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【スペイン巡礼】23歳の誕生日、スペインを120km歩いて旅人になった

スペイン巡礼をご存じだろうか?

スペイン巡礼とは、ゴールのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂を目指して各地から巡礼者が歩くことで、最長は800km。

四国お遍路のスペイン版、と行ったほうが分かりやすいかもしれない。

昔は宗教的な意味で歩く人が多かったが、最近は純粋に歩くことや、その挑戦自体を楽しむ人も多いよう。

観光地を見に行くのではなく、はたまたスリリングな土地に行くのでもなく、地道にゴールを目指して歩き続けるスペイン巡礼。

シンプルだが年間を通して世界中から約43万人を集める魅力がある道なのだ。

私はこの道を7キロのバックパックとともに120キロ歩き、世界中の巡礼者と友達になった。

なんでわざわざ海外に行ってまでそんなことをしたのか?

それは、「ワクワクできる挑戦をしたかった」から。

たった一人で歩き始めたこの旅だが、終わるころには一緒にゴールする世界中からの仲間がいて、一回り大きく、たくましくなれた。

そんなスペイン巡礼のことを今日は話そうと思う。

<こんな方に読んでほしい>
・何か新しいことに挑戦したい方
・一味変わった旅がしたい方
・スペイン巡礼に興味のある方

■ワクワクできる「何か」を求めて

学生時代の大きな目標だったアメリカ留学を終え、就職活動も終えたころ、私は燃え尽きていた。

当時の彼氏とも別れ、卒業旅行として彼に会いにアメリカに行く予定もなくなってしまった。

あと半年で学生生活が終わってしまうのに、何も目標がない自分にモヤモヤ。

そんなある日、本屋さんに行ったら「人生に疲れたらスペイン巡礼」という本と目が合った。

あらすじを読んでこれだ!と直感的に思い即購入。

本を読んでからずっと、スペイン巡礼で頭の中がいっぱいになった。

私も行ってみたい。

久しぶりに感じる心の底からのワクワク感に留学前の懐かしさを感じた。

■準備に追われる日々が充実していた

行くと決めてからは毎日航空券の値段をノートに書きだした。

いつ、どのルートで行くのが一番安いか調べ、なんとか往復7万円のチケットを見つけた。

学生の私にはこれでも高かったたけど、この値段なら行けると確信し半ば勢いで購入。

これから始まる未知の冒険が少し現実的なものとなりゾクゾクした。

それからは登山用の靴やバックパックの買い出し等に大忙し。

初めてのバックパック

重い荷物を背負って歩くことに慣れたかったから、5キロのお米をバックパックにいれてバイトに行き、電車に乗らず2時間歩いて帰ったこともあった。

はたから見たらちょっと可笑しかったかもしれないが、

こうして目標に向かって過ごしていた時間がたまらなく充実していた。

■あの高揚感をまた感じたい

出発前日、ベッドに入ると心臓がドキドキしているのが分かった。
何回も起きては持ち物のチェックをしたり、目覚ましがかかっているかチェックした。

結局、気持ちが昂って眠れなかった。

寝不足のまま成田を出発し、ドバイを経由してマドリードに無事到着。

ホテル近くへのバスを事前予約していたが、バスが何台も並んでいてどれか分からない。おまけに英語も事前に調べたスペイン語も通じない・・・

バスを間違えたらどうしよう、明日出発できなかったらどうしよう

困り果てて泣きそうな自分に、50代くらいの女性が話しかけてくれた。
海外旅行が好きだった今は亡き祖母の面影がある、優しい人だった。

運よくたまたま行き先が同じだったので一緒にバスに乗った。

すっかり暗くなったころ、その女性は
「じゃあ、私はここで降りるね。あなたのバス停はまだ先だけど気を付けていってらっしゃい」と言ってバスを降りて行った。

暗いバスの中、とうとう私は一人になった。

目的のバス停に、ついに到着した。

お金がなかったからWifiもSIMも持ち合わせておらず、事前にアプリにいれていた地図を辿ってホテルに向かい、到着。

部屋につき、シャワーを浴びて、気絶するように眠りについた。

ホテルに着いてからも色々あったが、それはまた今度のはなし。

■世界各国の巡礼者は超フレンドリー

日が昇り始めたころ宿を出発して、駅に向かう。

朝日が窓に反射してステキ

覚えたてのスペイン語でチケットを買って1時間に数本しか来ない電車に乗った。
チケットを買って電車に乗っただけなのに、それが出来た自分が誇らしくて褒めてあげたい気持ちになった。

