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第201段「田中泰延×角田陽一郎《人生を変えるアウトプット対談》全文掲載」


ベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社刊)の田中泰延(たなかひろのぶ:元電通・青年失業家)と『「本音で話す」は武器になる』(PHP研究所刊)の角田陽一郎(かくたよういちろう:元TBS・バラエティプロデューサー)が2019年8月28日に代官山蔦屋書店で開催したダブル刊行記念イベント。”まさに話したいことを、本音で話した”トークイベントは当日は満員御礼!大盛況でした!

そして、10月23日は田中泰延さんのお誕生日。【ひろのぶ生誕50年】を祝して、そのトークの模様を全文掲載します!なんと31000字超です!ゆるゆるとお楽しみください!

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角田「林先生の番組出られて、本、今どれくらい売れてるんですか?」

田中「12万部ですかね。」
(会場、大きな拍手)(本記事公開時点では16万部突破)

角田「今年、ナンバー1になっちゃうんじゃないですか?」

田中「いやいやそんなね」

角田「キンコン西野さんとか、超えちゃうんじゃないですか?」

田中「自分が一番びっくりしてるんですよ。最初ね、ダイヤモンド社の編集者の今野さんと、初版どれくらい売れますかね?と皮算用して。僕、ツイッターのフォロワーが5万人弱やから、一割がお金出してくれたらいいから、5,000部ですかね。初版が6,000部やったら、残りの1,000部は、北は北千住から南は南千住まで(笑)、上は上板橋から、下は下板橋まで」

角田「上は上北沢から下は下北沢まで」(笑)

田中(笑)「リヤカーに載せて売り歩こうと思ったんですけど。お陰様で。ありがとうございます」

角田「いやー、林先生の番組にヒロノブさんが出演する前にこのトークショーのセッティングしてるって、僕、プロデューサーセンスありません?そもそもヒロノブさん、面白い方じゃないですか。僕、ツイッター、フォローしたの、5年前ですからね。プロデューサーの感覚でいうと、この方は人気もんになっちゃうなーって」

田中「お互いにね。お互いにツイッターのフォローは5年前なんですよ。ツイッターではやり取りあったけど、二人同じ日に会社を辞めたんですよ。角田さんはTBS,
僕は電通 」

角田「2016年12月31日」

田中「SMAPが解散した日」

角田「ヒロノブさんと角田とSMAPは、同じ日に会社を辞めたんです」

田中「俺たちの事、ニュースになるかなと思ったら、SMAPのせいでまったくニュースにならなかった。失敗しました」(笑)

角田「でも、こういう事Twitterに書いたら、SMAPのファンの方から『SMAPは会社を辞めてません!』ってお叱りのツイートが来たり」(笑)

田中「会社は辞めてなかった。あの時点で、少なくとも3人は」(笑)

角田「ヒロノブさんのお話って、初めて聞く方、いらっしゃいますか?」
(会場、パラパラと手を挙げる)

田中「すごーい、ありがたいな」

角田「やっぱり、この本読んで感動されたんですか?」
(会場、うんうん)

田中「その中で、まだ本を読んでない、という方?」
(会場、2、3人挙手)

田中「すごい!一体、何しに来たんだ!求めてるものがわからない」(笑)

角田「今日、何話そうかなって思って。僕ら、2年前に大阪でトークイベントやってるんですけど、何話したか全然覚えてないんです」

田中「その時、キャパシティが90で10人立ち見がいて、こんな40何才のおっさん二人が喋るのに、100人が、ねぇ」

角田「結構ウケたんですけど、2人は何話したか、全然覚えてない」

田中「そして、その時の客層は〝おっさん〟が8割方。でも、今日はギャルばっかりじゃないですか(笑)」

角田「ヒロノブ人気なんちゃいますか?」

田中「MMKですよ。モテて、モテて、困る」(笑)
(会場、笑い)

角田「で、今日のテーマとしては、まず〝辞めて2年半何してたか〟から行きますか。どうですか、辞めてみて」

田中「最初の一年、僕、本当に収入ゼロで、失業保険もらってました」

角田「僕ももらってました。渋谷のハローワークでもらうんですけど、その間、継続的に自腹でプロデューサー業やってましてね、自腹でMXの放送枠買って、持ち出しで、いとうせいこうさんとユースケ・サンタマリアさんの番組やってたんです。で受給の面接にハローワーク行った時に、お腹すいたなーって近くのコンビニでパン買って公園で食べてたら、あー、これからハローワークに行くんだなっていうような元サラリーマン達がいるんですね」

田中「ドラマみたい」

角田「お弁当作ってもらってるけど、でも今仕事ないからとか言えないんだなーって人が、実際にいるんですよ」

田中「家族には会社行ってるって嘘ついてるんだ」

角田「でね、渋谷のハローワークの人に、就職先探すなら、金髪やめたほうがいいですよ、って言われたりね」

田中「アドバイス」(笑)

角田「その後、夜には『新しい働き方』とかのトークイベントやったり(笑)っていうのが最初の僕の半年間くらいです」

田中「僕も1年間通いましたからね、ハローワーク。会社都合退職だったんで。そこで学んだのは、前の職業がいくらの給料でも、たとえ年収1億円でも、失業給付の最高額は月22万円。これ以上、上はないんです。どんな億万長者でも、失職したら月22万円しか国からもらえない。それを1年間学びました。それだけですよ、収入。で、ハローワークで色々出てる求人、見るんですよ。僕が気になったのは、風俗雑誌のカメラマン」

角田「ヒロノブさん、カメラもやりますからね」

田中「写真は得意やから、真剣に考えたんですよ。どんな仕事かって言ったら、毎日何十人の風俗嬢の写真撮って、すっごい忙しいの。で、月給は16万円」

角田(爆笑)「結局、やろうと思わなかったんですね」

田中「家族と相談するわって」(笑)

角田(笑)

田中「でもそれって、風俗嬢の写真撮りたい人が、月16万でもいいってやるんでしょうね。」

角田「それは16万以上の喜びがあるんでしょうね。ちなみにヒロノブさんは、なんで会社辞めたんですか?」

田中「その年の11月に…」

角田「え?じゃ、決めて一ヶ月で辞めたんですか?」

田中「そうなんです。会社の壁に『早期退職者、募集。退職金プラス1千何百万足して、辞めさしてあげる』っと。その1千何百万に目が眩んで」(笑)

角田「それは、辞めちゃいますね」(笑)

田中「僕は、24年間、広告代理店勤めてたけど、広告が苦手ってことがよくわかったんですよ。20何年やっててもやっぱり苦手」

角田「それはどういう苦手ですか?読みたいことが書けないってことですか?」

田中「そうなんです。この本の中でも書いたんですが、広告って、どっかの会社から依頼があって〝この新発売の水の良さを伝えなさい、飲んでみたらわかるから〟。(卓上のグラスの水を飲んで)飲んでみても分からん。でも明日までに書かなきゃ…これが24年間なんですね。その中には自分が体験してないこと、見てもない商品のことを書かなきゃいけない、ってこともあるんです」
(会場 笑)

角田「糸井重里さんも、ほぼ日作ったのって、それに近いことおっしゃってましたね」

田中「そう」

角田「推したいものを推すならいいけど、そうでないものを推さなきゃいけないことに矛盾を感じたわけですね」

田中「そうですね。糸井さんも、自分の会社で自分の推したい商品だけを自分の会社で売ってる。僕もそれならできます。大好きになった商品を、これ、僕に宣伝さしてください、っていうのはできます。でもね、広告代理店にいると、毎日毎日毎日、今日は水、明日はチョコレート、明後日は携帯電話、その次の日は自動車、もう頭ん中、滅茶苦茶になってくるんですよ」

角田「はいはい」

田中「でもやんなくちゃいけない。でも、広告代理店にいるといいお給料をもらえる。こんなにもらえるってことは、自分は社会の中で正しいことをしているんじゃないだろうか?って倒錯が起こってくるんですよ。これが危ない。これが広告マンの心をおかしくする」

角田「全く同じことがテレビにも言えると思います。作ってる本人たちもちょっとくだらないなぁって思ってても、それが視聴率が良かったりすると、やっぱりこれやっていていいんだ、って変換していっちゃう」

田中「そしてね、自分がやりたくない事やってるけど、数字が出たり、お金になったりすると、むしろやりたくない事やり遂げた俺がこんなに数字取ってたり、お金もらえるんだから、俺は相当偉いんだって、どんどん価値観がおかしくなっていっちゃう」

角田「24年やってて、激論交わした事もあるんですか?こんなのやれないよって」

田中「ありますあります。新商品でCMを作るのに、その商品をとうとう見てない事ってあるんです。つまり発売日とCMを打つ日が一緒だから、僕らその商品、一回も見てない。これが良いとか、これが美しいとか、これが美味しいとか。知らんがな、って」

角田「虚しくなるって事ですか?」

田中「なりますねぇ」

角田「なりますよね。僕ね、会社辞めようと思ったのって、2016年のお正月の目標に関係してるんですよ。初めは日本人やめようって思ったんです。じゃ何人になるのか。少なくとも土地があって空気を吸わなきゃ生きていけない。宇宙人は無理だと。じゃ、『地球人になろう』って。地球のためになることをやろうと。日本のためだけど、地球のためにならないことはやらない。地球のためだったら、日本のためだろうが、会社のためだろうがやる。と決めて会社行くと、会社の仕事ってほぼ会社のためなんです」

田中(力強く)「そうなんですよ。その他のどこのためでもないんですよ」

角田「地球のための事って、会社のためってほぼなくて。でその時に、ユースケ・サンタマリアさんといとうせいこうさんと『オトナの!』って番組やってたんですけど、その時にいい視聴率取ることはTBSのためなんだけど、いい番組を作ることは地球のためだと。って事は会社に居なくてもやれるじゃんって思って、会社辞めちゃったんですね」

