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カイ書林 Webマガ Vol 14 No10

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。


【好評発売中】

  1. 澤村匡史著:循環器救急・集中治療の高価値医療 日本の高価値医療⑧

  2. 和足孝之・坂口公太編集:医療現場に必要なリーダーシップ・スキル ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.19

  3. 筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18

  4. 杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット

  5. 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

  6. 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

  7. 梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

  8. 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

  9. 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

  10. 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima (ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)


■2023年度 第20回ジェネラリスト教育コンソーシアムのご案内

第2 回 わかる・使える看護必要度を使った多職種協働

講師:
筒井孝子 兵庫県立大学大学院
坂田 薫 京都民医連中央病院 看護部長
松原健治 株式会社デザインケアみんなのかかりつけ訪問看護ステーション神戸
西井 穗 神戸女子大学家政学部講師

11 月26 日( 日)14:00-16:00
方法:オンライン ケースディスカッション

参加者は病院内コース、地域連携コースに分かれて、事前の予習、当日の講習および復習を行います。

参加費:2000円 下記チケット購入サイトよりお求めください。

対 象:全医療職
定 員:40名程
主催:株式会社 カイ書林 お問合せ:generalist@kai-shorin.co.jp


■2023年度 第5回Choosing Wisely Japan オンライン・レクチャーのご案内

「救急領域におけるChoosing Wisely」
花木 奈央 先生

大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学教室 特任助教
NPO 法人 総合救急医学研究会 (EMA) 理事

12 月2 日(土)14:00 ~ 15:30
方法:オンライン(Zoom)講演と質疑応答

Choosing Wisely(賢明な選択)は、医療者と患者が対話を通じて、科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)を「賢明に選択」することをめざす、国際的なキャンペーン活動です。
Choosing Wisely Japan は、日本でChoosing Wisely を推進するため、2016 年より活動しています。
今回のセミナーでは、「救急領域におけるChoosing Wisely」と題して、Choosing Wisely の観点から花木奈央先生が講演します。この機会にぜひご参加ください。 

主催:Choosing Wisely Japan
参加費:1,500 円


■全国ジェネラリストリポート

放射線検査での生殖腺防護の今

加藤英幸 千葉大学医学部附属病院 放射線部

胸部X線検査など放射線検査を受けられたことがあるかと思います。その時、放射線被ばくについてどのように捉え、どのようなお気持ちで検査を受けられましたでしょうか?

国民の多くは広島・長崎の原爆、福島原発事故から放射線に対してがんや遺伝的影響を考え、“放射線=怖い”と考えるのが国民感情かと思います。これまで、放射線を行為的に照射する検査では、生殖腺防護として腰に放射線防護具を着用することがありました。ただX線装置の進歩でX線量が飛躍的に減少したことや、原爆被爆者の疫学データから、放射線による遺伝リスクは極めて少ないという報告を根拠に、多くの施設で生殖腺防護具の使用を行わなくなってきました。

そして今、小児股関節撮影の際も生殖腺を防護することで観察領域の欠損など、デメリットが上回る見解から、2019年に米国医学物理学会(AAPM)および米国放射線学会(ACR)、2020年に米国放射線防護審議会(NCRP)が、生殖腺防護の継続中止の勧告を発し、世界的に中止の動きが高まっています。

我が国でも放射線関連学・団体が小児科、整形外科そして放射線科と共に2021年頃より議論が始まり、日本放射線技術学会では、「小児股関節撮影における生殖腺防護に関する検討班」を立ち上げ、2022年4月に報告書を発出しています。

現状の課題は、冒頭で触れた放射線に対する国民感情に対して如何に理解して進めるか。患者、家族、そして医師だけでなく医療従事者が、情報を共有し、放射線被ばくについて共考するためのリスクコミュニケーションを実践することが必要になります。

医療被ばくの最適化と合わせ、放射線業務を担う診療放射線技師の使命として日々取り組んでいます。


■マンスリー・ジャーナルクラブ

鋪野紀好 千葉大学大学院医学研究院 地域医療教育学

Association between regional quota program in medical schools and practical clinical competency based on General Medicine In-Training Examination score: a nationwide cross-sectional study of resident physicians in Japan. Postgrad Med J. 2023:qgad059. doi: 10.1093/postmj/qgad059.

Fukui S, Shikino K, Nishizaki Y, Shimizu T, Yamamoto Y, Kobayashi H, Tokuda Y.

【要旨】
目的:日本では、医師の都市と地方の不均衡を改善するために地域割り当てプログラム(地域枠プログラム)が導入された。地域枠プログラム卒業生の学習能力の低さについての懸念があるものの、臨床研修を開始した後の地域枠プログラムと臨床能力との関係は評価されていない。

方法:今回の研究では全国規模の断面研究が行われ、研修医を対象とした基本的臨床能力評価試験(General Medicine In-Training Exam:GM-ITE)のスコアに基づく地域枠プログラムと臨床能力との関連を評価した。地域枠プログラム卒業生と他の臨床研修医との間で、GM-ITEの全体およびカテゴリー別の結果を比較した。地域枠プログラムとスコアの関係は、マルチレベル分析を用いて検討された。

結果:6,097人の参加者のうち、593の臨床研修病院から臨床研修医(地域枠プログラム卒業生が1,119人、その他の卒業生が4,978人)が参加した。年齢が若い、内科・総合診療科・救急科への志向、入院受け持ち患者数が少ない、ERシフトが少ない、が地域枠プログラム卒業生の特徴であった。マルチレベル分析では、地域枠プログラム卒業生とその他の卒業生とで総GM-ITEスコアとの間には有意な関連はなかった(係数:0.26、95%信頼区間:-0.09、0.61、P = 0.15)。地域枠プログラム卒業生とその他の卒業生とで各カテゴリーでのGM-ITEスコアとの関連はなかった。

しかし、同じ多変量モデルでは、総GM-ITEスコアは年齢が若いこと、総合診療志向と強い正の関連性を示し、これらは地域枠プログラム卒業生に有意に共通していることが明らかになった。

結論:GM-ITEスコアに基づいて評価された臨床能力は、地域枠プログラムを卒業したその臨床研修医と他の臨床研修医との間に臨床能力に有意差がなかった。

【コメント】
日本にける「地域枠」を卒業した臨床研修医の臨床能力について調査された初めての研究である。地域枠の医学生は成績についてある種のスティグマや不安を感じることがある。しかしながら、卒業時の医師国家試験の合格率は一般枠の卒業生と比較して高いだけでなく(Matsumoto M, et al. Hum Resour Health. 2021;19(1):102. )、今回の研究から臨床研修における能力も高いもしくは同等の可能性があり、ポジティブに捉えることができるだろう。

■カイ書林図書館

江戸のくらしと感染症―コロナの時代に見つめ直す
医中誌創刊120年記念Web講演(2023年10月27日)

講師の鈴木則子氏(奈良女子大学研究院)は、江戸時代の感染症のはやり病(結核、梅毒、インフルエンザ、疱瘡、麻疹、コレラ)を取り上げ、その危機管理を、1)人々の信仰、2)メディア情報、3)医療、予防接種、4)御救(政策)の視点から平易に解説しました。特徴は、上から目線ではなく下からの庶民目線から、超格差社会でのリスクに対峙する国民のアクションを掬いだそうとする姿勢で、好感を覚えました。
知識を1枚の浮世絵と対応策を一次資料で示して、行動を促す庶民の懸命さと賢明さを説いていましたが、医療情報を扱う弊社にも、情報の提供のしかたについて大いに参考になった講演会でした。


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