小さなことに達成感を感じ、海外旅行の醍醐味を覚え始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・

そして、ついに合流できそうな道をみつけて歩き始めた。

青と黄色のサインがスペイン巡礼の目印

歩き始めるとすぐにフランス人のおっちゃんに挨拶されしばらく話した。

「今日のことは今日考えればいいし、明日のことは明日考えればいいよ」といかにもフランス人らしいアドバイスをくれ、「じゃ、ちょっと一人で歩きたいから先に行くね」と言って去っていった。
自由だな...。

7キロのバックパックを持って歩き続けること3時間。
この時点で既に少し疲れ、自分はとんでもないことに挑戦してしまったと気づいた。

が、時すでに遅し。

歩き続けるしかなく、お昼ご飯にありつけたのは歩き始めてから約5時間後。

緊張していたからか、味がしなかった。もさもさとしているものを食べていた不思議な感覚だった。

留学した初日のエッグマフィンも味がしなかったから私は極度に緊張すると味覚がなくなるらしい。

食後にまた歩き始めると、韓国人とアメリカ人のグループ6.7人くらいに話しかけられしばらく一緒に歩いた。

話してみると、今日泊まる宿泊先が同じだったよう。

そうわかると、会ったばかりの私を夕食に招いてくれて一緒に食べることになった。

テキパキと準備してくれた

食後には、なんと私の誕生日のためにケーキを買ってお祝いしてくれた!
一緒に歩いていた時の会話を覚えていてサプライズで準備してくれたよう。

会ったばかりの私にこんなに優しくしてくれて、感謝の気持ちでいっぱいになった。

一生忘れない23歳の誕生日

スペイン巡礼の道を歩き始めてから、知らない人とも話してみることの楽しさを知り、たくさんの人の優しさに触れられた。

■一人時間は自己対話とカラオケで満喫

巡礼の道を一人で歩いていると、誰かに話しかけてもらえることが多い。
でもたまに、前にも後ろにも人がいなくなる時があった。

大自然の中で、ポツンと一人。地球に取り残されたような感覚でちょっと怖い。

不安でも歩き続ける。それは自ずと自己対話の時間となり、当時の私には必要な時間だった。

電波も周りの雑音もなく、大自然の中で色々と考える機会は後にも先にもこの時だけだったと思う。

一人の時間も大事にしなって教えてくれたオリビア

でもこんな真面目なことばかりしているのではなく、人がいないからこそ出来たことも謳歌した。

それは、大自然の中でのカラオケ。

黄色い矢印を目印に歩く

前後に人がいないことを確認して、事前にダウンロードしていた好きな音楽を爆音でかけて一人で歌う。

人目を気にせずに、自分がやりたいなと思ったことを出来たのが新鮮でなんとも心地よかった。

普段もこうして人目を気にしなかったら私はなにをやるんだろう。

■旅の達人との出会い

スペイン巡礼をきっかけに旅に目覚めたわけだが、それは途中で会ったアメリカ人Troyとデンマーク人Kristianの存在が大きい。

例によって私が一人で歩いている時に挨拶してくれて、少し話したら気が合ったのでそこからランチを食べ一緒に歩き6時間くらい話し続けた。

何か一つのお題に対して、アメリカ人、デンマーク人、日本人の考え方等を並べて議論することが多かったと思う。

左がKristian、右がTroy
ガリシア地方で有名なタコを白ワインと一緒に

Troyはこれまで数え切れない程の国に行った旅の達人。

スペイン語で地元の人と積極的にコミュニケーションを取り、Troyきっかけに一人で歩いている人に声をかけ夜ご飯を食べたこともあった。

Troyから話しかけて立ち話すること数十分・・(笑)
一人で来ていた女性に話しかけて一緒にランチ

そして彼は旅初心者の私に、旅のいろはを教えてくれた。
例えば、貴重品の身に着け方やスリ対策、これまで行った国の話等だ。

引き出しの多さに驚き、世界を見てきた彼がとてもたくましく見え、海外を旅することへの憧れが増した。

わたしも自分の目で世界を見てみたい。

彼に会ってから数か月後に10か国旅した話は長くなるから今度にしよう。

■男女共用のドミトリーがスタンダード

スペイン巡礼の道沿いには宿があり、巡礼者の多くはそこに泊まる。

みんな1日に歩く距離は大体同じなので、道中であった人とも宿で再会することが多い。

宿の多くは男女共用のドミトリーで、あるのはベッドだけ。
シーツ等はないことが多いので自分で持参した寝袋を広げてそこで寝る。

枕カバーはないので自分でタオルを敷いて使う
使い捨てのシーツをもらえる時もあった!