田中「なるほど」

角田「僕、辞めると決めて、2016年7月31日付で有給になったんですけど」

田中「有休消化できたんですか?」

角田「有給ね、660日くらい残ってたんです」

田中「じゃ、2年くらい全然会社行かなくても大丈夫」

角田「本当はそうなんですよ。TBSって、病気、介護、あともう一個自分の退職の時って有給が加算されずに残ってるって言うレアな規則があって」

田中「普通会社は、40日とか60日で有給休暇捨てられちゃうじゃないですか。」

角田「だから最近までは有給で暮らせると思ってたんです」

田中「本当だ」

角田「と思ってたんですが、ところが、ちょこちょこそういう感じでプロデューサーをやってたんですが、なんで有給休暇中に働いてるんだ、って感じになっちゃったんですよ」

田中「あぁ、なるほどね」

角田「で、僕、ちょうどその頃、BS -TBSで、音楽番組のプロデューサーやってたんですけど、あ、それ、スポンサーTSUTAYAさんだったんですよ。金額も言っちゃうとTSUTAYAさんからウン千万貰って、番組やってたんですよ。だからウン千万、TBSに売上あげたのに、なんで有給中働いてんの?って怒られたんですよ」

田中「はぁー」

角田「怒るんだったら返せよウン千万、って思うんだけど…って言うような事があって、つまりプロデューサーやりながら、その2年半お金をもらいながらはできないって事がわかったんで、捨てて」

田中「600日を」

角田「600日の有給休暇を捨てて…だからTBSに何千万くらい、貸しがあるようなもんですよ」

田中「すごいですね」

角田「だから今から回収してやろうって(笑)ちょっとだけ思ってるんです」

田中「サラリーマンは全然休めないですよね。僕も入院した時しか有給休暇を使わなかったですね。僕、電通時代、24年勤めてたときに、30日間の入院を4回やってるんですよ」

角田「ストレス溜めちゃって…」

田中「そう。広告の仕事って本当に必要なの?って悩んで。血液検査するとね、引っかかるんです。でもお酒飲んだとか、身体に悪い事したとか、どっか病気って事じゃないんですよ。血液に出て入院させられる程メンタルが来ちゃった」

角田「やっぱり広告を作るって事がメンタルに来ちゃったって事なんですか?」

田中「そう」

角田「僕ね、ヒロノブさんとやりとりさせてもらってると、広告マンのいいな、っていうところがあって…」

田中「ほう?!広告マンのいいところ?」

角田「つまり、めちゃくちゃいろんな事、ケアされません?」

田中「ああ、そうですね」

角田「今回も、事前に準備いたしましょうか?とか、パワポは用意しましょうか?とか」

田中「僕のトークイベント来ていただいてる人は、僕のパワポ芸を楽しみにしてる方も多いんでね(笑)。今日は角田さんと二人だから二人のときは要らないかなって」

角田「ところが、僕なんかは、バラエティだからその場で乗り切ってやるばっかだから。その場にいてどう現場を面白くするって言う。『ご長寿早押しクイズ』『からくりビデオレター』なんかはその場でお爺ちゃんお婆ちゃんに相談して作んなきゃいけないから。用意とかしないんで」

田中「僕、逆ですよ。テロップが出るのに憧れるから、パワポ出すんです。文字が出るのが嬉しい」
(会場、笑)

角田「そこが、広告とテレビって同じようなものだと思ってるんですけど、全然作り方が」

田中「違いますね」

角田「僕、超雑なんですけど、泰延さん、Twitterも超面白いけど、写真とか加工して作ったりしてるじゃないですか?」

田中「割といい感じに」

角田「いい感じに」

田中「女性撮ったら、ブワーッてソフトフォーカスにしたり」

角田「ヒロノブさんに似てる人、ダイノジの大谷さんとか並べて。あれ、一枚一枚自分で並べてるんですよね」

田中「そうですよ、めっちゃ画像拾って。この角度が似てるからこれ使おうとか」

角田「この大谷さんじゃなくって、この大谷さん使おうとか」

田中「渡辺徹さんは10種類くらいあるけどこれにしよう、とか」

角田「一番近いやつを使う」

田中「俺に似てるやつ」

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角田「そういうところが、広告代理店的な繊細さですよね」

田中「広告代理店ってすごいんですよ。何億も予算もらってるクライアントの宣伝部長さんへの気の遣い方って。その人が海老アレルギーだったら、最初は絶対弁当にエビ出すなとか、食事会でエビの置いてある店で接待するなとか言われるんですけど、そのうちエスカレートして『プレゼンの資料に、A案B案とか書くな!エービーどっちにしましょうか?とか言ったらエビに聞こえるだろ!!お前クビだからな』にまでなってくる」(笑)
(会場爆笑)

角田「結構、これ冗談抜きで、これくらいほんとにありますよね」

田中「話作ってないですからね。本気でありますよ。ある会社が、ロシアの宇宙船に商品乗せて、宇宙でCMをやるって言う。それを電通がやることなって、ロシアと交渉して、何月何日にその商品をロシアの宇宙船に載せますってなったんですよ。そしたら、電通の担当が、クライアントの部長に『宣伝部長は、そのロケットに乗られますか?』って。ものすごい悩むんですよ。もし宇宙行かれるんだったら、晩飯はどこで?とか。マジかって。この人本気か?アタマ大丈夫?って」(笑)

角田「アゴアシマクラって言いますからね。何処で泊まって、何処でご飯食べて、その後どうするか、ってね」

田中「宇宙に寿司屋あるんかなって、悩みますからね電通の担当」

角田「そんなふうに、広告の気の遣い方ってすごいじゃないですか。僕らテレビの制作現場って、そういう気の遣い方って、そんなにないんですよ。タレントさんにはあるけど、クライアントさんにはないって言うか」

田中「広告代理店にとって、クライアントって神なんですよ」

角田「ですよね。ところが、森三中の大島さんに言われた事があるんですけど、僕らがこれやって下さい、っていったら、大島さん『えー、やだー』って言うんですね。で、なんでヤダとか言うんですか?って現場で聞いたら、CMならやるけど、って。だってCMは楽屋に並んでる料理が違うんだもん、って」

田中「そうなんですよ。テレビドラマとかのディレクターに『今の演技違うだろう』って言われてる人が、その足でCMの現場入りすると『どんな演技でも結構です。ニコって笑っていただいて、一口飲んでいただいたら、オッケーです!』って。お客様扱い」

角田「昔一回面白かったのは、ジャニーズ事務所のTOKIOの城島さんで、ドッキリをやった事があるんですよ。で、芸能事務所って、CMのギャラだけはだいたい半額自分がもらえるんです。で、架空のCMだってドッキリだったんですね。で、これ架空ってなった時に、本人、「えードッキリなの」じゃなくて、本当に落ち込んじゃってて。マジで半額貰えると思ってて、そこが本気で落ち込んでるって言う。その部分だけ、放送できなかったんですけど。ほんとに落ち込んじゃったから。『俺、昨日半額で何買おうとかほんとに思ったんだよ』って。こちら側のスタッフも怒られるっていう。」

田中「ほんとCMはね、タレントを神様扱い。CMの現場に来て、その次の現場が映画だったりしたら、監督に灰皿投げられたりするから」

角田「ですよね。映画とかって全然ギャラ安いじゃないですか」

田中「安い。しかも監督が王な訳ですから」

角田「神様ですから」

田中「だからCMはぬるま湯なんですよ、すべてが」

角田「でも、それで、芸能人でいい思いとか嫌な思いとかありました?」

田中「CMはそうやって芸能人を悪いようにしないから、来る人も気分がいいんですよ」

角田「そうですよね。何千万とか貰えるからね」

田中「そう。不機嫌でもね。今日、俺、これ4時間撮影したら、2000万入る、って。それで怒る人いないって」

角田「僕らテレビ番組は一つのロケで4、5万くらいですよ」

田中「そうでしょ」

角田「まぁ、言うこと聞かないわけですよ」(笑)

田中「だから、CM現場で嫌な思いしたことないですね。やっぱりみんな機嫌よく帰りますよね。CMってたった3時間、『このビール飲んでください』って言って、監督が『いいね、今の美味しそう!』って言うでしょ?3時間で終わるんですよ。3時間っていっても、控え室でメイクが1時間、ビール飲むのが1時間、終わって画面チェックして、『いいっすね』って言うのが1時間。だから実質1時間しかカメラの前にいなくて、で、撮影終わると全員が拍手して花束もらえますから」

角田「それは確かに、現場が全然違うなぁ。そもそも、広告マンになったのは、なんでなんですか?」

田中「大学4年になった時に、トラック運転手やってたんですが、作業服で学校行くんですよ、学校の門のところに路上駐車して。1992年の頃は路上駐車は合法やったんですよ」

角田「そんな事はないけどね。違法ですよ」(笑)

田中「今みたいに二人組が写真撮ってるとかないから。みんな、路上に止めてたんですよ、車」

角田「トラックなんですね」

田中「4トントラック。それで、俺、作業服で大学行ったら、みんなパーってスーツ着てるんです。解禁日だったんです。就活のね。みんながスーツ着ているから、俺、『何してんの?七五三?』って聞いたんです。そしたら『いや違う』と。『結婚式?』『いや違う。田中、何をいってるんだ、今日から就職活動でみんな一斉にやるんだと」
(会場笑い)

