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てこの原理

会社で出世と聞くとだいたいは、管理職になることを意味します。さあ今日から私のことを課長と呼びなさいという人がいたら、ああこの人は出世したんだなと思うでしょう。管理職とは英語ではマネージャーですので、部下をマネージメントするのが仕事になります。
昔企業で開発部門の採用面接を担当していたとき、ときどきプラグラミングはやったことがないけど興味はあります。ゆくゆくは企画やマネージメントがやってみたいですと話す人がいて、わたしはいつも不思議に思っていました。ええと、サッカーのチームに入ろうとしているのに、ゆくゆくはコーチがやりたいとかいう人がいるのだろうか。サッカーが未経験だけど興味があるのなら、まずサッカーをやってみたらいいのではないか。もしかしたらジョブズみたいにインドでヒッピー生活をして悟りを開いた人なのだろうか。そんなことを考えながら面接をしていました。
別のあるときエレベーターに乗っていたら、女性ふたりが立ち話をしていて、そのうちのひとりが彼氏がプログラマーなんだけどといったら、もうひとりの女性が「プログラマーはだめよ、SEじゃないと」と返すので、おじさんなのにプログラマーをやっているわたしは恥ずかしさでエレベーターから脱出したくなりました。SE(システムエンジニア)という職種が日本以外にもあるのかどうかよく知らないのですが、わたしも一時期SEと呼ばれていたことはあります。それからしっかりした会社で部長という肩書がついていたこともありますが、今はひとりで会社を営んでいるただのプログラマーです。
世間ではとにかくプログラマーというのは末端の人間がやる職業なのかもしれません。マネージャーなるものになると、自分で手を動かして何かをやろうとすると周りから無能とみなされます。あなたは部下や組織を使うのが仕事なのだから、自分で手を動かすのはやめてもっとレバレッジをきかせなさいというわけです。これは会社を経営する立場になっても同じで、周囲の人から会社を大きくするために社長が手を動かすのはやめろといわれます。とにかく人を使え人を使えと勧めてくるのです。とはいっても従業員はわたしひとりしかいないのだから、自分が手を動かさずに商売を続けるのは無理な話です。つまり人を雇えといっているのです。

でもちょっと待ってください。自分が好きでやりたいことをやるために独立したのに、なぜそのやりたいことを他人にさせないといけないのか。しかも代わりにわたしに与えられるのは、マネージメントとかいう大して面白くもない仕事です。じゃあ自分がやりたくない仕事を他人にやらせればいい? あなたがお金が入ってくるしくみを考えて、やりたくない大変な仕事を他の人にやらせればたくさんお金が儲かるみたいなことが、昔読んだ金持ち父さんという本に書かれてありました(うろ覚えなので間違っているかもしれません)。でもそれは古い考え方だとわたしは思います。今は働き方の選択肢が増えたり、ネットの普及によってコンプライアンスが厳しくなってきたこともあって、好き好んでやりたくない仕事をしてくれる人はあまりいません。これからもっとそうなっていくでしょう。やりがいのある仕事だと嘘をついて、安い賃金で優秀な人を働かせることはできないのです。なら労働力の安い国から人を雇えばいいと思うかもしれませんが、倫理的な問題に加えて、今はひとりでWebサービスをつくって長く続けるという話をしています。綿花を栽培したいのなら労働者を増やせばそれだけ生産が増えますが、Webサービスの提供において生産のコストはゼロです。外国から労働者を連れてくる必要はありません。
つまり、人を雇ってよいのは顧客が増えて開発や運用、サポートが追いつかなくなったときや、マーケティングのための時間が捻出できなくなったときに限られますが、そんな場合でも取りうる選択肢は3つあります。

アウトソーシングする

世の中にはどんなことであれ、専門家がいます。自分たちの得意でないこと、注力したくないことをこなすのに、専門の業者を活用するのは良い選択になるでしょう。彼らに依頼すれば、オフィスの掃除も請求書の郵送もやってもらえますし、どうすれば補助金がもらえるか教えてくれたりもします。イベントやセミナーで使う、申し込みフォームつきのホームページが今すぐ必要ならこちらにご相談ください

やっぱり人を雇う

いい人が見つかったからやっぱり雇いましょうか。十分な賃金を払える余裕があって、その人が自分よりも優秀であるなら雇うべきかもしれません。お金は問題じゃないので働かせてほしいと微妙な人からいわれた場合は、歓迎したくなる気持ちもあるかもしれませんが、あとでたぶんお金が問題になるので考えたほうがいいと思います。

機械にやらせる

忘れていたかもしれませんが、わたしたちは魔法使いです。プログラマーは人力で3日かかる作業を指を一本触れるだけで3秒で終わらせることができます。人を使ってレバレッジを得るのがマネージャーの仕事であるならば、機械を使ってレバレッジを得るのがプログラマーの仕事です。プログラマーが手を動かすことで会社の生産性が10倍上がるのであれば、それをレバレッジと呼ぶことに異論はないはずです。だから本当のプログラマーは引退などしなくていいし、マネージャーに転身する必要もありません。
テスターを雇う代わりに、テストとデプロイを自動化しましょう。サポート担当者を雇う前に、よくある問い合わせをまとめたFAQページをつくりましょう。アシスタントの代わりに、決済をオンラインで自動化しましょう。うちではまだ顧客に請求書を送っているので、GASでスクリプトを書いてPDFを添付したメールを自動送信できるようにしています。ログを分析するためのスクリプトを書くこともあります。自分が本当にやるべき業務に集中するために、積極的に機械を使って自動化を行いましょう。そのためにわずかな時間とプログラミングスキルを投資するのは無駄なことではありません。

世間ではDXやらなんやらとかいわれていますが(よく知らない)、そろそろ人を使う人よりも機械を使う人のほうが貴重だしお給料も高くて当然と思われていい気がします。そもそも人を使うとはどういうスキルなのかという疑問もあります(人を動かすスキルなら貴重なことはわかりますが、世のマネージャーがみんな人を動かしているとは思いません)。
人か機械か、どちらを使いますか? 機械が使える人を雇う? それはいいアイデアです。いい人が雇えるといいですね!