行く前は落ち着いて眠れないんじゃないかと思ったが、一日平均7~8時間も歩くので疲れ切って寝てしまう。

さらに、巡礼者の多くがお互いに配慮して過ごすので、大声で夜中に話す人や、ベッドの横から話しかけてくる変な人もいなかった。

シャワーも宿の規模によっては1つしかないこともあり男女共用。

1回だけ水しか出ないことがあり、それでもどうすることも出来なかったので凍えながら水シャワーを浴びた時もあった。

こんな経験したことなかったが、なんとかなった。たくましく過ごした。

繊細さも大事だけれど、置かれた状況で図太く楽しむメンタルを育むことができたのはきっとこの経験のおかげ

■一人でスタート、ゴールは仲間と

ーいよいよゴール

いよいよ目的地の大聖堂に向かうとき、私たちは日が昇る前の真っ暗な中出発した。

憧れだったヘッドライトをつけて

山の上の方から市内の建物が見えてきて
あとちょっとだ!と感じるが、徒歩だから当たり前に遠い。

虹が見えた

市内に入ってくるともうすぐだ!という嬉しさと、この旅が終わってしまうという寂しさを抱えながら、一歩ずつ噛みしめてゴールを目指した。

そしてお昼前くらいについに目的地に到着。

巡礼者とともに目指したサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂を目の前にした時はもう心がきゅうっとなるような達成感を感じた。

巡礼者の定番ポーズ!?

大聖堂前での写真撮影を終えた私たちはミサに出た。

不定期でボタフメイロという巨大な振り香炉があるみたいだが、幸運にも私が出たミサではそこに立ち会えた。

真ん中のがボタフメイロ

歩ききれて良かった。ここに来られて良かった。

安堵感からか、説教を聞いている時に涙が出そうになったが、必死で我慢した。

あの時、自分の感情に素直に泣いたら良かったのに。こんな時にも感情を抑えてしまっていた。

次行く時までには、もう少し自分の感情を素直に表現できるようになっているといいな。

ーゴール地点は同窓会だった

ミサの後は、巡礼証明書を提示して巡礼証明書をもらった。
その手続きをするビルは、同窓会会場のようになっていて、

「あの時話したよね?」
「あの人はしばらく会ってないけどゴールできたのかな」

という会話が、そこら中で聞こえてきた。

23歳になる誕生日に一人で歩き始めたスペイン巡礼の道。

ゴールをする時には世界中からの仲間が一緒だった。

いつか、全長800kmの道も歩いてみたいと思う。800km歩いたときに自分は何を感じるのだろうか。

■最後に:興味があったら歩き始めよう

「何か挑戦するものが欲しかった」という理由から、勢いで始めたスペイン巡礼への挑戦。
結果的にはやってみて本当に良かったし、ここに来なかったら私の人生はまた違ったものになっていたと思うほどステキな経験だった。

私はこの旅から、こんなことを学んだ。

①知らない人と旅で出会うことの楽しさ
②自己理解の大切さ
③トラブルにも動じないたくましさ

もし、私の記事を読んでいただき少しでもスペイン巡礼に興味を持ったらぜひ行ってみてほしい。

「やらない後悔よりやる後悔」

スペイン巡礼がどんな経験となるかはあなた次第。絶対に良いものですよ!!とは言い切れないが、やりたいと思ってやらなかったことはこれからもあなたのこころにずっと引っかかることは確か。

あなたがやりたいことは何ですか?

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
ステキな旅となりますように。

■あとがき

ここでは紹介しきれなかった、スペインの美食。
ランチ休憩にはワインとトルティーヤを食べたり

バルでお酒を頼んだらお店ごとに違うピンチョス(1口サイズのおつまみ)がついてくる。


ぜひ、食べ物とお酒も楽しみにして行ってみてほしい。

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