田中「『え、それブームなの?就活ってブーム?』って。ブームに乗り遅れまいと思って、すぐにマルイで12回払いのスーツ買って。マルイって当時赤いカードでね。分割できたんですよ。」

角田「よくCMやってましたよね」

田中「そう。それ買って、もう次の日から、着て行って。で、俺、早稲田だったから、早稲田ってどんなとこ受けんの?ってみんなに聞いたら、『早稲田は、まあ、マスコミとか、広告代理店とか出版社とか、そう言うやつだろ。』って言われたから、新聞は嫌だな、と思って。なぜかって新聞は毎日出るでしょ。毎日締め切りあるからやめとことと(笑)。受けたのは、出版社とテレビ局と広告代理店…と」

角田「テレビ局受けました?」

田中「受けました」

角田「どこ受けました?」

田中「TBS、フジテレビ、日テレ」

角田「落ちました?」

田中「ううん。一社内定もらって」

角田「あ、どこですか?」

田中「内緒です。行かなかったわけだから」

角田「僕、ちなみに電通落ちました。それもね、CMプランナーになりたいっていって、営業とか絶対嫌だっていったら落ちました」

田中「そうですか。僕、電通、博報堂、大広と。それから講談社、集英社、小学館。あともう一社、10社受けようと思って、最後もう一つメルセデス・ベンツ・ジャパン。これは多分そこに入社したら、ベンツを社販で安く買えるんじゃないかと思って、ベンツ乗りたかったんです、その時」(笑)

角田「で、なんで受かったかってこのヒロノブさんの本に書いてあるから読んで頂ければいいのかもしれないんですけど、そんな感じでトラック運転手さんって言ってるから、ちょっと風来坊的な方だと思うんですけど、でもトラック運転手になる前、実は、今ではそうそうたる一部上場企業の社長になった人たちとの集まりがあったんですよね?」

田中「そう。トラックの運転手になる前に、東京に18歳で出た時に」

角田「元々は関西なんですよね」

田中「大阪なんです。(客席に)大阪の人いらっしゃいまます?」
(会場何人か手を挙げる)

田中「うわ、すごい。大阪から来はったん?」

客「今は東京です」

田中(別の客に)「大阪から来はったん?」

客「大阪生まれですけど東京に住んでます」

田中「今日、大阪から来たの俺だけやね。だからいつもこう言うイベントで『遠くからありがとうございます』って言うけど、『俺が一番遠いんや』って。余談ですけどね、東京で仕事をしたら、何かにつけて東京に出張するじゃないですか。東京に出張して、東京でスタッフが集まってるとこに、ちわーっすって言ったら、別に『はいどうぞ』って感じ悪い。でも、大阪で仕事してるとこに東京からスタッフの人が一人来たら、『遠いところ、有難うございます』って」

角田「ああ、そうですね。歓待されますよね」

田中「絶対される」

角田「わざわざ有難うございます、って。夜も宴席とかありますよね」

田中「だから東京に住んでる人は、地方に仕事行くと、すごい殿様になった気がする」(笑)

角田「で」

田中「18歳の時、1988年ですね。東京出て来て、プラプラ歩いてたんです。で、早稲田大学入学した時に、住むとこがなかったんです。入学式行って『今日からどこで寝よう』って。」

角田「本当にそうだったんですか?」

田中「そう。お金ないから。で、日吉の、慶應行ってる高校の同級生の家をトントンってドアノックして『2、3日泊めて』ってて、そのまま三ヶ月いた」

角田(笑)「彼女とかも」

田中「いたいた。そいつ、彼女いた」

角田「邪魔だったんじゃないですか」

田中「邪魔ですよ。でもそいつも優しい奴で、彼女が訪ねて来るじゃないですか、その慶応ボーイのとこ。そしたら『田中、ごめん。俺らも、することせなアカンから、ちょっと外で待っといてくれないかな』って。俺、外で寒いなあって思いながら」

角田「でも、これ、青春ですね」

田中「でもね、やっぱり、男女の営みですから、1〜2時間はここで立ってるのかなぁって思ったら、15分くらいしたら、『田中、もういいぞ』って。…早っ!て」
(会場爆笑)

角田「若いっすね」

田中「気を遣ってくれたんでしょうね」

角田「で、そんな中で。起業というかそんな夢を持ってる方々の仲間になるんですね」

田中「住む家もない時に、渋谷をブラブラ歩いてたんですよ。そしたら同じ早稲田の学生の高橋ってやつに呼ばれて、この近くに俺たちの会社があるからちょっと見に来い…って言われて。『会社?』って聞いたら、『俺たち学生だけで会社作ってるから』って。そんなことあるのかって、俺、なんか買わされると思って、マルチ的な」

角田「よくツイッターに書かれてるやつですよね」

田中「今日、僕、最後、多宝塔販売しますからね。5段、7段、12段!」
(会場、笑)

田中「マルチかと思って行かなかったんです。そのうち行くわ、って。でも何回も言われるから2、3週間して行ったんですよ。そしたら、そこ座れ、って言って、もう名刺が刷られてたんです」

角田「へー!高橋さんは、ヒロノブさんの才覚みたいなものを睨んでたんですね」

田中「なんか、スカウトしようと思ってたらしくて。で、その会社行くと、隣に座ってる女性がいて、前に座ってる男がいて、で、高橋が反対側の隣に座って。その、僕に声かけてきた高橋広敏って、その後インテリジェンスの創業メンバーになって、今はテンプホールディングスの副社長になってます」

角田「資産何十億」

田中「そうです、そうです。正面に座ってた川田尚吾っていうのは、DeNAっていう会社を共同創業したんですよ」

角田「この人もいまや大金持ちですよね」

田中「モバゲーの、横浜ベイスターズの、DeNA」

角田「はいはい」

田中「で、こっちは、玉置真理っていう、ザッパラスって会社を」

角田「一部上場企業の」

田中「一部上場業の。3人ともいまや一部上場企業の役員。1988年、その3人に囲まれて、そこに座れって言われて」

角田「それでね、その後、初めて泰延さんと出会った日、2017年ですけど、飯を食いに言った時、その人たちとご飯食べたんですよ」

田中「そう。蛇崩の居酒屋で」

角田「その人たちとご飯なんて、金持ち金持ち金持ち失業者失業者。」
(会場、笑)

角田「あそこ、そこそこ金額高いんですね。」

田中「そうそう。いい居酒屋」

角田「それで、あの人らだと、金持ち金持ち失業者失業者なのに、最後、ジャンケンなんですよね」

田中「そう、誰が払うかジャンケンしようって」

角田「え、僕ら、正直失業者なのに、って」

田中「僕、その日、失業保険の金下ろして」

角田「そうそう。そんなのと金持ち金持ち金持ちで、ジャンケンしたら、そしたらそのザッパラスの女性の玉置さんが勝って、男気ジャンケンしたら、女性が勝って」

田中「勝った人が全部払います」
(会場、笑)

田中「でも、ジャンケンって言われた時に、反論しようと思って、こいつらの時価総額がいくらになるかスマホで検索してて」

角田「2千何百億になったんですよね」

田中「2千何百億」

角田「マジで」

田中「2千何百億やのに、なんで俺たち無職が払わなきゃいけないんだって」

角田「でもね、その時に青春時代の話を聞いたら、なんでしたっけ、プールに飛び込んだって話」

田中「そういうメンバーで、夜中まで仕事してたんですよ。真夏でね、18歳の8月ですよ。東京で。みんなスーツ着て。みんなでやってたことは、ちっちゃい広告代理店なんですよ」

角田「それも、広告だったんですね」

田中「そう。当時、学生起業とか、女性だけの事業部とか、バブル、めっちゃバブル、世の中。で、そこそこのおっきい企業が、学生たちだけの会社です、って言ったら、『ほう、面白いね、一千万、預けるから、広告作ってくれ』って」

角田「無茶苦茶ですね」

田中「バブル。全然。俺たちも、18歳とか19歳だからうまく行くわけないじゃないですか。すっかり煮詰まって、8月の夜に、『もう限界や。暑いし、エアコンも壊れてるし、どっか涼しいとこ行こう!』って、なって。そしたら川田尚吾が、『俺、いいとこ知ってる』ってタクシー乗って、気温30度超えてるんです、どこ行くのって思ったら、とある高校。その高校行って、金網超えたら、夏だからプールに水が入ってるでしょ、そこにみんなで、女性の玉置も含めて、着てるスーツのまま、バシャ!バシャ!バシャ!これ、青春でしたね」

角田「青春ですね」

田中「うん」

角田「そのね、プールの話聞いて、これ絶対小説にしてくださいって言ってんですけどね…『不揃いの林檎たち』みたいなの、なんかバブル期の起業してた人たちが、今や大企業までなってる、青春時代の話って、小説にしたら超おもしろいんじゃないですか」

田中「そう」

角田「その時言いましたよね」

田中「みんな成功して、俺だけ違うから、『トキワ荘物語』の寺田ヒロオみたいな」

角田「そうそうそう。その役で書くと『トキワ荘物語』みたいなるじゃないですか。そういうのがちょうど2年前くらいで、『ヒロノブさん、本出してくださいよ。』みたいな事言った記憶があるんですね」

田中「そこ30人程の学生がいて、東証一部上場企業の社長になったやつは、10人以上かな」

角田「はぁー」

田中「おかしいでしょ」

角田「超高確率っていうか」

田中「それ全部、バラバラの会社ですからね」

角田「ですよね、グループで大きくなったわけではないですもんね。だから一人一人が素晴らしいんですよね」

田中「うん」

角田「その話を聞いててなんですけど、泰延さんは20何年間、サラリーマンをやられてるじゃないですか?その感覚ってなんだったのかなーってすごく思ったんです」

田中「一年で、僕、そいつらが30人近くいて、超人だって悟ったんですよ。こいつら半端じゃないと。本気で全員が上場企業作るって誓ってたし、30人いるけど、絶対俺たちは協力をしない、それぞれが会社を立ち上げるんだって、全員が一国一城の主になるって。『俺、そんなの無理だなぁ』って思って。で、トラックの運転手の張り紙見て、それも張り紙なんですね、板橋のトラックの運送屋に行って、今日から働かしてくださいって」

