな」と感じます。


③「君はキラキラ輝いている」

まずは、次のインスタ投稿をお読みください。ドラマチックレコードの金子いちかさんが、2024年1月10日にSHIBUYA VIDENTで開催された、自身として初めての生誕祭でMCの際に読み上げたメッセージです。

知らない方のために説明すると、金子いちかさんは2022年に一度アイドルを引退して社会人を経験し、昨年7月にドマレコの新メンバーとしてアイドルに復帰しました。


まずは普通にメッセージに対して抱いた感想ですが、文章が本当に素敵です。二人称を「みんな」「君たち」「君」と使い分け、オタク一人ひとりの心に届くメッセージになっています。

また、最後の「私と金子いちかをよろしくお願いします」という一文も示唆に富んでいます。アイドルではない瞬間のダメダメな「私」と、ステージで眩しく輝いているアイドル「金子いちか」の両方を愛して欲しい。職業としてのアイドルの特殊性を感じさせられます。


ちなみにこのメッセージのあとに彼女が披露したのは「#あくあ色パレット」という楽曲でした。

金子いちかのこれまでを全て表したような、渾身の一曲。音楽の力をとても強く実感しました。



さて、このいちかさんのメッセージの根幹は「ステージから見える君たち(オタク)がすごくキラキラしているから、私もアイドルを頑張りたいと思える」という表現です。ただ、ここに少し違和感を感じませんか?

もしオタク側の視点として、「アイドルがステージで輝いているから、オタクは応援したいと思える」という言葉なら自然に受け取れます。しかしアイドルであるいちかさんは主語を逆にして、「オタクが輝いているから、アイドルを頑張りたいと思える」と言っているのです。


この表現は、地下アイドルとそのオタクの関係性は思った以上に対等で、お互いに存在価値を与えてあっていると解釈できます。

これは、実力も実績も十分で、完璧で究極のアイドルを応援する世間一般の「推し活」、いわば「崇拝型推し活」とは少し違います。多くの場合、歌もダンスも平均以下から始まる地下アイドルを応援する場合、推しと同じ目線で喜び・悲しみを共有し合い、思い出を作っていくような「伴走型推し活」を意識する必要があるのかもしれません。


おわりに

まとめます。

会いに行かない「推し活」がやりたいなら、勝手にすればいい。

以上です。



雑談: 動員重要ライブってどうなのよ

2章でライブの動員について少し触れましたが、最近「動員重要ライブに来てもらうよう呼びかけること」についてヤマモトショウさんが言及されていましたが、それに疑問を覚えました。

イベンターとしての視点はなるほどと思いましたが、昨年にTIFメインステージ争奪戦を見届けたオタクとしては、「それで『応援したい』と感じるオタクが集まってくれるなら、ちゃんと言った方がいいんじゃない?」と思います。

前提として、オタクのお金・時間のリソースは有限で、常に自分のカレンダーやお財布と相談しながら現場の予定を立てています。なので「これに来てほしい!」と先に言ってくれれば優先的に調整できるのでむしろありがたいくらいです。むしろ動員重要ライブを知らずにオタクが集まらず、みすみすアイドルが大きなチャンスを逃したとしたらそれは大きな欠損でしょう。そもそもmini TIFみたいなのはただでさえ渋めのイベントなので、それくらい言われないと行かないというのもあります。


結局、行くか行かないかはオタクが決めることなのだから、判断するための情報はしっかり提示して欲しいと消費者としては思うわけです。それに「動員重要だから来てください!」という告知を見て離れるようなオタクはそもそも見込みがなかったのかもしれないし、そこ対する配慮は果たして必要なのか?と感じます。

(以上)

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