角田「はい」

田中「そこから何年かして卒業で、就職活動で、さっきの七五三のやつね、で、電通内定もらったから、あの夢を追ってる馬鹿どもに勝ったと思って」

角田「なるほどなるほど。大会社に入ったと」

田中「そいつら何やってるかと言ったら、俺が電通決まって、お前ら何してんの?って訊いたら、あれからその30人は解散して一人は今、杉並区のアパートで3人で会社やってんだって。行ったら6畳一間で、PCが二台あって、これでネットオークションとかで小銭を稼いで、これから会社を大きくするんだって言ってて。『バカじゃないの?』って。それが今DeNAって会社ですよ」

角田「その人生の振り幅っていうか。その時にヒロノブさんに、ザッパラスの玉置さん、女性の方、その人がなぜすごいかって事を聞いたんですよ。めちゃくちゃ頭いい、東大法学部出身で、めちゃくちゃ頭いいんですが、その時から会社作ってるんですよね」

田中「ダイヤルQ2の」

角田「ダイヤルQ2が、エロいのがどんどん出ちゃって、急にNTTが止めるって言って、ダイヤルQ2が無理になっちゃって、そしたらその方は22歳の美しい女子大生なのに、何千万も借金を抱えちゃった、みたいな。でもそっから、ザッパラスっていう一部上場企業を作ったんですよね。凄いですよね、っていうと、ヒロボブさんがポロッと言ったのが、玉置は超頭いい。俺らの中で一番頭いい。頭いいって、英語でいうとCOOLじゃないですか?一番COOLなのに一番HOTですって。めちゃくちゃ熱い上にめちゃくちゃ頭いいから、こいつ成功しないワケないっておっしゃったのが、めちゃくちゃ印象的で」

田中「そうなんですよ。頭自体は明晰じゃなくちゃいけないんだけど、それになんか、こう情熱みたいなのがないと、頭いいだけの人は、人に使われて終わるんです」

角田「(自著『本音〜』を指差して)あ、ここにも書いてあるんですが、原点ですよね。結局〝思い〟がないとテクニックだけだと使い物にならない」

田中「そう。この本がすごいなーって思うのは、そこで、本音のところに感動とか達成したい目標もあるし、まずそれがないと、なんぼテクニックだけあってもダメなんです」

角田「Twitterでもヒロノブさんって90%くらい下らない事書いてるじゃないですか」(笑)

田中「本人、真剣なんですよ」

角田「10%くらいは本当に良いこと書いてるんですよ。そこが滲み出ちゃう」

田中「最後の10%は多宝塔の販売案内ですが」(笑)

角田「あと、女性の脚部を様々な角度から写真撮ってお送りください、とか」

田中「『腕を蚊に刺された?それはいけません。脚部にも影響があります。いますぐ様々な角度から写真を撮ってお送りください』」
(会場笑)

角田「それって、90%のくだらないとこにも、本気みたいなのが出てくるから、なんかいやらしくない訳ですよ。で、僕から見ると、まさに広告ってこう言うことなのかなって。広告って15秒しかないとかキャッチコピーの文字数がないってのに、結局伝わるじゃないですか。あれって、ヒロノブさんの本にもあるけど、めちゃくちゃ調べて、考えたことを捨てて、結果15秒になってる。それって1割みたいなにが残ってるからなのかなって」

田中「それってすっごい大事なことやと思う。角田さんと話ししてても、角田さん、テクニックの話、あんまりしないんですよね。感情の話なんです。テクニックはいくら持ってても意味がない。それは、頭のいい人が使われて終わるってのとおんなじです。むしろ下手でもアツいものを持ってる人が絶対動かしていきますよね」

角田「比較的、ミュージシャンとか俳優さんとかのたまごみたいな人とと会う訳ですよ。最近本当に思うんですが、例えばミュージシャンでも、才能のある人って結構いるんです。才能があってもヒットしない人っているじゃないですか、どうしてかなって考えたときに、本質的にはそこにやる気があるかないか、なんです。才能があってやる気があると成功するんだけど、9割くらいの人は才能があるからサボっちゃう。どう考えてもギターとか練習してるの、ミスチルの桜井さんなんですよ。話聞いてると。ミスチルの桜井さんは天才かも知れないけど、あんなに天才なのにそんだけ努力してりゃ、そりゃいい曲書くんじゃん、って。SPITZの草野さんとかもそうだし。そこが(世に)出る人と出ない人の違いなんだなと思うんです。つまりは〝感情〟なんですよ」

田中「おっきな目標がある人と、テクニックだけ習おうとする人の違いっていっつも思うのは、英会話習う人。めっちゃ英会話好きな人いるじゃないですか。でも、それ、誰と喋んの?って。僕がいたその30人の奴らで、英語習おうっとしたやつ、誰もいなかったんです。なんでって聞いたら、俺が巨大な企業作ったら、絶対俺には通訳がつくだろう、と」

角田「なるほどね」

田中「ということは、自分が英語を習う必要はないんですね」

角田「僕、それと全く同じ事を思ったのは、海外でロケすると、コーディネーターがつくじゃないですか。一応、僕、フリとオチを入れて日本語で考えて話してる訳ですよ。だから、フリを最初に喋ってもらって、スペイン語で、でそのあとオチを言うからそのスペイン人が笑うじゃないですか、ところが、ダメなコーディネーターってフリとオチを聞いてから、フリを省略して説明しちゃうんですよ。つまりフリとオチの構造がわかってないでスペイン語分かってたって、全然通訳にならないんです。そこが技術と本質なんじゃないか。で(ヒロノブ本を指して)この本は、シンプルな文章で文章量もないのに…」

田中「ペラッペラの本です」
(会場笑)

角田「その気持ちだけがガーっと詰まってるから、『これ、売れちゃうんじゃないかな』って思ってました」

田中「本当に?!僕はさっきも言ったけど、Twitterのフォロワーの人で、1割くらい買ってくれたらいいなぁと。後は、東は東天満から西は西天満まで」

角田「関西でも」

田中「そう関西。売り歩けばいいかなと思ってたんですけど」

角田「で、今はベストセラー作家みたいになってますけど…」

田中「どこいっても半笑いでね、『よっ!ベストセラー作家!』って言われる。半笑いで」(笑)

角田「半笑い」(笑)

田中「その半笑いとみなさんの生暖かい視線が癒しです」(笑)

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角田「生活、変わりました?」

田中「全然変わらないですよ。変わるわけないじゃないですか。だって今日もね、新幹線乗る時も、1280円の弁当がどうしても買えないんです(笑)高くないですか?数百メートル歩けばコンビニの480円の弁当があるから買いましたよ。1280円の弁当、食えますか?私は新幹線乗るときは1280円の弁当食べますよって言う人、手あげて。味教えて」
(会場笑)

角田「まもなく50歳ですよね?」

田中「10月に。天秤座。誰も聞いてない。いらない情報」(笑)

角田「これからの計画とか、予定は?」

田中(瞬時に)「ある訳ない」

角田「いや、ないかなって思ってふってみたんですけど。ヒロノブさんはどんなこと考えてんのかなぁって。僕、4月から東大の大学院通ってるんです」

田中(客席に向かって)「この人、2回目の東大入学ですよ!」

角田「なんでかって言うと、京都の立命館大学の准教授と、小川さやかさんって言うんですけど、トークイベントがあって」

田中「ああ、僕、チケット代払って、みなさんとおんなじように話聞きに来て、アハハって笑ってたら、角田さんに『ヒロノブさん来てるじゃないですか』って後半ステージに上げられて喋らされたヤツ」(笑)

角田(笑)「で、その方、凄い面白い人で、アフリカのことを研究してる方なんですけど、その方と飲んでたら、『角田さん、大学院行けば良いじゃないですか』って言われて。東京から立命館に月イチで通ってる方とかいらっしゃいますよ、って、つて言われて、月イチで京都っていいじゃないですか。だから言葉の響きだけで、『行きます!』って返事したんですけど」

田中「『月イチで京都』っていいですね。お妾さんいるみたいで」(笑)

角田「でしょ?でもせっかく入るんだったら、『ちゃんと学部選んで、良い先生選んだ方がいいですよ』って言われたんですね。東京帰って、色々調べてたら、東大に〝文化資源学〟って学科があって。文化を資源として捉えるって言う。歴史とか文学とか心理学とか社会学とか分かれちゃっているのをアーカイブして研究しようって学問なんです」

田中「東大の学士の時は?」

角田「西洋史学科。高田万由子さんと同級生なんです」

田中「その頃から情熱大陸と付き合ってたの?」

角田「付き合ってた付き合ってた(笑)それはおいといて、東大に〝文化資源学〟ここだ!て思って。バラエティプロデューサーだから色々やるのが仕事だから、自分がやる学問だってプロデュースだって思っちゃって。頑張って勉強して1月に試験受けて。二次試験が面接で。面接の志望動機考えてて、学問のプロデユーサーになろう、学問自体を面白くしよう!と思ってやってんです。まだ誰も名乗ってないから卒業したら文化資源学者って名乗ろうと思ってます。脳科学者って、そもそも茂木さんとか養老さんとかが出たから、脳科学者って名称ができたんですよ。文化資源学会、勝手に盛り上げちゃおうと思って」(笑)
(会場、笑)

角田「そういう風に企画を立てると、これ、NHKの知り合いのプロデューサーとかに言うと、それ面白いですね!ってなるんです。文化資源って言葉があるから、文化埋没資源って言葉を作っちゃえば、文化埋没資源発掘プロジェクトって、番組になりそうじゃないですか。つまり、今まで売れてないロックバンドとかアーティストを発掘するみたいな」

田中「マイニング・カルチャー」

角田「そうやっていくとおもしろいって、NHKの人が乗ってくれたりとか。後は、僕はテレビマンなんで、言葉を作っちゃうんですけど、雑学とか雑談とか雑誌とか、雑なんとかってあるじゃないですか。雑に、知性の知を書いて、『雑知』って。雑知っていう雑誌つくろうかなって」

田中「いいー」

角田「英語だと、That’s 知。そうするとこれはある出版社が乗ってきてくれて、それと東大と出版社とNHKと組んで、『雑知』って雑誌作ろうかなって考えてます」

田中「いいですね」

角田「儲かるかどうかなんて全然わかんないですよ」

田中「さっきのマイニング・カルチャーも、マイカルって略して、スーパーみたいに」

角田「それ、ショッピングモールです(笑)僕、そんなこと考えてるんですけど、ヒロノブさんはそんなやりたいこと考えられてませんか?」

田中「僕、何にも考えてない。本、そんな売れるって思ってなかったから、これ出すには出したけど、暇だなぁーってなる予定だったのに。その7月8月は《将来を一所懸命考える》っておっきく書いてあったんですよ、手帳には。でもそれが何にも考えられなくなって。それが、あっち行ったりこっち行ったり、サイン会したりってなって」

角田「毎週、何回もトークイベントやられてますよね」

田中「一昨日もやってましたからね。明後日もあります。明後日、みんな来てください。まだ3人しか申し込んでない。ほんと3人しかいないから。明後日来てくれる人います?」
(会場、一人手をあげる)

田中「一人?西園寺さんだけ?西園寺さん、また俺をこんな近くで見るの?明後日ね、六本木のDMMのとこで、千円で2時間も映画の話をします」

角田「DMMって行かれた事あります?玄関すごいんですよ。チームラボが作ってるんだけど、チームラボが作ってる、キラキラしたサイとか象とかが部屋まで連れてってくれるんです。ちょっといきたくなったでしょ?」

田中「部屋に入ると、その大会議室みたいなところは、東京タワーがどーんと真正面に見えるんです」

角田「それ見るだけでも一見の価値あります」

田中「展望台やと思ってください。展望室でおっさっんが喋ってるっていう」

角田「中身も面白いと思うんですけど。で、二冊目とかは?」

田中「何にも考えてない(笑)。本当にこの本書くの嫌で、今野さんからのらりくらりと逃げて、書くのが嫌で、Twitter見ると、角田さんが『本を書きたい人の個別相談会致します』ってずっとやってて、俺書けないから、何回アレに相談しようかと思ったか」(笑)
(会場、笑)

田中「角田さんに書き方聞こうかな、って」

角田「いやいやいやいや」

田中「本当にそう思ったもん。今野さんに書けません、ちょっとまだ出来てませんってずっと送ってたから、本当に、角田さんに書き方聞きに行こう、って」

角田「結局書いたのどれくらいですか?」

田中「本気で書いたのは、最後の一ヶ月」
(会場笑)

角田「じゃ、一ヶ月で書けるってことですね」(笑)

田中「(笑)これはね。もう今まで何とかやってきた事とか、広告代理店で知ったこととか、もう全部入れちゃったから、もう書く事ないんですよね」

角田「それが、ある意味、ヒロノブさんと僕との違いで、僕、これから6ヶ月6社6ジャンルで本出るんですよ」

田中「すごいな!」

角田「依頼を断ってなかっただけなんですけど、それが、多分、広告代理店とテレビマンの違いなんです。(田中本を指して)49年の人生を凝縮すると、この本になるんですよね。僕とかって、発想が逆で、ずっと『金スマ』とかやってたから、毎週毎週何やるかって言う思考回路になってる。特番って一回作るじゃないですか。毎週やるためには、サスティナブルにネタを作っていかなきゃいけない」

田中「終わっちゃいますからね、番組」

角田「そうなんです。なんか常にそんなことばっかり考えてきたから、どんどん量産したくなっちゃうんです。むしろ薄っぺらくなってしまう欠点でもあるかもしれない」

田中「角田さんのこの本、『人生が変わるすごい「地理」』、大好きなんですけど、地理の本なんですね。で、西洋史学やったり地理を調べたりした角田さんの知見がこの『地理』と『本音』の著書のベースに流れてて、受け継がれていってるんですね、ある意味、続きもんなんです。だから一緒に読むといいです」

角田「ありがとうございます」

田中「それにすごい感動したんです。一人の人間のものの考え方って言うのは、あるとこで得たベースが次につながっていく、という」

角田「それなんですよね。泰延さんは一つの物事を徹底的に調べて、作っていくじゃないですか。そこだけは、僕ね、考え方がそこだけは違って、『どう見立てるか』しか考えてないんです」

田中「見立てる」

角田「結局、ヒットするものって究極的に、新しいものしかヒットしないと思ってるんです。新しいものって、0.1%くらいしかないと思ってるんです。だから0.1%を見つけた人って、本当の天才だと思ってるんです。ザッカーバーグとかスティーヴ・ジョブズとかシェイクスピアとか。ところが、そんな0.1%はなかなかないじゃないですか。ないところで番組を作っていかないといけない時に、組み合わせしかないと。A✖️B。その〝B〟って何かと言うと〝僕〟なんです。Aと言うものを、僕がどう見るか。そうすると世界史というものをテレビマンの僕が見たら、『最速で身につく世界史』になって、地理というものをテレビマンの僕が書いたら『人生が変わるすごい「地理」』になるという。つまり、全く根が一緒っていうのはそういうことで、同じものをどう見立てるかっていうやり方でものを見ていくと、毎週毎週番組が作れる」

田中「なるほど」

角田「そういう考え方なんですよ。そうやると、例えば世界史の本って、例えば、一神教と多神教ってあるじゃないですか。一神教は矢沢永吉、多神教は AKBと言う見立てで書いていくんです。どういうことかって言うと、矢沢永吉に憧れてもあなたは矢沢永吉にはなれない。ところがAKBに憧れたら、もしかしたらなれるかもしれない。それが一神教と多神教の違いですよ」

田中「あ〜。そう見立てるわけだ」

角田「僕より世界史に詳しい人もたくさんいるし、僕より優秀なテレビマンはたくさんいるんだけど、その見立てやってるのは僕しかいないから、多分そこが認められたのかな、って。僕は、見立てを、次何やろうかな、って考えてる人なんです。そこが作り方の違いで、そこは面白いなって思ってます」

田中「なるほど。ただ、ベースとなる事象があって、自分だけの心象が生まれる。ってなるってとこは、同じなんよね」

角田「そこは全く一緒だと思ってます」

田中「ただ、角田さんは、次から次へと見立てを出していく」

角田「見立てるものを変えていくから、同じジャンルの本は書けない」(笑)

田中「ほんと、全然違う。でも、繋がってるところはあって。一人の人間だから」

角田「そう、根は全部一緒って考えてます」

田中「この前、ネットで大人気のライターのpatoさんと対談したんです。彼は言ってたけど、食いっぱぐれないためには、マニアはいっぱいいるけど、文字になっていないゾーンはまだあるはずだ、それを探せば記事になると。そこに手垢がついてても、自分がそこに目をつけるのは新しい、と」

角田「それってCM作るときに、いつもそう考えてる事なんじゃないですか?」

田中「そうですね。こじつけでもいいんです。どう組み合わせて新しい事を見せていくか」

角田「はぁー」

田中「patoさんが言ってて面白かったのは、まだ文字になってないけど、みんながやってるジャンルっていうのは、めっちゃマニアがいるからうるさい、とはいえ、それを知りたいって人のゾーンはある。だからそのゾーンの中で初めて文字にすることができれば、勝つ」

角田「あーなるほどね」

田中「角田さんもそういうとこあるんじゃないですか?地理は地理でも、そうやって文字にしてないゾーンがあるはずだと」

角田「文字になってないゾーンで言えば、淀川、淀城に関して思うことがあるんです。淀川って、京都の木津川と宇治川と桂川の三本の川が合流するする場所の水が淀むから淀川っていうんですね。その岸にある城が淀城で、住んだ人が淀殿。なるほどなぁとさらにネットで調べると、ヨドとエドの語源は同じじゃないかと書いてる人がいて。学者って間違ってたらいけないから、それは書かないじゃないですか。でも、僕は学者じゃないから本に書いちゃっていいんだなって。海の水が濁ってるのが江戸で、川の水が濁ってるのが淀。濁ってるところに人は集まる。交通の分岐点。要衝。とすると、大坂夏の陣、冬の陣は、淀 対 江戸、淀んでる同士対決(笑)。っていう風に発想が伸びる。これって正しいかどうかはどうでもよくって、発想が伸びるってことが、地理思考として面白くないかなと」

田中「この『人生が変わるすごい「地理」』の中にも、世界地図の中でも、淀んだところに都市ができると。やっぱり堆積した平地って、淀んでるんですね、水が」

角田「だから多分、歌舞伎町でも大阪のミナミでも、淀んでるところに人が集まるし、権力も集まる。そういうことを書いたりしてるんです」

田中「なるほど」

角田「なんか、地理の話になっちゃいましたけど、思ったことを書いてもいいんだな、っていう事はヒロノブさんも書いてますよね」

田中「僕も、だいたい思ったこと書いてますよね。最低限調べて、えらい学者から100%違うって言われない程度に、しっかり調べて、『そう言われたらその可能性もないとは言えない』て言う程度に、好きなこと書いてます(笑)。突っ込まれたら綻んでしまうけど。学者が束になってかかってきたら大変なことになりますからね(笑)。僕、大学教員と思われたこともありますからね。違うっちゅーねん」

角田「あれ、しつこかったですね」

田中「あれ、しつこかったね。誰とは言わないけど。Y本I郎さん。」

角田「めんどくさかったですね」

田中「めんどうくさかったですよ。ほんでね、俺大学教員じゃないですよって言ったら、次の日ね、記事に線引いてありましたからね」

角田「そこだけ線引いてるのを出してましたからね」

田中「なんで記事ごと消さないのかさっぱり分からない」
(会場笑)

角田「そろそろ、なんか質問とか聞きましょうか?」

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【くだらない事でもなんでもいい、たっぷり目に取った質問コーナー】

Q1. 一点質問なんですけど、本を、僕いろんな本読んではいるんですけど、お二人方が本を執筆するにあたって、今回書いた内容で一番注意すべき点というか、ここに読者に読んで欲しいというか、これだけは、という点はどういったとこでしょうか?本書くと、例えば小学校で作文書くじゃないですか、自分善がりになっちゃって先生とか向けじゃない、と思うんですよね。本書く上で、相手のことを一番思ってやるのがと思うんですが、どんなことをなのか、そこを具体的にお願いします。

角田「いい質問です!著者は自分のために書いていると思ってます。ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』って本とか、書いた当人は絶対現実化できてない(笑)。そんな風に自分に言い聞かせてる。だから『「好きなことだけやって生きていく」という提案』って本を書いたんですけど、それってそう生きていけてないから。読者のために書こう、じゃなくて、結果、自分に言い聞かせてるんじゃないかな、って僕は思ってます」

田中「まったくそうですよ。『読みたいことを、書けばいい。』て、さっき電通24年時代の恨み言(笑)を喋ったでしょ、その時できなかった事をやりたいから『読みたいことを、書けばいい。』て俺に言ってるんですよね。だからあの24年はなんだったんだろう、回り道しちゃったなって。で、俺は俺が読みたいことを書けばいい。誰かに頼まれた宣伝の話を書かなくていい、ってなった時に、これを書いたんですよ。対象は自分でいいと思うんです。この本の中で一番言いたいのは、『ターゲットとかおらんから』って。いっつも言うんですけど、マンションの隣に住んでる僕と同い年くらいのおっさんが、今夜何食べたいかなんて全く分からない(笑)。年格好も家族構成も似てるのに、夕方になってカレーの匂いがしてきて、『ああ、隣のおっさん、俺に似てるのにカレーが食いたいんか』って」(笑)

角田「つまり、マーケティングとかターゲティングて、嘘なんですよ」

田中(力強く)「うそ」

角田「『逃げ恥』ってドラマがヒットしましたけど、ヒットした理由って色々あると思うんです。星野源が良かったとか、ガッキーが可愛かったとか、逃げ恥ダンスが良かったとか、脚本が良かったとか。あるんだけど、全く同じことやっても次ヒットしない。これを分析したらこうだったこうだったってことはみんな言えるけど、その通りに作ったからヒットするものって、この世にないんじゃないかな」

田中「ないですね。やっぱり、𠮷野家と松屋は違うんです」(笑)

角田「そうですよね」

田中「全く同じじゃない。松屋は松屋の良さがあるし、サラダのドレッシングが甘いんですよ。味噌汁は付いて来るしね。色々違うんだから」

角田「だからそう言う意味でいうと、確かね、『君の名は』映画観たときに思った事をブログに書いたんですが、糸井重里さんも同じような事をほぼ日に書いてたんです。ところが僕の文章は、オナニーと言うか自分自分した文章をなんです。糸井さんは、すごいコピーライターですから、すごい共感できる文章を書いてたんです。この差ってなんなんだろうなって思ったときに、自分の思ってる事はオリジナルだと思うんですけど、そのオリジナルをパブリックにしなきゃいけない。そのパブリック性があるかどうか。あと、オリジナルをやめてみんながわかるものにして書いちゃうとコモディティ化すると言うか、すごく退屈なものになってしまう。オリジナリティを保持しながら、みんなにわかるパブリック性みたいなものをどう作るかっていうのが、文章書くときのコツなんじゃないかと」

田中「それはまさしくそうで、僕『読みたいことを、書けばいい。』って言ったら、一部誤解した人たちが『自分で面白い事書いて、自分で自己満足すればいいんでしょう』って、そんな訳ないでしょ!(笑)。パブリック化するためには、自分のために書くんだけど、『=パブリックになるにはどうするのか』という事を考えなくちゃいけない」

角田「ですよね!糸井さんと僕の文章の違いは、糸井さんの文章読んだら『うんうん、俺もそう思う。』っていう感想が出たんです。でも、僕のは『角田はそう思ったのね。』になる。糸井さんの文章は、『俺もそう思いました。』って。だから思ってることは一緒なんだけど、『俺もそう思う、私もそう思う』っていう書き方をしなきゃいけない」

田中「糸井さんのようないい文章読むと、ちょっと上がりますよね。だったらいいの見たら真似すれば良いんですよ。牛丼に味噌汁つけたりね(笑)。ドレッシング変えたりね(笑)ちょっと変えましょう。人のをパクってまったく同じことをやって自分とこにお金が来るって思ったら、来るのは警察です。間違いない」

角田「出版って〝publish〟ですよね。〝public〟と同じ語源だそうです。つまり、publishできるってことはpublicなものだからってことなんですね。そこを気にはしてるけど、自分のオリジナリティってのは、圧倒的になきゃダメだなって思ってます」

田中「そうか、publish とprintとは違うんやね」

角田「違うんです。本とは、製本してるってのは、publicなものなんですよ」

田中「いい質問でした」

角田「いい質問でした」
角田「次の質問〜!」

田中「アレですよ、こういう時、『質問させていただきます』とか、そんなん要りませんからね」

角田「『今日は面白かったです。』とかね。」

Q2. 今日はおもしろかったです。(一同爆笑)今日トークの中で、田中さんは結構一ヶ月で仕上げたようなことをおっしゃってたんですが、角田さんの方は?

角田「世界史の本は夏の1ヶ月で書きました。今度出る日本史の本はGWの10日間で書きました。書こうと思えば書けます」
(会場驚愕)

田中「それ、分かります。それまでにずーっと頭に中で組み立ててるから、最後、写経ですよね」

角田「そこにいくまでがすごい掛かるんです」

田中「最後、写経」
(会場笑)

田中「ダイヤモンド社の今野さんは、全然原稿できてない僕のことを上に説明するのに『あの人は、最後に一気に写経のように書き上げるんです。絶対写経しますから、大丈夫です』って言って待ってもらったそうです。でもほんとそうなんです」

角田「多分なんですが、ビジネス本って仕事しながらでもかけるんです。でも、小説を今書いてますが、小説は書けないんです。何故かっていうと、小説は、村上春樹さんも言ってるけど、〝潜る〟時間が必要なんですね」

田中「観にいく。自分の中にね」

角田「潜る、書く、出る、っていうのが必要だから、1日書くとしても3日間かかるんですよ。ところが仕事しながら3日間って、なかなか取れないじゃないですか。土日って2日間でしょ。潜って、書いて、出てこれないまま月曜日に出社する事になる。百田尚樹さんって、もともとテレビの構成作家で、『永遠のゼロ』を50歳で書いたときに、『探偵!ナイトスクープ』だけ残して、構成の仕事辞めたんですよ。それ聞いた時に構成作家って作家なんだから、辞めなくていいじゃんって思ったんですけど、でも、他の仕事入ってくると、潜ってても出て来ちゃう」

田中「潜って、観に行ってる自分が…」

角田「帰って来ちゃう」

田中「観にいけない」

角田「現(うつつ)と夢幻の世界じゃないですけど、そこにいくまでの行程みたいなのがあって、ハタから見るとサボってるように見えるんですよね。怒られる(笑)。それがだからむしろ僕もサラリーマンが長いんで、『今は潜ってる、潜ってる』って言い聞かせてるんだけど、ソファに寝てるだけじゃないかって思われる(笑)ってのが、悩みでもあります」

田中「フィクションの創作ってそうかもしれないですね。僕も小説家の燃え殻さんに会うと、彼は会社勤めしながら小説書いてるから、会うたびに首しめつつ『辞めろー、辞めろー』って言いますもん」(笑)
(会場笑)

角田「燃え殻さんってすごいですよね。会社勤めしながら書けるっていうことは、生き方自体がフィクションになってるんじゃないでしょうかね」(笑)

田中「あ、でも、本人は訥々としてますからね。でも、燃え殻さん、戻ってきたらやばいときは、Twitterとかでも『箱根に来てます』とかって仕事から逃げてますよね。一定期間。それはもうフィクションは仕方ないんじゃないですかね」

角田「そうですよね」

田中「僕は、この本とかは頭の中で組み立てたものを最後一ヶ月で一気に書いてます。逆にいうとその訓練ができてなかったら、イチから一行目書き出して、二行目どうしようってなったら、何年かかっても書けないんじゃないかな」

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Q3.自分の中でネタ帳みたいなの、下書きみたいなものはどうですか?そこに少しずつ書いたりそういうのはどうですか?

田中「頭の中に書いてありますね」

角田「メモは?」

田中「全くしないです」

角田「すごい覚えてますよね。映画とか音楽とか。蔵書数もハンパないですよね」

田中「僕の中では、『忘れてしまうことは、やっぱり面白くなかったんじゃないか』と。覚えてることで組み立てていく」

角田「僕は、自分が温泉だと思ってて」

田中「おんせん?」

角田「アイデアは、源泉垂れ流しで出そうと。そのためには常に水を入れてないと駄目だと思ってるんです。だから映画観たり、演劇観たり、音楽聴いたりってのは、人よりハンパなくやってると思います。それは自分が楽しみたいっていうよりは、例えば今年、フジロック行って来ましたけど、行ったことを、結果に使おうと思ってないんですよ。ただ、自分の中に貯めておくと、自分の温度でいい温泉に湧き上がってくると、たまたま今度の地理の本の時に、フジロックで苗場まで行った時に、苗場ってこういう地形だったねっていうと書ける」

田中「最近僕驚いたことは、フジロックは富士山と関係ないってことね。新潟県やろって(笑)どこに富士山あんねんって(笑)最近まで知らなかった。苗場なんですね。静岡でも山梨でもない。衝撃でした」(笑)
(会場笑))

角田「あとね、例えば今日とかも茂木健一郎さんが書いてたんですけど『新千歳空港がムカつく』って。つまり、新、てことは、旧千歳空港があるべきじゃないですか。ところが今、旧千歳空港ないんですよ。ないのに、新千歳空港、じゃ千歳って呼べばいいじゃんて書いてたんですよ。僕も昔からずっと思ってて。東京国際空港と新東京国際空港があるのは、旧があるから新ってつけるんだけど、元のがないんだったら、新ってつけるなよ、って」

田中「千歳空港はないんですね」

角田「元は千歳空港があって、その隣に新しいターミナル作って、新千歳空港になったんだけど、古いターミナル、壊しちゃったんですよ。だったら、千歳空港が移動しただけでいいのに、新千歳って言ってるわけですよ。ということとかもずーっと思ってると、なんかこういう類の本を書こうって時に、そういうのが書けるんですね」

田中「なるほど」

角田「全く同じこと思ってるのは、東京ミッドタウン」

田中「ミッドタウン」

角田「東京ミッドタウンって六本木にあって、日比谷にできたら『東京ミッドタウン日比谷』って」

田中「それ、おかしいじゃないですか」

角田「じゃ、六本木のミッドタウンは、東京ミッドタウンって言うんですよ。辻褄が合わなくないっすか?」

田中「どこがミッドなんだ!」

角田「どこがミッドなんだ!」

田中「ウロウロすんなって」
(会場笑)

角田「あと、Zepp DiverCityと、Zepp TOKYOね。Zeppトーキョーも台場にあるのに?って」

田中「これは間違う」

角田「あと、第二京浜なのに、国道1号線ね」

田中「あれややこしい」

角田「国道1号なのに、第二?みたいな」

田中「ね、おかしいでしょ?第一京浜って、国道15号線だって」

角田「そんなことばっかり思ってるんです」

田中「そんなことばっかり」(笑)

角田「運転してて、いっつも渋谷のところって、六本木通りと青山通りがぶつかるんですよ、くっついて超渋滞するじゃないですか。なんで分けないのって」

田中「あぁ、本当にそうですよね」

角田「新宿も、新宿南口の甲州街道のとこっていつも混んでんですよ。なんで街道の混んでるところに、わざわざ駅作ってるのって思うわけですよ。ところが、街道があるから、人が集まってるから駅作ってるんですね。むしろ逆なんだって気づく。なんとなくつぶやいてるただのオヤジの不満とかって、『Zepp DiverCityってなんだよ』って思いながら、いざ本書く時にはネタになる」

田中「僕はいつも名古屋に怒ってますけど」

角田「名古屋、怒ってますね」

田中「京都があって、天皇陛下が江戸に行ったから、東京。なのに名古屋は中京?いつお前ら、都になったんだ?」

角田「なってないじゃん」

田中「なったことないやろと。何が中京なんや!って。でも名古屋の人と喧嘩したら『いや、京都と東京のちょうど真ん中やから中京』やと。そんな詭弁はやめろってね。本当に」

角田「僕、昔、TOKIOとKinKi Kidsの番組やる時に、『名古屋テレビ』ってタイトルにしようと思ってました」(笑)

田中「間!」

角田「KinKiとTOKIOの間で、名古屋って、企画書出したら、怒られた」(笑)

Q4. あえて、会社を辞めたお二人にお伺いしたいのですが、広告マンの夫が、ヒロノブさんと同じことで鬱々としているんですね『20年間やってきたけど、俺のやってることは、社会のため、地球のためになってないんじゃないかと。』住宅ローンがあるので、なんとか会社に踏みとどまっていただきたんです。踏みとどまるためにはどうずればいいか、アドバイスをお願いします。

角田「僕はなんで会社辞められたかていうと、成功したら成功したでいいじゃないですか。失敗したら、『TBS辞めたら失敗した』って本書こうと思って」
(会場、大きく頷く)

田中「英語でいうと『転んでもただでは起きない』」(笑)

角田「英語でいうと(笑)。大きく失敗したら、その本が売れるから、どっちも成功だな、と思ってやめたんだけど…でも、それってテレビのリアクションワイプ画面ってあるじゃないですか。例えば、シマウマがライオンに追っかけられてこけたっていう映像があったとしたら、アメリカの『ナショナルジオグラフック』とかはそのままの映像使うじゃないですか。でも日本だとその映像見てる笑ってる関根勤さんの顔が映る。そのワイプ目線を自分の人生にも作れと」

田中「ああ」

角田「そうすると、自分がシマウマでライオンに食われそうだと、悲しいじゃないですか。
自分が起業したら失敗したら、自殺しそうになっちゃうんだけど、ワイプ目線で見ると、それをコンテンツにするならちょっと今の借金じゃ足りなくない?とか男女のことでもいいですよ、一回告ったけどフラれて、それじゃまだ足りないなって。自分の人生をシマウマじゃなくて、スタジオで見てる方、さんまさんとか、ベッキーとかになれ、って。まあ、ベッキーはベッキーで大変なことになっちゃったけどね。そんなような事を思ってます」

田中「うちは親父が6回も結婚したんで」

角田「占い師の?」

田中「占い師ですよ。職業は。親父は昭和元年生まれで、もともと広島で蒸気機関車D51の機関士だったんですよ。昭和18年、超エリート。今で言ったら新幹線の運転士。だけどそれがある時、広島で占い師にばったり会って、『お前なにやってんだ?』って聞かれて『蒸気機関車の機関士やっております』って答えたら『それ、モテるか?』『モテません!』っていたら、『占い師はモテるぞー』て、その日に国鉄辞めて弟子になった、って」

角田「モテた方なんですね」

田中「昭和元年生まれなのに身長182センチあって、晩年、空飛ぶ爺さんって言われてましたから」

角田「フライング爺さん」

田中「そんでね、親父は常に、どんなことがあっても笑いでしか返さないんですよ。『どうやったら6回も結婚できるんですか?』って人に訊かれたら、『それはね、5回離婚する事じゃ』って。だからね、悪い事も軽く考えるんですよね。腹違いの兄弟もいっぱいいるし。『それがどうした、誰も不幸になってないじゃろ』って」

田中「ただ、僕、なんでも軽く考えましょうと言ったって、後輩が『会社辞めようと思うんですけど』って言ったら『絶対に辞めるな』って言いますよ。奧さんに電話して『お前の旦那、おかしな事言うてるから、目を覚ませって俺も言うし、あなたからも言って』って電話切りますから。絶対に辞めちゃ損だって気持ちを持って、それでも辞めるかどうかって問うたらいいんじゃないですか。それと、辞めてその後の計画があったって、うまくいかないですから」
(会場聞き入る)

田中「よくね、会社辞める時に『計画性もなく辞めてどうするんだ。辞めてどう成功するか筋道立ててからやめろ』って言うけど、そんなの筋道通り成功しないから。人生は思った通りにならないです。入力と出力じゃないですよね」

角田「元講談社の今はコルクの編集者の佐渡島庸平さんから言われたんですけど、辞める前にこの人と一緒にやろうって思ってた人は、辞めた後、協力してくれない、でもこんな人!?って考えてもなかった人が協力してくれる。それはすごい実感してます」

田中「なるほどね」

角田「思い通りにならないです、本当に」

田中「思い通りにならないです。ダイヤモンド社の今野さんなんか、全く僕の人生に関係なかった人だったけど、今はね、2人は付き合ってるとまで言われてる」(笑)

角田「彼女か!って書かれてますよね」

田中「そうなんですよ。未来なんか、決められないから」

角田「次の質問〜?」

田中「はい今マイク行きますからね。あ二本きちゃった」

角田「じゃL-Rで(笑)」

Q5. 今ずーっと聴きながら、ちょっと思ったのが、お二人がアウトプットする前にものすごい量のインプットがあって、すごくたくさん本を読めれてると思うんですが、どれくらい本を読んで、自分の中に入ってるんでしょうか?例えば、自分の中にお二人の本があって、それぞれお読みになっていて、相手の本をどのくらいの感じで読んでいっているのか。

田中「僕、この角田さんの新刊、みなさんと同じフラゲなんですよ。みなさんより一時間早くフラゲして、一時間で読んで、こんだけ付箋付けました。この本の内容について、もし今質問されたら、答えられますよ、集中して読んだから」

角田「今の話、さらにすごいのは、昨日メールで明日の集合時間とかやりとりしたのに、その時間より1時間も早く『到着』とかツイートしてて、びっくりした」(笑)
(会場爆笑)

田中「読んどかんと。広告代理店やから」(笑)

角田「そこらへんの配慮が」(笑)

田中「抜け目ない」(笑)
(会場失笑)

角田「僕は、コツで言うと速読は絶対しない。井上ひさしさんが言ってたんですけど『カラマーゾフの兄弟』とか、ロシア語の名前なんて分かんないじゃないですか。あれ速く読もうとするとわかんないから、自分が分かるまでゆっくり読んだ方がいい。その作品が面白くなると、どうせ速くなるから、と。そんなにインプットアウトプットなんて考えないで、だから自分が楽しむためにゆっくり読んでます」

田中「僕もフィクションは時間かかります。状況を理解しないと先に進めないから、『主人公がドアノブに手をかけた』って書いてあったら、『どんなドアノブや』『回すやつか』『押すやつか』とドアノブの形ばっかり想像して、頭の中で見えるまで次のページいけないです」
(会場笑)

田中「本をたくさん読んだら人生豊かになるわけじゃないから。大好きな本が人生に十冊ある方がいいじゃないですか。うちの親父も結婚6回して、死ぬ前に俺、呼ばれてね『これだけは泰延、覚えとけ』って言われたのは『結婚なんかはな、あれ、一回でいいからな。』って」
(会場笑)

角田「浦沢直樹さんが言ってたんですけど、昔ってLPレコード、事前に聞いたりできないから、ジャケ買いしてたじゃないですか?でもむしろジャケ買いで良いって言ってました。失敗したなと思ってももったいないから10回聴く。10回聴いてると、結婚6回と一緒で、ちょっとずつ良さがわかってくる、それがいいんだって話なんだと思うんですよ。若い人に多いんだけど、この人のレコメンだから買うとか、つまりジャケ買いで失敗する感覚って大事なんじゃないかって思ってて。銀座の画廊の方に聞いたんだけど、絵の鑑定力と言うか、目利き力をつけるには、自分が痛いって思うくらいの絵を一枚買いなさいって。だから給料の一ヶ月分とか。ボーナス分とか。痛いって思うから真剣に選ぶじゃないですか。人のレコメンで買わないって言うか。結果失敗したとしても、目利き力はつくそうです。本も同じで、僕は本当にジャケ買い。強いて言えばタイトル買いです」

田中「筒井康隆さんは初めて本が売れた時、最初の印税を全部使って、一枚絵を買ったって書いてましたね」

角田「僕も、坂口恭平、買いました。30万で。超勇気いるんだけど、それを買うと次の基準ができる気がしますね」

田中「僕からアドバイスとしては、これは大変だって言う長編を一回読み切ってみること、お勧めしますね。面白くても、面白くなくても。その中で読書ってことのハードルが一個できるから」

角田「僕は、あれですよ、高2の時に中公文庫の『世界の歴史」全16巻を全部読んだんですよ。あれ読んだから、東大受かったと思ってて。あれ以外勉強してないんだけど『俺、全部読んだじゃないか』って。『全部読んだから、俺世界史のこと知ってんじゃん』って勝手に思ってて根拠ないんだけど、結果、学力に繋がってるって言うか」

田中「なるほどね。なんでもいい、『カラマーゾフの兄弟』でも」

角田「『ジャン・クリストフ』でもいいし」

田中「ぜひ読んでください」

角田「もう一問くらいいきましょうかね?どうしてもこれ聞いときたいって人?」
(最前列で挙手)

田中「お。最前列!アリーナ!」

角田「ここチケット7万円したからね。砂かぶりだからね」

Q6. 実は今日札幌から来たんですけど。

田中「札幌!すごーい、ありがとうございます!」

角田「昨日、セカオワのコンサートがあったとかじゃないでしょうね」

客「違います」

本を読んだ時にTwitterでイベントがあるよ、って見て、とにかく来てみようっと。で、お二人の尋常じゃない頭の良さがアレなんですけど、常に『潜るとき』の感覚っていうのは、スイッチみたいなのがあって、自分でON・OFFをやっているのか、それとも環境を自分で作る儀式みたいなものがあるのか。私も今一応デザインの仕事やってて、結構苦しい時があって、それを切羽詰まって書くのか、計画的にやるのか、ちょっと興味があります。

角田「忙しい時ほど、映画に行きますね。例えば白か黒か迷ってる時ってあるじゃないですか。そんな時に映画行ったりすると、本当不思議なんですけど、出演者が「白にしろ」って台詞とか言ってたりするんです。そう言う経験ってクリエーターには結構ある経験だそうです。で、そこまではっきりしなくてもその映画の一番いい景色がちょっと黒っぽい森だったりとか、これだったら、神様は黒を選べって言ってるんだな、っていう感覚みたいなものが享受できることってあるんです。でもそれは答えが欲しいと思って映画に行ってもダメだと思ってます。だからスイッチみたいなものって、やらなきゃなって思うこととやることをそんなにリンクさせないっていうか。なんかやらなきゃいけない時って映画見てようが、トークしてようが、アイデアみたいなものが勝手にやって来てるんじゃないかなって。さっき言った源泉垂れ流しってのはそういうことで。なんか入れとくと、その瞬間に出ちゃうって言うか」

田中「セレンディピティみたいなのも起こるんですか?」

角田「本当に起こるんですね。ロケの現場でも切羽詰まった時とかにも、笑いの神さまが降りてくる時がある。これその場で何か思いつかないと、この収録ボツになっちゃうなって思って、ぎゅーってやってると、本当に面白いこと思いついちゃったりとか。中村玉緒さん『玉緒がいく』ってコーナーやってて、「今回、全然面白くないなー」ってやってると、その瞬間に、玉緒さんが歯医者さんで、ウイーンって倒す椅子が、倒す機械壊れて、延々と下がっていっちゃったりとか、なんでそんなことが起こるかわかんないんだけども、切羽詰まると起こるんですよね。火事場のクソ力って本当にあるんです。でも、だからってあえて火事場に行こうとすると、身体を壊す(笑)。火事場だとアイデア出るんです。タンスも運べるって言うか。大川栄策さんみたいに」

田中「ふた晩徹夜して、思いついた時のことを思い出して、無理にふた晩徹夜したりするんですね」

角田「そうすると出てくるんですね」

田中「出てくる」

角田「出てくる。本当に」

田中「でもそうすると入院しちゃう」

角田「それをどこまでやればいいかわからないけれど、そう言うことをやれば出てくるんじゃないですか?」

角田「ヒロノブさんはどうですか?アレとか」

田中「あ、アレね(笑)。Twitterでも僕よく言うんです、『寝るのとは違うんです、ちょっと電気消して、横になって、布団被って、まぶたの裏に映画みたいなものが映るんで、それを見るんです』って。でもそれが大体答えになってることってある。追い詰められるとそれを観るんです」
(会場、感心)

田中「CMの企画は先ず仕入れ。いろんな映画とか映像の資料見とかないといけないけど、じゃそれをどう組み合わせるかって時は、追い詰めると観る。ちょっと放置する時間が大事なんです」
(会場、再び感心)

田中「あれ、なんでしたっけ?大ベストセラー『アイデアの作り方』」

角田「あれ、外国の方が書いた本。あれ良い本ですよ」

田中「めっちゃぺらぺらの本なんだけど、世界中でベストセラー。世界で1千万部くらい売れてるんじゃないですか?入れるだけ入れて放置する」

角田「そしたら、トイレとか行ったら出てくる」

田中「これだけの事で、1千万部ですよ(笑)。でも洒落れてるの、書き方が。ぜひ買ってください」

角田「あの本はいい本です。僕よく言うんですけど、『テレビ観ないんですよ、つまらないから』って人いるじゃないですか。いや、なんで観てないのにつまらないってわかるんだって」

田中「本当ですよね」

角田「『最近テレビ見たらつまんないんですよ』って、まだ言ってよって。そうすると、僕の中ではつまらない物ってなくて、見た映画がつまんないものだったら、『この映画、なんでつまんないんだろう』て考えちゃう。するともう一回観たくなるんですよね(笑)。つまり、そうやって世の中のからくりみたいなものを考えていると、つまんないものなんてない。なぜ新千歳の新は取らないとか。そんなこと考えてると結構大丈夫って言うか。そう言うことが結果、アイデアにつながってくる」

田中「観察、大事ね。あとちょっと面白かったこと忘れないことがすごい大事で、さっきのね、なんで観てないのにつまんないってわかるんだ、って言う話を聞いたら、俺がすぐ思い出すのは、博多に行った時に、客の呼び込みの、ソープランドのお兄さんに『お兄さん、お兄さん、良い娘いますよ』って写真、見せてくるんです。で、『最高ですよ、この娘は』って。『あんた、呼び込みのおっさん、この娘とやったんかい』って。『やってないっす』『じゃなんでわかるんだ!いい加減なこと言うな。』って。どこかどう最高なんだよっていう」
(会場笑)

角田「はいはいはい」

田中「っていうふうに二つの事象が繋がると、面白いじゃないですか」

角田「この話とこの話のA×Bじゃないんだけど、僕のこの話を聞いて、ヒロノブさんは、これを中洲のソープランドに落とし込む。これが多分、アイデアの形になるっていうか」

田中「そうそう。組み合わせ」

角田「ソープランドの話だけだとただのエロオヤジのエロトークかもしんないし、僕のだとただの説教じみた話なんだけど、それを組み合わせるだけでさっきのパブリック性とかが出てくるんじゃないかなって」

田中「バカバカしさがね」(笑)

角田「くだらないじゃないですか。ソープランドの話になっちゃってね。そんな感じでね。ほら、あっという間に時間になった。何話したか全然覚えてない」(笑)


[ライティング:吉見由香、2019年8月28日、代官山蔦屋書店にて]

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